2017年8月30日水曜日

営業秘密の漏えいが発覚してもやってはいけないこと

自社の営業秘密の漏えいが発覚したら何をしますか?

漏洩した営業秘密の特定を行うかと思います。
そして、何時誰が漏えいさせたかを調査することになると思います。

これらの調査は、まず社内で行うことになるでしょう。
そのとき、どのように調査を行いますか?
2種類の方法が考えられるかと思います。

①営業秘密の漏えいがあったことを社内で広く告知し、情報提供等を呼び掛ける。
②営業秘密の漏えいがあったことを社内で告知することなく、限られた人員でのみ調査を行う。

さあ、どちらを選択しますか?



多くの社員に告知することで、当然、営業秘密の漏えいに関する情報も集まりやすいでしょうし、近年の隠ぺい体質への批判的な風潮からすると、やはり①でしょうか?

では、①を選択した場合における最悪の事態はどのようなものでしょうか?
これも、私が参加したセミナーで警察関係者が述べていたことです。

営業秘密の漏えいがあったことを社内で広く告知すると、営業秘密の漏えい者が未だ自社に在籍している場合には、自身が行った漏えいが発覚したことを認識することになります。
この場合、漏えい者は、証拠隠滅を図る可能性があります。
そうした場合、漏えい者を特定することが困難になるかもしれません。

さらに漏えい者は、最も効果的な証拠隠滅である自殺を行う可能性があるようです。
営業秘密の漏えい者は、殆どの場合では前科はないようです。
まあ、そうですよね。漏えい者は、多くの場合、社内で普通に働いていた人ですから。
そして、漏えい者は、初めて犯した犯罪の重大さに驚き慄き、自殺を選択する可能性があるようです。
こうなったら、犯人捜しどころではないですよね。

と、いうわけで営業秘密の漏えいが発覚しても①はやってはいけないことであり、②の方が好ましいようです。

②を行う場合は、信頼できる社員で調査を行うことが当然重要になります。
口の軽い人でしたら務まりませんよね。
また、営業秘密の漏えいが発覚した場合には、警察に相談することも重要とのこと。
警察と共に調査を行うことで、より早期に漏えい者を探し出すことを試みた方が良いかと思います。
この場合、警察も会社にズカズカと踏み込んで捜査を行うのではなく、会社側から必要な資料の提供を受け、参考人等に対しては社外で話を聞く等のことをするそうです。

また、営業秘密の漏えいが発覚した場合に正しい行動をとれるように、防災マニュアルのような、「営業秘密漏えいマニュアル」をあらかじめ作ることも必要かと思います。
②の行動をとることが必要であると一部の人が認識していても、それを知らない人が大騒ぎし、漏えい者に証拠隠滅を図られるかもしれませんからね。



2017年8月28日月曜日

タイムスタンプ:技術文書管理システム

富士ゼロックスが、「知的財産の先使用権立証を支援する技術文書管理システム」を作成したとの報道を読んで、ちょっと思ったことを。

<参照>
IT Leaders:http://it.impressbm.co.jp/articles/-/14882
富士ゼロックス:http://news.fujixerox.co.jp/news/2017/001373/

アマノのタイムスタンプサービスを組み合わせたもののようですね。
タイムスタンプの利用=先使用権立証という流れに沿ったサービスですね。

私は、タイムスタンプを先使用権立証のために用いることが一般的になるということに対しては少々懐疑的です。
しかしながら、私の予想が外れて、一般的になればいいとは思います。



ここで、「タイムスタンプを押した情報=秘密管理性を満たす」ということにはならないと考えられます。
「タイムスタンプを押す=情報の作成日時の証明」であり、情報の秘密管理とは直接的にはむすびつかないと考えられます。

