2020年7月3日金曜日

知的財産で社会貢献 新型コロナウイルスのまん延終結に向けて

知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に関連した話題です。


昨日、キャノンが自社で使用するために開発したファン付きバイザーを発表しました。


このファン付きバイザーに関して「キヤノンが発起人として参画する「COVID対策支援宣言書」の対象となります。」とあります。
すなわち、キャノンから発表されたファン付きバイザーと全く同じものを、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を目的として製造・販売しても、キャノンはその行為に対して権利行使を行わない、ということになります。

これは、面白い取り組みだと思いました。
「COVID対策支援宣言」に参画する企業は増えていますが、果たして、これを利用して製品の製造・販売等を行う企業がどのくらいあるのか私は少々懐疑的でした。
その理由の一つが、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」の範囲が非常に狭い範囲であると捉えられかねないと感じたからです。

「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」との制限は、裏を返すと「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」とは関連しない場合には、権利者から権利行使される可能性があるということです。
例えば、マスクはどうでしょう。マスクは、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与するでしょうが、例えば他の感染症を防ぐ目的でも着用されますし、花粉症の人も着用します。そうすると、マスクの製造販売は、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」には含まれないようにも思えます(実際は現況を鑑みるとマスクの製造販売は唯一の目的に含まれると思いますが)。
また、肺の画像診断はどうでしょう。これも、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与するでしょうが、例えば肺がん検査等他の疾病の検査にも使用できる可能性が考えられます。そうすると、肺の画像診断に用いる製品の製造販売は、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」には含まれないようにも思えます。
このように考えると「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」を確実に満たす行為は、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬のみと解釈され得るかもしれません。


このように、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為」の解釈にリスクを伴うと考える企業は、この宣言を行った企業の権利を使用することを躊躇すると思います。
一方、今回のキャノンの発表はこのようなリスクを気にかける必要がなくなるでしょう。
このキャノンが発表したファン付きバイザーと全く同じものを製造販売してもキャノンから権利侵害を問われる可能性が相当低いと思われるからです。

このようなキャノンの行為を鑑みると、宣言を行た企業は、自社で開発した「新型コロナウイルス」対策の装置や方法等を公開し、宣言していることを担保として第三者に対して権利行使を行わないことを明確にすることで、より「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与できるのではないかと思います。

そしてこのような行為は、まさに知的財産を用いた企業による社会貢献とも言え、企業イメージのアップにも繋がるとも思えます。
従来から企業による社会貢献は行われてきましたが、企業の社会貢献と知的財産はリンクして考えられなかったと思います。しかしながら、「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」はまさに知的財産と社会貢献とをリンクさせたものでしょう。

さらに「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に限らず、企業は衛生面を考慮した技術開発を数多く行っており、その中には、自社の利益には直結しない技術開発もあるでしょう。例えば、食品製造業における自社の工場内の衛生状態を良好とするためのシステムもそうです。このようなシステムも特許権が取得されている場合があるものの、このシステムを他社に販売等せずに自社の工場でしか使用せず、休眠状態の場合も多いでしょう。
このような特許も積極的に権利不行使宣言を行うことで、自由に他社が使用し、社会全体としての衛生状態の向上に寄与し、社会貢献に繋がるでしょう。また、特許出願していない上記のような自社開発技術を公開し、他社による自由な使用を促してもいいでしょう。
今回のキャノンのファン付きバイザーも自社の従業員が使用することを目的としたものであり、他社がそれを製造販売してもキャノンの利益を損なうものではなく、これが広く使用されると、「新型コロナウイルス感染症のまん延終結」に寄与することになります。

もしかすると、キャノンの今回の発表に感化されて、同様に技術を開示する企業が続くかもしれません。そうすると、社会貢献による企業のイメージアップに知的財産を使用するという知財戦略もあり得ると考えます。

7月13日追記
三井住友建設が自社で開発した飛沫抑制と熱中症対策のためのフェイスカバリングを公開しました。
今後、新型コロナウィルス感染症防止を目的として、自社開発の技術を積極的に公開する流れが生じることが考えられます。

7月20日追記
ワキプリントピアが日産自動車監修によるライセンス商品として「歴代GT-R抗菌マスクケース」および「NISSANパイクカー抗菌マスクケース」を発売。日産による「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に基づく、ライセンス商品。

弁理士による営業秘密関連情報の発信