営業秘密関連ニュース

2019年6月14日
・製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書の公表について(公正取引委員会)
・知的財産の開示強要相次ぐ 大手企業が取引先に 公取が改善促す(NHK)
・大企業、下請けにノウハウ強要=悪質例含め730件-公取委が懸念(JIJI.COM)
・知財問題事例726件、公取委が製造業3万社調査 (日本経済新聞)
・知的財産でも「下請けいじめ」 ノウハウ開示迫られる/名ばかり共同研究 公取委調査 (朝日新聞)


2019年6月12日
・転職先に顧客情報持ち出し疑い(REUTERS)
・転職先に顧客情報持ち出し疑い 1300件、3人逮捕(東京新聞)
・旅行会社の顧客情報1200件競合他社に流す 男3人逮捕(カナロコ)
・顧客データ1300件持ち出す3人を逮捕 神奈川県警(産経新聞)

2019年6月7日
・スマートフォンの技術情報を中国に持ち出した男、証拠のハードディスクを破壊か(MBS)

2019年6月6日
・知的財産の提供、下請けに強要 公取委調査で730件(KYODO)

2019年6月6日
・中国籍元社員に懲役1年2月 富士精工データ持ち出し(日本経済新聞)
・営業秘密持ち出し中国人実刑判決(NHK NEWS WEB)
・データをメモリーに… 工具メーカーの営業秘密持ち出しの男に実刑判決 名古屋地裁(メーテレ)
・メーカーから営業秘密のデータ不正に持ち出す 中国人の男に実刑判決「転職活動という身勝手な理由」(東海テレビニュース)
・メーカーから営業秘密のデータ不正に持ち出す 中国人の男に実刑判決「転職活動という身勝手な理由」(FNN PRIME)

2019年6月5日
・三菱重工、加ボンバルと買収交渉=小型ジェット機事業(JIJI.COM)
・三菱重、加ボンバルの小型ジェット機事業買収で交渉 MRJ強化(REUTERS)

2019年6月5日
・技術情報不正持ち出し疑い NISSHA元社員逮捕(日本経済新聞)
・技術情報不正持ち出し疑い、京都(REUTERS)
・スマホ操作技術、中国企業に漏えい疑い 部品メーカー元社員逮捕(京都新聞)
・技術情報を中国に持ち出し 容疑で電子部品メーカー元社員を逮捕(産経新聞)
・中国が狙う知的財産、日米で事件化(産経新聞)
・社員の情報持ち出し、対応難しく(産経新聞)

2019年5月23日
・<米国>米新興企業、ファーウェイ幹部提訴 企業秘密の不正取得で=報道(REUTERS)



2017年7月24日月曜日

営業秘密の3要件 非公知性 -リバースエンジニアリング- その2

前回のブログで紹介した光通風雨戸事件、攪拌造粒裝置事件からは、例え、原告が製品の形状・寸法・構造等を積極的に公知としていなくても、それらが特別の技術等が必要とせず一般的に用いられる容易な技術的手段を用いれば製品自体から得られるような情報であれば、営業秘密としての非公知性を失っていると裁判所は判断しています。

ここで、ノギスや定規等の一般的に多くの人が用いる測定器具を用いることで得られる情報であれば、全て公知技術となるのでしょうか。例えば、自動車は多くの機械部品が用いられており、それは自動車を分解し、時間と手間をかければ一般的な測定器具を用いることで、詳細な寸法を知り得ると思われます。
この点に関して、セラミックコンデンサー事件では、リバースエンジニアリングによって電子データに近い情報を得ることができたとしても、「専門家により、多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であるものと推認される」ものは非公知性を失っていないとしています。このことから、一般的な測定器具によって知り得る情報であっても、時間と手間がかかるようなということは、多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であると推認されるため、非公知性が認められるとも考えられます。




