ラベル セミナー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル セミナー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年4月4日日曜日

IPA発表の「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」と警察庁発表の資料

先日、IPA(情報処理推進機構)から「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」が発表されました。この前回の調査は2017年に発表されたものであり、3年を経て新たに発表されたものです。

この調査で私が気にしているものは営業秘密の漏えいルートに関するアンケートです。
2020の実態調査では下記のような結果となっており、IPAでは「情報漏えいルートでは「誤操作、誤認等」が21.2%と前回調査に比べ約半減。その一方で「中途退職者」による漏えいは前回より増加し36.3%と最多(報告書P28)。 」とのように述べています。


「「誤操作、誤認等」が21.2%と前回調査に比べ約半減。」とありますが、私はちょっと違うのではないかと思います。
この「誤操作、誤認等」に対応する前回調査のアンケート項目は「現職従業員等のミスによる漏えい」です。そして今回調査では「現職従業員等のルール不徹底による漏えい」がアンケート項目に新設されました。
すなわち、前回調査のアンケート項目「現職従業員等のミスによる漏えい」が「誤操作、誤認等」と「ルール不徹底」の2つに分かれたのではないでしょうか?この2つの割合いを合算すると40.7%であり、前回調査の「ミスによる漏えい」43.8%とほぼ同じであす。

一方で、IPAが述べているように、中途退職者による漏えいは前回が28.6%であったものが今回は36.3%とのように増加しています。これは実際に中途退職者による漏えいがそのものが増加したのか、企業側の認識が高まったのかは判然としません。しかしながら、数値としては増加していることは事実です。

さらに注目したい結果は、国内の取引先や共同研究先を経由した(第三者への)漏えい」が前回の11.4%から2.7%へ大幅に減少したということです。
これに関連して、近年、大企業等が優越的地位を利用して中小企業等の知的財産の開示を強要するといったことに対する懸念を経済産業省や公正取引委員会が示し、報告書を作成したり、最近では「スタートアップとの事業連携に関する指針」を発表したりしています。
「国内の取引先や共同研究先を経由した(第三者への)漏えい」の減少は、こういった行政の活動の結果として表れているのではないかと思います。

また、「契約満了後又は中途退職した契約社員等による漏えい」も前回の4.8%から1.8%へ大幅に減少しています。契約社員等には企業が直接雇用した人の他に派遣社員も含まれるのではないかと思います。減少の理由は、契約社員等に与えるアクセス権限を減らしたことが考えられます。また、派遣社員に対しては、派遣会社による派遣先企業の営業秘密漏えい防止等の教育活動があるのかもしれません。

次に、警察庁生活安全局から「令和2年における生活経済事犯の検挙状況等について」が発表されました。
これによると、営業秘密侵害事犯の検挙事件数の推移は下記のとおりであり、絶対数としては少ないものの増加傾向にあります。
また、相談受理件数の推移は前年に比べて減少しています。



相談受理件数が減少している理由は分かりませんが、営業秘密の漏えいそのものが減少しているとは思えませんので、企業側が相談を行うことを躊躇するような理由があるのかもしれません。
企業にとっては、営業秘密の漏えいを刑事告訴することについてメリットがないと考え、警察対応等で本来の業務が滞ると考える場合もあるでしょうし、刑事告訴により広く報道がされる可能性もあり、それを良しとしない考えもあるでしょう。
一方で、刑事告訴することにより、警察が証拠収集をするので、民事訴訟において警察が収集した証拠を使用するという考えもあります。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2020年7月28日火曜日

9月の大阪発明協会主催の営業秘密研修会はウェブ形式になりました。開催日10月9日

既に告知していた9月11日に開催予定でした営業秘密研修会はいったん中止となりました。
この新型コロナが再び広まりつつある状況下では致し方ないですね。

とはいえ、既に数名の参加申し込みがあったようです。
この状況下でも私の研修会に興味を持ち、参加申し込みをしてくださった方、企業様もいらっしゃたことはうれしい次第です。

しかしながら、10月9日にウェブ形式での開催となりました。
関西方面以外の方の参加も可能になるのかな?
もしより多くの方の参加があれば、結果オーライでしょうか。


弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年3月26日木曜日

知財管理誌に掲載された寄稿文のpdfデータ

先月の知財管理誌に寄稿した「技術情報が有する効果に基づく裁判所の営業秘密性判断」のpdfデータへのリンクを設定しました。
知財管理誌のpdfデータは、知財協の会員の方しかホームページから見ることはできませんが、知財協の会員以外の方で興味がある方は上記リンクからアクセスしてください。

この寄稿文では、従来技術に対して優れた効果等を有しない技術情報は、営業秘密としての有用性(又は非公知性)を有しない場合について述べています。
実際、このような裁判例が散見されるためにこの寄稿文を書いたのですが、個人的にはこのような裁判所の判断には疑問を感じています。

