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2022年7月18日月曜日

判例紹介:愛知製鋼磁気センサ事件の刑事事件判決(技術情報の抽象化・一般化)

愛知製鋼磁気センサ事件の刑事事件判決(名古屋地裁 令和4年3月18日判決 事件番号:平29(わ)427号)について紹介します。本事件は、被告人が無罪となった事件であり、比較的大きく報道された事件でもありました。本事件は、控訴されなかったため、被告人の無罪が確定しています。

本事件は、b株式会社(愛知製鋼株式会社)の元役員又は従業員であった被告人a,cがb社から示された情報を株式会社dの従業員eに対し、口頭及びホワイトボードに図示して説明することでb社の営業秘密を開示した、というものです。
なお、この情報とは、b社が保有する営業秘密であるワイヤ整列装置(1号機~3号機)の機能及び構造,同装置等を用いてアモルファスワイヤを基板上に整列させる工程に関する技術上の情報とされています。

ここで、検察官は、下記㋐から㋖までの工程(検察官主張工程)であるワイヤ整列工程を被告人がeに説明したと主張し、この㋐から㋖までの工程はb社が独自に開発・構成した一連一体の工程であって、b社の営業秘密である旨主張しました。
❝ワイヤ整列装置が
  ㋐ 引き出しチャッキングと呼ばれるつまみ部分(以下「チャック」という。)がアモルファスワイヤをつまみ,一定の張力を掛けながら基板上方で右方向に移動する
  ㋑ アモルファスワイヤに張力を掛けたまま仮固定する
  ㋒ 基板を固定した基板固定台座を上昇させ,仮固定したアモルファスワイヤを基準線として位置決め調整を行う
  ㋓ 基板固定台座を上昇させ,アモルファスワイヤを基板の溝及びガイドに挿入させ,基板固定治具に埋め込まれた磁石の磁力で仮止めする
  ㋔ 基板の左脇でアモルファスワイヤを機械切断する
  ㋕ 基板固定台座が下降し,次のアモルファスワイヤを挿入するために移動する
  ㋖ 以下㋐ないし㋕を機械的に繰り返す❞
これに対して、裁判所は下記のように、被告人両名がeに説明した情報のうち検察官主張工程に対応する部分は、アモルファスワイヤの特性を踏まえて基板上にワイヤを精密に並べるための工夫がそぎ落とされ、余りにも抽象化、一般化されすぎていて、bの営業秘密を開示したとはいえない、と判断しました。
❝本件打合せにおいて被告人両名がeに説明した情報は,アモルファスワイヤを基板上に整列させる工程に関するものではあるが,bの保有するワイヤ整列装置の構造や同装置を用いてアモルファスワイヤを基板上に整列させる工程とは,工程における重要なプロセスに関して大きく異なる部分がある。また,上記情報のうち検察官主張工程に対応する部分は,アモルファスワイヤの特性を踏まえて基板上にワイヤを精密に並べるための工夫がそぎ落とされ,余りにも抽象化,一般化されすぎていて,一連一体の工程として見ても,ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまり,一般的には知られておらず又は容易に知ることができないとはいえないので,営業秘密の三要件(秘密管理性,有用性,非公知性)のうち,非公知性の要件を満たすとはいえない。したがって,被告人両名は,本件打合せにおいて,bの営業秘密を開示したとはいえない。❞

なお、上記の「大きく異なる部分」としては、以下のように挙げられています。
❝工程㋑に関して,bのワイヤ整列装置では,なるべくアモルファスワイヤに応力を加えないようにするために,基板の手前にシート磁石が埋め込まれた溝(「ガイド」)を設置したり,切断刃近くに磁石を設置したりしてワイヤの位置を保持し,チャック以外では,ワイヤになるべく触れずに挟圧しない方法が採られている(ただし,3号機では,「ワイヤロック」による挟圧はされている。)。
これに対し,被告人両名が説明した情報は,前記のとおり,まっすぐにぴんと張る程度に張力を掛けて引き出されたワイヤを2つの棒状のもので「仮押さえ」をするというものである。この工程は,ワイヤを基板の溝等に挿入して整列させる工程において,「ワイヤ引き出し」,「仮固定」,「切断」といった重要なプロセスに関するものである。❞
また、「一連一体の工程」とのように、例えば、複数の公知情報を組み合わせた場合であっても、その組み合わせに特段の作用効果等がある場合には、全体として非公知性又は有用性が有ると判断される場合があります。
これに関して裁判所は下記のように、検察官主張工程のうち工夫された工程について被告人が開示しておらず、これにより一連一体の工程として見ても、ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまる、として、非公知性を否定しています。
❝すなわち,被告人両名は,前記のとおり,アモルファスワイヤの特性を踏まえ,基板上にワイヤを精密に並べる上で重要になるはずのbのワイヤ整列装置に備わっている工夫に関する情報,例えば,位置決め調整におけるCCDカメラの活用,ワイヤ引き出し時(送り出し時)におけるモーターの回転方法,ワイヤの仮固定における「ガイド」等の機構,基板上の溝等に仮止めする際の磁石の配置,ワイヤがチャックに付着し続けないようにするための工夫等について,eに対して説明していない。
また,本件実開示情報は,アモルファスワイヤの特性を踏まえて基板上にワイヤを精密に並べるために重要となるはずの情報がそぎ落とされ,余りにも抽象化,一般化されすぎていて,一連一体の工程として見ても,ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまるので,一般的には知られておらず又は容易に知ることができないとはいえない。❞
以上のように、結論としては、被告人はb社(愛知製鋼)の営業秘密を開示していないので、無罪とされています。このような判断は裁判所が行うまでもなく、技術的な知見を十分に有しているであろう愛知製鋼も行えると思うのですが、なぜ、刑事事件化してしまったのか非常に疑問です。

この理由の一つに、愛知製鋼は営業秘密とした自社の情報(発明)を正確に特定できていなかったのではないかと思います。また、検察(逮捕に携わった警察)もこれを正確に特定できていなかったのではないでしょうか。現に、2017年の2月に逮捕されてから一審判決に至るまで5年もの月日を要しており、これは他の営業秘密侵害事件と比べても非常に長い期間です。営業秘密の特定が不十分であるがために、判決に至るまでの時間を要したとも思えます。
実際、発明を情報として特定することは慣れていないと難しいでしょう。本事件では、検察が「検察官主張工程」として営業秘密を特定していますが、その情報をどのような形態で愛知製鋼が保有していたのかが、少々判然としません。判決では、❝ワイヤ整列装置である1号機ないし3号機をクリーンルーム内に保管し,特定の認証カードを所持する者以外の立入りを制限する措置を講じていた❞、とありますが、これはワイヤ整列装置に対する秘密管理であり、果たして「検察官主張工程」の秘密管理でしょうか。ワイヤ整列装置どこに、どのような形態で「検察官主張工程」を管理していたのでしょうか?

知的財産については、その保有者は自身が有する情報(今回は営業秘密)の権利範囲を広く解釈しがちな傾向にあると思います。そのような傾向にあるにもかかわらず、さらに営業秘密とした技術情報を正確に特定しなかったために、このような結果になってしまったのではないかと思います。

なお、本事件は、例えば転職者が前職で開示された営業秘密に関連する技術情報を転職先等で話す場合についても参考になるかと思います。
前職の営業秘密をそのまま話すことは当然ダメですが、それに関連する技術情報については営業秘密に触れずに「抽象化、一般化」して話すことは問題ないということです。これは当然のことなのですが、本事件によって、前職に関連することを全く話してはいけない、ということではないということが示されたとも思えます。
企業が転職者から前職に関連する技術情報を聞く場合も同様かと思います。前職の営業秘密に関連する部分の説明は「抽象化、一般化」して話してもらうように、転職者を促すことで、不必要に他社の営業秘密を知ることを防止できるでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2021年9月13日月曜日

ー判例紹介ー 独自開発に基づかない図面の非公知性、有用性

今回は、図面の非公知性及び有用性についてです。 企業が作成する図面には、自社で独自開発した技術を図面としたものや、自社で独自開発した技術でないものの自社で図面としたもの、様々なものがあるでしょう。
自社で独自開発した技術の図面は非公知性や有用性は認められ易いででしょうが、自社で独自開発ていない技術の図面はどうでしょうか?

そのような判断がなされた裁判例(名古屋高裁金沢支部令和 2年 5月20日  平30(ネ)81号)を今回は紹介します。 この事件は、クロス下地コーナー材事件(平成30年 4月11日 福井地裁 平26(ワ)140号)の控訴審判決です。

本事件は、原告が被告会社との間で基本契約を締結し、建築資材であるクロス下地コーナー材の製造を委託していたという経緯があります。 そして、被告会社は、かつて原告から上記基本契約に基づき開示を受け、又は原告の従業員からその守秘義務に違反するなどして開示を受けた原告の営業秘密に当たる技術情報等を用いて、同契約終了後、図利目的で、原告の製品と形状の類似した本件被告製品を製造等したというものです。
原審では、営業秘密の保有者である原告勝訴となり、3億2560万円の損害賠償や原告の営業秘密を用いたクロス下地コーナー材の差し止めが認められました。
これに対して被告が控訴しています。 すなわち、控訴審では、被告が控訴人であり、営業秘密の保有者である原告が被控訴人です。

控訴審では、被告訴人(一審原告)は「別紙対応関係一覧表に記載された被控訴人保有の金型及びサイジングの図面に化体された原判決別紙独自部分一覧表のb1ないしf5の独自部分に係る技術情報も,営業秘密に当たる。」と主張しています。
一方で被控訴人(一審被告)は、「被控訴人主張の独自部分は,被控訴人独自の技術ではなく,常識に基づいて当然に採用されるもので,営業秘密には当たらない(乙58,59参照)。」と主張しています。

これに対して、裁判所は以下のように判断し、被控訴人の主張を否定しました。
❝控訴人らは,被控訴人主張の独自部分については,被控訴人が独自に開発したものではない旨主張するところ,確かに,被控訴人主張の独自部分b1ないしf5(重複あり)については,その旨の記載が専門的な文献にもあること(乙59)に照らすと,原審における証人Jの証言及び意見書(甲90,92)中の被控訴人が独自に開発したものであるとの部分は直ちに採用することができず,被控訴人がこれらを独自に開発したとまでは認め難いものの,少なくとも本件原告製品を製造するために被控訴人によって開発された金型やサイジングであって,コーナー材の製造では,一般的には金型メーカーに発注して,各社がそれぞれ独自の金型及びサイジングを使用していること, 押出成形法に係る経験や製造ノウハウがあっても,金型及びサイジングを開発するノウハウを有していなければコーナー材を製造することはできないことからすると,被控訴人の金型及びサイジングの図面自体についても非公知性があり,有用性があるものとして,本件技術情報に関連付けられた金型及びサイジングの図面それ自体も営業秘密に該当するものと認められる。 ❞
上記のように、裁判所は被控訴人が主張する独自部分は被控訴人が独自に開発したものとは認めがたいと判断しています。
そうすると、被控訴人が営業秘密であると主張する図面の非公知性や有用性も認められないのではと思いますが、そうではなく、図面には金型及びサイジングを開発するノウハウが化体されているとして図面の営業秘密性を認めています。 すなわち、図面の上位概念である独自部分は公知であるが、この独自部分にある程度のノウハウが与えられた図面は非公知であり、有用性も認められるということでしょう。

