このため、中途採用者に対して、前職企業の営業秘密を聞き出そうとすることは避けなければなりません。
中途採用者に前職企業の営業秘密を聞き出すパターンは、以下の2つがあるかともいます。
パターン1:採用面接時に聞き出す。
パターン2:採用後に聞き出す。
パターン1は採用前ですが、採用面接時に面接官が求職者に対して前職又は現職の営業秘密を聞き出そうとする場合もあるでしょう。
ここで、中途採用者から聞き出すのであれば、前職企業からデータのコピー等を行うのではないため、営業秘密侵害には当たらないと考える人もいるかもしれません。
これに関して下記のように、中途採用者が自身が知っている前職企業の営業秘密を転職先に口頭で伝える行為は、不正競争防止法第21条第2項第1号でいうところの営業秘密を「領得」したことにはならないため、刑事罰の対象にはならない可能性があります。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得したもの・・・
一方で、不正競争防止法第2条第1項第7号には、不正競争行為として以下のように定義されています。ここには「領得」が要件に含まれていないため、口頭で営業秘密を不正に開示すること、さらには、それを使用等すること(不競法2条1項8号)は民事的責任を負う可能性があります。
営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
しかしながら、自社の従業員が中途採用者に対して前職企業の営業秘密を聞き出そうとしたことにより、中途採用者が前職企業の営業秘密を口頭でのみ伝えるだけでなく、実際に前職企業の営業秘密を不正に持ち出す可能性があります。
例えば、採用面接時に求職者に対して営業秘密を聞き出そうとした結果、求職者は採用を確実にしてもらうことを目的として、営業秘密を不正に持ち出す可能性があります。求職者が退職していない場合には現職企業の営業秘密をコピー等して持ち出す、採用担当者等にメールで送るかもしれません。
また、採用後に前職企業の営業秘密を中途採用者から聞き出そうとした結果、中途採用者は前職企業の元同僚を通じて営業秘密を取得するかもしれませんし、前職企業のサーバに不正アクセスすることで営業秘密を取得するかもしれません。
このような場合には、営業秘密を不正に持ち出すことになるので刑事罰の対象になります。
そしてこのような場合において、果たして中途採用者等だけの責任と言えるでしょうか?
中途採用者等から営業秘密を聞き出そうとした従業員も、中途採用者に営業秘密の不正な持ち出しを指示したとして共犯となる可能性もあるかと思います。また、自社も両罰規定により刑事罰を受ける可能性もあります。
このような事態に陥らないためにも、中途採用者等から情報を得る場合には十分な注意が必要となります。
弁理士による営業秘密関連情報の発信


