2017年7月7日金曜日

特許出願件数の減少から考える営業秘密

下記グラフは、日本における特許出願件数の推移と国内企業の研究開発費の推移を示したものです。
特許出願件数は、特許庁の統計資料を参照し、国内企業の研究開発費は経済産業省の「我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向 ― 主要指標と調査データ ― 」を参照しています。


国内の特許出願件数は、2001年の約44万件をピークに下降しており、リーマンショックの煽りを受け2009年には約35万件にまで減っています。
その後も緩やかに減少し続け、2016年には32万件にまで減少しています。
このように、特許出願件数はピークから実に約73%まで減少しています。

例えば、斜陽産業とも考えられている新聞の発行部数は2000年には約5370万部であったものが、2016年には4330万部に減少していますが、この減少率は約80%であり、特許出願件数の減少率よりも小さい割合です。(参考:http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php)
そして、2001年に比べて、明細書1件当たりの単価は下がっているので、国内案件の総売り上げではピークから73%減少どころではないと思われます。

ま実際には外国出願は増えているのでしょうから、国外を含めた特許出願の総売り上げはそこまで落ちていないのかもしれませんが・・・。
いづれにせよ特許事務所勤務としては好ましくない数値ですね。

一方で、日本企業の研究開発費に関しては、1995年からリーマンショックの2009年までは右肩上がりです。2009年には減少しているものの、2014,2015年には既にリーマンショック前までの値に回復しています。

これをどう考えるか?

特許出願件数の減少の理由は、企業の研究開発費の推移とは関係ないということです。
企業における研究開発は活発に行われているので、企業(特に大企業)が単に特許出願を押さえているということなのでしょう。
その理由は、コスト削減や、特許出願する技術の選別、技術の秘匿化等が考えられます。
逆を考えると、少々乱暴ではありますが、特許出願件数がピークであった2001年における特許出願件数の約30%に相当する技術が現在では秘匿化されているとも考えられます。
企業は何をどの程度秘匿化しているのかは分かるわけがありませんが、以前に比べて秘匿化している技術の量は多くなっているのではないでしょうか?

では、この秘匿化された技術、そう営業秘密とされた技術は、各企業で適切に管理されているのでしょうか?
営業秘密を従業員の皆さんに理解してもらっているのでしょうか?
オープン&クローズ戦略という言葉が流行り出しているように、今後「技術の秘匿化」は進んでいくと思われます。
そうであるならば、営業秘密という概念の重要性も増す一方で有ると考えます。

2017年7月1日土曜日

情報を形式知化して営業秘密として管理すること

情報を営業秘密として管理するためには、その情報が特定される必要があります。
営業秘密とする情報が何であるのかが特定されていないと、例え訴訟に臨んでも秘密管理性、有用性、非公知性の判断がされないまま棄却されることになります。

営業秘密に関しては、とかく秘密管理措置が重視されていますが、営業秘密の特定(形式知化)についてはあまり語られていないと思います。
当たり前過ぎるからだとは思いますが、実際、裁判において原告が主張する営業秘密が特定されずに棄却された例が多々あります。

営業秘密の形式知化とは、営業秘密とする情報を文章化(図面も含む)することです。
文章化に限らず、動画としたり、物(生産菌)としてもいいでしょう。営業秘密とする情報を客観的に特定できればいいとおもいます。


このような話をすると、「形式知化することで逆に営業秘密が漏えいするリスクが高まるのではないか?」と危惧する人がいらっしゃいます。
確かに、考えようによってはそうかもしれません。

営業秘密を形式知化することで悪意ある者がその営業秘密を持ち出すことを容易にするかもしれません。この悪意ある者が例えば、営業秘密に対するアクセス権を有していたらなおのことです。
また、営業秘密の内容を全く知らない者が、形式知化された営業秘密を偶然に見つけて持ち出す可能性もゼロではないしょう。
営業秘密を形式知化しなければこのような持ち出しリスクは低くなるとも考えられます。

一方で、形式知化されていない情報、例えば、口頭でのみ伝えられる情報、バラバラに点在しており特定の人物しか認識できない情報、このような情報がもし漏えいした場合には、最悪の場合には漏えいした事実も検知できないでしょう。
また、何らかの方法で検知できたとしても、訴訟等においてそれが営業秘密であることの主張立証は相当難しいと思います。
当然ですね、営業秘密を敢えて特定していないわけですから。

このようなことから、情報を形式知化して営業秘密とすることは、営業秘密の漏えいリスクと営業秘密の立証容易性との間でトレードオフの関係にあると考えられるかもしれません。

では、営業秘密を形式知化して管理することによるリスクをどうやって小さくせばよいのか?
私は、従業員に対する教育や社内での管理体制の周知等でリスクを低減できると考えます。
多くの方は営業秘密を漏えいさせることによるリスク(民事的責任や刑事的責任)を明確には知っていないと思います。
もし知っていれば、ほとんどの人は営業秘密を漏えいしようと考えないと思います。

営業秘密の管理体制と従業員に対する営業秘密の教育体制、これをセットにして行うことによって営業秘密の漏えいはかなり防止できるのではないでしょうか。




2017年6月28日水曜日

営業秘密関連リンクを更新

上にある↑「営業秘密関連リンク」を更新しました。
ときどき更新してますけどね。
今回は、農業関係のリンクを追加しています。

しかし、この「営業秘密関連リンク」の存在に皆さん気が付いていないようですね。
ブログを始めてから、おそらく「営業秘密関連リンク」への私以外のアクセスはおそらく
です。

このブログを始めようと思った理由の一つに、営業秘密に関するリンク集って誰も作ってないようだな、と思ったためでもありまして、今後もこのリンクは充実させたいと思います。
逆に、誰も作ってないし、誰もアクセスしないということは需要がまだないのかな?