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2022年9月18日日曜日

判例紹介:新規製品の開発・製造委託の取りやめ 宅配ボックス事件(秘密管理性)

自社製品の開発・製造を他社に委託することは一般的に行われていることです。しかしながら、実際に製造・販売までに至らず、途中で取りやめになることも少なからずあるでしょう。
今回紹介する判例(東京地裁令和4年1月28日判決 事件番号:平30(ワ)33583号)は、そのような事例についてのものです。

本事件の概要は以下の通りです。
①平成29年5月8日頃に原告が被告から、被告が販売する樹脂製の新規の宅配ボックスの開発・供給の引き合いを受ける。
②初回ミーティング後に、本件新製品の企画が外部漏洩するおそれを極力なくすため、被告は原告に対して機密保持契約の締結を提案し、平成29年5月19日までにその契約書の雛形を電子メールに添付して送信した。その後、被告は被告の押印済みの機密保持契約書を原告に2部郵送し、原告の押印済みのものを1部返送するように依頼した。原告は、原告の押印済みの同年6月20日付けの機密保持契約書を1部保持している。
③平成29年9月4日に原告の従業員Aは、Mタイプの製品に係るCADシステムのデータである本件データ1を、同月7日にSタイプの製品に係るCADシステムのデータである本件データ2を、それぞれ被告の従業員Bに電子メールで送信した。
④平成29年7月から9月初めにかけて、被告作成のモックアップの試験が行われ、原告と被告との間で、納期、コスト、仕様等の点で意見の食い違いがあり、仕様変更を含めた本件新製品の製造に関する打合せが繰り返し行われた。
⑤平成29年9月18日に、原告は本件新製品の製造費用についての同月14日付けの見積書を電子メールに添付して送信した。原告と被告とは、本件新製品の組立てに要する費用を原告が負担するか否か等の条件面での意見が一致せず、被告は本件新製品の製造を原告に発注するのを取りやめることとし、原告と被告との間での本件新製品の開発プロジェクトは同月中に終了することとなった。
⑥平成29年10月9日に、原告は本件プロジェクトが終了したことを受けて、被告に対し,本件新製品の「設計費・機会損失額」として合計1699万2800円の支払を求める旨の見積書を電子メールに添付して送信するものの、「設計費・機会損失額」の支払義務の有無及び額については合意に至らなかった。
⑦少なくとも平成30年7月25日頃から令和2年3月末までの間、被告は、被告製品を製造し、被告製品の譲渡を行った。

以上のような経緯があり、原告の営業秘密である本件データ1,2を使用して被告が被告製品を生産、譲渡及び譲渡のための展示を行ったことは、不正競争に該当するとして、原告が被告に対して差し止めや損害賠償を求めました。
この事件の結論からすると、被告による被告製品の生産等は、原告の営業秘密である本件データ1,2を不正に使用したとして、原告による差し止めや損害賠償請求(610万1962円)が認められました。


次に、本件データに対する秘密管理性、有用性、非公知性に対する裁判所の判断についてです。本事件は原告の勝訴となっているので、当然、これらはすべて裁判所によって認められています。

秘密管理性について、裁判所は「原告内部における秘密管理の状況」、「被告との関係における秘密管理の状況」という2つの視点から判断しています。

「原告内部における秘密管理の状況」について、裁判所は下記のことから本件データの秘密管理性を認めています。
①従業員に対して就業規則によって機密保持義務を課していた。
②技術的アクセス制限を含む社内ネットワークを構築していた。
③技術情報をサーバ上の所定のフォルダに保存し、アクセス制限を設けていた。
④本件データも技術部用のフォルダに保管されていた。

次に「被告との関係における秘密管理の状況」についてです。
ここで、本件データに対する「被告との関係における秘密管理」に対して、被告は2つの主張を行ったようです。
①被告は、原告から押印済みの本件機密保持契約書の返送を受けなかったとして、本件機密保持契約は締結されていないと主張。
②本件データには、これが営業秘密であることの記載や閲覧のためのパスワードの設定はされておらず、また、本件データを送付した電子メールの本文にも本件データが営業秘密である旨の記載はされていなかった。