企業から情報が不法に持ち出された場合には、その営業秘密性は非公知性を重視すべきであって、有用性や秘密管理性は厳密に判断するべきではないと私は思います。
企業から情報が不法に持ち出されたということは、当該情報を持ち出した人物はこの情報に価値があると考えていることに他なりません。もし、価値がないのであれば、持ち出す必要は無いからです。
にもかかわらず、秘密管理性や有用性を厳密に判断することにより、不正に情報を持ち出し、さらには持ち出した情報を使用しても、不法行為とはならない可能性が高くなります。

例えば、非公知の技術情報であれば、技術情報ということのみで有用性を認めても良いのではないでしょうか。また、非公知と言うことで秘密管理性も認めてよいのではと思います。
さらに、顧客情報や医療カルテ等、個人情報に類する情報や、取引先の情報等、社会通念上、企業において秘密としていると思われる営業情報も、その秘密管理性を厳しく判断する必要はなく、その情報をもって経済的な有用性も有していると判断されてもよいのではないでしょうか?

一方で、公知となっている情報であれば、そもそも誰でも入手可能な情報であるので、当該情報を持ち出したとしても不法行為とはならないという判断は妥当であると考えます。

とは言っても、営業秘密侵害は民事的責任のみならず、刑事的責任も問われるものであるため、営業秘密の3要件の判断を甘くすると、より多くの人が罪に問われることにもなり得るでしょう。このため、裁判所は営業秘密の3要件をある程度厳密に判断しているのではないかとも思います。


今回の寄稿文によって、技術情報を営業秘密とする場合における、秘密管理性、有用性、非公知性に関する留意すべきことを、私なりにそれぞれまとめることができたと考えています。
しかしながら、3要件に対する裁判所の判断は今後変わってくるかもしれません。それはより厳密に判断するのか、甘く判断するのかは分かりませんが。このため、裁判例のウォッチングは重要な作業かと思います。

また、今年の9月末ぐらいに大阪で営業秘密に関する研修を行う予定です。
この研修は弁理士以外の方も参加可能です。
内容は、昨年の11月に弁理士会で行った研修内容+αです。
研修日が近くなったら、またアナウンスします。
もし最悪、コロナの影響が長引けば、キャンセルになるかもしれませんが・・・。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2019年11月28日木曜日

11/25に開催した弁理士会の営業秘密研修を終えて。

先日、日本弁理士会関東会主催の弁理士向けの研修会「技術情報を不正競争防止法の営業秘密とした民事訴訟における裁判所の種々の判断」を行いました。
多くの方にご聴講いただきありがとうございました。

研修の時間は2時間であり、最後のほうは少々駆け足ぎみで終わりましたが、営業秘密として重要な要素である三要件(秘密管理性、有用性、非公知性)については、技術情報を営業秘密とする視点から可能な限りの説明はできたのではないかと思います。

また、研修後に数名の方から質問も頂きました。
やはり、研修後に質問していただくと、こちらも勉強になるので大変うれしいです。
中には、私と同様の疑問をお持ちの方もいらっしゃり、そのような疑問が営業秘密管理における不明瞭な点として再認識できます。

どの企業でも秘密としている情報は少なからずあり、情報の秘匿化の重要性は多かれ少なかれ感じていることと思います。
しかしながら特許等に比べて、営業秘密はその詳細は未だ広く認識されているとは言い難いということが現状だと思っています。また、そもそも営業秘密が知的財産であるという認識でない人も多いのではないでしょうか。

さらに、技術系の企業においては、特許出願しない発明(公開しない技術情報)もあり、そのような技術情報の確実な管理は必要不可欠です。
一方で、秘匿化している技術情報をビジネス戦略上、他社に開示する場合もあるでしょう。さらには、他社や大学等の公的な研究機関と共同開発を行った結果、新たに創出される技術情報もあるでしょう。
このような場合に、秘密管理(秘密保持契約等)をどのように行うべきかを課題に感じている企業もあるかと思います。

そして、今後問題として生じると思われる営業秘密の帰属、特に秘匿化された職務発明は会社帰属なのか、従業員帰属なのか?不正競争防止法2条1項7号、及び8,9号をどのように解釈するべきか。

このようなことも、今後、まとめていく必要を感じています。

またどこからかお声がかかれば、このような研修を行えればと思います。


http://www.営業秘密ラボ.com/
弁理士による営業秘密関連情報の発信

2017年10月18日水曜日

営業秘密セミナーご参加ありがとうございました。

昨日横浜において告知していた営業秘密セミナーを開催し、無事終了しました。
ご参加いただいた方々にとって、営業秘密の保護や管理について一助となれば幸いです。
また、複数の企業の方ともお話しでき、あらためて気づかされること等があり、私にとっても大変有意義なものでした。

今後も、このような営業秘密セミナーを開催しようと考えています。
今回ご参加いただけなかった方も次回にぜひご参加ください。
今後の営業秘密セミナーの開催は本ブログ等で告知いたします。


また、営業秘密の概要を知りたい、会社内で営業秘密の基本的な知識を共有したいという方は、ご連絡ください。
今回の営業秘密セミナーと同様の内容であれば、基本的に無料(遠方の場合は交通費程度)にて御社内でセミナーを開催させて頂きます。

今後も営業秘密に関する情報や話題を発信いたします。
よろしくお願いします。