せっかくならば、こういったタイムスタンプを押したシステムに対して、情報の秘密管理性も満たすようなサービスを組み込んだら如何でしょうか?
タイムスタンプを押す情報の中には、当然、営業秘密として保護すべき情報も含まれているでしょう。
そのような情報に対して、㊙マークを同時に付与するとか、パスワード等でアクセス管理された所定のフォルダに自動的に記憶されるとか、・・・。

ところで、「営業秘密」+「タイムスタンプ」のキーワードでグーグル検索を行うと、このブログにおける「タイムスタンプを使う目的」の記事が1ページ目に出てきます・・・。
この記事がどの程度アクセスされているかは分かっているので、「営業秘密の管理に対してタイムスタンプを用いる」という観点は広まっているとは言い難いですね。
一方で、「先使用権」+「タイムスタンプ」のキーワードで検索しても私のブログ記事はすぐに上がってこないので、「先使用権の証明にタイムスタンプを用いる」という観点は、「営業秘密の管理に対してタイムスタンプを用いる」という観点に比べて、圧倒的に広まっていると思われます。

2017年8月25日金曜日

特許権の侵害は刑事事件化されず、営業秘密の侵害は刑事事件化される理由

特許権の侵害は刑事事件になることはまずありません。
一方、営業秘密の侵害に関しては、刑事事件となる場合があります。
この違いは何でしょうか?

これに関して、あるセミナーで警察関係者の方が警察の視点から説明したものを聞いたことがあります。
特許だけでなく、実案や意匠も同様でしょうが、その理由は、無効審判によって権利そのものが消滅する場合が多々あるためとのことでした。

もし、侵害者(法人含む)に対して警察が立件しても、その後、無効審判によって権利が消滅した場合には、犯罪行為そのものがなくなってしまうため、警察は特許権等の侵害を刑事事件化することに及び腰になるとのことでした。

これはよく分かる理由だと思いました。

商標法違反で刑事事件化される場合でも、商標法違反とされる商標は今後無効とはなり得ないほど有名なブランドのものですしね。



一方で、営業秘密に関しては、その取得行為等は窃盗犯と同様のものであると警察は考えているようです。
営業秘密に関しては、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たしていれば、その後、営業秘密が無効となることはありません。
すなわち、営業秘密に関しては、特許権等とは異なり、事後的にその犯罪行為そのものがなくなることはありません。

特許権等は、技術を独占し他社を排除できる“強い権利”であるからこそ“無効審判”の制度が設けられているのですが、この無効審判があるために、刑事事件化され難いようです。
一方、営業秘密は、“強い権利”となりえるものではなく、“無効”という概念そのものがないため、刑事事件化され易いようです。

営業秘密が技術情報である場合、特許権侵害と営業秘密侵害はその行為は同様であるとも思われます。
にもかかわらず、刑事事件化されるか否かの違いが非常に大きく、私自身はなんだか釈然としません。
そもそも、特許権侵害と営業秘密侵害の刑事罰を同列に考えてはいけないのでしょうか?

2017年8月23日水曜日

ラーメンレシピは誰のもの?

営業秘密はだれのものでしょう?
先日、弁護士ドットコムの記事に「「ラーメン店」レシピは営業秘密? クビになった考案者がやめさせることはできるか」というものがありました。

この記事の結論を引用すると次のようなものです。
「問題のラーメンのレシピについて、ラーメン店のオーナーが秘密として管理して使っているのであれば、既に解雇された従業員が考案したレシピであってもオーナーの営業秘密として保護される可能性があります。この場合、元従業員は、自分が考案したレシピの使用や開示の差し止め、また使用や開示により発生した損害の賠償請求はできません。むしろ、オーナーがこれらを行うことができます。」
この結論については、まったく異論はありません。
そう、現在の法律において営業秘密はそれを管理する企業のものであって、それを開発した開発者のものではありません。

