2017年5月21日日曜日

週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その2

週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」をちゃんと考えます。

これは、印刷会社から取次会社に渡された週刊新潮の電車中刷り広告を文春が取得し、使用したのでは?というもの。
主な登場人物は、①週刊新潮、②取次会社、③週刊文春ですね。

営業秘密的に考えると、この中吊り広告は営業秘密であり、それを取次会社が正当に取得しているものの、取次会社の従業員が「不正の利益を得る目的」又は「その保有者に損害を加える目的」で中吊り広告を文春に「開示」したとも考えられます(不正競争防止法第2条第1項第7号)。
そして、 文春側は、「営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って」営業秘密を取得し、その取得した営業秘密を「使用」したと考えられます(不競法第2条第1項第8号)。

すなわち、不法行為を行った者は、取次会社の従業員と文春側の従業員ということでしょうか。
そして、取次会社及び文藝春秋が会社としてどのように関与していたかということも当然重大な問題となります。

なお、現時点では、週刊文春は
「まず、「週刊文春」が情報を不正に、あるいは不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したりしたなどの事実は一切ありません。」
(引用元:週刊文春 ホームページ http://bunshun.jp/articles/-/2567
と発表し、週刊新潮の中吊り広告を取得していたことを否定しています。

しかしながら、取次会社であるトーハンは、「株式会社新潮社様の週刊新潮に係る中吊り広告取扱いについてのお詫び」と題して、
「当社が文藝春秋様に中吊り広告を貸し渡したことは不適切な取扱いであり、既に新潮社様に対して、取引者間の誠実義務に欠けていたことを認め、お詫びをしております。」
(引用元:株式会社トーハン ホームページ http://www.tohan.jp/news/20170519_977.html
と発表し、「文藝春秋に中吊り広告を貸し渡し」というこをを認めています。

文春側は認めていないにもかかわらず、取次会社は 「文藝春秋に中吊り広告を貸し渡し」という表現ですが認めているようです。
貸し渡し先が「週刊新潮」ではなく「文芸春秋」であり、「貸し渡し」という表現がちょっと気になるところです。
深読みすると、「文芸春秋」と表現することで「週刊文春」は週刊新潮の中吊り広告を取得していないという逃げ道を作ってあげているのかもしれません。また、「貸し渡し」という表現をすることで、「中吊り広告」は誰も窃盗していないことを強調したいのかもしれません。
また、取次会社であるトーハンは、上記「お詫び」において、
「引き続き、当社は、全容解明に向けて鋭意調査を継続してまいりますとともに、内部統制・管理体制の一層の強化、整備に努めてまいります。」
とも記しています。これは、会社ぐるみではないことを暗に示しているものと思われます。

このように、従業員の転職時だけでなく、取引会社を通じて営業秘密が漏れることはよくある事かと思われます。
企業側は、このようなことをある程度想定しなければいけないことであるとも感じます。
また、今回の取引会社のように、他企業の営業秘密となり得る情報を扱う会社は他企業の営業秘密が自社から漏えいすることを想定した対応を事前に取る必要があると考えます。

今回の週刊新潮の件は、色々考えさせられることがあるので、引き続きブログで検討してみたいと思います。
キーワードはやはり「秘密管理性」、それに 「不正の利益を得る目的」又は「その保有者に損害を加える目的」であろうかと思います。
 なお、今のところ、私が考える結論は商慣習上の倫理違反という問題はあるとしても、新潮が文春(文藝春秋)を営業秘密に関する不法行為で訴えることは難しいのではないかと思います。