」で論じた図面等の下位概念ほど有用性(又は非公知性)が認められやすいという考察と通じるものがあると思われます。 

ここで、技術情報の上位概念は営業秘密性が認められずに、下位概念の営業秘密性が認められた裁判例として、接触角計算プログラム事件(知財高裁平成28年4月27日判決 平成26年(ネ)第10059号)があります。

この事件では、原告は接触角計算プログラムのアルゴリズムとソースコードについて営業秘密性を主張しました。 これに対して、上位概念であるアルゴリズムについて、裁判所は「原告アルゴリズムの内容の多くは,一般に知られた方法やそれに基づき容易に想起し得るもの,あるいは,格別の技術的な意義を有するとはいえない情報から構成されている」として、その有用性及び非公知性を認めませんでした。 
一方で、下位概念であるソースコードに対して、裁判所は有用性及ぶ非公知性を認め、その営業秘密性を認めました。

このように、同じ技術思想に基づく技術情報であっても図面やソースコードのような下位概念の方が営業秘密性を認められやすいという傾向にあるようです。 技術情報を営業秘密化する場合には、このことを十分に認識し、適切な情報を秘匿化するべきでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2021年9月5日日曜日

自社製品のリバースエンジニアリングによって喪失される営業秘密としての非公知性

情報が営業秘密として認められるためには秘密管理性、有用性、非公知性の3要件が全て認められなければなりません。特に技術情報を営業秘密として管理する場合には、留意するべき点がいくつかあります。自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性が失われる場合があるということもこの留意点の一つです。

すなわち、技術情報を営業秘密として管理していたものの、この技術情報が使用された自社製品が販売され、リバースエンジニアリングによってこの技術情報の非公知性が喪失し、営業秘密として認められなくなる可能性があります。なお、非公知性の判断の基準時は、情報を営業秘密管理したときではなく、不正行為がおこなわれたときです。このため、上記のような技術情報を営業秘密として管理していても、非公知性が失われた後に持ち出された場合には営業秘密侵害とはなりません。

では、どのようなリバースエンジニアリングによって非公知性が失われたとされる技術情報にはどのようなものがあるのでしょうか?下記の表は、そのような裁判例の一覧です。


ここで、リバースエンジニアリングによっても公知性が失われないとする判断基準は、セラミックコンデンサー事件において「専門家により,多額の費用をかけ,長期間にわたって分析することが必要である」と判示されており、他の裁判でもこの基準が用いられています。

すなわち、下記3つの要件が判断基準とされています。
①特殊な技術を要するかどうか(特殊技術基準)
②相当な期間が必要かどうか(相当期間基準)
③誰でも容易に知ることができるかどうか(情報取得容易性基準)

そして、上記一覧から分かるように、機械系に関する技術情報はリバースエンジニアリングによって公知となったとされる可能性が高いかと思います。
この理由は、当該製品を寸法を測定することにより、技術情報を容易に知り得る場合が多いためです。しかしながら、セラミックコンデンサー事件や半導体封止機械事件では、営業秘密としている図面等の情報量が多く、それをリバースエンエンジニアリングで知り得ることは上記3つの要件を満たさないため、非公知性は喪失していないと判断されました。

また、化学系に関してはあまり裁判例も多くありませんが、日本ペイントデータ流出事件と錫合金組成事件が参考になるでしょう。この2つの事件は、日本ペイントデータ流出事件が非公知、錫合金組成事件が公知とのように真逆の判断となっています。
この理由には、日本ペイントデータ流出事件ではリバースエンジニアリングされる技術情報が塗料を構成する原料及び配合量、より具体的には塗料を構成する樹脂や顔料の原料や配合量であり、この情報をリバースエンジニアリングにより知り得ることはやはり難しい一方、錫合金組成事件では錫器の製造に使用する合金の組成がリバースエンジニアリングされる技術情報であることから、比較的容易に知り得るという判断のようです。
なお、これらの事件では、リバースエンジニアリングに用いられる技術としてXRD(広角X線回析法)やICP発光分光分析法といったような、一見すると特殊な技術が用いられていると思われます。しかしながら、これらの技術は当該分野では一般的な分析技術であり、”特殊”という位置付けではないでしょう。そのように考えると、特殊技術基準はリバースエンジニアリングの対象となる技術情報毎に異なると思われます。すなわち、特殊技術水準は、リバースエンジニアリングの対象となる技術情報において”特殊”であるか否かで判断されると考えられるでしょう。

技術情報を営業秘密管理するか否かは上記のことを考慮するべきであり、自社製品のリバースエンジニアリングによって容易に知り得る技術情報はそもそも営業秘密となり得ないことを正しく認識しなければなりません。したがって、このような技術情報は営業秘密管理を視野に入れずに特許出願してもよいし、自社製品が販売されるまでは営業秘密管理する一方で、販売される直前に特許出願又は実用新案出願することもよいでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年12月13日日曜日

判例紹介:特許権ラインセンスと共に開示した技術情報について

今回は、特許権を他社にライセンスすると共に当該特許権に係る製品を製造するために開示した技術情報の取り扱いについての裁判例(大阪地裁令和1年10月3日判決(平成28年(ワ)3928号))です。

被告は、原告のトランスに係る特許権のライセンス(本件各基本契約)をノウハウ(本件技術情報)の開示と共に受けました。そして、被告は、特許権が消滅したため本件各基本契約は終了し、本件技術情報にはWBトランスを分解すれば誰でも知り得る情報しか含まれておらず、すでに公知であることを理由にロイヤルティの支払を拒む旨を原告に通告しました。

これに対して原告は、被告らは本件技術情報に対するロイヤルティの支払義務を負っているのに、ロイヤルティの支払を予め拒絶しているとして催告を経ず、被告らの債務不履行を理由に本件各基本契約を解除した旨を主張し、ランニングロイヤルティの不払いその他本件各基本契約の債務不履行があったと主張しています。

具体的には原告は、本件技術情報である技術資料中に、トランスの製作品を用いて計測した実測値が記載されており、「WBトランスの設計作業において,最低限,①一次巻数,②二次巻数(一次巻数に特定の数値を乗じた数値),③一次巻線径,④二次巻線径を算出する必要があるところ,これらは,原告から開示された数値(本件技術資料中,電気設計一覧表及び電気設計書に記載。)がなければ被告らにおいて算出することができない」と主張しました。


これに対して裁判所は、以下のように判断しました。
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本件技術資料中の電気設計一覧表及び電気設計書において開示された数値は,試作品における実測値にすぎず,被告らにおいても,独自に計測・算出したり,製造元に問い合わせて確認したり,WBトランスの完成品を用いて測定したりすることが可能であったものであるから,原告からの開示がなければWBトランスの設計・製造が不可能であったものとはいえない。
・・・
コイルボビン及びWBトランスの外径寸法や重量は,パンフレットを参照したり,WBトランスの完成品を測定したりすることにより容易に得られる値である(甲57,乙3)。
巻線計画等についても,原告から開示された数値によらなくても,被告らにおいて,使用するコイルボビンの凹状溝の幅と,選択した銅線の径から巻数を算出し,上記のとおり算出された一次巻数及び二次巻数まで,整列巻で巻き回していくことは可能であると考えられる。
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そして、裁判所は以下のように「まとめ」ています。
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(イ) ・・・、本件技術情報の開示を受けなければWBトランスを製造することができないといった事情までは認められず,本件技術情報がWBトランスの製造に必須であることを前提に,本件各基本契約の性質を考えることはできない。
(ウ) また,本件技術情報に記載された数値は,物理的に測定したり,計算によって求めることができるものと考えられるから,WBトランスが市場に出回り,リバースエンジニアリングを行って計測等ができるようになった段階で,公知になるといわざるを得ない。
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このように、裁判所は、特許権のライセンスと共に原告から被告に開示された技術情報は、既に公知である又は製品をリバースエンジニアリングによって知り得る情報であるとして、その営業秘密性を認めず、これにより原告の主張を認めませんでした。

一方で、裁判所は下記のようなことも述べています。
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本件各特許権の明細書等を参照し,流通に置かれたWBトランスに対するリバースエンジニアリングを行ってもなお解明することができず,原告よりその開示を受けない限り,WBトランスの製造はできないというようなノウハウが,本件技術情報に含まれていると認めるべき証拠は提出されていない。
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すなわち、製品のリバースエンジニアリングによってもノウハウが非公知性を喪失せず、当該ノウハウを用いないと製造できないようなノウハウは、特許権が消滅しても保護の対象となり、ロイヤリティの対象となる、ということでしょう。

一般的に、特許権をライセンスする際には、当該特許権に係る製品の製造のためのノウハウも開示することが多いかと思います。
その際、ライセンシーは、開示されたノウハウが一体どのような性質の情報であるのか?もしかしたら、特許権が消滅した後でも、ライセンサーがノウハウに対して継続的にロイヤリティーの支払いを求める可能性が有る情報であるか否かを見極める必要があるかと思います。

また、ライセンサーも同様です。自身が開示するノウハウがどのような性質のものであるかを見極めなければならないでしう。さらに、特許出願の明細書に記載の内容も重要です。特許性が有りそうだからとして、本来開示する必要がない情報(例えば従属項となるような情報)までも開示するよりも、営業秘密として管理する方がよい場合もあるでしょう。技術情報を特許出願をすると公開されるので、再び秘匿化はできません。この認識は強く持つ必要があるかと思います。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年9月20日日曜日

判例紹介:日本ペイントデータ流出事件の刑事事件判決 -リバースエンジニアリングー

日本ペイントデータ流出事件の刑事事件判決(名古屋地裁令和2年3月27日 平28(わ)471号 ・ 平28(わ)662号)の続きです。この事件において日本ペイントの営業秘密を持ち出したとされた被告人は、一審地裁判決では懲役2年6月(執行猶予3年)及び罰金120万円となっています。

この事件は、塗料の製造販売等を目的とする当時の日本ペイント株式会社(判決文ではa社)の子会社であるb株式会社の汎用技術部部長等として、被告人が商品開発等の業務に従事していました。そして、被告人は、a社の競合他社である菊水化学工業株式会社(判決文ではc社)にa社の営業秘密を漏えいし、自身もc社の取締役に就任したというものです。なお、被告人は、a社の元執行役員でもあったようです。

本事件において検察官は、本件情報(塗料の原料及び配合量)は塗料製造において重要な漏洩の許されない非公開情報として管理されており、リバースエンジニアリングや特許公報等によっても本件各塗料の具体的な配合情報は特定できないので、本件情報には非公知性が認められる旨主張しました。
一方で、弁護人(被告)は、リバースエンジニアリングにより本件各塗料と同程度の品質が再現できる程度に配合情報を分析できる等を主張し、本件情報には非公知性が認められないと反論しました。

