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2021年10月31日
・新たなページを追加しました。「知財戦略カスケードダウンの概要」

2021年10月17日
・noteを更新しました。「QRコードの普及から考える知財戦略  ー知財戦略カスケードダウンへの当てはめー」

2021年9月17日
・知財実務オンライン(youtube)で「知財戦略カスケードダウンと三方一選択」と題して、このブログでも提案している知財戦略についてお話させていただきました。

特許と営業秘密の違い

特許と営業秘密(技術情報)は何かと対比されます。
特許と営業秘密との違いは多々ありますが、最も大きな違いは、特許は“公開公報”又は“特許公報”としてその技術内容が公にされますが、営業秘密はその技術を公にしないことです。

特許出願をすると特許権という他社にその技術を使用させない独占排他権を取得できる可能性がありますが、特許権を取得できなかった場合には公開された技術を誰もが、他者の特許権を侵害しない範囲で自由に使えることになります。

一方、営業秘密として技術を管理すると、公にならないためにその技術を他者に知られることなく、一種の独占状態となります。しかしながら、同じ技術を独自に開発した他者に対しては何ら権利行使ができません。また、他者が同じ技術を公開した場合、非公知性が失われるので、自社でその技術を秘密管理しても営業秘密とは認められません。

このように、技術を特許(特許出願)又は営業秘密の何れかとするかについては、一長一短があり、どちらが良いのかは一概には判断できません。
しかしながら、技術情報を特許出願するか又は営業秘密とするかについて、基本的には、公になってもよい技術であるか否かで決定する場合が多いかと思います。

以下では、特許と営業秘密との法律上の違いについて具体的に説明します。



1.概要

<特許>
特許出願を特許庁に対して行い、特許庁の審査の結果、新規性・進歩性があると認められた発明に対して、独占排他権である特許権が与えられます。すなわち、特許は国による登録制度の一つです。しかしながら、特許庁の審査において新規性・進歩性が認められず、特許とされなかった場合には、特許権は与えられないため、特許公開公報によって公開されたその技術は誰でも他者の権利を侵害しない範囲で使用可能となります。

<営業秘密>
特許出願のような出願制度はありません。有用性及び非公知性を有する情報を秘密管理することにより営業秘密となります。すなわち、営業秘密は、特許とは違って登録は必要ありません。


2.公開制度

<特許>
特許出願から基本的に1年6月後に特許公開公報として公開されます。また、
これにより、特許出願した技術は公知のものとなります。
この特許公開公報は、特許情報プラットフォームであるJ-PlatPatを用いて誰でもキーワード検索等により取得できます。

<営業秘密>
出願という制度がないため、特許のような公開制度もありません。営業秘密とするには非公知性が求められるため、そもそも公開してはいけません。もし、第三者に公開するのであれば、秘密保持契約等が必要です。


3.存続期間

<特許>
特許出願から20年です。ただし、特許権の効力が与えられるためには登録が必要であり、登録を維持するためには国に対して毎年、年金という形で一定の金銭を納付する必要があります。特許出願から20年経過後、又は年金の納付を停止した場合には、特許権は失われて誰でも使用できる技術となります。

<営業秘密>
秘密管理性、有用性、及び非公知性が認められる限り、半永久的に営業秘密として認められ続けます。営業秘密は、登録制度によるものではないため、国への費用の支払いも必要ありません。


4.保有者

<特許>
登録されている特許権者です。

<営業秘密>
営業秘密を管理している企業等です。


5.技術の特定方法

<特許>
文章で表す必要があり、所定のフォーマットに沿った出願形式(いわゆる特許請求の範囲、明細書、図面等)で特許庁に出願する必要があります。
特許請求の範囲に記載の内容が特許権を取得する技術内容となり、実施形態には特許請求の範囲に記載の技術内容を当業者が実施可能な程度に記載する必要があります。

<営業秘密>
技術を特定できればよく、特に決まった形式はありません。
文章の他にも、図面やリストのみで表してもよいですし、例えば、プログラムや菌等、技術が化体したそのものでもよいです。なお、発明を営業秘密とする場合には、特許請求の範囲のような記載により技術を特定することが推奨されていますが、特定方法は自由です。


6.権利行使等の対象

<特許>
自己の特許権を侵害する者(侵害者)に対して権利行使が可能です。
その技術が他社の特許となっていることを知らずに、その技術を使用している第三者に対しても権利行使ができます。

<営業秘密>
不正に営業秘密を取得した者(侵害者)や、正当に営業秘密が示されたものの不正の目的等で開示又は使用する者(侵害者)に対して差し止め請求等が可能です。
一方、その技術が他社の営業秘密となっていることを知らずに、その技術を使用している第三者に対しては何もできません。



7.民事的救済

<特許>
侵害者に対して損害賠償請求や差し止め請求が可能です。

<営業秘密>
侵害者に対して損害賠償請求や差し止め請求が可能です。



8.刑事罰

<特許>
特許法には特許権侵害に対する刑事罰の規定があります。しかしながら、特許権侵害で実際に刑事罰が適用されたということは聞いたことがありません。

<営業秘密>
不正競争防止法には営業秘密侵害に対する刑事罰の規定があります。この刑事罰の規定に従って、営業秘密を漏えいさせた個人が刑事罰を受けた例は多々あります。また、企業が刑事罰を受けた例もあります。



9.自身で技術を公開してしまった場合の救済

<特許>
発明を公開した後6月以内に新規性喪失の例外規定(特許法第30条第2項)を受ける特許出願した場合には、その公開によってその発明の新規性が喪失しないとされています。

<営業秘密>
営業秘密とする情報を公開すると当該情報は、非公知性を失うので営業秘密ではなくなります。過誤により営業秘密を公開したとしても基本的に非公知性は失われます。特許における新規性喪失の例外規定のようなものはありません。


10.技術開発を行った従業員に対する保障

<特許>
特許法第35条第4項において、「従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させる等するときは、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。」とのように、発明を行った従業者は、その発明を特許出願等する所属会社から利益を得る権利を有することが特許法で規定されています。

<営業秘密>
営業秘密として管理される技術開発を行った従業者が、その技術を営業秘密として管理する所属企業から利益を得る権利は何ら法律で規定されていません。
しかしながら、知財高裁平成27 年7 月30 日判決(事件番号:平成26 年(ネ)第10126 号)において裁判所は「使用者等は,職務発明について無償の法定通常実施権を有するから(特許法35 条1 項),相当対価の算定の基礎となる使用者等が受けるべき利益の額は,特許権を受ける権利を承継したことにより,他者を排除し,使用者等のみが当該特許権に係る発明を実施できるという利益,すなわち,独占的利益の額である。この独占的利益は,法律上のものに限らず,事実上のものも含まれるから,発明が特許権として成立しておらず,営業秘密又はノウハウとして保持されている場合であっても,生じ得る。」と判断しているように、企業が発明を特許出願せずに営業秘密又はノウハウとしたときであっても、発明者に対して相当の利益を付与するべきと考えられます。