一方で、錫合金組成事件において裁判所は、「鉛フリーの錫合金については、・・・、錫合金を製造する事業者においては、錫合金で使用されている添加成分についておおよその見当を付けることができるといえる。」とまず認定し、そのうえで、ICP発光分光分析法は安価であるとして、リバースエンジニアリングにより原告が有する情報は非公知性を欠くとしています。これについて、錫合金で使用されている添加成分の見当を付けることができる者は明らかに「専門家」とも考えられます。

また、錫合金組成事件において裁判所は「ICP発光分光分析法は、製造・生産の高度化や管理、環境の保全、食の品質管理など日々の生活に密接に関連する分野において、高度な研究活動から日々の検査分析まで幅広いレベルで用いられている。これらを支える測定装置の進歩も著しく、マニュアルに従って分析条件を設定し、試料をセットしてパソコンから測定を開始させれば、数分で分析結果が表示される。」と認定しています。
さらに、本事件において裁判所は、ICP発光分光分析法について「ICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)発光分光分析法(ICP-AES)は、アルゴンガスのICPを光源とする発光分析法である。試料の溶液を霧状にした分析試料に外部からプラズマのエネルギーを与えると、試料に含まれる成分元素(原子)が励起され、励起された原子が低いエネルギー準位に戻る時に元素固有の波長の光を放出し、この放出される発光線(スペクトル線)を測定する。具体的には、発光線の位置(波長)から成分元素の種類を判定し(定性分析)、その強度から各元素の含有量を求める(定量分析)。分析装置には、1元素ずつの測定になるが分解能が高いシーケンシャル型と、分解能は劣るが、多元素同時測定が可能であるマルチチャンネル型があり、目的によって使い分けられる。・・・」と説明しています。
果たして、この説明でICP発光分光分析法を理解できる者がどれほどいるでしょうか。この程度の説明でICP発光分光分析法を理解できるものは、例えばこれに関する専門技術等を学んだ者でなければ理解できないと思われます。すなわち、このような理解を要するICP発光分光分析法は「特別な技術」とも考えられます。

また、錫合金組成事件では「定量分析は、そうした定性分析によって検出された元素のみを対象に行えば足りるから、原告らが主張するように、100余りの元素の全てを定量分析する必要があるとはいえず、むしろ比較的安価に組成を特定することができるというべきである。」と判断しているものの、果たして実際には裁判所の判断のように組成を特定できるのでしょうか。
実際に行った分析が想定した結果とならないことも多々あり、裁判所の判断のとおり、安価に組成を特定ることができるのか甚だ疑問です。

さらに、ICP発光分光分析の費用も「比較的安価」であるとしているが、安価の基準は何でしょうか。被告は「調査費用は十数万円から高くても20万円程度」と主張しています、「20万円」以下であれば安価なのでしょうか。このように、錫合金組成事件におけるリバースエンジニアリングに基づく非公知性に対する裁判所の判断には多くの疑義を感じます。

なお、光通風雨戸事件におけるリバースエンジニアリングは、光通風雨戸の各部材の寸法を測定することであるため、確かに一般的な技術的手段を用いて容易に取得できる情報できるものであり、光通風雨戸が市場に流通することで非公知性を失うという裁判所の判断は妥当であると思われます。一方で、攪拌造粒裝置事件における原告製品である「攪拌造粒」の形状・寸法・構造は本当に一般的な技術手段を用いて容易に取得できる情報なのでしょうか。攪拌造粒裝置事件に係る判決文を読んでみても、その点が判然としないように思えます。

以上のように、リバースエンジニアリングによって技術情報の非公知性が失われたか否かの判断基準は未だ明確になっていないように思えます。
しかしながら、技術情報に関しては、今後、訴訟において被告がリバースエンジニアリングによって非公知性が失われているとの主張を行うこと可能性が高いことが想定されます。このため、企業としては、リバースエンジニアリングによって非公知性が失われる可能性を十分検討したうえで、技術情報を営業秘密とするか否かを判断する必要があると思われます。