この結論としては、裁判所は本件情報の非公知性を認めています。
理由は以下の通りです。なお、塗料の分析は被告人の転職先であるc社がd社に依頼して行っています。すなわち、c社は原告である検察に対して協力的であったことがうかがわれます。
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塗料を各種の方法で分析すると,塗料を構成する樹脂がどのようなもので構成されているか,塗料を構成する顔料にどのような金属が入っているかなどは分析できるものの,塗料を構成する具体的な原料及び配合量まで特定することは困難である。c社が株式会社d(以下「d社」という。)に対して依頼したc社の塗料「●●」の分析結果をみても,XRD(広角X線回析法)によって明らかになったのは,塗料に含まれる無機成分とその定量値であり,STEM(走査透過電子顕微鏡法)-EDX(エネルギー分散型X線分光法)によって明らかになったのは,塗料中の無機成分の粒子を構成する金属の種類や粒子の大きさであって,これらの結果から塗料の原料及び配合量を具体的に特定することはできない。また,d社が行ったその他の検査,IR(赤外分光光度計による分析),熱分解GC/MS測定及び固体NMR測定によって明らかになったのは,塗料に含まれる樹脂成分を構成するモノマー及びその構成比であり,塗料に含まれる樹脂について,その原料及び配合量が具体的に特定された訳ではない。
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これに対して弁護人は、本件各塗料の配合情報はリバースエンジニアリングによって多額の費用や長時間を要することなく特定が可能であると主張しました。この主張は、営業秘密における非公知性がリバースエンジニアリングによって喪失したか否かの判断基準となっており、当然の主張でしょう。
しかしながら、裁判所は以下のように弁護人の主張を認めませんでした。なお、下記に登場するEはb社の代表取締役であり、Fはc社の元従業員です。
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塗料の分析は,専門的知見を有する者が,相当高額の専門機器を用いて初めて行えるものであり,実際に,c社では,100万円の費用を掛けてd社に分析を依頼している。Fの証言によると,c社では,STEM-EDXの測定や固体NMR測定等においてd社と同レベルの分析は行えないことが認められる上,EとFの証言によると,d社の分析では,樹脂の構成や顔料の成分とその定量値は明らかになったものの,具体的な原料やその配合量までは特定できなかったと認められる。また,d社はXRDの報告書を作成するのに1か月以上の期間を要している。そうすると,リバースエンジニアリングによって本件各塗料の配合情報について具体的な原料やその配合量まで特定することは,不可能とまでは断定できないにしても,そのためには相当高額の費用と相当な期間をかけることが必要であると認められる。したがって,リバースエンジニアリングによっても容易に本件情報を知ることができるとはいえず,本件情報の非公知性は失われない。
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なお、上記に対して弁護人は、塗料の分析に100万円程度の費用を掛けたとしても、a社のような大手の塗料メーカーにとってはそれほど高額ではないとも主張しています。
この主張について、私もリバースエンジニアリングの費用が高額か否かは、リバースエンジニアリングを行う企業規模によってその基準が変わる可能性が有るのではないかとも思っていました。なおa社は、ウィキペディアによると資本金7億3900万円であり、2019年の売上高は646億4400万円であり、100万円の費用は大したことはないとも思えます。

これに対して裁判所は以下のように判断しています。
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本件各塗料の配合情報を特定することが容易かどうかの判断は,c社がd社に支払った費用の金額だけで決まるものではなく,前記のとおり必要な分析に要する費用や期間,労力などを総合的に考慮して判断されるべきである。この点をEらの証言やd社の分析結果等を踏まえて検討すると,前記のとおり,本件情報は容易に知ることができるものとはいえない。
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このように、リバースエンジニアリングが容易であるか否かは実際に支払った費用のみで決まるのではなく、総合的に判断されるものと裁判所は判示しました。
なお上記のように証人の証言でも「樹脂の構成や顔料の成分とその定量値は明らかになったものの、具体的な原料やその配合量までは特定できなかった。」とあります。すなわち、本事件ではリバースエンジニアリングによって塗料の情報の一部は明らかになっておらず、リバースエンジニアリングによる分析結果に基づいて原料や配合量を特定することは不可能ではないとしても、さらなる費用と期間を要することが示唆されています。

物質の組成等を営業秘密とした場合における過去の裁判例としては、錫合金組成事件がありました。この事件では、錫合金の組成がリバースエンジニアリングによって特定できるとしてその非公知性が認められませんでした。
一方で今回の事件では、塗料の組成等がリバースエンジニアリングよっても特定できず、非公知性が認められるというものです。
錫合金は無機材料、塗料は有機材料という違いがあり、リバースエンジニアリングよる組成等の特定の困難さも異なるでしょう。この二つの裁判例から、物質の組成を営業秘密とする場合のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の判断基準がある程度明確になってきたかと思います。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年8月30日日曜日

自社技術の公知性管理

自社技術の公知性管理、分かるような分からないタイトルです。
何を言いたいかといいますと、自社技術は何が公知となっているか、換言すると営業秘密でいうところの非公知性を保っている自社技術は何かを正確に把握することです。

案外これを正確に把握している企業は多くはないのでしょうか?
その理由は、自社製品のリバースエンジニアリングによって、自社技術の何が公知となっているかを判断することは難しいと思われるからです。

ここで、特許出願を行う場合、製品化により新規性が失われるので製品化の前に特許出願を行うことが一般的です。そして、特許出願から一年半後に特許公開公報という形で特許出願に係る技術情報は公知となので、特許出願では自社技術の何が公知となっているかは一目瞭然です。

では、営業秘密として管理されている技術情報はどうでしょうか?
営業秘密として管理している技術情報が公知となったか否かも、主に当該技術情報を用いた製品の販売の有無に依存します。このため、自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の判断基準の理解が必要不可欠となります。


この技術情報の非公知性判断を誤ると、既に公知となっている技術情報であるにもかかわらず、そのような技術情報を秘密であると扱い、その後の判断を誤る可能性が有ります。

例えば、秘密保持契約を締結して他社に開示した技術情報(ノウハウ)です。既に非公知性を失っているにも関わらず、非公知性を有していると誤って判断して開示し、当該技術情報を当該他社が目的外利用したとして裁判を提起した挙句に敗訴してしまうとか・・・。

また、逆の場合もあるでしょう。
本来、営業秘密としての非公知性を喪失していないにもかかわらず、自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性を喪失していると誤った判断を行い、秘密保持契約を締結しないままに当該技術情報を開示してしまうとか・・・。

私は2年前に「リバースエンジニアリングによる営業秘密の非公知性判断と自社製品の営業秘密管理の考察」という形で、リバースエンジニアリングによる非公知性喪失をまとめました。そこで分かったきたことは、機械構造に関する技術情報は自社製品のリバースエンジニアリングにより非公知性が喪失していると判断され易いことです。その理由は「計測すれば比較的簡易にわかる」とうことです。

また、合金の組成に関しても分析により非公知性が喪失していると判断された裁判例がありました。しかしながら、物質の組成に関する裁判所の非公知性判断は未だ多くはありません。このため、どのような物質の組成が製品化のリバースエンジニアリングにより非公知性を喪失するか否かは、裁判所の判断からは一律には分かりません。
そうすると、やはり自社でその判断を行う必要があるでしょう。少ない裁判例を拠り所とするものの、当該物質に対する分析手法を理解し、その分析手法によって非公知性を喪失しているといえるか否かを判断する必要があるでしょう。

そして、その結果に応じて当該技術情報を営業秘密として管理するか否か?それとも製品化の前に特許出願をするのか?あるいは、敢えて自由技術化して他社の使用を促して市場拡大を目指すのか?何が適切な技術情報管理であるか考えどころです。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年8月23日日曜日

営業秘密の特定について 特許庁オープンイノベーションポータルサイトから

特許庁がオープンイノベーションポータルサイトを開設しました。
このオープンイノベーションポータルサイトでは、オープンイノベーションを行うにあたり必要な各種契約書のモデルを開示しています。
このモデル契約書は、オープンイノベーションによってノウハウ(営業秘密)を相手方に開示する場合等に参考になるかと思います。このブログでもオープンイノベーションについて取り上げることが有りますが、オープンイノベーションに限らず、取引先に営業秘密を開示することによって、開示先が営業秘密の目的外使用等を行い、裁判に発展することがあります。そのようなことを未然に防ぐためにも、営業秘密の開示先となる相手方との契約書は大変重要になります。

ここで、営業秘密を開示するために相手方と秘密保持契約を締結する際には、秘密保持の対象とする技術を特定する必要があります。秘密保持の対象を特定しないまま、相手方に営業秘密を開示すると、開示した内容のうちどれが秘密保持の対象であるかを相手方が認識できない可能性が有ります。そうすると、当該営業秘密を相手方が目的外使用したとしても、秘密保持の対象が特定されていないことにより、不法行為とは認められない可能性があります。
このため、秘密保持の対象を特定することは非常に重要です。なお、秘密保持の対象を特定することは、取引先だけでなく従業員に対しても需要なことであり、営業秘密管理の基本といえるでしょう。

この点について、モデル契約書_秘密保持契約書(新素材)の10ページには以下のような記載があります。
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秘密保持契約締結前に自社が保有していた秘密情報のうち特に重要なものだけでも秘密保持契約の別紙において明確に定めておくことが考えられる。
 ・ これにより、自社の重要な情報を確実に秘密情報として特定できるとともに、上記リスクを回避することができる。なお、秘密保持契約の別紙において定義をする際には、弁理士に対して、特許請求の範囲を記載する要領で作成を依頼することも考えられよう。
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上記下線で示したように、営業秘密を特許請求の範囲を記載する要領で作成することが推奨されています。今までも、営業秘密を特定する場合には、特許請求の範囲のような記載が提案されていましたが、行政による推奨は初めてではないでしょうか。また、その作成を弁理士に依頼することまで言及しています。これは、弁理士の仕事の幅を広げることになるので、我々にとっては好ましい一言でしょう。


「特許請求の範囲」を記載する要領とはいえ、やはり営業秘密を特定するにあたっては3要件を理解する必要があります。
このうち、「秘密管理性」については他社への営業秘密の開示であるので、秘密保持契約がその役割を担うことになるので、営業秘密の特定という点ではさほど強く意識することはないでしょう。一方、「有用性」と「非公知性」については技術情報を営業秘密とする上では、意識する必要があるかと思います。

まず、有用性に関しては、有用性が満たされる程度に技術情報を特定する必要があります。すなわち、あまりにも漠然とした技術情報で営業秘密を特定すると、その有用性に疑義が生じます。特に、その構成から有用性、換言すると効果が理解し難い化学等の分野では、技術情報をどのように特定するかが重要になるかと思います。

また、製品が販売されることによって、それまで営業秘密であった技術情報の「非公知性」が失われることになるかもしれません。すなわち、当該製品のリバースエンジニアリングによって当該技術情報の非公知性が失われる可能性があります。このため、製品化によって非公知性が失われる技術情報と、製品化しても非公知性が失われない技術情報は分けて特定するほうがいいでしょう。
その理由は、一般的な秘密保持契約において、秘密保持の対象となる情報は公知となるとその対象から外れるためです。このモデル契約書にも下記のような条項があり、下記⑤がそれにあたるでしょう。

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2前項の定めにかかわらず、受領者が書面によってその根拠を立証できる場合 に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。 
① 開示等を受けたときに既に保有していた情報 
② 開示等を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した 情報 
③ 開示等を受けた後、相手方から開示等を受けた情報に関係なく独自に取得 し、または創出した情報 
④ 開示等を受けたときに既に公知であった情報 
⑤ 開示等を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
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もし、非公知性が失われた技術情報と非公知性が失われていない技術情報とを同じ項目で混在させて特定した場合、当該項目が秘密保持の対象となったか否かが不明確となり、トラブルの元になる可能性があります。このため、営業秘密とする技術情報が、製品化により公知となるか否かの把握は重要な作業であると考えます。

