2018年2月5日月曜日

自社の営業秘密が漏えいした場合の当該情報の行き先

営業秘密の侵害は刑事罰があり、実際に執行猶予無しの懲役刑も科されています。
執行猶予無しの懲役刑となった事件は、私の知る限り2つの事件です。
一つは、東芝の半導体製造技術が韓国SKハイニックスに漏えいした事件であり、懲役5年が科されています。
もう一つは、ベネッセの個人情報を流出させた事件であり、懲役2年6カ月が科されています。

ここで、一審で執行猶予無しの懲役1年6カ月とされた事件があります。高裁で執行猶予4年、懲役2年となりましたが。
一見、一審で執行猶予無しの実刑とは他の営業秘密漏えい事件に比べて、重い判決だと思います。
しかしながら、この事件は中々の犯罪っぷりです。

この事件は、信用金庫の女性従業員のが同金庫が保有する営業秘密である同金庫の顧客情報を、交際していた男に渡し、その見返りに現金や宝飾品を受け取っていたようです。
しかも、その男は詐欺グループであり、実際にこの顧客情報が詐欺事件に使用されていたようです。


同様に、銀行の顧客情報が犯罪集団を漏えいした事件としては、<佐川銀行営業秘密流出事件>があります。
この事件も、銀行の従業員が犯罪グループに顧客情報を漏えいさせています。
参考:過去の営業秘密流出事件

ここで、一言で営業秘密の漏えい事件といっても、色々なパターンがあるようです。
そのパターンとは、例えば、顧客情報等を名簿業者や他の企業に流出させるパターン、技術情報を転職等により他社に流出させるパターン、さらには、上記事件のように顧客情報等を犯罪者に流出させるパターン等です。

なお、近年における刑事事件の動向を鑑みると、転売を目的とした顧客情報の漏えいよりも転職等による技術情報の漏えいの方が事件としては多いようです。
そして、営業秘密の種類によっては、漏洩した場合におけるその影響が全く異なるかと思います。

例えば、技術情報に関しては、損害を被るのは自社である場合がほとんどでしょう。他社から開示され、自社で秘匿義務を負った情報等でない限り、第三者に影響を与える場合は低いかと思います。また、流出した技術情報が他の犯罪に使用される可能性はほとんどないかと思います。

一方、顧客情報が流出した場合には、自社の顧客に被害が及ぶことも想定しなければならないでしょう。当該顧客にダイレクトメールが送られるぐらいであるならば、実害はないでしょうが、メール詐欺のターゲットにされることも多々あるかと思います。

さらに、銀行の顧客情報ともなれば、その顧客が高額預金者であるならば窃盗等に使用される可能性もあります。
万が一、そのような犯罪に使用されたとしたら、漏えい元の企業はその犯罪に対しても社会的責任を問われる可能性があるかもしれません。

従って、営業秘密を保有している企業は、当該営業秘密が漏えいした場合に、どこにどのような影響を与えるのかを明確に認識するべきかと思います。
そして、営業秘密の漏えいが犯罪であること共に、その影響を従業員にも周知するべきでしょう。

ちなみに、上記信用銀行の事件は、<知多信用金庫顧客情報流出事件(2016年)> として過去の営業秘密流出事件のページに追加しました。

2018年2月1日木曜日

不正アクセスって多いんですね。

企業等に対する不正アクセスによる顧客情報、個人情報の流出が普通のニュースになっている今日この頃です。

近年の大きな事件では、ベネッセの個人情報流出事件。
これは、不正競争防止法21条1項3号ロ、4号の刑事罰が適用され、東京高裁で懲役2年6カ月、罰金300万円が確定しています。
あれほど、大きな事件でしたが、その後、犯人に対する罰則がどの程度であったのかは、皆さんあまり知らないようです。
まあ、事件発生が2014年7月、刑が確定したのが2017年3月ですから、多くの人の関心も薄れるでしょう。