そして、営業秘密については、その営業秘密の開発者に対する法的保護は何らありません。
一方、特許、意匠、実用新案では、その開発者に対して、法的保護が与えられます(特許法35条等)。
このように、技術開発等を行い特許出願等を行えば、その開発者は法的保護のもと、それに対する利益を得ることが認められていますが、いったん営業秘密とされると開発者は法的保護をうけることができません。



ちなみに、特許庁における職務発明ガイドラインのQ&AのQ21「職務発明について使用者等が特許を受ける権利を取得した場合、特許出願せず に営業秘密又はノウハウとしたときであっても、発明者である従業者等に対して 相当の利益を付与する必要はありますか。」という質問があります。
これに対しては、【参考】として判例を挙げて「職務発明について使用者等が特許を受ける権利を取得した場合、特許出願せずに営業秘 密又はノウハウとしたときであっても、発明者に対して相当の利益を付与する必要があ り得ると考えられます」とのように特許庁では回答しています。
しかしながら、これは法的な裏付けがあってのことではないため、企業は営業秘密の開発者に対して、利益を与える法的な義務はありません。

また、特許と営業秘密、この2つに対する法的な責任としては、共に民事的責任及び刑事的責任が法律で定められています。
しかしながら、特許権侵害において刑事的責任が問われた事件は聞いたことがありません。
さらに、特許侵害では個人の責任が問われることもほとんどないかと思います。

すなわち、転職者自身が開発に携わり、前職企業が権利者の“特許”に関する技術を転職先で使用しても、その転職先企業が民事的責任を負うことになっても転職者が民事的責任を負うことはないでしょう。
一方、転職者自信が開発に携わり、前職企業が“営業秘密”として管理している技術を転職先で使用すると、特許権侵害とは全く異なり、その転職先企業と共に転借者が民事的責任を負う可能性もあり、さらには刑事的責任を負う可能性もあります。

私は、特許権の取得も営業秘密としての管理も、共に「技術管理」及び「情報管理」の手法の一つであると思います。技術を特許とするか営業秘密とするかによって、現行法及び現行法の運用ではこのように大きな違いがあります。

果たして、これでいいのでしょうか?

2017年8月21日月曜日

第4次産業革命に関するセミナーが開催されます。

弁理士同友会主催で、9月13日に『第4次産業革命と知的財産法制度』という題目でセミナーが開催されるようです。

講演者は、北海道大学の田村善之先生。
知財関連では有名な方ですよね。

以前のブログでも紹介した「産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会」でも委員をされています。
第4次産業革命に重点を置いた知財セミナーは未だほとんどないと思われます。


私もセミナー及び懇親会に参加する予定ですが、次の日は朝から健康診断なんですよね。
懇親会、どうしようかな。
まあ、飲食しなければいいだけですが・・・。

2017年8月18日金曜日

データどろぼう?って、いくら何でも・・・。

土木建築会社の元従業員が、転職先で利用するために顧客情報や仕入れ先情報の営業秘密を持ち出し、書類送検されたようです。
そして、そのデータを「データどろぼう」 と名付けたフォルダに入れ、そのフォルダを前職のパソコンから削除することなく、退職したようで・・・。
参照:毎日新聞「フォルダー名「データどろぼう」で不正入手発覚

この元従業員をマヌケと言ってしまえばそこまでですが、転職時に営業秘密を持ち出すときには、色々“足”が付きます。

典型的なものはアクセスログ。
退職直前に日頃アクセスしない営業秘密にアクセスしたとか、業務とは考えられないほど多量の営業秘密を退職直前にダウンロードしたとか・・・。

私がセミナーで聞いた例では、退職直前に夜中こっそりとデータをダウンロードしている様を同僚に見つかったとか。
他にも、メールアドレスが記載された顧客データを転職先で使用してメールを送信したところ、この顧客データにテスト用の前職会社のメールアドレスが含まれており、そこにもメールを送ってしまい、営業秘密の持ち出し及び使用がばれたとか・・・。