オープンイノベーションは、自社にない技術や自社だけでは開拓できない市場を手に入れるチャンスであるため、今後、より高い事業効率を求めるために広まることは間違いないでしょう。
しかしながら、自社の営業秘密(ノウハウ)の相手方への開示は高いリスクを伴う行為です。そのようなリスクをいかに低減するのか、また、営業秘密として守ることができる技術情報と守ることができない技術情報を明確にするためにも営業秘密の特定は重要な作業となります。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年5月28日木曜日

-判例紹介ー 取引先に営業秘密を開示したものの、その非公知性が否定された裁判例 その2

前回紹介した、取引先と秘密保持契約を締結して情報を開示したものの、その情報は営業秘密ではないとされた裁判例(東京地裁 令和2年3月19日 平成20年(ワ)23860号)の続きです。
本事件において原告は、シリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの粘着面の原材料として「 東レ(株) DOW CORNING MG7-9850 A剤・B剤 」を用いることを営業秘密であると主張しました。しかしながら、裁判所は当該情報について営業秘密性を認めませんでした。

一方で原告は、さらに、被告が被告製品のPMDA申請に際してシリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの端部を丸みを帯びた形状とするという情報を開示した行為が本件秘密保持義務違反に該当するとも主しました。
確かに、秘密保持契約を締結していれば、秘密保持の対象とする情報が営業秘密でなくても、秘密保持契約に違反した使用をしていれば民事的責任を問えるでしょう。しかしながら、これについても下記のように裁判所は認めませんでした。

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皮膚バリア粘着プレートの原材料にシリコーンゲルを用いるという情報が,本件契約前の交渉段階から既に公知の情報であったことは上記(第4の1)認定のとおりである。また,その端部を丸みを帯びた形状とするという点も,絆創膏などの代表的な皮膚保護剤や原告製品に先行して販売されていたシリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの形状からも明らかなように,その端部は角張った形状か丸みを帯びた形状の製品が多く(公知の事実及び前記認定事実1(1),シカケアの説明文書においても角を丸くした形でシカケアを切って手術痕等に貼付する方法が説明されていること(前記認定事実1(1)ア)などに照らすと,皮膚バリア粘着プレートの端部を丸みを帯びた形状とするという情報は,本件契約前の交渉段階から既に公知の情報(本件契約の契約書第9条③の4)といえる。そうすると,原告が指摘する情報は,いずれも「相手方の技術上及び取引上の情報」(同契約書第9条①②)に該当するとは認められない。
―――――――――――――――――――――――――――


ここで、原告と被告とが締結した秘密保持契約は下記のものです。

―――――――――――――――――――――――――――
第9条(秘密保持義務) 甲(原告)と乙(被告)は、事前に相手方の書面による承諾を得なければ、次の情報を第三者に開示または漏洩してはならない。   
① 本件契約及び個別契約の締結前に行われた交渉の段階において、図面・仕様書・資料・材料・型・設備・見積依頼・口頭の説明、その他により知り得た相手方の技術上及び取引上の情報。   
② 前項のほか、本件契約及び個別契約により知り得た相手方の技術上及び取引上の情報   
③ 前項の規定は、次の各号に定める情報には適用しない。 
 1 相手方から知り得た時点で,既に保有している情報 
 2 独自に開発した情報 
 3 秘密保持義務を負うことはなく,第三者から正当に入手した情報 
 4 公知になった情報
 ―――――――――――――――――――――――――――

すなわち、裁判所は、秘密保持契約にも「公知となった情報」は秘密保持を適用しないとの規定が設けられているために、公知であるとして営業秘密と認められなかった情報も、秘密保持の対象とはならないと判断しました。

このような事例は、本事件だけではありません。以前に紹介した攪拌造粒機事件があります。
この事件では原告が被告に攪拌造粒機の製造を委託し、秘密保持契約を締結して図面を被告に開示したものの、委託契約が終了した後に被告が当該図面を使用して攪拌造粒機を製造販売したというものです。この事件では、原告製品は所謂リバースエンジニアリンが可能でり非公知性を喪失していることを理由に、裁判所は原告製品図面を営業秘密とは認めませんでした。
そして、原告は、被告による秘密保持契約違反も主張しましたが、この秘密保持契約も公知となった情報を秘密保持の対象から除外する規定が設けられていたために、認められませんでした。

このように、秘密保持契約を締結していても、公知となった情報は秘密保持の対象から除外する等の規定が設けられていれば、非公知性が喪失しているとして営業秘密と認められなかった情報は、秘密保持の対象からも除外されることになります。

これは、特別なことではなく、上記のような除外規定が設けられていれば当然のことです。
今回紹介した事件では、原告は既に非公知性を失っている情報であるにもかかわらず、当該情報が営業秘密のみならず、被告との間で締結した秘密保持の対象になると考えていました。その結果、不要な争いとなってしまいました。
このようなことから、自社が秘密と考える情報は、秘密保持の対象となり得るのかを十分に検討し、相手先と契約を締結する必要があります。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年5月22日金曜日

-判例紹介ー 取引先に営業秘密を開示したものの、その非公知性が否定された裁判例

今回は、取引先と秘密保持契約を締結して情報を開示したものの、その情報は営業秘密ではないとされた裁判例(東京地裁 令和2年3月19日 平成20年(ワ)23860号)について紹介します。

本事件において、原告と被告は、平成27年10月8日に原告が被告に対して皮膚バリア粘着プレートの製造を委託することなどを定めた製造委託契約(以下「本件契約」という。)を締結しました。
この本件契約の契約書第9条には以下の記載があります。

第9条(秘密保持義務)
甲(原告)と乙(被告)は、事前に相手方の書面による承諾を得なければ、次の情報を第三者に開示または漏洩してはならない。  
① 本件契約及び個別契約の締結前に行われた交渉の段階において、図面・仕様書・資料・材料・型・設備・見積依頼・口頭の説明、その他により知り得た相手方の技術上及び取引上の情報。   
② 前項のほか、本件契約及び個別契約により知り得た相手方の技術上及び取引上の情報  
③ 前項の規定は、次の各号に定める情報には適用しない。
    1 相手方から知り得た時点で,既に保有している情報
    2 独自に開発した情報
    3 秘密保持義務を負うことはなく,第三者から正当に入手した情報
    4 公知になった情報

そして、原告は、平成27年11月17日に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対し、皮膚バリア粘着プレート「マムズケア(Mom’s Care)」の一種で、帝王切開用の「マムズケア 16(Mom’s Care 16)」(以下「原告製品」という。)について、医療機器製造販売届(以下「PMDA申請」という。)をしました。また、被告も、平成27年12月28日に被告製品のPMDA申請をしました。

原告は、平成28年1月18日に被告に対し、東レ・ダウコーニング社(訴外東レ)が製造・販売する、粘着面の原材料として記載されている「DOW CORNING MG7-9850 A剤・B剤」(本件東レ製品)を原告製品の粘着面に用いることを提案し、原告と被告は原告製品について、原材料として粘着面に原告が支給する本件東レ製品を使用し、非粘着面に「Mom’s シリコーン」を使用することを合意しました。

なお、原告製品は、皮膚に接する粘着性のあるシリコーン面と、粘着性のない面からなる伸縮性に富んだシリコーンシートであり、帝王切開手術専用の皮膚バリア粘着プレートであり、原告製品は、帝王切開手術の手術痕に貼付することにより皮膚バリアとして外部からの刺激等を和らげるとともに、手術痕が瘢痕やケロイドになるのを予防するものです。

原告は平成28年2月24日から現在に至るまで原告製品を販売し、被告は平成28年2月22日から同年6月20日までの間、本件契約に基づいて原告製品を製造して原告に納品したものの、本件契約は平成28年10月8日に終了しました。

そして、被告は、遅くとも平成29年12月1日には被告製品の販売を開始しました。この被告製品は、粘着性のあるシリコーン面と粘着性のないシリコーン面からなる伸縮性のあるシリコーンシートであり、切開手術、腹腔鏡手術の手術痕などの皮膚部位を保護し、手術痕が肥厚性瘢痕やケロイドになるのを防止する皮膚バリア粘着プレートであり、その粘着面には本件東レ製品が用いられています。



このような経緯の元、本事件において原告は、シリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの粘着面の原材料として「 東レ(株) DOW CORNING MG7-9850 A剤・B剤 」を用いることを営業秘密であると主張しました。
そして、原告は、帝王切開手術の手術痕の保護に適したシリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートという原告のアイディアを被告が模倣し、原告製品のPMDA申請から約1か月後に、原告に何らの説明もなく被告製品のPMDA申請をしただけでなく、平成28年8月以降、本件東レ製品を用いて原告製品と同じ形状・サイズの被告製品を製造・販売したことが、被告が「不正の利益を得る目的」(不正競争防止法2条1項7号)をもって本件情報を使用したと主張しました。

 これに対して裁判所は、以下のようにして原告主張の営業秘密の非公知性を否定しました。「手術痕や傷痕を保護するためのシリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートが本件契約の数年以上前から複数の会社から製造,販売されていたこと,シリコーンソフトスキン粘着剤の粘着技術が遅くとも平成元年頃からは傷の治療に用いられていたこと,シリコーンソフトスキン粘着剤である本件東レ製品が遅くとも平成20年12月頃には販売され,同時期に発行された業界雑誌において製品の特性等も踏まえて紹介されていたことのほか,訴外東レが,本件東レ製品について,瘢痕治療を含む皮膚への付着を対象とする製品であること及び日本国内だけでなく海外にも広く供給することが可能であることなどを自社のウェブサイトにおいて紹介していることが認められる。
 (2)  以上によれば,シリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの粘着面に本件東レ製品を用いることができるという情報は,平成27年7月までには,広く知られていた情報であったといえる。本件東レ製品はそのような用途で用いられる汎用品であるから,少なくとも,原告が,原告製品の製造等を依頼するためにエフシートを持参して被告を訪問した平成27年7月16日時点において,シリコーンゲルを用いた皮膚バリア粘着プレートの粘着面の材料として本件東レ製品を用いるという本件情報が非公知の情報であったとは認められない。

一方、原告は、本件東レ製品は医療用に開発された特殊素材の製品で、医療品への使用用途以外にはメーカーに卸してもらえない製品であり、一般に市場に出回っている原材料ではないと主張しました。しかしながら、これに対しても裁判所は、本件東レ製品を使用するのに一定の手続を要したとしてもそれは本件情報の非公知性に影響しないと判断しました。

このように、本事件では、原告が営業秘密であると主張する情報に対する非公知性が否定され、当該情報は営業秘密ではないとされました。
これにより、原告と被告とで締結した秘密保持契約の対象となる情報から、当該情報が除外されることとなります。