先日は、580億円分もの仮想通貨が不正アクセスにより流出した事件が起き話題になっています。
その他にも、不正アクセス等のキーワードでニュースをチェックすると、大小様々な不正アクセスや個人情報の流出に関する事件が起きていることに驚かされます。
感覚的には、国内だけでも毎週のように何かしらの不正アクセスに関するニュースがあります。水面下では、この何倍もの不正アクセスが各企業で頻発してるんでしょうね。

ちなみに、外部からの不正アクセスによって営業秘密を不正取得すると、不競法第2条第1項第4号違反になりますし、刑事罰でも罰せられる可能性が高いかと思います。


ところで、不正アクセスがこれだけ多いと、不正アクセスを防止するためのセキュリティサービスも多くあるようです。
「不正アクセス」でニュースをチェックすると、セキュリィティサービスに関するニュースも多数ヒットします。
不正アクセス対策は、多くの企業で行う必要があることなので、当然市場も大きいでしょう。

ここで、不正アクセス対策のニュースを見ていると、新しい対策のアイデアを各企業が公開し、そのアイデアを製品に導入して販売しています。
不正アクセス対策の製品では、このアイデアであるアルゴリズムが肝であり、その優秀さをアピールする必要があるかと思います。

不正アクセス対策の製品は導入されているアルゴリズムを公知にしないと、実質的に製品のアピールにならず、製品を販売できないのではないかと思います。
そう、このようなアルゴリズムは、おそらくブラックボックス=非公知とすることができないかと思います。

おっ、営業秘密っぽい話になってきましたよ。
もう、不正アクセスの話はほとんど関係ありません。

上述のように不正アクセス対策の様な事業は、営業活動のためにアルゴリズムをある程度公開しないといけないかと思います。そうであるならば、このアルゴリズムを秘密管理したとしても、非公知性を失っているので営業秘密とはならない可能性が高いと思います(公開の程度にもよると思いますが)。

もし、営業活動で公開するアルゴリズムを知的財産として守りたいのであれば、特許権の取得を検討するべきかと思います。営業活動を開始する前に、アルゴリズムを特許出願するのです。
営業活動でアルゴリズムを自ら公開するので、特許公報で公開されても実害はないかと思います(公開の程度にもよると思いますが)。
可能ならば、営業活動を行う前に特許権を取得し、優れた技術をアピールすることも良いでしょう。

一方、営業活動のためにアルゴリズムを公開したとしても、プログラム(ソースコード)までは公開しないかと思います。
また、ソースコードそのもので特許権を取得してもその権利範囲は非常に狭いものとなる可能性が高いため、ソースコードを特許出願をしても他社に当該ソースコードを開示するデメリットの方が大きくなるので、一般的にソースコードで特許出願することは適切ではないかと思います。
そうであるならば、ソースコードを秘密管理することは必要な措置かと思います。

すなわち、営業活動のためにアルゴリズムを公開するような事業において、アルゴリズムは営業秘密とせずに特許権の取得を目指し、ソースコードは営業活動で公開することもせずに営業秘密として管理するという方策が考えられます。

このように、事業活動に応じて特許出願するのか、営業秘密として管理するのかが決定されるかと思います。例えば、アルゴリズムを営業活動等で公開する必要が無い場合には、特許出願せずに営業秘密として管理してもいいでしょう。
このような判断は、特に企業の知財部で行われるのでしょう。

そう、知財部の方は技術情報に対して特許出願ありき、又は営業秘密管理ありきではなく、どのような管理が適切であるかを十分に検討する必要があります。
すでに上記のような判断は、漠然とかもしれませんが、どこの知財部でも行われているかと思います。しかしながら、営業秘密管理しようとしても有用性・非公知性の観点から、営業秘密管理がそぐわない技術情報もあります。
無意味となりかねない営業秘密管理を行わないためにも、特に企業の知財部の方々は営業秘密についての理解を深める必要があるかと思います。