この図は、INPITの「企業における営業秘密管理に関する実態調査」報告書のアンケート結果ですが、色々なルートで営業秘密の漏えいが認識されるようです。
今回の事件はたまたま見つけただけの様ですが、企業側も営業秘密の漏えいには敏感になっているので、 今後も営業秘密の漏えいは発覚しやすくなるでしょうね。

営業秘密、企業秘密、ノウハウ、似て非なる言葉

営業秘密と似たような言葉として、企業秘密やノウハウがあるかと思います。

営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性を満たす情報とのように、法的(不競法2条6項)にもその定義が明確になっています。

一方、企業秘密、ノウハウは法的にはその定義が明確になっていないと思います。

企業秘密は、営業秘密の上位概念とでもいうべき言葉でしょうか?
おそらく、企業が秘密としたい情報なのでしょうが、秘密管理性、有用性、非公知性を満たしているとは限らない情報も含まれると思います。
企業秘密は営業秘密に近い概念かと思われますが、「企業秘密=営業秘密」ではありません。

ノウハウは、ウィキペディアにもその項目がありますが、定義があいまいです。
企業によってもその使い方が異なると思われます。
ノウハウの中には秘密管理されているものもあれば、秘密管理されておらず、敢えて開示しているものもあるでしょう。一方、開示していないノウハウ、すなわち非公知性を有するのノウハウは企業が開示しないのであるから有用性を有している可能性が高く、秘密管理さえすれば営業秘密となるものでしょう。



ちなみに、私は、ノウハウという言葉を、特許明細書に記載すべきではない下位概念として用いることもあります。
例えば、拒絶された場合にその内容で補正しても進歩性の要件を満たさないような事項、グラフの縦軸及び横軸の値や、数値限定にも使えないような数値範囲等を個人的にはノウハウと呼ぶことがあります。
より具体的には、装置を構成する各部品のサイズ、その装置の動作に関する物理量、制御パラメータ、混合物の重量比等、これらの数値が他社に知られると、特許明細書に記載の技術をより簡易に再現できるものを、私はノウハウという場合があります。

そして、私の経験というか感覚では、特許出願を前提としたクライアントとの発明相談の場において、これは「ノウハウでしょうから明細書に記載することはやめましょう」となり、実際に明細書に記載しなかった「ノウハウ」がその後クライアント先で適切に管理されていないのではないかと思われます。
当然、「ノウハウ」とした情報の質にもよりますが、この「ノウハウ」はおそらく、発明者のパソコンやサーバのどこかに埋もれている可能性が高いと思います。
これでは、「ノウハウ」は営業秘密にはなり得ていない可能性が高く、「ノウハウ」が持ち出されても企業は文句は言えません。
さらには、特許出願をせずに、自社内でノウハウとされた技術に関しては、特許事務所に対して発明相談も行われないため、どのように管理されているか知る由もありません。

このように、「営業秘密」、「企業秘密」、「ノウハウ」は、各々意味合いが異なるものであり、これらの言葉を正しく使い分ける必要があると思います。
ただし、「企業秘密」は“秘密”と言っているために、営業秘密である可能性が高いとも思われます。
一方、「ノウハウ」は必ずしも秘密管理されているとは限りません。「ノウハウ」をどのように管理するのか、これを課題とするべき企業は多いのではないでしょうか。

2017年8月15日火曜日

営業秘密に関連したタイムスタンプの利用

タイムビジネス協議会のシンポジウム/セミナーのページに「知財保護のタイムスタンプとは」というセミナー資料がありました。
2016年の資料なので、そこそこ新しいものです。
ここに、営業秘密管理にタイムスタンプを用いるケースとして以下の3つが紹介されています。
これらのケースはトラブル対応を視点としたものです。
以前のブログ「タイムスタンプを使う目的」でも営業秘密管理にタイムスタンプを用いる目的について大まかに記載しましたが、細分化すると確かに上記セミナー資料の内容になるかと思います。