次回に続きます。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年4月18日土曜日

ー判例紹介ー 新日鉄営業秘密流出事件の知財高裁判決

新日鉄(現日本製鉄)からの電磁鋼板に関する技術情報の流出事件の知財高裁判決(知財高裁令和2年1月31日判決 令和元年(ネ)10044号)です。

本事件は、地裁判決において、電磁鋼板の技術情報を韓国のPOSCOに不正に開示したとして、新日鉄の元従業員に対する約10億円の損害賠償請求が認められた事件です。
結論から言いますと、元従業員による控訴は棄却されました。

知財高裁の判決文は地裁もそうでしたが黒塗り箇所が非常に多く、詳細な内容は判然としませんが、控訴人である元従業員の主な主張としては、控訴人は電磁鋼板の技術情報を漏えいしていないというものと、技術情報が非公知性を有していないということのようです。

まず、元従業員が漏えいそのものをしていないという主張については、元従業員が様々な証拠をあげたようですが(黒塗りが多く詳細は不明です。)、裁判所はそれを認めませんでした。
なお、少々参考になるかなと思われることとしては、下記のような裁判所の判断がありました。
「控訴人が挙げるA作成の陳述書(乙4,12),B作成の陳述書(乙5)及びC作成の陳述書(乙6)中には,控訴人が本件技術情報のPOSCOへの不正開示行為を行っているところを見たことはない旨などが記載されているが,他方で,控訴人が本件技術情報の不正開示行為を行った事実を否定する具体的な事情の記載はないから,上記各陳述書は●●●●●●●●●●●●●●●●を揺るがすものではない。」
詳細は不明ですが、おそらく控訴人は、元同僚と思われるA,Bによる「控訴人が本件技術情報のPOSCOへの不正開示行為を行っているところを見たことはない」との趣旨が記載された陳述書も提出したようです。しかしながら、流石にこれだけでは、原判決を覆すことはできず、裁判所は「控訴人が本件技術情報の不正開示行為を行った事実を否定する具体的な事情の記載はない」として控訴人の主張を認めませんでした。



一方、電磁鋼板の技術情報に対する非公知性喪失の主張ですが、控訴人は多くの公知文献を挙げて非公知性の主張を行いました。これは、特許でいうところの新規性の争いと同様でしょうが、やはり黒塗りの箇所がほとんどであり、当然ながら電磁鋼板の技術情報の詳細もわからないため、裁判所の判断の適否を検討することもできません。

そのような中でも裁判所は、下記のようにも判断しています。
「本件技術情報は,電磁鋼板の生産現場で採用されている具体的条件を含むものであり,乙11記載の公知文献等に記載されている研究開発段階の製造条件とは,技術的位置付けが異なる。また,乙11記載の公知文献等に記載されている製造条件は,文献毎にばらつきがあったり,一定の数値範囲を記載するにとどまるものである。そして,電磁鋼板は多段階工程で製造され,高品質の電磁鋼板を製造するためには,各工程の最適条件の組合せが必要とされるのであって,一工程の一条件のみでは高品質の電磁鋼板を製造することはできない
したがって,乙11記載の公知文献等に本件技術情報の具体的な条件を含む記載があるというだけでは,生産現場で実際に採用されている具体的な条件を推知することはできず,非公知性は失われていないというべきである。 」

上記のうち「技術的位置付けが異なる」とは具体的にどのようなことであるかは不明ですが、想像するに乙11の公知文献には、電磁鋼板の製造条件と同様の条件が記載されていおり、その当該条件が乙11と電磁鋼板の製造とでは作用効果が異なるということなのかもしれません。
また、「乙11記載の公知文献等に記載されている製造条件は,文献毎にばらつきがあったり,一定の数値範囲を記載するにとどまるものである。・・・高品質の電磁鋼板を製造するためには,各工程の最適条件の組合せが必要とされるのであって,一工程の一条件のみでは高品質の電磁鋼板を製造することはできない。」との裁判所の判断からは、公知文献に一部の条件が記載されているとしても、「最適条件の組合せ」の非公知性を否定するものではないということが分かります。当然といえば、それまでですが、営業秘密の非公知性を否定するのであれば、全く同一の情報が記載されている公知文献等が必要でしょう。

本事件は、知財業界でもよく知られた事件でありますが、黒塗り箇所が非常に多く内容が判然としません。営業秘密侵害事件なので、必然的に黒塗り部分が多くなるのは必然ですが、非公知性や有用性に対しては裁判所がどのような技術的な判断をしたのかをやはり知りたいところです。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2020年4月3日金曜日

日本ペイントデータ流出事件(刑事事件)の地裁判決

以前から気になっていた事件である日本ペイントデータ流出事件の地裁判決がでました。
判決では、被告に対して懲役2年6月、執行猶予3年、罰金120万円の有罪判決でした。被告側は控訴するとのことですので、これで確定ではありません。


本事件は、日本ペイントの元執行役員が菊水化学へ転職する際に、日本ペイントの塗料の原料や配合等を示す情報を持ち出し、菊水化学で開示・使用したとする事件です。日本ペイントはこの元執行役員を刑事告訴(2016年)し、菊水化学と元執行役員に対して民事訴訟を提起(2017年)しています。

この刑事事件では、被告である元執行役員は、無罪を争っていました。報道からは、おそらく秘密管理性、有用性、非公知性の全てを争っていたと思われます。また、菊水化学も被告側の立場にたっていたようです。民事訴訟でも争っているので、当然のことかと思います。


ここで、秘密管理性の有無については判断が比較的容易かと思われ、起訴されているのでこれを被告側が覆すことは難しいのではないかと思います。

一方、有用性と非公知性はどうでしょうか。これらは完全に技術論になるかと思います。
この点、毎日新聞の上記記事では裁判所が「特許公報や分析で原料や配合量を特定することは容易ではない」と判断したとあります。
また、同様に日経新聞の上記記事では「弁護側はこれまでの公判で、データが特許公報に記載されている公知の事実だったと主張。」や「検察側は「特許公報を読んでも具体的な配合の情報までは特定できない」と反論。」とあります。
被告は特許公報等によって有用性や非公知性を否定する主張を行ったようです。

ここで、営業秘密の刑事事件において、技術情報を営業秘密とした場合の有用性や非公知性を本格的に争った事件はこれ以外にないかもしれません。そういった意味でもこの判決には非常に興味があります。
果たして、裁判所の判断に民事事件とは異なる部分があるのか否か、また、被告側はどのような論理展開を行ったのか等、参考になることは多いかと思います。

特に、特許公報に基づいて被告側はその営業秘密性を否定しています。民事事件でも特許公報に基づいて営業秘密性を否定する主張はさほど多くはありません。

また、毎日新聞の記事では、「特許公報や分析」で原料や配合量を特定することは容易ではないとあります。この点に関して、日経新聞では裁判所の判断が多少詳細に「特許公報などから原料をすべて特定するには相当な労力と時間が必要」とのように記載されています。この日経新聞の記事からすると、被告は原告製品のリバースエンジニアリングによってその非公知性を否定したのかもしれません。もしそうだとすると、用いた分析方法についても被告側は主張しているはずです。

本事件の判決文が公開されれば被告側がどのような主張を行い、それに対して検察がどのような反論を行い、裁判所がどのように判断したかは判決文を見るまで詳細には分かりません。
刑事事件の判決文は、営業秘密侵害事件であっても公開されないものもあるようです。
しかしながら、本事件は今後も非常に参考になる判決であろうと思われますので、ぜひ公開されてほしいところです。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2019年12月20日金曜日

工場見学と営業秘密における非公知性喪失について

取引会社の社員や消費者を対象に工場見学を行う企業もあるかと思います。
工場内で営業秘密に係る技術を実施していた場合に工場見学が行われると、当該技術の非公知性は失われるのでしょうか?

このような場合の参考になる裁判例が、フッ素樹脂ライニング事件 (大阪地裁平成10年12月22日判決 平成五年(ワ)第八三一四号)です。

この事件は、フッ素樹脂シートライニングを行うためのホットガンのノズルの形状が営業秘密(本件ノウハウ)であると原告が主張しているものです。被告は原告の元従業員等であり、原告企業を貸借後に同業他社である被告企業を設立したり、当該被告企業に就職しています。

そして、被告らは、原告においてはノズルを作業員各自が管理し、作業が終了していても特に定められた保管場所に収納していたわけではなく、しかも、当該ノズルを使用して原告工場内あるいは納品先で作業をする際、工場見学者や納品先社員が作業を見学し、ノズルを間近に見たりすることもできたと主張し、本件ノウハウの非公知性を否定しています。

しかしながら、裁判所は以下のように判断して、本件ノウハウの非公知性を認めています。
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原告はノズルの保管ロッカーを定めていたし、溶接作業を原告工場の見学者や納品先の社員に見せていたとしても、ノズル自体さほど大きいものではないのであるから、これら部外者においては、市販品を加工していること自体は理解できても、具体的にどの部分にどのような加工をしたかを知ることは困難であったと推認される。
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要するに、工場見学が行われたとしても、見学者が具体的に知ることができないノウハウ(情報)は非公知性は保たれていると判断されるかと思います。

一方で、生春巻き製造機事件(知財高裁平成30年11月2日判決平成30年(ネ)第1317号 大阪地裁平成30年4月24日判決平成29年(ワ)第1443号)のように、工場見学において製造方法を説明したり、写真撮影を許可した挙句に、見学者との間で秘密保持契約を結ばない場合には、当然、工場見学で積極的に公開したノウハウは非公知性を喪失することとなります。

フッ素樹脂ライニング事件で判示されているように、工場見学により必ずしも営業秘密でいうところの非公知性を失わないとしても、やはり、部外者に対して何を開示するかは慎重になるべきでしょう。
多くの企業が工場見学に対する対応は行っているかと思いますが、必要に応じて、見学者に見せない場所や工程を定めたり、秘密保持契約(誓約)にサインを求めたりすることは当然行うべきです。


ちなみに、特許法における新規性が喪失する場合には公然実施をされた発明が含まれます(特許法29条1項2号)。
ここで、公然実施について審査基準には下記のようにあります。

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「公然実施をされた発明」とは、その内容が公然知られる状況(注 1)又は公然知られるおそれのある状況 (注 2)で実施をされた発明を意味する(注 3)。
(注 1)「公然知られる状況」とは、例えば、工場であるものの製造状況を不特定の者に見学させた場合において、その製造状況を見れば当業者がその発明の内容を容易に知ることができるような状況をいう。
(注 2)「公然知られるおそれのある状況」とは、例えば、工場であるものの製造状況を不特定の者に見学させた場合において、その製造状況を見た場合に製造工程の一部については装置の外部を見てもその内容を知ることができないものであり、しかも、その部分を知らなければその発明全体を知ることはできない状況で、見学者がその装置の内部を見ること、又は内部について工場の人に説明してもらうことが可能な状況(工場で拒否しない)をいう。
 (注 3)その発明が実施をされたことにより公然知られた事実がある場合は、第29条第1項第1号の「公然知られた発明」に該当するから、同第2号の規定は発明が実施をされたことにより公然知られた事実が認められない場合でも、その実施が公然なされた場合を規定していると解される。
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この審査基準の記載を参照すると、工場見学において特許法の新規性が喪失する場合と、工場見学において営業秘密の非公知性が喪失する場合とでは、特許法の新規性喪失の方がより厳しい判断基準(上記(注2))となっているように思えます。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2019年8月1日木曜日