2018年1月29日月曜日

営業秘密の有用性に「予想外に優れた作用効果」を必要とする裁判所の判断について

営業秘密の有用性、特に技術情報に係る有用性の判断において、裁判所が「予想外に優れた作用効果」は無いとして当該技術情報の有用性を否定する判断を行う場合があることを過去のブログ記事で紹介しています。

参考ブログ記事
営業秘密の有用性判断の主体は?特許の進歩性判断との対比
営業秘密の有用性判断の主体は?続き
営業秘密の有用性に関して、種々の文献の記載
営業秘密の有用性判断の分類

上記「営業秘密の有用性に関して、種々の文献の記載」で挙げた文献のうち、<小野昌延, 松村信夫 著,新・不正競争防止法概説〔第2版〕>には、「「それぞれが公知か又は有用性を欠く情報を単に寄せ集めただけのものであり、これらの情報が組み合わせられることにより予想外の特別に優れた作用効果を奏するとは認められない」として、有用性を否定した判決も存在する(大阪地判平成20年11月4日判時2041号132頁〔融雪板構造事件〕)。ただ、このような情報まで有用性がないとして営業秘密として保護を否定してよいかは問題である。」と記載されていたり、<TMI総合法律事務所 編,Q&A営業秘密をめぐる実務論点>には「上記大阪地判平成20・11・4は、組み合わせにより「選択発明と同視し得る新規な技術的知見」や「予想外の特別に優れた作用効果」というやや高いハードルを課しているようにも見受けられる。」と記載されているように、有用性の判断として「優れた作用効果」を求める裁判所の判断に疑義を有しているような文献もあります。

さらに、田村義之 著, 不正競争法概説〔第2版〕に「秘密管理体制を突破しようとする者はその秘密に価値があると信じているがためにそのような行為に及ぶのである。いずれにせよ秘密管理網を突破する行為が奨励されてしかるべきではないのであるから、このような行為が行われているのに、それほど有用な情報ではないという理由で、法的保護を否定する必要はないであろう。」と記載されており、私としては田村先生の考えが最も納得できます。



ここで、営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性を要件としており、この3要件をみたした情報を法的な保護の対象に値するとしています。
そして、有用性の判断として、犯罪の手口や脱税の方法、反社会的な行為と等は、公序良俗に反する内容の情報は法的な保護の対象に値しないとして、有用性、すなわち営業秘密性は認められません。
また、取締役のゴシップや不祥事等のスキャンダル等も経済的な価値が無いとして有用性が認められません。
これらは当然のことと思われますが、もし、このような情報も有用性を認めてしまうと、公序良俗に反する情報や経済的な価値が無い情報を漏えいさせた人等に対して、民事的な責任だけでなく、刑事的な責任を負わせる可能性があり、そのようなことは甚だ不当であるからと考えられます。

次に、技術情報に係る営業秘密の有用性について「優れた作用効果」を求めた裁判所は、なぜこのような結論に至ったのかを考えてみました。まず、「優れた作用効果」は何と比較してのことなのでしょうか?それは、既に公知となっている技術情報との比較でしょう。

すなわち、公知の技術情報に対して優れた作用効果が無い情報は、経済的な価値が無いと裁判所は判断しているわけです。
そして、もし、優れた作用効果がない情報にも有用性を認めてしまうと、それを漏えいさせた人等に対して、民事的な責任や刑事的な責任を負わせることになり、そのようなことは甚だ不当である、との考えが裁判所にはあるのではないかと想像します。

さらに、公知の技術情報に比較して「優れた作用効果」の無い技術情報は、そもそも本来何人も使用可能な情報であるとも考えられます。
そうであるにもかかわらず、ある企業がこの情報を秘密として管理し、それを持ち出した人に法的な責任を負わせることは不当であるとも考えられます。そもそも自由に使えるはず情報のはずですから。
このように考えると、技術情報に係る営業秘密の有用性に「優れた作用効果」を求めることも多少は納得できる気がします。

私は、上述のように田村先生の見解が一番納得できるのですが、やはり、近年、営業秘密の漏えいに関する刑事罰も重くなり、さらに、損害賠償や差し止め等が企業活動や個人に与える影響を考えると、技術情報に係る営業秘密に対してはある程度の「優れた作用効果」がその要件に含まれるという裁判所の判断は継続されるのではないかと思います。

そうであるならば、技術情報を営業秘密として管理する企業は、そのような判断がなされることを考慮して、どのような技術情報を営業秘密とするのかを判断するべきかと思います。
また、このような判断を行うことにより、企業は、真に営業秘密として管理するべき技術情報を見出すことができるのではないでしょうか?