①の機密保持契約についてですが、裁判所は以下のようにして原告と被告との間で機密保持契約は成立していたと判断しています。
❝本件プロジェクトが終了するまでに,被告から原告に対して本件機密保持契約書の返送がないと指摘したり,原告が被告に本件機密保持契約の締結に応じないとの態度をとったりしたとの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,本件機密保持契約は,遅くとも原告が保管する本件機密保持契約書(甲4)の作成日である平成29年6月20日頃までには成立していたものと認めるのが相当である。❞
②については、本件データには確かに営業秘密であることを示す措置は直接的に行われていませんでした。しかしながら、裁判所は、下記のように、原告と被告との間における本件データの秘密管理性を認めています。
❝原告と被告との間でやりとりされた本件新製品に関する企画書,図面,見積書等には秘密である旨が明示されているものとないものがあったところ,前記イ(ウ)のとおり,原告が被告に対して送付したモックアップ用の別の3Dデータについて,秘密である旨の表示がなくても,これを受領した被告従業員が秘密であることを前提とした行動を取っていたものである。そうすると,前記イ(エ)のとおり,本件データの送付の際にこれが秘密である旨が明示されていなかったことを考慮しても,本件データを受領した被告において,本件データが秘密として管理されていることは容易に認識可能であったというべきである。
なお、上記の「秘密である旨の表示がなくても,これを受領した被告従業員が秘密であることを前提とした行動を取っていた」とは、以下のような行動です。
3Dデータの送信の際に原告はこれらのデータが秘密である旨の表示はしていなかったが,同月27日に送信されたデータを受領した被告従業員Cは,同月29日,原告従業員のAに対し,「頂きました図面データですが,先日のお打ち合わせの際にご説明させて頂きましたIOT化に向け,センサーの組み込みや通信機器の設置場所の検討にあたり,パートナーに共有させて頂いても宜しいでしょうか?/先方とはNDAを締結済みです。」と尋ねる電子メールを送信した(甲6,8,13,乙20,21)。❞
すなわち、秘密であることの表示がない3Dデータに対して、被告従業員Cはそれが秘密であるとの認識のもとにパートナーと共有しているのであるから、この3Dデータと直接的に関係のある本件データに対しても秘密であることは認識できていた、とのように裁判所は判断しています。

営業秘密とする情報に秘密管理性を求める理由は、当該情報の保有者に無断で当該情報を持ち出したり、使用等すると不正競争行為となる、ということを当該情報に触れた者に予測させるためです。
そのように考えると、たとえ、本件データに直接的に秘密である旨の表示が無くても、原告から被告への本件データを送信前後における他のデータの秘密管理の状態を考慮して総合的に判断することは妥当であると思われます。
また、新規製品の開発・製造の委託においては、様々なデータが取引先との間で行われます。その場合に、一部のデータに対して秘密である旨の表示やパスワード管理等が不十分だからとして、当該データの秘密管理性が否定されてしまうと、それは営業秘密の保有者にとって不合理であるといえるでしょう。
とはいえ、やはり、このようなトラブルを未然に防止するためにも、自社の営業秘密を他社に開示する場合には、その秘密管理性が保たれるように十分な注意が必要です。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2022年7月27日水曜日

判例紹介:愛知製鋼磁気センサ事件の刑事事件判決(秘密管理性)

前回紹介した愛知製鋼磁気センサ事件の刑事事件判決(名古屋地裁 令和4年3月18日判決 事件番号:平29(わ)427号)の続きです。本事件は、控訴されなかったため、被告人の無罪が確定しています。