ー判例紹介ー 新日鉄からPOSCOへの営業秘密流出に関する民事訴訟

あまり話題になっていなかったようですが、有名な営業秘密流出事件である新日鉄から韓国のPOSCOへ電磁鋼板に係る営業秘密が流出した事件の民事訴訟の地裁判決(東京地裁平成31年4月24日判決 事件番号:平29(ワ)29604号)がでています。
被告は、新日鉄の元従業員です。報道では、複数の元従業員との和解が成立したともありましたが、和解に至っていなかった元従業員もいたようですね。
なお、この事件は、新日鉄とPOSCOとの間では和解(和解金300億円)が成立しています。

参考:過去の営業秘密流出事件 新日鉄電磁鋼板情報流出事件

本事件は、新日鉄の主張を裁判所が認め、損害賠償金額は弁護士費用相当額9300万円を含む10億2300万円という、個人に対するものとしては驚きの金額です。
なお、この金額は、新日鉄の請求金額と同じであり、裁判所は全面的に新日鉄の主張を認めたようです。

ちなみに、本訴訟によって、原告等を退職後に被告がコンサルタント料として受け取ったと思われる金額も一部明確になっており、それは下記のようなものです。一見したところ、3000万円といった記述もあり、なかなかの金額ですが、当然、損害賠償金には遠く及びません。

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表面処理技術に関して,被告が●(省略)●に対してコンサルタント業務を行う旨のコンサルタント業務委託契約を締結した。
契約期間 平成17年4月から平成18年3月まで 
契約金額 180万円(月額15万円)
契約期間 平成18年4月1日から平成19年3月31日まで 
契約金額 240万円(月額20万円)
契約期間 平成19年4月1日から平成20年3月31日まで
契約金額 504万円(月額42万円)
被告は,●(省略)●においても勤務し,上記⑶の●(省略)●からのコンサルタント業務委託料を含め,●(省略)●から合計で約3000万円の支払を受けた。
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なお、被告も当該情報が営業秘密の三要件を満たしていないことを、それなりに主張しています。
特に本件は技術情報に係るものですので、被告は特許文献を挙げて非公知性がないことを主張したようですが、下記のように裁判所は被告の主張を認めませんでした。
まあ主張の内容からして、被告にとっては苦し紛れの主張だったのでしょう。

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本件技術情報は,その内容からして,原告の管理下以外では一般的に入手できない状態にある情報であるから,公然と知られていない技術情報であると認められる。
これに対して,被告は,本件技術情報には,公知文献等に記載された情報が含まれており,非公知性は認められない旨を主張する。しかしながら,被告が本件技術情報1について指摘する公知文献は何ら証拠提出されていないから,同主張はそもそも失当である上,被告が指摘する特許第2749783号公報及び特開2002-309378号公報について,原告が自認する記載内容を見ても,本件技術情報1である,方向性電磁鋼板の●(省略)●に関する情報が,実務的な有用性を持つまとまりを持った情報として公開されていたと認めるに足りないから,被告の主張は採用することができない。
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被告人は既に控訴していると思われますが、当該技術情報が営業秘密で無いとのような逆転判決はないでしょうから、控訴したとしても良くて損害賠償金の減額にとどまるでしょう。しかしながら、そもそもが10億円という金額ですから、減額されたとしてもやはり支払うことができない金額になるのでしょう。

このように、営業秘密侵害は、個人に対しても民事責任及び刑事責任を問われます。
そして、転職時に営業秘密を持ち出して被告となった場合には、転職先も被告になる可能性があります。
また、転職先が被告にならない場合は、元従業員である被告人は自身のみで民事訴訟等に対応せざる負えず、相当の負担になるかと思います。
さらに、持ち出した営業秘密が原告にとって相当に重要であった場合には、今回のように支払いことが不可能と思えるほどの損害賠償金として支払わなくてはなりません。

営業秘密の不正取得や不正使用は、このような当方もないリスクを抱える行為であることを誰もが知るべきでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年7月25日木曜日

プログラムのリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の主張

技術情報を営業秘密とした場合において、製品をリバースエンジニアリングすることによって当該営業秘密の非公知性は喪失すると判断される可能性があります。
なお、リバースエンジニアリングによる非公知性の喪失が主張された裁判例としては、機械構造や合金の組成等があります。

プログラム(ソースコード)を営業秘密とした場合におけるその非公知性の判断において、プログラムのリバースエンジニアリングによって非公知性が喪失する可能性は多いにあると思いますが、そのような主張を被告が行った裁判例は私が知る限りありません。

ここで、プログラムは、下記のように著作権によっても保護されるものであり、営業秘密の侵害訴訟において著作権侵害の主張もされる場合があります。

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著作権法第2条第1項12の2
プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
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このため、プログラムについてリバースエンジニアリングによる非公知性の喪失の主張が行われない理由の一つとして、当該プログラムに対してリバースエンジニアリングが可能であるとして営業秘密とは認められないと裁判所が判断したとしても、著作権侵害に該当する可能性が高くなるためではないかと考えられます。

すなわち、被告側が原告のプログラムはリバースエンジニアリングによって公知となっていると主張すると、原告側によってリバースエンジニアリングによって当該プログラムの内容を被告が知ったことにより、これに依拠して当該プログラムを被告が複製等したのではないかと主張される可能性があるかと思います。

また、製品によっては、購入者によるプログラムのリバースエンジニアリングを禁止する旨を契約により求める場合もあります。
このような場合において、もし、被告がリバースエンジニアリングによる非公知性喪失を主張した場合には、契約不履行に該当する可能性が考えられます。
なお、このような契約は、当該プログラムの秘密管理性に対して認められやすくなる影響を与えるのではないかと考えます。

このように、営業秘密侵害事件において、プログラムのリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の主張は他の不法行為を自認しかねない可能性を含み得るために、被告としては行い難いのではないかと考えます。
果たして、この考えが正しいのか知るためにも、プログラムのリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の主張を行った裁判例が表れて欲しいのですが・・・。


弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年7月12日金曜日

ー判例紹介ー 営業秘密の知得ルートと不法行為との関係

前回紹介したニット製品事件(大阪地裁平成30年6月21日判決(平30(ネ)1745号))の続きです。前回は、営業秘密ではないとされた情報を他者が使用した場合に、一般不法行為と判断され得るかについて述べましたが、今回は営業秘密の知得ルートについてです。

なお、本事件は、ニット製品の卸売業者である原告会社がニット製品の製造販売業者である被告に対し訴訟を提起した事件(本訴事件)の反訴事件です。このため、被告が営業秘密の保有者であり、原告が被告の営業秘密を使用したとされる立場にあります。
そして、本事件は、被告から開示されたニット製品の製造方法(被告の営業秘密)を、原告が利用して下請けにニット製品を製造させたことが不正行為であると被告が主張しています。

ここで、被告が営業秘密であると主張する本件製造方法の情報は、下記①~③に大別できると裁判所は判断しています。
①使用する抄繊糸に関する情報
②編み方・洗い方・染め方といった具体的な製造工程に関する情報
③製造された製品の取扱方法に関する情報

このうち、①使用する抄繊糸に関する情報は、さらに下記のように細分化できると判断されています。
・「1 原糸」の「(1)メーカー」,「(2)商品名」,「(3)性能」
・「2 組成内容等」
・「3 撚糸」の「(1)撚糸企業」, 「(2)撚糸方法」,「(3)撚糸構成」
・「4 効果」

そして、裁判所は「1原糸」の「(3) 性能」、「2組成内容等」(原糸を除く)及び「4 効果」の情報について、被告が製造した和紙混ニット製品の商品下げ札に表示されている組成内容及び性能であるとして、非公知性を欠くと判断しました。
また、「3撚糸」の「(2) 撚糸方法」及び「(3) 撚糸構成」の情報のうち、「(2) 撚糸方法」の情報について、裁判所は、一般的な撚糸の方法であるところ、撚糸企業において被告が製造した和紙混ニット製品を分析すれば、その製品が「(2) 撚糸方法」の撚糸方法により、「(3) 撚糸構成」の撚糸構成をとったものであることが判明すると認められる(証人被告専務41ページ)ため、非公知性を欠くと判断しました。

次に、「1原糸」の「(1) メーカー」及び「(2) 商品名」並びに「3撚糸」の「(1) 撚糸企業」の情報についてです。
まず、当事者間に争いのない事実として、下記①、②があります。
①原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品には、同情報のうち「1原糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」のものを用いて「3撚糸」の「(1) 撚糸企業」が撚糸したものが使用されていること。
②和紙糸を調達したのが、被告が上記和紙糸を開発する際に「1原糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」の存在を教えたP4が取締役を務めるイシハラであること。

また、イシハラのP4は、和紙糸が「3撚糸」の「(1) 撚糸企業」が撚糸したものであるという情報も知っていたと認められ、原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品に用いた糸はイシハラに調達を依頼したものであると認められています。

このような事実から裁判所は下記のように判断しました。
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原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品に,イシハラが調達した「1原糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」のものを用いて「3撚糸」の「(1) 撚糸企業」が撚糸したものが使用されているからといって,原告会社において,被告から示された上記情報が使用されたとは認められない。したがって,仮に,上記情報に営業秘密該当性が認められたとしても,その不正使用行為があったとは認められない。
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本事件の原告会社、被告、イシハラ、原告会社の下請けにおける情報や和紙糸の流れを図案化すると下記のようになります。
図のように、イシハラから原告会社と被告とに同じ情報が渡されています。そして、原告会社は、和紙糸をイシハラを通じて下請けに供給し、この和紙糸を使用して下請けにニット製品を製造させています。
従って、被告が営業秘密と主張する情報は、原告会社も被告以外から知得しており、このことをもって裁判所は「原告会社において,被告から示された上記情報が使用されたとは認められない。」と判断しています。

以上のことから、他者の営業秘密を当該他社から開示されたとしても、別のルートで同じ情報を知得した場合には、当該情報を使用しても不競法違反とはならないという理解になるでしょう。

ここで、本事件では営業秘密を被告から原告企業へ開示するにあたり、秘密保持契約(NDA)を締結していた事実は認められませんでした。

営業秘密を他者に開示する場合には秘密保持契約は必須ですが、秘密保持契約は何のために行うのでしょうか?
当然、その目的は、営業秘密を第三者に開示したり、目的外使用を防ぐことにありますが、秘密保持の対象が何であるかを明確にすることで、事後の紛争を回避することにあるかと思います。

ここで、一般的な秘密保持契約では、秘密保持の対象外として下記のような条項を設けるかと思います。

① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した 情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

参考:秘密情報の保護ハンドブック 参考資料2 各種契約書等の参考例

本事件では、被告が営業秘密であると主張する情報を、被告も原告会社も同一人物(同一会社)から取得していたようですので、上記例外の①又は②、③に該当するのではないでしょうか?
もし、適切な秘密保持契約を互いに締結していたならば、当該営業秘密が秘密保持の対象外であることが互いに理解でき、不要の争い(訴訟)を避けれたのではないかと思います。
弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年6月5日水曜日

ー判例紹介ー 営業秘密(技術情報)の一部に公知の情報が含まれている場合

営業秘密の三要件である非公知性、これは顧客情報や他社との取引情報等の営業情報を営業秘密とする場合に考慮する程度は低いでしょう。顧客情報や他社との取引情報等は自社でのみ管理するものであり、秘密管理性が満たされていれば通常、社外で公知となっている可能性はほぼないと考えられるからです。