2018年1月25日木曜日

INPITの支援事例を参考に考える営業秘密ビジネスモデル

先日、INPITの知的財産相談・支援ポータルサイトの営業秘密・知財戦略において、支援事例が紹介されました。
HP:営業秘密・知財戦略 支援事例のご紹介

上記紹介では、10社ほどの支援事例の内容が簡単に紹介されています。
詳細については上記HPをご覧いただきたいのですが、大まかにまとめると支援の流れは以下のようなものでしょうか。

1.営業秘密の概要を説明するセミナー
2.企業内の経営層(担当者)と意見交換
3.問題点の洗い出し
4.営業秘密管理ルールの策定
5.実行

本支援事例は、INPITの知的財産相談・支援ポータルサイトへ相談を寄こした企業に対するものですから支援、すなわち営業秘密に関するコンサルティングを行うことまでが決定済みの案件かと思います。

しかしながら、ビジネスとなると「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」を行ったとしても、その後に至るかどうかは分かりません。

となると、「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」でどのような内容を話すべきかが重要かと思います。それでは、「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」として何を話すのか? それは、依頼者の担当部署によって変わるかと思います。

例えば、弁理士のいるような知財部の方が依頼者であれば、より専門的な話、特許との違いの再確認や判例を交えたような説明をする方が良いかもしれません。また、営業秘密についてほとんど知識がないものの漠然とした危機感をお持ちの方、例えば経営層や経営層に近い方に対しては、より基礎的な説明を行うべきでしょうか。 さらに、営業部門の方からの依頼もあるかもしれません。そのような場合には、営業活動における意図しない営業秘密の漏えいや取引企業を介して知ってしまった他社の営業秘密への対応等を交えて説明をすることが喜ばれるかもしれません。


次の「2.企業内の経営層(担当者)と意見交換」、「3.問題点の洗い出し」については、並行して行われる作業かもしれません。

その企業にとって、どのような情報を営業秘密として管理するべきなのか?、既にある程度の営業秘密管理がなされている場合には不十分な点は何か?等を聞き出すかと思います。当然、意見交換の際には問題点の洗い出しを意識する必要があるかと思います。
このとき、聞き漏らしがないように予めチェックシートを用いると良いのではないでしょうか?支援事例では、具体的にどのような作業を行っていたのかが気になります。

また、「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」、「2.企業内の経営層(担当者)と意見交換」、「3.問題点の洗い出し」は同日に行うことが好ましいかもしれません。
別の日に行うのであれば、「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」を行うときに、「2.企業内の経営層(担当者)と意見交換」や「3.問題点の洗い出し」も行うことを前提とすることが好ましいでしょう、可能ならばですが。
企業によっては、取り敢えず営業秘密に関する知見を得たいという目的で「1.営業秘密の概要を説明するセミナー」だけを依頼する場合もあるかと思います。
もしそのようなご依頼だけでも、私としてはうれしいのですが、営業秘密に関するビジネスとしてはその後につながるほうがより好ましいですよね。

次の「4.営業秘密管理ルールの策定」、これは理想論過ぎてもいけませんよね。
依頼者側が”うーん”と唸ってしまい、コンサル側はシドロモドロになってしまったら最悪です。
依頼企業において、できること・できないことを明確にするべきかと思います。人員や予算の関係、さらにはその業界や対顧客との関係等でできないこともあるでしょう。
できない理由は「2.企業内の経営層(担当者)と意見交換」や「3.問題点の洗い出し」で出てくるかと思います。