本事件では、下記㋐~㋖である「本件実開示情報」についての秘密管理性の判断をしています。「本件実開示情報」とは、被告人が株式会社dの従業員eに実際に説明した、ワイヤ整列工程に関する情報のうち、検察官主張工程と共通する部分であり、愛知製鋼(b社)が保有するとしている技術です。
❝㋐ チャックがワイヤをつまみ,基板上方で右方向に移動する(前記のとおり,3号機では,ボビンを正転させて,なるべく張力を掛けずにワイヤを送り出しており,チャックが一定の張力を掛けながらワイヤを右方向に移動するとはいえないので,「一定の張力を掛けながら」というのは共通して存在する工程とはいえない。)。
 ㋑ ワイヤに張力を掛けたまま仮固定する。
 ㋒ 基板を固定した基板固定台座を上昇させ,ワイヤと基板の溝等の位置決め調整を行う(前記のとおり,bのワイヤ整列装置は,本件当時,「仮固定したワイヤを基準線として位置決め調整」を行っていたとはいえない。)。
 ㋓ 基板固定台座を上昇させ,ワイヤを基板の溝等に挿入させ,基板固定治具に埋め込まれた磁石の磁力で仮止めする。
 ㋔ ワイヤを切断する(前記のとおり,3号機では,厳密には基板の左脇で切断していたとはいえないし,機械切断ではない。)。
 ㋕ 基板固定台座が下降し,次のワイヤを挿入するためにY軸方向に移動する。
 ㋖ 以下㋐ないし㋕の工程を機械的に繰り返す。❞
そして、裁判所は、上記本件実開示情報に対して、下記のように「本件実開示情報に非公知性が認められるという見解を採るのであれば」という条件のもと、本件実開示情報の秘密管理性を認めています。なお、裁判所は、本件実開示情報の非公知性は認めていません。
❝以下に述べるようなbにおけるワイヤ整列装置の管理状況,f等との間の秘密保持契約の内容等からすると,bは,本件当時,ワイヤ整列装置に関する技術情報を秘密として管理していたと認められ,仮に,本件実開示情報に非公知性が認められるという見解を採るのであれば,本件実開示情報を秘密管理していたと認められる。❞
ここで、上記ワイヤ整列装置の管理状況は、以下のように認定されています。
 ❝⑴  ワイヤ整列装置に関する管理状況
 本件当時,1号機ないし3号機は,以下のように管理されていた。
 ア 1号機は,br工場技術センターのクリーンルーム内に保管されていた。
 イ 2号機と3号機は,本件工場のクリーンルーム内に保管されていた。
 ウ 上記各クリーンルームには,本件当時,電子錠が設置され,そこに立ち入るには,関係する特定の認証カードが必要とされていた。❞
これに対して、弁護人は以下のように主張しています。
 ❝弁護人は,①本件実開示情報は,経済産業省が作成した「営業秘密管理指針」にも規定される,営業秘密としての保護の対象となる情報とそうでない情報とを明確に区別するための大前提としての紙媒体等による管理がされていない,②bは,「機密管理規程」(弁21)に従った機密管理措置を執っていないなど,本件実開示情報を秘密保持する意思がなかったなどと指摘し,本件実開示情報に秘密管理性はない旨主張する。❞
一方、裁判所は、下記の理由により、ワイヤ整列装置の管理状況の点から本件実開示情報の秘密管理性を認めています。
❝①については,「営業秘密管理指針」の作成主体である経済産業省は,同指針について,一つの考え方を示すものであり,法的拘束力を持つものではないと明言している。・・・bは,1号機ないし3号機をクリーンルーム内に保管し,特定の認証カードを所持する者以外の立入りを制限する措置を講じていたのであるから,「営業秘密管理指針」に照らしても,1号機ないし3号機の秘密管理性が失われるような問題があるとまではいえない。❞

しかしながら、この裁判所による秘密管理性を肯定する判断は甘すぎるように思えます。
営業秘密は必ずしも紙媒体等により管理される必要はありませんが、「営業秘密としての保護の対象となる情報とそうでない情報とを明確に区別する」ことは、従業員等による「予見可能性」の点から必要です。しかしながら、裁判所が認定するような「特定の認証カードを所持する者以外の立入りを制限する措置」程度では、従業員等に「予見可能性」を与える管理とは言えないと思えます。
「予見可能性」を与えるためには、例えば、紙媒体で営業秘密を管理する場合には、㊙マークを付けたり、施錠可能なキャビネットに保管します。また、デジタルデータで営業秘密を管理する場合でも㊙マークを付けたり、パスワード管理を行います。