①他社との共同研究・開発 
②競合他社への人材流出による漏えい
③競合他社からの人材採用

①に関しては、他社に自社の営業秘密を開示する場合に、開示した営業秘密が自社のものであることを事後的に証明することを目的としたものと思われます。
共同研究・開発を行う企業や取引先との関係は、当然初めのころは良い関係が築かれているものですが、その後、関係が悪化する等により、トラブルが生じる可能性は少なからずあります。実際に民事訴訟でもそのような雰囲気を醸し出しているものもあります。
このような事態に陥った場合の対策として、トラブルになっている事項が技術に関するものであれば、自社技術を示した情報等にタイムスタンプを押しておくことは有効かと思います。
さらに対策を練るのであれば、他社から開示された情報にもタイムスタンプを押すことも考えられます。これにより、他社から何時どのような情報が開示されたかの証明にタイムスタンプを用いることができます。

営業秘密に関する問題点として、自社の営業秘密が他社に流出することも当然ながら、他社の営業秘密が自社に流入することも大きな問題となります。いわゆるコンタミですね。
自社技術と他社技術が自社内で混ざってしまうと、大きな問題が生じます。
これの回避策の一つとして、タイムスタンプは利用できると思います。


②に関しては、離職者が自社の営業秘密を持ち出した場合に、その営業秘密が何時から所有していたものであるかを証明することを目的としたものですね。

③に関しては、転職者が前職の営業秘密を持ち込んだ場合に、その営業秘密と同じ情報を既に自社で所有していたことを証明することを目的としたものですね。

やはり、行きつくところは自社が所有している情報が何かということを認識し、それを適切に管理するということに行きつくと思います。

そしてタイムスタンプを利用する場合に、重要なことは「何を目的とするか」を明確にすることだと思います。
情報にタイムスタンプを押す目的が明確でないと、タイムスタンプを押す行動が形骸化し、適切な情報に適切なタイミングでタイムスタンプを押すという行動がとれなくなると考えられます。
特に、営業秘密管理では、目的意識を持ち、何をどのように管理するかを明確にし、行動することが重要かと思います。

2017年8月12日土曜日

ブログをはじめて3ケ月-アクセスの傾向-

この営業秘密にだけ特化したブログをはじめて3ケ月。
営業秘密という、比較的ニッチな内容なため、アッサリとネタが尽きるかと思いきや、案外ネタは多く、ネタ切れまでもう少しかかりそうです。

そして、未だアクセス数は多いとは言えないものの、記事へのアクセス状況から皆さんが興味のある事の傾向が伺えます。
私が営業秘密に興味を持ったきっかけは27年の不競法法改正による刑事罰の強化ですが、刑事罰に関する記事は人気がありません。
やはり、刑事罰ともなると自身や自分の所属企業にとっては無縁のことと思われる方が多いのでしょうか。
私は27年法改正が産業界の要望もあってのことであり、興味を持たれ易い内容かと思っていましたので、少々意外でした。
<刑事罰に関する記事>
営業秘密保護に対する警察の取り組み
営業秘密の漏えいに関する近年の刑事罰
愛知製鋼の営業秘密漏えいの初公判
営業秘密における民事訴訟と刑事訴訟との関係



一方、アクセス数が多い記事は、“週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」”シリーズですね。
時事ネタはウケがいいのでしょうか?
ちなみに、“「文春砲」汚れた銃弾”でグーグル検索すると、このブログの記事が出てきます。

意外にアクセス数が多い記事が“農業”関係です。
“イチゴ品種の韓国への流出”をはじめに、私も農業と営業秘密の関係に興味を持ち、幾つか書きましたが、同じように興味を持たれる方が多いようですね。
農業分野は、技術を守るという視点では、特許とするよりも営業秘密とする方が親和性が高いようにも思えます。
しかしながら、農業の技術を営業秘密で守るということは、ほとんど浸透していないようです。
その理由に、“農業+営業秘密”でグーグル検索するとこのブログの“農業分野における営業秘密”が検索結果の一番上に来てしまいます。
この記事のアクセス数を考えると、うーん、喜ばしい事とは言えませんね。
 <農業に関する記事>
イチゴ品種の韓国への流出
農業分野における営業秘密
農業ICT知的財産活用ガイドライン

