営業秘密関連ニュース

2020年7月3日
・ソフトバンク機密情報漏洩事件 露通商部元幹部を不起訴処分 東京地検(産経新聞)
・ソフトバンク機密持ち出し、教唆容疑の露元外交官を不起訴…「再入国の見込みない」(読売新聞)
・ロシア元外交官を不起訴 ソフトバンク情報漏洩(日経新聞)
・ロシア元外交官を不起訴 ソフトバンク情報漏えい―東京地検(JIJI.COM)
・ロシア元外交官を不起訴 機密情報取得そそのかした容疑(朝日新聞)

2020年7月2日
・7月2日付、日本経済新聞の報道について(株式会社ディー・エヌ・エー)
・「大手が模倣」新興に不信感 チュートリアルとDeNA 協業、知財でトラブル(日本経済新聞)
・新興「大企業にマネされた」 協業で知財トラブル(日本経済新聞)

2020年7月1日
・顧客情報を漏えいした罪 百十四銀行の元行員2人に懲役1年と懲役8カ月を求刑 高松地検(瀬戸内海放送)

2020年6月30日
・「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」を取りまとめました(経済産業省)

2020年6月29日
・<米国>経済スパイで有罪、15年に逮捕・起訴の中国人教授-米連邦地裁(bloomberg)

2020年6月26日
・<米国>トランプ政権のファーウェイ封じ込めに勢い-中国の強権に欧州も反発(bloomberg)

2020年6月25日
・パチスロ設定漏えいし損害与える、容疑の元店員ら逮捕 常総署 「情報漏れている」と相談で捜査(茨城新聞)

2020年6月23日
・先端技術の海外流出防止 政府補助、資金源の開示条件(日経新聞)

2020年6月22日
・「経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】」について(特許庁)

2020年6月19日
・<米国>中国ファーウェイ通じ情報流出 元米グーグルCEOが見解(共同通信)
・<米国>ファーウェイ、通信機器通じた中国当局への情報流出を否定(産経新聞)

2020年6月17日
・ソフトバンク機密情報漏えい 元社員に2年求刑 初公判(毎日新聞)
・ソフトバンク元社員、情報漏洩1回20万円 検察側指摘(日経新聞)
・ソフトバンク元社員に懲役2年求刑 ロシア外交官に情報漏えい―東京地裁(JIJI.COM)
・ソフトバンク元社員「役に立ちたくて」 露に情報漏洩、懲役2年求刑(産経新聞)
・SB元社員、起訴内容認める(朝日新聞)

2020年6月16日
・新興企業の知的財産権保護を 大手による無断活用防止―自民提言案(JIJI.COM)

2020年7月3日金曜日

知的財産で社会貢献 新型コロナウイルスのまん延終結に向けて

知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に関連した話題です。


昨日、キャノンが自社で使用するために開発したファン付きバイザーを発表しました。


このファン付きバイザーに関して「キヤノンが発起人として参画する「COVID対策支援宣言書」の対象となります。」とあります。
すなわち、キャノンから発表されたファン付きバイザーと全く同じものを、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を目的として製造・販売しても、キャノンはその行為に対して権利行使を行わない、ということになります。

これは、面白い取り組みだと思いました。
「COVID対策支援宣言」に参画する企業は増えていますが、果たして、これを利用して製品の製造・販売等を行う企業がどのくらいあるのか私は少々懐疑的でした。
その理由の一つが、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」の範囲が非常に狭い範囲であると捉えられかねないと感じたからです。

「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」との制限は、裏を返すと「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」とは関連しない場合には、権利者から権利行使される可能性があるということです。
例えば、マスクはどうでしょう。マスクは、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与するでしょうが、例えば他の感染症を防ぐ目的でも着用されますし、花粉症の人も着用します。そうすると、マスクの製造販売は、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」には含まれないようにも思えます(実際は現況を鑑みるとマスクの製造販売は唯一の目的に含まれると思いますが)。
また、肺の画像診断はどうでしょう。これも、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与するでしょうが、例えば肺がん検査等他の疾病の検査にも使用できる可能性が考えられます。そうすると、肺の画像診断に用いる製品の製造販売は、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」には含まれないようにも思えます。
このように考えると「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」を確実に満たす行為は、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬のみと解釈され得るかもしれません。


このように、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」の解釈にリスクを伴うと考える企業は、この宣言を行った企業の権利を使用することを躊躇すると思います。
一方、今回のキャノンの発表はこのようなリスクを気にかける必要がなくなるでしょう。
このキャノンが発表したファン付きバイザーと全く同じものを製造販売してもキャノンから権利侵害を問われる可能性が相当低いと思われるからです。

このようなキャノンの行為を鑑みると、宣言を行た企業は、自社で開発した「新型コロナウイルス」対策の装置や方法等を公開し、宣言していることを担保として第三者に対して権利行使を行わないことを明確にすることで、より「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与できるのではないかと思います。

