営業秘密の要件

営業秘密と判断されるべき要件は、下記の3要件です。

(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)
(2)事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
(3)公然と知られていないこと(非公知性)

ここでは、平成27年に全部改訂された営業秘密管理指針を参照して、秘密管理性、有用性、非公知性についてまとめます。



(1)秘密管理性
営業秘密管理指針では秘密管理性の程度として「秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある。・・・従業員がそれを一般的に、かつ容易に認識できる程度のものである必要がある。」とされています。

さらに、営業秘密管理指針には「秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業が当該情報を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分である。すなわち、営業秘密保有企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる(換言すれば、認識可能性が確保される)必要がある。取引相手先に対する秘密管理意思の明示についても、基本的には、対従業員と同様に考えることができる。」とされています。

すなわち、秘密管理性が認められるためには、<従業員や取引相手先等がその情報が営業秘密であると認識できる態様で管理されていればよい。>とされ、例えば、アクセス制限がされることをもって秘密管理性を認めるといったような具体的な要件や客観的に秘密管理性を有するべきというようなことは、営業秘密管理指針で規定されていません。
さらに、営業秘密管理指針では「具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員の職務、情報の性質その他の事情の如何によって異なるものであり」と記載されています。このことは、企業の規模等により、 様々な管理方法が認められると考えられます。

しかしながら、このことは秘密管理性を認めるための法的要件であり法的に秘密管理性が認められる管理をしているからといって、営業秘密が漏えいしないわけではありません。
実際には、アクセス制限やパスワード管理、施錠管理等を行わないと、営業秘密の漏えい防止には至りません。
秘密管理性の法的要件と、営業秘密の漏えい防止とは当然リンクするものですが、「最低限の秘密管理性の法的要件=営業秘密の漏えい防止」ではないことを理解する必要があるかと思います。

ただし、「職務上知り得た情報全て」 「事務所内の資料全て」といった形で秘密表示等を行っているにもか かわらず、情報の内容から当然に一般情報であると従業員が認識する 情報が著しく多く含まれる場合には、秘密管理措置の形骸化とされ、秘密管理性の判断に影響を与える可能性が有ります。したがって、真に営業秘密とするべき情報を精査し、実際に秘密管理を行うべきかと思います。



(2)有用性
有用性について、営業秘密管理指針では「その情報が客観的にみて、事業活動にとって有用であることが必要である。」とされ、さらに「秘密管理性、非公知性要件を満たす情報は、有用性が認められることが通常であり、また、現に事業活動に使用・利用されていることを要するものではない。」とあるように、秘密管理性と非公知性を満たしていれば、有用性は比較的認められやすいと考えられます。

なお、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂 れ流し等の反社会的な情報)は、有用性が認められません。

また、営業秘密管理指針では「当業者であれば、公知の情報を組み合わせることによって容易に当該営業秘密を作出することができる場合であっても、有用性が失われることはない(特許制度における「進歩性」概念とは無関係)。」とされています。しかしながら、有用性について特許制度における進歩性の判断に類するような判断を行っている裁判例もあり、技術情報を営業秘密とする場合には注意が必要かと思います。



(3)非公知性
営業秘密管理指針では「当該営業秘密が一般的に知られた状態となっていない状態、又は容易に知ることができない状態」とされています。そして、この非公知性とは、特許法における新規性とは異なり、守秘義務の無い他者が当該営業秘密を知っても、又は独自に同様の情報を取得しても秘密状態を維持していれば非公知であるとされます。

さらに、営業秘密管理指針では「当該情報が実は外国の刊行物に過去に記載されていたような状況であっても、当該情報の管理地においてその事実が知られておらず、その取得に時間的・資金的に相当のコストを要する場合には、非公知性はなお認められうる。」とされています。

また、例えば、商品に対してリバースエンジニアリングを行うことによって簡易に知り得る情報には非公知性が認められない場合があります。