また、第四次産業革命やビッグデータに関する記事もアクセス数が多いです。
やはりこれから伸びる技術分野ですしね。
また、データの利活用に関しては近い将来、不正競争防止法の改正も行われる可能性が高いようです。
<第四次産業革命・ビッグデータに関する記事>
ビッグデータと営業秘密
第四次産業革命を視野に入れた不正競争防止法に関する検討
特許庁における知的財産分科会
データ利活用の促進に向けた不競法改正案


農業と営業秘密との関係や、データ保護に関することは、今後も追いかけようと思います。

そして、特許と営業秘密との関係を記した記事もそこそこアクセス数が多いですね。
弁理士の方のアクセスも多いかと思いますし、近年は特許出願も減少傾向にありますからね。
<特許と営業秘密との関係に関する記事>
特許出願件数の減少から考える営業秘密
営業秘密の3要件:有用性 -特許との関係-
営業秘密の3要件:有用性-特許との関係- その2

ざっとこんな感じです。
これからもボチボチやっていきます。


2017年8月9日水曜日

営業秘密の流入出を恐れると転職できない??

私が営業秘密に興味を持ちだしたころ、営業秘密の流入出をおそれると転職できないのではないかと、問われたことがあります。

①転職者は、自身の知識や経験が前職の会社の営業秘密である可能性を恐れ、転職先で前職と同様の仕事ができないのではないか?
②企業側は、転職者の知識や経験が前職の会社の営業秘密である可能性を恐れ、転職者に前職と同様の仕事をさせられないのではないか?

そのころは、もしかしたら、営業秘密の保護はそういう側面もあるのではないかと思いましたが、今では、それは適当ではないと考えています。

そもそも、営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たすものです。
これを満たさない情報は、営業秘密としての保護は受けられません。
ここで、①に関しては、前職の会社が営業秘密の管理を適正に行っていれば、転職者は前職の営業秘密が何であるのかを認識できるので、転職者はその営業秘密を転職先で開示しなければいいだけです。
すなわち、転職者は、自身の能力と前職の営業秘密とを峻別できるので、前職の営業秘密を転職先で開示、使用することはないと考えられます。
ちなみに、転職者が前職で身に付けた通常の知識や経験は、そもそも非公知性を有していないと考えられ、営業秘密には該当しないと考えられます。
もし、前職の会社が、転職者の知識や経験のうち非公知性及び有用性を満たす「何か」を営業秘密としたいのであれば、それを営業秘密として管理して転職者に認識させる必要があります。

裏を返すと、企業は守りたい情報を営業秘密として管理しないと、守りたい情報を転職者に自由に持っていかれることになります。また、従業員に対して、営業秘密を理解してもらわないと、理解が不十分な転職者に営業秘密を持っていかれ、不要な争いを招きかねません。
例えば、営業秘密の理解が不十分な従業員は、もしかすると、その営業秘密であっても「自身が開発した技術に関するものであるから持ち出しても良い」と考え、転職時に持ち出すかもしれません。


一方、②に関しては、こちらの方が懸念が大きいかもしれません。転職者が営業秘密を十分に理解していたら、前職の営業秘密を持ち込むことはないでしょう。しかしながら、転職者が営業秘密を理解していない場合には、前職の営業秘密を転職先に持ち込む可能性があります。
これを防ぐためには、転職者に対して、転職直後に前職の営業秘密を持ち込まないとの誓約書に署名を求める、営業秘密を理解していないようであるならば転職直後に営業秘密に関する教育を行う等を行うことが考えられます。
なお、規模の大きい企業に限ることかもしれませんが、転職してしばらくの間(例えば数か月)、転職者を前職の職務とは関係ない部署に配属させ、その後本来従事してほしい職務(前職の職務と関係ある職務)に配属させるところもあるようです。これは、時間を置くことで、万が一前職の営業秘密が持ち込まれたとしても、既に非公知性を失っている等の状態となっていることを期待してのことだと思います。