一方、本事件のワイヤ整列装置そのものは、装置全体が営業秘密であるということはありえず、装置の多くの部分は公知技術で構成されており、その一部が営業秘密とされる技術情報で構成されるものでしょう。さらに、装置が保管されているクリーンルーム内には他の装置等も保管されている可能性があり、そのような状況で、たとえクリーンルーム内の立ち入りを特定の認証カードを所持する者のみに制限したとして、「営業秘密としての保護の対象となる情報とそうでない情報とを区別」して認識できる者が現実的にいるのでしょうか?
せめて、ワイヤ整列装置において営業秘密とする技術が用いられている部分に㊙マークが付されていれば(一般的ではないと思いますが)、営業秘密が用いられる部分を従業員も認識できますが、そのような主張もありません。すなわち、本事件において、営業秘密と主張する情報又はそれが化体する装置そのものに秘密であることの表示はありません。

ここで、民事訴訟ですが生産菌製造ノウハウ事件(東京地裁平成22年4月28日判決 平成18年(ワ)第29160号)において被告は、下記のように秘密管理性を否定する主張を行っています。
❝コエンザイムQ10研究者以外の原告の従業員であっても、本件生産菌Aに容易に触れる機会があり、また、本件生産菌Aが保管されている冷凍庫に内容物が秘密であることの表示がないことなどから、それが秘密であることを認識できる状況にはなく、本件生産菌Aは秘密として管理されているとはいえない❞
これに対して、原告は、本件生産菌Aの種菌は施錠可能な2台の冷凍庫に保管されていることや、「特定の認証カードを所持する者以外の立入りを制限する措置」と同様の管理体制の他、複数の管理体制を主張することで、その秘密管理性が認められました。

一方、「CONFIDENTIAL」等の表記があるハンドブックに記載された原告主張の営業秘密の秘密管理性が認められなかった事件として、接触角計算プログラム事件(知財高裁平成28年4月27日判決 平成26年(ネ)10059等)があります。
この事件は、本件ハンドブックには表紙中央部に「CONFIDENTIAL」と大きく印字され、各ページの上部欄外には「【社外秘】」と小さく印字されていたものの、下記理由(一審判決)により本件ハンドブックに記載の原告アルゴリズムの秘密管理性を認めませんでした。
❝原告アルゴリズムについては,本件ハンドブックにおいて,どの部分が秘密であるかを具体的に特定しない態様で記載されていたことなどからして,営業担当者が,営業活動に際して,本件ハンドブックのどの部分の記載内容が秘密であるかを認識することが困難であったと考えられるのであって,このことからしても,秘密として管理されていたと認めることはできない。❞

このように、本来、営業秘密として秘密管理性が認められるためには、営業秘密とされる情報が従業員等に認識可能なように管理されなければなりません。しかしながら、愛知製鋼磁気センサ事件ではそのような管理はされていないように思えます。

また、裁判所は、下記のように愛知製鋼(b社)と他社(n社等)との間で秘密保持契約を締結したことによっても秘密管理性を認めています。なお、下記の②は、弁護人による「bは本件実開示情報を秘密保持する意思がなかった」との主張に対応します。
❝②については,確かに,bは,ワイヤ整列装置に関する技術情報について,「機密管理規程」に従った機密管理措置を執っていたわけではない。しかし,bは,本件の約2か月前にも,nとの間で,ワイヤ整列装置に関する技術情報について秘密保持契約を締結するなどしていた。また,その技術情報が化体した1号機ないし3号機を,機密管理していた。そうすると,仮に,本件実開示情報に非公知性が認められるという見解を採るのであれば,bにおいて,本件実開示情報を秘密保持する意思があったと認められる。
秘密保持契約は、秘密管理性を裏付ける重要な証拠となり得ますが、秘密保持契約に基づく秘密管理意思は契約締結者に対してだと考えられ、民事訴訟においてそれは厳密に判断されています。

そうすると、例えば、愛知製鋼が他社との間でワイヤ整列装置に関する技術情報について秘密保持契約を締結したとしても、その秘密管理意思は他社に対してのみ示されるものであり、それによって従業員にも秘密管理意思を示したとする裁判所の判断には疑問が生じます。

