営業秘密関連ニュース

2018年11月2日
2018年11月2日

2018年11月1日
・自社技術の情報漏らす 元取締役ら2人逮捕(日テレニュース24)
・光ファイバー技術漏出の疑い、元精密部品会社員ら逮捕へ(朝日新聞)


2018年11月14日水曜日

ー判例紹介ー 被告の記憶に残る顧客情報の不正使用を認めた裁判例

被告の記憶に残る原告の顧客情報の不正使用を認めた裁判例を紹介します。
これは、大阪地裁平成30年3月15日判決(平27(ワ)11753号)です。

この事件は、採尿器具を販売している会社である原告が、原告の元代表取締役である被告P1及び被告P1が関与して採尿器具の販売を始めた被告旭電機化成株式会社に対し、原告の顧客情報の不正使用等に基づいて当該顧客情報を使用した営業活動の差し止め・損害賠償請求等を求めたものです。
なお、被告P1は、原告の設立当初からその代表取締役の地位にありましたが、平成25年2月の株主総会で退任しています。

そして、本事件において、裁判所は原告主張の顧客情報に対する秘密管理性、有用性、非公知性を認め、裁判所は被告による当該顧客情報の不正使用等の判断を行いました。

ここで、原告は、原告の得意先番号82及び207、得意先番号3及びその販売先である得意先番号3-1、得意先番号45、得意先番号239及び245-4への営業活動が被告P1による顧客情報の不正使用によるものであると主張しました。
これに対して被告は、原告の代表取締役を退任するに際し,原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を持ち出しておらず、尿検査を実施している病院等や医療器具卸業者等をインターネットでピックアップした上で顧客獲得のために網羅的な営業活動を行っており、原告の顧客情報を使用して営業活動をしたわけではない、と主張しています。


そして、裁判所は顧客情報の使用についてまず以下のように示しています。
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被告P1は原告の代表取締役であり,自ら営業も担当していたから,少なくとも主要な顧客についての情報の概要は記憶していたと推認される。そして,被告P1との関係では,このような記憶情報についても秘密管理性があると認められることは前記のとおりであり,また,それらの情報は,被告P1が原告の業務を遂行する過程で接したものであるから,原告から「示された」ものであると認めるのが相当である。したがって,被告P1が,記憶中の原告の顧客情報を不正目的で開示し,又は使用した場合には,営業秘密の不正開示・不正使用を構成するというべきである。しかし同時に,被告P1が,原告の顧客との様々な関係から,原告の顧客であることを離れた個人的な情報としても当該顧客の情報を保有している場合があり得るのであって,そのような個人的な情報を使用した場合まで,営業秘密の不正開示・不正使用ということはできない。また,被告らが原告の顧客に対して営業活動をしたとしても,網羅的な営業方法の結果,その対象者の中に原告の顧客が含まれていたにすぎない場合には,やはり営業秘密の不正開示・不正使用ということはできない。
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上記のように、裁判所は顧客情報の不正使用の判断基準として以下の①~③のことを示していると解されます。
①記憶の中の顧客情報も当該顧客情報が営業秘密であれば、それを不正目的で開示、使用した場合は不競法違反になる。
②原告の顧客であることを離れた個人的な情報として当該顧客の情報を保有している場合には、このような個人的な情報の使用は不競法違反とならない。
③網羅的な営業方法の結果、その中に原告の顧客が含まれていたにすぎない場合は、不競法違反とはならない。

そして裁判所は、被告P1による原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を不正開示ないし不正使用したとは認められないとしたものの、被告P1の記憶に残る原告の顧客情報の開示及び使用の可能性について判断を行っています。
具体的に裁判所は「被告らが営業対象としたと原告が主張する個々の顧客ごとに,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるといえるのか,そうではなく,被告らが主張するような網羅的な営業活動の結果によるものであるとか,被告P1と原告の従前の顧客との間の個人的な関係等によるものであるなどといえるのかを個別に判断する必要がある。」とし、被告による営業活動に対して原告の顧客情報の不正使用があったか否かを、被告の営業先毎に個別に判断しています。

