営業秘密関連ニュース

2019年4月24日
・<米国> GE元エンジニアら2人を産業スパイ罪で起訴 米司法省(朝日新聞)
・<米国> 米司法省、GE元技術者ら産業スパイで起訴 中国政府関与(日本経済新聞)
・<米国> 米、産業スパイでGE元技術者ら起訴 「中国が金銭など支援」(REUTERS)

2019年4月24日
・技術流出防止を大学にも 外国企業との共同研究で(毎日新聞)

2019年4月16日
・韓国子会社の事業撤退=「司法判断に懸念」-半導体関連のフェローテック (JIJI.COM)
・当社韓国連結子会社に対する民事訴訟の提起に関するお知らせ (フェローテック リリース)
・韓国子会社におけるCVD-SiC 事業からの撤退に関するお知らせ (フェローテック リリース)

2019年4月2日
・元日経社員を書類送検 (日経新聞)
・日経新聞元社員を書類送検=賃金データ漏えい容疑-警視庁 (JIJI.COM)
・日経新聞の社員情報3千人分持ち出しか 元社員書類送検 (朝日新聞)


2019年3月25日
・本日の一部報道について(株式会社No.1 リリース)
・他社の顧客情報不正取得疑い No.1取締役ら書類送検 (日経新聞)

2018年12月3日月曜日

畜産業(和牛の海外流出)を営業秘密の考えで守れるか?

畜産に関して下記のような記事がありました。このようなニュースは、畜産だけでなく、農業関係でも近年取りざたされています。代表的なものでは、日本のイチゴの種苗が韓国に流出した事件でしょう。

和牛精液あわや国外へ 出国検査甘さ露呈 申告制、告発わずか 貴重な資源流出は打撃」日本農業新聞

しかしながら上記ニュースを読むと、知財の感覚からは少々違和感があります。
すなわち、和牛の精液は和牛の遺伝資源であり、和牛に関する知的財産といえるはずであるものの、これの国外流出を食い止めるために家畜伝染病予防法を適用しようとしていることです。

家畜伝染病予防法は、第1条によると「家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む。以下同じ。)の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とする。」法律です。そもそも知的財産の国外流出を防止するための法律ではありません。

現状では遺伝資源に対する国外流出の水際阻止では、家畜伝染病予防法に頼らざる負えないのかもしれませんが、実際には記事にあるように自己申告制であったりすると、この法律で国外流出を食い止めることは難しいのでしょう。
また、動物検疫所が違反者に対して告発する場合が少ないことに対して、この記事では問題視していますが、そもそもこの法律は、上記のように家畜の伝染病の予防を目的としたものであり、知的財産(遺伝資源)の流出を防止するものではありません。そのため、遺伝資源を国外へ持ち出そうとした人に対して、家畜伝染病予防法の刑事罰を適用しようとすること自体に無理があるのではないでしょうか。

そうであるならば、他の法律で遺伝資源の流出を防止する必要があります。
もし、和牛精液のように有体物である遺伝情報を所有者に断りなく持ち出したのであれば、窃盗罪にあたるでしょう。
実際に、和牛精液の窃盗事件は過去に何度もあったようです。
従って、和牛精液の窃盗を防止するために施錠管理等は一般的に行われているようです。


また、このような問題は行政側でも検討されており、平成18年から19年にかけて検討会が開かれています。

参考:「家畜の遺伝資源の保護に関する検討会」農林水産省ホームページ

この検討会では、和牛の遺伝子特許の取得も提言されています。
しかしながら、特許で和牛精子の国外流出を食い止めることはできるでしょうか?
おそらく和牛精子を国外流出させる者は、売買・譲渡等によって特許権者から正当に和牛精液を手に入れた者だと考えられます。特許権に係る和牛精液を特許権者以外が自ら生成することは困難であろうと考えられるためですし、正当な入手でなければ窃盗です。
正当に取得した和牛精液であれば、これに係る特許権は消尽していると考えられ、取得した者は自由に使用し、国外へ持ち出して他者に譲渡することも特許法上は問題ないと考えられます。
また、正当に取得した和牛精液を持ち出した国外でも特許権を取得していたとしても、当該国外での法律にもよりますが、正当に取得した和牛精液であれば当該国外での使用も問題ない可能性が高いと考えられます。
このようなことから、特許権の取得は、遺伝資源の国外流出に対する有効的な対策とは言い難いと思えます。

であるならば、和牛精液の売買時に契約で国外流出を禁ずることを定めることも考えられます。これについては、上記検討会でも提言されています。
そして、この契約に秘密保持の条項も加えることはどうでしょうか。
すなわち、和牛精液自体を秘密保持の対象とし、営業秘密として管理するのです。
ちなみに、過去の判決ではコエンザイムQ10の生産菌(生産菌製造ノウハウ事件(東京地裁平成22年4月28日判決))が営業秘密として認められているので、和牛精液も営業秘密とすることは問題ないでしょう。
また、売買契約において海外転売禁止と共に秘密保持の条項を加えることで、営業秘密でいうところの秘密管理性も満たすと考えられますし、有用性についても当然満たすでしょう。

一方、非公知性はどうでしょうか?
当該和牛精液を用いて誕生した和牛肉が流通すると、当該和牛肉のDNAを調べることが可能となります。現在では、DNAの調査は安価に可能ですから、流通している和牛肉のDNAは公知と考えられ、これにより当該和牛精液のDNAも行知となったとも解釈できるかもしれません。
しかしながら、和牛肉のDNAが判明したからといって、現在の技術では和牛肉から得たDNAの情報から和牛を生産することはできません。やはり、当該和牛精液が必要となります。であるならば、秘密管理の対象は和牛精液のDNA情報ではなく、和牛精液そのものであると考えられ、たとえ流通している和牛肉から当該DNA情報を取得できたとしても、未だ和牛精液そのものの非公知性は保たれているとも考えられないでしょうか?

そうであるならば、上記検討会でも述べているように、和牛精液の流通管理を徹底し、かつ営業秘密性を満たすように譲渡契約で定めることによって和牛精液の国外流出を抑制できる可能性があるかと思います。
特に、和牛精液を営業秘密とすることによって、これに違反した人は刑事罰が課されますし、実際に実刑となった人もいますので、抑止力としては強いかと思います。特に国外での使用目的であれば、十年以下の懲役、三千万円以下の罰金となります(不競法21条3項)。

ただし、既に流通している和牛精液に関しては、秘密管理性や非公知性が満たされていない等により営業秘密とすることはできないでしょう。
このため、このような和牛精液の国外流出に関しては、上記記事のように家畜伝染病予防法に頼らざる負えないのかもしれません。

なお、種子に関しては自家増殖原則禁止という種苗法の改正により、海外流出を食い止めようという流れがあるようです。

参考:
種苗法による自家増殖原則禁止の理解と誤解」 農ledge
第29回|農水知財 ~交配種(F1品種)の保護~」営業秘密官民フォーラムメールマガジン掲載コラム

畜産に関する遺伝資源に対しても、これの国外流出を抑制するための法改正や新たな法律を作成することによって、国外流出を食い止めることを行った方がより確実と考えます。

弁理士による営業秘密関連情報の発信