2017年10月20日金曜日

OSG製品設計データ持ち出し事件

新たな営業秘密流出事件の報道が昨日ありました。

2017年10月19日 JIJI.COM「営業秘密持ち出し容疑=切削工具最大手のOSG元社員を逮捕-愛知県警」
2017年10月19日 NHKニュース「大手工具メーカー元社員 秘密情報漏えいの疑いで逮捕」
2017年10月19日 中日新聞「SG元社員、情報漏えいか 中国人に先端技術、愛知県警が逮捕」
2017年10月19日 毎日新聞「情報持ち出しOSG元社員逮捕 「中国人に提供」と供述」
2017年10月19日 毎日新聞「<愛知県警>設計情報持ち出し容疑 元オーエスジー社員逮捕」
2017年10月19日 朝日新聞「オーエスジーの元社員、営業秘密を持ち出した容疑で逮捕」

工具メーカーであるOSGが製造している“タップ”の図面等を元従業員が持ち出したようです。
しかも、報道によると競合他社に勤めている中国人にです。そして、対価を得ていたとも。


今回の事件で注目すべきは、不競法の平成27年法改正によって改正された刑事罰の適用を受けそうな事件であるということです。

例えば、不競法21条3項の海外重課、元従業員は中国人に営業秘密を開示したようなので、「日本国外において使用する目的」又は「相手方に日本国外において使用する目的である情を知って」である場合には、10年以下の懲役・3000万円以下の罰金となる可能性があります。海外重課でない場合、日本国内での開示や仕様にとどまる場合は、、10年以下の懲役・2000万円以下の罰金です。

さらに、元従業員は、対価を得ていた可能性があるので、不競法21条10項で規定されている「当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬とし て得た財産の没収」 が適用されるかもしれません。

また、毎日新聞の報道を参照すると、内部調査により発覚し、6月27日に懲戒解雇、8月1日に刑事告訴のようです。
すなわち、元従業員は、在職中に競合他社の中国人に営業秘密を漏洩しており、OSGはそのことを突き止め、懲戒解雇したのちに刑事告訴したようです。近年において、在職中に営業秘密を金銭目的で競合他社へ漏洩するという事件は少ないように思えます。

OSGは元従業員の行動が怪しいと感じ、アクセスログ等から営業秘密の漏洩を突き止めたようです。
OSGが営業秘密の漏洩を突き止めたということは、OSGにおいて営業秘密の漏洩に対する対応が適切だっということでしょう。

残念なことは、そのような対応がしてあったにもかかわらず、おそらく元従業員への教育が十分でなかったために、漏洩を許してしまったことでしょうか。
元従業員も、刑事罰の適用、海外重課、没収規定、さらにはOSGによる営業秘密管理の態様を知っていれば、このような営業秘密の漏洩を犯さなかったのではないかと思います。
リスクが高すぎて、リターンがありませんからね。よほどの理由がない限りやらないと思います。