そしてこのような行為は、まさに知的財産を用いた企業による社会貢献とも言え、企業イメージのアップにも繋がるとも思えます。
従来から企業による社会貢献は行われてきましたが、企業の社会貢献と知的財産はリンクして考えられなかったと思います。しかしながら、「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」はまさに知的財産と社会貢献とをリンクさせたものでしょう。

さらに「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に限らず、企業は衛生面を考慮した技術開発を数多く行っており、その中には、自社の利益には直結しない技術開発もあるでしょう。例えば、食品製造業における自社の工場内の衛生状態を良好とするためのシステムもそうです。このようなシステムも特許権が取得されている場合があるものの、このシステムを他社に販売等せずに自社の工場でしか使用せず、休眠状態の場合も多いでしょう。
このような特許も積極的に権利不行使宣言を行うことで、自由に他社が使用し、社会全体としての衛生状態の向上に寄与し、社会貢献に繋がるでしょう。また、特許出願していない上記のような自社開発技術を公開し、他社による自由な使用を促してもいいでしょう。
今回のキャノンのファン付きバイザーも自社の従業員が使用することを目的としたものであり、他社がそれを製造販売してもキャノンの利益を損なうものではなく、これが広く使用されると、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与することになります。

もしかすると、キャノンの今回の発表に感化されて、同様に技術を開示する企業が続くかもしれません。そうすると、社会貢献による企業のイメージアップに知的財産を使用するという知財戦略もあり得ると考えます。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年6月25日木曜日

特許庁発表の「経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】」

先日、特許庁から「経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】」が発表されました。
200ページ近い中々のボリュームで、国内外の大手企業の知財戦略が紹介されています。

その中で、当然、営業秘密やノウハウに触れた内容もあります。
医薬品等のメーカーであるSanofi S.A.では、特許出願による公知化リスクを強く意識しており、特に製造工程に関わる発明の営業秘密化の判断を積極的に行っているようです。
さらに医薬品の製造工程は、その認可機関への申請時に書類として記載・提出されるために秘匿性が失われるので、どの時点まで秘匿化するのか、どの時点で特許出願するのかも協議しています。
特に、特許出願の時期については、早すぎると製品化後の存続期間が短くなるため、投資回収が十分にできないという状況になってしまうために、特許出願を急ぎすぎないようにしているとのこと。当然、この特許出願を行うまでは、その発明は営業秘密として扱われるのでしょう。

まさに、このような知財戦略は、発明の秘匿化と特許化とを意識した教科書的な手法と言えるでしょう。しかしながら、ここまで秘匿化と特許化とを意識している企業は、製薬メーカー以外には多くないのかもしれません。

また、ブリヂストンでは、バリューチェーンで蓄積されているナリッジやノウハウを抽出して、開示リスト等で可視化しているようです。
これは、なかなか大変なことであろうと思います。
私は、特許出願のメリットの一つに、その管理のし易さがあると思っています。すなわち、J-Platpatによって特許出願を行政が管理してくれいているというメリットです。これにより、たとえ、自社での特許の管理体制が甘くても、自社がどのような発明を特許出願しているのかインターネットで分かり、そのステイタスもほぼリアルタイムで分かります。さらに、自社の外国出願ですらEspacenetで分かってしまいます。

一方、ノウハウ管理は、なかなか大変だと思います。当たり前ですが、行政がノウハウ管理してくれるわけもなく、自社で管理しなければなりません。そして、企業規模が大きくなればなるほど、ノウハウの量も多くなり、それを分類し、アクセス権限も設定し、システム上で閲覧可能とすることは手間と資金を必要とするでしょう。
発明(技術)の営業秘密化は、特許出願よりもコスト削減につながるというような話も聞きますが私は決してそんなことはなく、企業規模が大きくなるほど、システム構築等の手間と費用を考慮すると、営業秘密化の方がコストを要するのではないかとさえ思います。


また、本田技研は、ノウハウの技術流出を防止するために、知財部門がノウハウ管理を行っているようです。これは、ライセンスを意識してとのこと。
実は、知財部門がノウハウを管理している企業は多くないように思います。では、どこでノウハウを管理しているかというと、例えば技術開発部等という企業も多いのではないでしょうか。
そして、知財部では技術開発部が一体どのようなノウハウを秘密として管理しているのかを把握していないという企業もあるかと思います。企業規模が大きくなると、異なる技術開発部で同様の研究開発を行っている場合もあります。そのような場合に、技術開発部ごとにノウハウ管理をし、それを知財部が把握していないと、同様の技術についてある技術開発部では秘匿化している一方、他の技術開発部では特許化すなわち公知化しているという事態に陥りかねません。
そのような事態を避けるためにも、やはり秘匿化するノウハウは技術開発部で管理すると共に知財部でも集約して管理することがベストでしょう。