しかしながら、技術情報を営業秘密とする場合には全く異なります。例えば特許公開公報では相当数の技術情報が公知となっています。また、その他の様々な文献でも技術情報は公知となっています。
このため、自社で管理している技術情報の秘密管理性が満たされている場合であっても、当該技術情報の非公知性が満たされているとは限りません。

また、自社開発の技術といってもその内容は公知の情報も多く含まれています。公知情報の組み合わせが新しかったり、当該技術を構成する情報の一部に非公知の情報が含まれるといった感じです。新しい技術といっても、当該技術を構成する情報が全て非公知のものはこの世に存在しないといっても過言ではないでしょう。

では、公知の情報“も”含まれる技術情報が非公知となるボーダーはどのようなものでしょうか?そのような視点で今回紹介する裁判例は、クロス下地コーナー材事件(平成30年 4月11日 福井地裁 平26(ワ)140号)です。

本事件は、原告が被告会社との間で基本契約を締結し、建築資材であるクロス下地コーナー材の製造を委託していたという経緯があります。そして、被告会社は、かつて原告から上記基本契約に基づき開示を受け、又は原告の従業員からその守秘義務に違反するなどして開示を受けた原告の営業秘密に当たる技術情報等を用いて、同契約終了後、図利目的で、原告の製品と形状の類似した本件被告製品を製造等したというものです。

原告は、プラスチック製のコーナー材を製造するための金型、サイジング等の製造装置を開発・設計・製作しており、それらを稼動させて製品を製造するためのノウハウたる技術情報を有している企業です。そして、原告製品に係る技術情報である本件技術情報は、製品ごとに作成される成型指導書に記載されており、成形指導書は、金型図面及びサイジング図面とともに、原告の技術部事務所内のロッカー内に保管されていたと原告は主張しています。
そして、原告は、コーナー材の製造において金型及びサイジングは本件技術情報と密接不可分のものであり、原告において金型図面やサイジング図面及びそれらの電子データは秘密として管理されていたことを考慮すると、原告の元従業員らが上記金型図面等を不正に持ち出し、守秘義務に違反するなどして、これを被告会社に開示したものと考えられると主張しています。



一方、被告は、本件技術情報のうち、●●●はサイジングの冷却機能を維持するために当然に行われることであるから、いずれも非公知性はないと主張しました。 これに対して、裁判所は以下のように判断しています。

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確かに,証拠(乙18~22,31,36,38,39)によれば,被告らの指摘する技術情報は,当該情報を独立に取り出して一般的な技術情報として見た場合,それ自体としては,市販されている書籍等から知り得るものであると認められる。
しかしながら,前記(1)に認定したとおり,原告の成形指導書には,原料名,製造装置の図面,●●●製品ごとに具体的な数値や内容が記載されているところ,このような個別具体的な情報が書籍等から一般に知り得るものと認めるに足りる証拠はない上に,これらの複数の情報が全体として一つの製造ノウハウを形成しているといえることは既に説示したとおりであるから,部分的に見れば書籍等から知り得る技術情報が含まれているとしても,そのことをもって直ちに非公知性が否定されるものではない。
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このように、裁判所は被告の主張である原告の成型指導書には部分的に書籍等から知り得る情報が含まれていると認めています。
しかしながら、裁判所は、以下の2点から非公知性が否定されるものではないと判断しました。
⓵●●●製品ごとに具体的な数値や内容が記載されているところ,このような個別具体的な情報が書籍等から一般に知り得るものではないこと。
⓶複数の情報が全体として一つの製造ノウハウを形成していること。

この判決から、例え、営業秘密に公知技術が一部含まれているとしても、それをもって非公知性が否定されるものではないことが分かります。
 特に、私が注目したいことは、上記⓶です。このように公知となっている情報であっても、複数の情報が全体として一つの製造ノウハウを形成している場合には、非公知性は失われないとする判断は非常に重要だと考えます。

なお、この「複数の情報が全体として一つの製造ノウハウを形成している」ということは、営業秘密の有用性の判断にも密接に関連していると考えます。
ここで、本事件において裁判所は有用性について以下の様に判断しています。

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本件コーナー材のような異形押出成形法による製品の製造は,難度の高い技術を要し,同製品のメーカーは独自に成形ノウハウを見いだしており,成形指導書に記載される製造に必要な装置や運転条件その他の各種情報は有機的に関連・連動し全体として一つの製造ノウハウを形成しているといえるところ,本件技術情報は,製品ごとに製造方法に関する特徴的な部分を抽出・整理したものということができるから,全体として,原告におけるコーナー材の製造販売の事業活動に有用な技術上の情報であると推認するのが相当である。
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このように、原告の製造ノウハウは他にない独自の成形ノウハウであるからこそ、原告における事業活動に有用であると裁判所は判断しています。
すなわち、複数の情報の集合が営業秘密であると原告が主張しても、その集合に独自のノウハウというものがないのであれば、営業秘密としての有用性が否定して営業秘密としては認められないことになるでしょう。

もし、原告が主張する複数の情報の集合の有用性を裁判所が認めない場合には、原告はその集まりが独自のノウハウを示すものであり、全体として原告自身の事業活動に有用であることを客観的に示す必要があります。


弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年5月29日水曜日

ー判例紹介ー 技術情報を営業秘密とする場合の効果の主張

今回は、技術情報を営業秘密として主張したものの、予測される効果を超える効果が確認できないとされて非公知性が否定された事件について紹介します。なお、この事件では、原告は複数の情報の組み合わせが営業秘密であると主張しています。

この事件は、平成30年3月29日判決の高性能多核種除去設備事件(東京地裁 平成26年(ワ)29490号)です。

本事件は、原告が東京電力福島第一原発において高性能多核種除去設備による放射性物質汚染水浄化事業に従事している被告に対し、〔1〕被告は原告との間のパートナーシップ契約に基づき、福島第一原発における放射能汚染水からの多核種除去に関する事業について原告と共同して従事すべき義務を負っているにもかかわらず、同義務に違反し、原告を関与させずに高性能多核種除去設備に係る事業を受注し、同事業に従事しているほか、上記パートナーシップ契約に違反して第三者から技術情報を受領したり、上記パートナーシップ契約又は原告若しくはその関連会社との間の秘密保持契約に違反して原告の秘密を第三者に開示したりしたなどと主張したものです。
そして、原告は、被告に対して、上記事業において原告から開示された営業秘密を不正に使用し、また、当該営業秘密を第三者に対して不正に開示したと主張しました。

このように、原告と被告は、パートナーの関係にあったようです。

そして原告は、RINXモデル及びそれを構成する際に依拠した各種技術情報であり,Purolite Core Technologyと総称されている技術情報が原告情報であり、営業秘密であると主張しています。

そして、この営業秘密は、福島第一原発の汚染水対策として行う事業において整備の対象となる高性能多核種除去設備である「高性能ALPS」の設計に被告が使用したと原告は主張しました。
ここで、裁判所はこの営業秘密の3要件のうち非公知性についてのみ判断し、「本件訴訟において情報として特定されている情報は,いずれも,平成23年9月までに公然と知られていた情報であった。」と判断すると共に、各情報の組み合わせについて下記のように判断しました。

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上記各情報は,汚染水処理における各種の考慮要素に関わるものであって,汚染水処理において,当然に各情報を組み合わせて使用するものであり,それらを組み合わせて使用することに困難があるとは認められない。また,上記各情報を組み合わせたことによって,組合せによって予測される効果を超える効果が出る場合には,その組合せとその効果に関する情報が公然と知られていない情報であるとされることがあるとしても,上記各情報の組合せについて上記のような効果を認めるに足りる証拠はない。したがって,これらの情報を組み合せた情報が公然と知られていなかった情報であるとはいえない。
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さらに、原告は下記の〔1〕、〔2〕のことから原告情報は非公知性の要件を満たすと主張しました。
 〔1〕原告情報の各技術要素が個々としては公知であったとしても,福島第一原発における多核種除去の目的を達成するためのまとまった解決策として有機的に機能する各技術要素の組合せや集積が公知であったことはない。
 〔2〕試行錯誤を経れば入手することができる技術情報であっても,入手するにはそれ相応の労力,費用,時間がかかる等の事情があり,当該情報に財産的価値が認められる場合には非公知というべきであり,被告は,原告情報を使用することにより,技術情報の収集や選別,分析等に係る労力等を大幅に節約することができた。

しかしながら、この主張に対しても裁判所は「これらの情報を組み合わせることにより予測される効果を超える効果が生じるものであることを認めるに足りる証拠はないから,これらの情報を組み合わせた情報が公然と知られていなかった情報であるとはいえない。」と判断しました。

このような判断は、他の裁判例でも見られるものです。すなわち、営業秘密とする技術情報に対して、原告主張の効果は客観的に判断できなければならないというものです。例えば下記の記事で紹介している裁判例でも同様の判断がなされています。なお、裁判例によっては、このような優れた効果の判断を非公知性ではなく有用性として判断しているものもあります。

過去ブログ記事
技術情報を営業秘密とした場合に「優れた作用効果」が無い等により有用性を否定した判例その3

一方で、本事件では裁判所は、公知の情報であっても「組合せによって予測される効果を超える効果が出る場合には、その組合せとその効果に関する情報が公然と知られていない情報であるとされることがある」とも判示しています。
これは技術情報を営業秘密とする場合に、重要な知見であると思われます。公知の情報の組み合わせは、一見、営業秘密となり得ないとも考えがちです。特に技術に詳しい人ならそのように考える傾向が強いかもしれません。また、このような組み合わせは特許化し難いものです。
しかしながら、この組み合わせの効果が予測を超えるものであり、その効果を客観的に示めすことができるのであれば、営業秘密として管理すべき情報であると考えるべきかと思います。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2019年2月21日木曜日

ー判例紹介ー 営業秘密性が否定されたアルゴリズムに基づくソースコードの営業秘密性

アルゴリズムは、コンピュータによる処理手順を示したものであり、例えばフローチャート等によって表現されます。そして、ソースコードは、アルゴリズムに基づいて記述されます。このため、営業秘密性が否定されたアルゴリズムに基づいて作成されたソースコードは営業秘密性、特に非公知性を有するのでしょうか。

これを判示したものとして、知財高裁平成28年4月27日判決の接触角計算プログラム事件が挙げられるかと思います。本事件は、ソースコードと共にアルゴリズムも原告保有の営業秘密であるとしてその被告による不正使用を争った事件です。このブログでも何度か紹介したものです。

本事件において原告(被控訴人)は、原告の元従業員等であった被告(控訴人X)等が被告会社(控訴人ニック)を設立し、原告ソースコード及び原告ソースコードに記述された原告アルゴリズムを不正使用して被告旧接触角計算(液滴法)プログラム(以下「被告旧プログラム」ともいう。)と被告新接触角計算(液滴法)プログラム(以下「被告新プログラム」ともいう。)を作成したと主張しました。

ここで原告アルゴリズムは、表紙に「CONFIDENTIAL」と記載され,全頁の上部には「【社外秘】」と記載されたハンドブック(以下「本件ハンドブック」という。)に記載されているか,あるいは,記載されている事項から容易に導き出すことができる事項であると裁判所によって認定されています。