以上ことから、本事件における裁判所の秘密管理性判断はとても甘いものであり、妥当な判断であったのか疑問に思えます。このため、営業秘密に対する秘密管理がこの程度のもので良いと考えることは非常に危険であり、この判例における秘密管理を参考にしない方がよいでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年2月7日木曜日

営業秘密管理指針の改訂版が公開されました。リバースエンジニアリングの視点から

営業秘密管理指針が本年度の不正競争防止法のデータ利活用に関する改正を受けて改訂され、それが先月、経済産業省のホームページで公開されました。

営業秘密管理指針(最終改訂:平成31年1月23日)

改訂個所はあまり多くありませんが今回の改訂では非公知性の説明に、自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失に関する記載が裁判例と共に追加されています。

自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失は、技術情報を営業秘密理とするうえで非常に重要な事項であると私自身も考えており、このことが営業秘密管理指針に追加されたことは好ましいことだと思います。

しかしながら、個人的にはもう少し記載内容を充実させてもよかったかもしれません。
技術情報を営業秘密として管理するか否かの判断は、この自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の可能性の有無が重要な判断材料となるためです。
もし、自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性が喪失する技術情報であれば、当該技術情報を秘密管理していても、裁判において営業秘密とは認められません。



このような技術情報をどのように“知財”として管理するのか?

裁判所が営業秘密として認めないからと言って、当該技術情報の秘密管理に意味がないわけではありません。
秘密管理している技術情報であれば、たとえ営業秘密と認められなくても、企業の意に反して当該技術情報を漏えいさせた従業員や取引会社等に対して、秘密保持義務違反の民事責任を問うことが可能かもしれません。

また、当該技術情報に対して特許、実用新案、又は意匠といった権利取得を行うという選択肢もあります。
営業秘密とすることを検討している場合には、公開を前提とした上記出願は行わないという決定を一旦したのかと思いますが、自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性が喪失するのであれば、権利取得のための出願も再考する必要があるでしょう。

自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性の喪失について詳しく知りたい方は、私の下記寄稿をご参考にしてください。
知財管理誌への寄稿は近年の判例をまとめたものであり、詳しく解説していますが、少々長くなっています。一方、弁理士会のコラムは、これを短くしたものであり、知財管理誌に比べて読みやすいかと思います。

「リバースエンジニアリングによる営業秘密の非公知性判断と自社製品の営業秘密管理の考察」知財管理誌
「自社製品に対するリバースエンジニアリングと営業秘密との関係 」弁理士会ホームページ  営業秘密に関するコラム

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2017年5月17日水曜日

営業秘密管理指針について

営業秘密の3要件に入る前に「営業秘密管理指針」について。

営業秘密の3要件につては、経済産業省が作成した「営業秘密管理指針」が参考になります。
この営業秘密管理指針は平成27年1月に全部改訂されており、営業秘密を理解するうえで大変参考になるものです。
そして、この改訂された営業秘密管理指針が今後の裁判所の判断に影響を与えるか否かが注目されるのですが、今のところそのような判決はでていないようです。

ところで、改訂後の営業秘密管理指針は、全部改訂により87ページから20ページに大幅に削減されています。
そして、改定後の営業秘密管理指針は、そのほとんどが秘密管理性(3から15ページ)に割かれ、 残りが有用性と非公知性となっています。一方で、改定前の営業秘密管理指針は、刑事的保護も含んで営業秘密について網羅的に記載され、かつ参考資料として「営業秘密管理チェックシート」や「各種契約書等の参考例」等も付いています。
このように、改定後の営業秘密管理指針は、特に秘密管理性について参考になるものですが、より網羅的に営業秘密を知るにあたっては改定前の営業秘密管理指針もとても参考になると思います。改定後の営業秘密管理指針にも、改定前の内容が必要に応じて残っていたらうれしかったんですけどね。

なお、改定前の営業秘密管理指針を読む前には、改定後の営業秘密管理指針を一通り読み、平成27年の不正競争防止法の改正をある程度理解した方が良いかと思います。
また、改定前の営業秘密管理指針は、既に経済産業省のホームページにもリンクが無いようです。しかしながら、ネット上にはまだ残っているようですので、興味のある方は探してください。また、参考資料もネット上にバラバラで残っているようです。