あらためて思うこと、それは「営業秘密」が何であるかを個々が正しく認識することだと思います。
「営業秘密」=「会社が所有している情報(企業情報)」ではありません。
「営業秘密」=「秘密管理性、有用性、非公知性を備える情報」です。
企業は営業秘密に関する認識を正しく持ち、「自社から流出してはいけない情報」と「他社から流入してはいけない情報」とを峻別することで、離職者や転職者にも対応できるかと思います。

2017年8月7日月曜日

営業秘密における民事訴訟と刑事訴訟との関係

前回のブログでも書いたように、最近では営業秘密の漏えい元企業が刑事訴訟の後に民事訴訟を起こすという流れがあります。

逆の場合は少ないかと思いますが、例えば東芝とSKハイニックスとの間で起きた半導体製造方法の漏えい事件は、東芝がSKハイニックスに対して民事訴訟を起こした後に、情報漏えいした者(犯人)を刑事告訴しているかと思います。

刑事訴訟の後に民事訴訟を起こした事件として下記のものがあります。
日本ペイント事件
 日本ペイントの営業秘密(塗料「水性エンケース」の情報をUSBに複製)を持ち出したとして平成28年2月16日逮捕
自動包装機械事件
 原告会社の元従業員4人が競合他社へ営業秘密(自動包装機の設計図)を持ち出して転職。
 被告人4名、懲役1年2ヶ月~2年6ヶ月(執行猶予3年又は4年)、罰金60万円~100 
 被告会社 罰金1400万円(横浜地判平成28.1.29)
 営業秘密の漏えい事件で初めて被告会社に刑事罰が科された事件
エディオン営業秘密事件
 原告会社(エディオン)の元部長(被告)が転職先の上新電機に営業秘密
 (リフォームに関する商品仕入れ原価や粗利のデータ等)を漏えい。
 懲役2年(執行猶予3年)、罰金100万円(大阪地判平成27.11.13)



このように、刑事告訴と民事訴訟をセットにするパターンが増えた背景には、転職に伴い営業秘密を漏えいする事件が増加したからではないでしょうか。
刑事告訴されて有罪が確定した事件の一覧を参照すると、以前は売却する目的で顧客情報や技術情報を持ち出しした事件が多かったようですが、近年は転職に伴い営業秘密を転職先に持ち出す時間の割合が増加していると思います。
営業秘密の売却では、売却先が名簿業者であったりすると、そもそも名簿業者の企業規模も小さく、既に存在しなくなっている場合もあったでしょうから、高額な損害賠償の請求や営業秘密の使用の差し止めにあまり意味がないと思われます。
一方で、転職先企業に営業秘密を漏えいさせた場合は、その転職先企業で営業秘密を使用することも想定され、かつ高額な損害賠償に対する支払能力もあるでしょう。
こういう背景から、刑事告訴と民事訴訟とがセットになるパターンが増えたとも考えられます。

また、前回のブログでは刑事告訴を先に行うメリットとして、漏えい元企業のメリットについて述べましたが、刑事告訴を先に行うメリットは、転職者等を介して営業秘密が意図せずに流入した企業にもあると考えられます。