しかしながら、裁判所は「本件ハンドブックは,被控訴人の研究開発部開発課が,営業担当者向けに,顧客へのソフトウエアの説明に役立てるため,携帯用として作成したものであること,接触角の解析方法として,θ/2法や接線法は,公知の原理であるところ,被控訴人においては,画像処理パラメータを公開することにより,試料に合わせた最適な画像処理を顧客に見つけてもらうという方針を取っていたことが認められ,これらの事実に照らせば,プログラムのソースコードの記述を離れた原告アルゴリズム自体が,被控訴人において,秘密として管理されていたものということはできない。」として原告アルゴリズムの秘密管理性を認めませんでした。

また、裁判所は「原告アルゴリズムの内容の多くは,一般に知られた方法やそれに基づき容易に想起し得るもの,あるいは,格別の技術的な意義を有するとはいえない情報から構成されているといわざるを得ないことに加え,一部ノウハウといい得る情報が含まれているとしても,(略),原告アルゴリズムを,営業担当者向けに,顧客へのソフトウエアの説明に役立てるため携帯用として作成した本件ハンドブックに記載していたのであるから,被控訴人の営業担当者がその顧客に説明したことによって,公知のものとなっていたと推認することができる。」として原告アルゴリズムの非公知性も認めませんでした。


一方、原告アルゴリズムとは異なる管理を行っていた原告ソースコードに対して、裁判所は次のように判断してその営業秘密性を認めていました。

すなわち裁判所は「原告プログラムが完成した平成21年7月当時,開発を担当するプログラマの使用するパソコンにはパスワードの設定がされ,また,被控訴人は,完成したプログラムのソースコードを研究開発部のネットワーク共有フォルダ「RandD_HDD」サーバの「SOFT_Source」フォルダに保管し,当該フォルダをパスワード管理した上で,アクセス権者を限定するとともに,従業員に対し,上記管理体制を周知し,不正利用した場合にはフォルダへのアクセスの履歴(ログ)が残るので,どのパソコンからアクセスしたかを特定可能である旨注意喚起するなどしていたことに照らすと,原告ソースコードは,被控訴人において,秘密として管理されていたものというべきである。」として秘密管理性を認め、また、「原告プログラムは,理化学機器の開発,製造及び販売等を業とする被控訴人にとって,その売上げの大きな部分を占める接触角計に用いる専用のソフトウェアであるから,そのソースコードは,被控訴人の事業活動に有用な技術上の情報であり,また,公然と知られてないものである」として有用性及び非公知性を認めました。

このように、本事件では、原告アルゴリズムはその営業秘密性を認められなかったものの、原告アルゴリズムを記述した原告ソースコードの営業秘密性は認められました。
すなわち、下位概念であるソースコードが適切に秘密管理等されていたならば、その上位概念であるアルゴリズムの営業秘密性の有無にかかわりなく、その営業秘密性は認められることを示唆していると思われます。

また、本事件で注目すべきことは、原告アルゴリズムと原告ソースコードが別々に管理されていたということです。もし、原告ソースコードが原告アルゴリズムと同様に本件ハンドブックに記載されていたら(ソースコードをハンドブックに記載することはあまり考えられませんが。)、原告ソースコードの秘密管理性も認められず、原告ソースコードの営業秘密性は裁判において否定されたかもしれません。
このように、関連する技術に関する複数の技術情報は、管理の手間は増加するかもしれませんが、一つにまとめて管理するよりも別々に管理する方が不測の事態を避けるためにも良いかと思われます。


弁理士による営業秘密関連情報の発信

2019年2月7日木曜日

営業秘密管理指針の改訂版が公開されました。リバースエンジニアリングの視点から

営業秘密管理指針が本年度の不正競争防止法のデータ利活用に関する改正を受けて改訂され、それが先月、経済産業省のホームページで公開されました。

営業秘密管理指針(最終改訂:平成31年1月23日)

改訂個所はあまり多くありませんが今回の改訂では非公知性の説明に、自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失に関する記載が裁判例と共に追加されています。

自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失は、技術情報を営業秘密理とするうえで非常に重要な事項であると私自身も考えており、このことが営業秘密管理指針に追加されたことは好ましいことだと思います。

しかしながら、個人的にはもう少し記載内容を充実させてもよかったかもしれません。
技術情報を営業秘密として管理するか否かの判断は、この自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性喪失の可能性の有無が重要な判断材料となるためです。
もし、自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性が喪失する技術情報であれば、当該技術情報を秘密管理していても、裁判において営業秘密とは認められません。



このような技術情報をどのように“知財”として管理するのか?

裁判所が営業秘密として認めないからと言って、当該技術情報の秘密管理に意味がないわけではありません。
秘密管理している技術情報であれば、たとえ営業秘密と認められなくても、企業の意に反して当該技術情報を漏えいさせた従業員や取引会社等に対して、秘密保持義務違反の民事責任を問うことが可能かもしれません。

また、当該技術情報に対して特許、実用新案、又は意匠といった権利取得を行うという選択肢もあります。
営業秘密とすることを検討している場合には、公開を前提とした上記出願は行わないという決定を一旦したのかと思いますが、自社製品のリバースエンジニアリングによって非公知性が喪失するのであれば、権利取得のための出願も再考する必要があるでしょう。

自社製品のリバースエンジニアリングによる非公知性の喪失について詳しく知りたい方は、私の下記寄稿をご参考にしてください。
知財管理誌への寄稿は近年の判例をまとめたものであり、詳しく解説していますが、少々長くなっています。一方、弁理士会のコラムは、これを短くしたものであり、知財管理誌に比べて読みやすいかと思います。

「リバースエンジニアリングによる営業秘密の非公知性判断と自社製品の営業秘密管理の考察」知財管理誌
「自社製品に対するリバースエンジニアリングと営業秘密との関係 」弁理士会ホームページ  営業秘密に関するコラム

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2019年1月18日金曜日

ー判例紹介ー 技術的に特徴のないプログラムの営業秘密性

技術的に特徴のないプログラム(ソースコード)は、営業秘密として認められるのでしょうか?
すなわち技術的に特徴のないソースコードは、既知のソースコードの組み合わせであり、非公知性や有用性がないと解釈できるかもしれません。

このようなことに対して判断が行われた裁判例として、Full Function事件(大阪地裁平成25年7月16日 平成23年(ワ)第8221号)があります。
この事件は、原告の元従業員であった被告P1及び被告P2が原告の営業秘密である本件ソースコード等を被告会社に対し開示し、被告会社が製造するソフトウェアの開発に使用等したと原告が主張した事件です。
この事件において、原告が開発して販売しているソフトウェア(原告ソフトウェア)は、原告が購入したエコー・システム社の販売管理ソフトウェアであって、ソースコードを開示して販売される「エコー・システム」に原告独自に機能を追加して顧客に応じてカスタマイズをしたものであり、開発環境及び実行環境としてマジックソフトウェア・ジャパン社のdbMagic(以下「dbMagic」という。)を使用するものであす。そして、dbMagicで使用可能な原告ソフトウェアのソースコードが、原告が営業秘密であると主張している本件ソースコードです。

このような事実のうえで原告は、本件ソースコードの非公知性に対して次のように主張しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ア)公知情報の組合せであっても,当該組合せが知られておらず,財産的価値を有する場合は,非公知性がある。
(イ)本件ソースコードは,市販のエコー・システム(甲22)のソースコードを基に作られているが,以下のとおり,非公知性がある。
a 原告ソフトウェアは,エコー・システムにはない生産管理に関する機能等も有するなどエコー・システムよりも機能が追加されている。本件ソースコードのうち,上記追加機能に対応する部分は,それ自体非公知である。
b また,本件ソースコードは,エコー・システムのソースコードを長期間にわたりカスタマイズしたもので,全体が非公知である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方、被告は「本件ソースコードは,エコー・システムのソースコードを基に,顧客に応じてカスタマイズされたものである。」として非公知性がないことを主張しました。


これに対して裁判所は「一般に,このようなシステムにおいては,個々のデータ項目,そのレイアウト,処理手順等の設計事項は,その対象とする企業の業務フローや,公知の会計上の準則等に依拠して決定されるものであるから,機能や処理手順に,製品毎の顕著な差が生ずるものとは考えられない。そして,機能や仕様が共通する以上,実装についても,そのソフトウェアでしか実現していない特殊な機能ないし特徴的な処理であれば格別,そうでない一般的な実装の形態は当業者にとって周知であるものが多く,表現の幅にも限りがあると解されるから,おのずと似通うものとならざるを得ないと考えられる。原告自身も,原告ソフトウェアに他社製品にないような特有の機能ないし利点があることを格別主張立証していない。」とのように述べており、原告ソースコードの非公知性が低いような心証であることをうかがわせています。
しかしながら、これに続いて裁判所は「イ そうすると,原告主張の本件ソースコードが秘密管理性を有するとしても,その非公知性が肯定され,営業秘密として保護される対象となるのは,現実のコードそのものに限られるというべきである。ウ そうすると,本件ソースコードは,上記趣旨及び限度において,営業秘密該当性を肯定すべきものである。」とのように判断し、原告主張の本件ソースコードの非公知性を肯定しました。
これは原告による「本件ソースコードは,・・・全体が非公知である。」との主張を認めたものと思われます。
このように、複数の公知のコードが組み合わされたソースコードであっても、全体として公知でなければ、営業秘密としての非公知性は認められると考えられます。

では、このような全体として非公知であるとして営業秘密性が認められたソースコードに対する不正使用の範囲はどのようなものでしょうか。
本事件において、被告による不正使用について原告は「ア 被告P2は,被告ソフトウェアの開発に当たって,本件ソースコード(プログラミングの設定画面)を参照し,原告ソフトウェアのテーブル定義,パラメータの設定,そこで行われているプログラムの処理等の仕様書記載情報を読み取り,当該情報を基に,被告ムーブの担当者にVB2008によるプログラミングを指示して,被告ソフトウェアを開発した。」と主張しました。

しかしながら裁判所は、「本件において営業秘密として保護されるのは,本件ソースコードそれ自体であるから,例えば,これをそのまま複製した場合や,異なる環境に移植する場合に逐一翻訳したような場合などが「使用」に該当するものというべきである。原告が主張する使用とは,ソースコードの記述そのものとは異なる抽象化,一般化された情報の使用をいうものにすぎず,不正競争防止法2条1項7号にいう「使用」には該当しないと言わざるを得ない。」とのように判断し、被告による不正使用については認めませんでした。
このように、全体として非公知であるとして営業秘密性が認められたソースコードに対する不正使用の範囲は非常に狭く、具体的には「そのまま複製した場合や,異なる環境に移植する場合に逐一翻訳したような場合」に限られると解されます。このような不正使用の範囲はプログラムに対する著作権侵害と同様の範囲とも考えられます。

すなわち、ソースコードを営業秘密として管理するにあたり、当該ソースコードの技術的な特徴の有無を判断し、当該ソースコードの不正使用の範囲がどの程度となり得るのかも理解することが望ましいと思われます。また、ソースコードに技術的な特徴があるのであれば、当該ソースコードのアルゴリズムも営業秘密として管理するべきでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信