なお、原告は、被告による顧客情報の不正使用として、原告製品であるピー・ポールⅡの使用や販売を把握した上で被告が顧客に対して営業活動を行っていたと主張しています。
従って裁判所は、原告の商品であるピー・ポールⅡを使用していることを把握せずに、被告が営業活動を行った営業先に対しては、網羅的な営業活動又は個人的な繋がりによる営業活動であり、原告の顧客情報を使用していない営業活動であると判断しています。
この結果、裁判所は、得意先番号82及び207について原告の顧客名簿に関する不正開示行為及び不正使用行為に該当すると認めました。

このように、本判決は、被告の記憶に残る営業秘密である顧客情報の不正使用を認めたものです。
記憶に残る営業秘密の不正使用はその立証が非常に困難かと思います。しかし、本判決では、被告との個人的な繋がりによる顧客の情報、網羅的な営業活動によりたまたま混入した顧客の情報を原告主張の営業秘密の不正使用から排除し、そのうえで残った顧客の情報を原告の営業秘密の不正使用であるとした裁判所が判断したものであり、そのアプローチが非常に面白いものだと思います。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2018年11月7日水曜日

ボンバルディアと三菱航空機との事件から考えること

先日、ボンバルディアに在籍していた複数(92人?)の従業員を三菱航空機が採用し、それに伴いボンバルディアが開発した航空機の型式証明等に関する機密情報を不法に取得したとして、ボンバルディアが三菱航空機等をアメリカ、シアトルの連邦地裁に提訴したとの報道がありました。

日本企業が特許権の侵害によって外国企業から提訴される例は多々ありますが、機密情報の不正取得で提訴されることは少ないことだと思います。

本事件は、背景に三菱航空機が開発しているMRJが度重なる納期の延期を経ているものの、納入間近になっていることがあるかと思います。ボンバルディアにとって三菱航空機は小型航空機のライバル企業となりえる企業ですから、米国での型式証明の取得を阻止又は延期させることができればそれに越したことはない、という背景が見え隠れします。

とはいえ、三菱航空機側もボンバルディアに疑われるようなことがあったということでしょう。「技術者らはボンバルディア離職前に重要データを私用メールに送るなどし、機密情報を不当に漏らしたとしている。」との報道もあります。(朝日新聞:https://www.asahi.com/articles/ASLBQ30T8LBQUHBI00D.html)


ライバル企業から多量に若しくは一部門の従業員を丸ごと自社で採用するということはまれにあることかと思います。このような場合、ライバル企業も元従業員が他企業に転職したことは比較的簡単に知り得ることになるでしょう。
そして、ライバル企業の元従業員を多量に採用する企業の目的は、ライバル企業のノウハウや経験を有する人材を採用して、自社の技術開発等を促進させることかと思います。このような場合、当該ライバル企業の営業秘密が不正に持ち出される可能性は非常に高いのではないでしょうか?

ここで、日本において同様の事件がありました。2015年の自動包装機械事件です。

参考:過去の営業秘密流出事件

この事件は、原告企業の元従業員4人が競合他社である被告企業へ営業秘密(自動包装機の設計図)を持ち出して転職したものであり、被告企業の刑事責任も問われました。そして、被告企業は、営業秘密の取得に関与したとして、罰金1400万円の刑事罰を受けています。営業秘密侵害事件において、被告企業も刑事罰を受けた例は未だこの事件のみのようです。

ライバル企業から一時に複数の従業員を採用(引き抜き)することは違法ではないと考えられますが、採用された複数の元従業員も自分たちが採用された理由は分かっており、何が期待されるか、さらには早期に結果を出さないといけないというプレッシャーも感じるかと思います。
このような場合、ライバル企業の営業秘密を持ち出す可能性も高くなるかもしれません。
すなわち、ライバル企業から一時に複数の従業員を採用する企業は、当該ライバル企業の営業秘密が持ち込まれないように細心の注意を取る必要があるでしょう。
採用側の企業が求めてもいいことは、ライバル企業の元従業員達の経験や能力のみであり、ライバル企業の営業秘密ではないことを理解するべきです。間違ってもライバル企業の営業秘密の持ち出しを要求してはいけません。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2018年11月1日木曜日

営業秘密と先使用権主張準備のページを作成

営業秘密と先使用権主張準備」のページを新たに作成しました。
過去のブログ記事をまとめたものになります。

営業秘密管理を先使用権主張の準備に利用する案も記載しています。


弁理士による営業秘密関連情報の発信