営業秘密関連ニュース

2021年1月13日
・漏洩禁止 退職時に誓約ソフトバンク元社員、違法性認識か(日本経済新聞)
・5G情報流出、社外から遠隔操作で持ち出し 転職直前に170点(SankeiBiz)
・技術情報170件持ち出しか 逮捕のソフトバンク元社員(日本経済新聞)
・SB元社員、ファイル名変え保存か 押収PCに5G情報(朝日新聞)
・5G情報持ち出し容疑 不正取得170ファイル ソフトバンク元社員、転職直前に(毎日新聞)

2021年1月12日
・楽天モバイルへ転職した元社員の逮捕について(ソフトバンク プレスリリース)
・従業員の逮捕について(楽天モバイル プレスリリース)
・5G営業秘密持ち出し 背景に技術競争の激化も ソフトバンクは民事提訴検討(産経新聞)
・5G営業秘密持ち出しか ソフトバンク元社員を逮捕 楽天モバイルに転職(産経新聞)
・【独自】楽天の関係者、転職者に「秘密情報を持ってこいとは言わない」(読売新聞)
・5Gの営業秘密を持ち出して楽天モバイルに転職、ソフトバンク元社員を逮捕(SankeiBiz)
・ソフトバンク元社員逮捕 5G情報持ち出し容疑 楽天モバイル転職(毎日新聞)
・SB、楽天モバイル側を提訴の予定 情報持ち出し問題(朝日新聞)
・退社日に「5G」情報持ち出し、ソフトバンク元社員を逮捕…楽天モバイルを提訴へ(読売新聞)
・5G情報持ち出しか ソフトバンク元社員を逮捕、警視庁(日本経済新聞)

2020年12月23日
・新興企業の知財、大企業の搾取防止 公取委など指針(日本経済新聞)
・狙われる技術大国・日本 企業の「営業秘密」を守るには(WEDGE Infinity)

2017年12月25日月曜日

営業秘密と秘密保持契約(秘密保持義務)その2

前回のブログでは、原告が被告に攪拌造粒機の主要部分の製造を委託し、その図面等に関して秘密保持契約を原告と被告との間で締結していたものの、裁判所は、攪拌造粒機がリバースエンジニアリング可能であることを理由に図面は非公知性を満たさずに営業秘密性を否定し、さらに、秘密保持契約の内容からして「秘密保持義務の対象」=「不正競争防止法における営業秘密の定義と同様」とも判断し、当該図面は秘密保持義務の対象でもないと判断したことを紹介しました。

ここで、本事件における秘密保持の条項(下記第35条)は、表現に微差があるものの、秘密保持義務の対象から除外する情報を定めた項目も含めて一般的なものと思われます。

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「第35条(秘密保持)
1)乙は,この基本契約ならびに個別契約の遂行上知り得た甲の技術上および業務上の秘密(以下,機密事項という。)を第三者に開示し,または漏洩してはならない。但し,次の各号のいずれかに該当するものは,この限りではない。
〔1〕乙が甲から開示を受けた際,既に乙が自ら所有していたもの。
〔2〕乙が甲から開示を受けた際,既に公知公用であったもの
〔3〕乙が甲から開示を受けた後に,甲乙それぞれの責によらないで公知または公用になったもの。
〔4〕乙が正当な権限を有する第三者から秘密保持の義務を伴わず入手したもの。
乙は,機密事項を甲より見積作成・委託・注文を受けた本業務遂行の目的のみに使用し,これ以外の目的には一切使用しない
(略)
乙は機密事項‥(略)‥を厳に秘密に保持し,本業務の遂行中はもとより,その完成後も甲の文章による承諾を得た者以外には,一切これを提供あるいは開示しない。
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そうすると、本事件のように、秘密保持契約を締結しても、実質的に意味をなさない契約も多数存在する可能性があるのではないでしょうか?
そうであるならば、上記のような一般的と思われる秘密保持の条項は見直す必要があるかと思います。しかしながら、一般的とされている条項そのものを修正するには抵抗を感じるとも思われます。


そこで、秘密保持契約に対して例外の例外を設けることが考えられます。すなわち、「秘密保持義務の対象から除外する情報」の例外です。
具体的には、本事件では、販売された攪拌粒製造機がリバースエンジニアリング可能であることをもって非公知性が失われているとされているため、秘密保持契約では例外の例外として、製品を特定して(本事件の例では攪拌流製造機)「製造販売した製品をリバースエンジニアリングすることで得られる情報は公知公用の情報とはみなさない。」とのような項目を設けることが考えられます。
また、秘密保持義務の対象を具体的に特定し(本事件の例では図面)、かつそれに対して、「製造販売した製品がリバースエンジニアリングされたとしても、図面に記載の情報が公知公用の情報となったとはみなさない」することも考えられます。


このように、本事件から学べることは、リバースエンジニアリングによって当該情報の営業秘密性どころか、秘密保持契約すら有効でないと裁判所が判断する可能性があるということです。
他社と秘密保持契約を締結する企業は、秘密保持契約に関係する製品等が公知となる可能性を十分に考慮し、秘密保持契約を結ぶ必要があるかと思います。
すくなくとも、「秘密保持義務の対象」=「不正競争防止法における営業秘密の定義と同様」と判断されるような秘密保持契約は結ばないことを心掛け、「秘密保持義務の対象」>「不正競争防止法における営業秘密の定義と同様」と判断可能な秘密保持契約にする必要があります。

一方で、本事件のように自社の秘密情報を製造委託先に開示する必要がある場合、そもそも、自社製品の製造委託先を一社にせずに、例えば、部品毎に分けて複数社で製造させ、一つの外注先に自社製品の情報が集中しないようにする必要があるかと思います。

原告も、例えば、攪拌造粒機の容器、蓋、メインブレード、クロススクリュー及びそれらの周辺装置を複数社に分けて製造委託しておけば、今回のような事態には陥らなかったと思います。また、部品は製造委託するものの、最終組み立ては自社で行う等してもよかったのではないでしょうか。

自社製品の情報を守るために、また、本事件のように製造委託先がその後競合他社とならないように、このような措置を取っている企業は多いかと思います。
製造委託先を一社にする場合に比べて、管理コスト等は増加するかと思いますが、より確実に自社情報を守るためには必要な措置かと思いまます。


以上の様に、企業は自社の秘密情報を他者に開示する場合は、その秘密情報が当該他社に意図しない形で使用されないように、また、使用された場合にその使用に対する責任を問えるように十分な対策を立てる必要があるかと思います。
そういった意味で、本事件は非常に参考になるのではないでしょうか。