このように、この事例集はいろいろ参考になることが多く書かれていると思います。
最近、特許化と秘匿化との両輪による知財戦略(知財戦術)はどのようなものか?と考えていたりもするので、しっかり読み込んでみたいですね。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年6月18日木曜日

新興企業やフリーランスの保護のための提言

先日、「新興企業の知的財産権保護を 大手による無断活用防止―自民提言案」とのニュースがありました。
これは、昨年、公正取引委員会がまとめた「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を受けてのものだと思われます。
あらためて、この実態調査報告書を読むと、取引先が優越的地位を濫用して営業秘密やノウハウを取得する実態が書かれています。


ここで、営業秘密を取引先に開示する場合には、秘密保持契約を締結することが必須ですが、取引先が秘密保持契約の締結を拒んだり、片務的な秘密保持契約の締結を強要されたり、と様々です。

このような実態調査報告書には記載がないものの、営業秘密の裁判例からあり得そうな例を一つ。
まず秘密保持契約には秘密保持の対象から除外する情報を定めた規定が設けられることが一般的です。たとえば、以下のようなものです。(参照:【参考資料】秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて~

① 開示を受け又は知得したときに既に保有していた情報
② 開示を受け又は知得した後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報③ 開示を受け又は知得した後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受け又は知得したときに既に公知であった情報 
⑤ 開示を受け又は知得した後、自己の責めに帰さない事由により公知となった情報

そして営業秘密の裁判例として、攪拌造粒機事件(大阪地裁平成24年12月6日判決 事件番号:平成23年(ワ)第2283号) や皮膚バリア粘着プレート事件(東京地裁令和2年3月19日判決 事件番号:平成20年(ワ)23860号) では、原告が営業秘密であると主張した情報が公知であった(上記④)と裁判所によって認定され、その営業秘密性及び被告が当該情報の使用したとしても秘密保持契約違反ではないと判断されました。

すなわち、たとえ、秘密保持契約を締結して開示された情報であっても、公知の情報であれば開示先に秘密保持義務はなく、取引先(開示先)は自由に使用してもよいということです。これは、このような除外規定が設けられた秘密保持契約を締結すると当然のことだと思われます。


しかしながら、そもそも、公知の情報とは何でしょうか?
この「公知」の判断は、特許で言うところの「新規性」の判断とも類似していると思われ、案外難しいかもしれません。
開示した営業秘密と全く同じ情報が記載された資料を取引先が提示した場合には、自社の営業秘密が公知となっていることを認めざる負えません。
しかしながら、全く同じではなく若干違う資料を提示した場合にはどうでしょうか?若干違うものの、当業者であれば同じ解釈できると主張された場合にはどうでしょうか?
また、複数の資料を提示され、この複数の資料の組合せが開示した営業秘密と同じであると主張された場合にはどうでしょうか?

ここで、技術情報は特許公開公報、論文、及びインターネット上の情報等様々なものが溢れかえっています。自社が営業秘密と考えている情報も、特許検索等により調査(先行技術調査)すると全く同じでなくても同様の資料が見つかるかもしれません。
取引先は、開示された営業秘密を自由に使用することを目的として、先行技術調査によって開示された営業秘密を公知であると主張する可能性もあるでしょう。

公知であるか否か微妙な場合には、口先による説明力の問題です。
これがうまい人は、実際には公知でなくても、公知であると説明できるでしょう。こういうことがうまい職種は、やはり弁理士や技術系の弁護士、企業の知財部の人達でしょう。
そして、大企業になるほど、これらの人を使うことができます。一方で、中小企業やベンチャーになるほど、これらの人との繋がりが薄い傾向にあるでしょう。
そうすると、中小、ベンチャー企業は秘密保持契約を締結して営業秘密を大企業に開示しても、その後、除外規定を持ち出されて自由に使用されるリスクがあります。一方で、公知であることの主張は、優越的地位の濫用とは認められないでしょう。

では、このような事態に陥った場合にはどうするべきでしょうか?
そのためには、まず「公知」とはどのようなことを指すのかを理解する必要があります。
そして、開示先が上記のようなことを主張した場合に、対応可能な人物を予め見つけておくことも必要でしょう。
昨今、オープンイノベーションという言葉も広く浸透し、自社の営業秘密を他社に開示する場面もあるでしょう。そのとき、秘密保持契約を締結したからと言って必ずしも安心できるものではありません。開示した営業秘密が取引先に目的外で使用されることもある程度想定して、秘密保持契約を締結する必要があります。そして、開示先が不当と思われる要求をしてきた場合には、営業秘密の開示を行わない、そもそもの取引を行わない、という決断も必要ではないでしょうか。

ところで、この提言は自民党の競争政策調査会は行い、記事には「明らか」になったとありますが、ネットを探しても自民党のホームページを探しても見つからない。
せっかく良い提言を行っているのだから、積極的に公開するべきでしょう。
IT、IT、言うのであれば、まずはこういうところからも行うべきでは?

弁理士による営業秘密関連情報の発信