例えば、日産自動車の元従業員が日産自動車の営業秘密を転職先であるいすゞ自動車に持ち込んだ例があります。
この場合、いすゞ自動車は、日産自動車の営業秘密を使用したと疑われる立場にあります。
しかしながら、刑事事件の取り調べの過程において、いすゞ自動車において営業秘密の使用はなかったことが分かったようです。
参照記事:http://www.asahi.com/articles/ASJB0513VJB0ULOB015.html
刑事事件においてそのような判断がなされたのであれば、日産自動車もいすゞ自動車に対して民事訴訟を提起する可能性は相当低いでしょう。
もし、日産自動車が民事訴訟を先に提起した場合、いすゞ自動車は日産自動車の元従業員と共に被告の立場として自らの潔白を立証する必要があったでしょう。
すなわち、先に日産自動車が先に刑事告訴をし、それが確定したとしたことにより、いすゞ自動車は民事訴訟において被告となることを回避できたとも考えられます。
このように、営業秘密が意図せずに流入した企業は、刑事事件となった場合には、自らの潔白を証明するためにも、警察に対しては協力的な態度で臨むに限ると思われます。

2017年8月3日木曜日

日本ペイントが菊水化学に対して民事訴訟を提訴

先月、営業秘密の漏えいに関して日本ペイントが菊水化学で民事訴訟を提訴したようです。
日本ペイントのプレスリリース
産経ニュース

この事件は、日本ペイントの元執行役員が菊水化学へ転職する際に、日本ペイントの営業秘密を持ち出し、菊水化学で開示・使用したというものです。
この元執行役員は既に逮捕・起訴されています。
産経ニュースを参照すると、日本ペイントは菊水化学と元執行役員に対して約9億6000万円の損害賠償と12製品の製造・販売の差し止めを求めているようです。

ちなみに、このニュースが報じられたのは7月15日(土)であり、週明けの株式市場において菊水化学の株価は前日終値447円であったものが435円に下がっています。下落率は大きくないもののこの日の出来高は42,300であり、7月14日の出来高が12,100であることやその前後日の出来高を鑑みると、この報道が悪材料として株価にも影響を及ぼしているとも考えられます。
・菊水化学の株価時系列
なお、菊水化学に転職した元執行役員が逮捕されたとの報道がされたときは、菊水化学の株価は前日460円(2016年2月16日)であったものが当日405円(2016年2月17日)とのように12%も下落しており、株価にもかなりの影響を与えています。


このように、最近の営業秘密関連の訴訟の特徴の一つに、営業秘密を漏えいさせた者(犯人)を刑事告訴した後に、その犯人と共に営業秘密を使用した者(転職先企業)に対して民事訴訟を行う、という傾向があります。
これは、請求人(営業秘密の漏えい元企業)にとって、営業秘密の漏えいの立証を警察側が行ってくれるというメリットがあると思われます。すなわち、刑事訴訟において営業秘密の漏えいの事実及び犯人が確定(ほぼ確定)すると、民事訴訟ではその争いを略行うことなく、損害賠償請求や差止請求の争いのみとなることが期待できます。
特に、営業秘密の訴訟では、秘密管理性、有用性、非公知性の有無が大きな論点になりますが、刑事手続きの段階でそれが認められているので、漏えい元企業は民事訴訟に関して時間及び費用の大幅な削減が期待できると思われます。
これは、漏えい元企業にとって大きなメリットであると考えられ、営業秘密の漏えい元が刑事告訴も行う場合には、刑事訴訟の次に民事訴訟という流れができつつあると思われます。

2017年8月2日水曜日

パテント投稿論文の掲載

私が今年のパテントに投稿し、4月に掲載された「営業秘密における有用性と非公知性について」が日本弁理士会のホームページで閲覧可能になっていました。
興味のある方はどうぞ。

なお、この論文の内容は下記の過去のブログでも一部重複しています。
営業秘密の3要件:有用性 -特許との関係-
営業秘密の3要件:有用性-特許との関係- その2
営業秘密の3要件 非公知性 -リバースエンジニアリング-
営業秘密の3要件 非公知性 -リバースエンジニアリング- その2



そういえば、パテントに記事を投稿しても、原稿料の支払いはなくなったようですね。