また、状況によってはルール策定に関して複数年計画を立てても良いかもしれません。
営業秘密管理ルールの策定は依頼企業によっては今までなかった概念を導入することになるかもしれませんし、営業秘密の概念の浸透に時間がかかるかもしれません。
そのような場合、色々なことを行う必要があるかと思われ、1年程度では実現できないかと思います。依頼企業の人員にも限りがありますし。
そうであるならば、1年目は必須の作業、例えば情報の秘密管理から行い、2年目以降に秘密管理規定の作成や修行規則の改定、管理システムの導入等を行うといった、複数年計画を立てる必要があるでしょう。

「5.実行」、これは依頼企業に行って頂くわけでしょうが、可能ならば外部監査のようにコンサル側が進捗状況等を確認しても良いかもしれません。当然、「4.営業秘密管理ルールの策定」は実行可能なものを策定しなければならず、絵に描いた餅とならないようにするべきでしょう。

また、「5.実行」には営業秘密管理について従業員に周知する作業が入っているかと思います。
私は何度か本ブログでも書いているように(当然とも考えられますが)、営業秘密の漏えい防止には従業員への教育が欠かせないと考えています。
いかに素晴らしい営業秘密管理のルールやシステムを作ったとしても、営業秘密に対するアクセス権限を有している人が漏洩させることがあれば意味はありません。
このため、アクセス権限を有していたとしても、その営業秘密は会社のものであることや、営業秘密の漏えいが執行猶予無しの実刑にもなり得る重罪であることを全従業員に認識してもらう必要があります。

さらに、上記支援事例において気になることは、秘密管理する情報に対するアドバイスです。
以前のブログでも述べているように、特に技術情報に関しては、裁判所において有用性や非公知性の要件を満たさないと判断される場合があります。すなわち、営業秘密とすることに適さない技術情報があります。

参考ブログ記事
営業秘密の3要件:有用性 -特許との関係-
営業秘密の非公知性と特許の新規性との違い

このような説明はなされているのでしょうか?
とは言っても、有用性や非公知性の判断は終局的には裁判でなされるものであるため、企業側が必要と思うのであればどのような情報でも営業秘密として管理するべきだと思います。
しかしながら、可能性としては説明するべきかと思いますし、そのような説明をすることで特許や意匠等の権利取得という選択も検討の俎上にあがるかと思います。

ここで私が重要と考えることは、入り口が営業秘密のコンサルティングだとしても、技術情報に関しては営業秘密とすることが前提ではなく特許等の権利取得も含め、その技術情報に適した管理手法の提案だと思います。
そして、弁理士だからこそ、営業秘密化と特許出願等を含めた情報管理の方策を立てることができるのではないかと考えます。

2018年1月22日月曜日

ブログ記事100件記念

このブログ記事でちょうど100件目です。
だからというわけではありませんが、今まで無かったブログのプロフィールに私の似顔絵の画像を追加しました。

もともとは、私が所属する弁理士同友会の公報に載せるためのイラストなのですが、本ブログにも使用してい良いとの許諾を頂けたので、ブログ記事100件目のタイミングで使わせた頂きます。

イラストの作成は、株式会社クリオの松本直子弁理士によるものです。
大変ありがとうございます。


今回で100件目の記事になりますが、定期的にブログを更新し続けて良かったことの第一としては自分の勉強になることですね。
営業秘密について何かをしようと思っても、日々の業務がありますので思っているだけでは何も進みませんし、営業秘密について自分の考えを文章にすることで、さらに考えも深まります。
営業秘密は色々な点で議論すべきことがあるかと思いますが、未だ十分に議論がされているとは言い難いです。判例も多くありませんので当然かと思います。
また、このためか裁判所の判断についてもその妥当性に疑問を感じることがあります。

一方で、企業は情報を積極的に秘匿化していますし、増々その傾向は高まるかと思います。そして、秘匿化した情報が漏えいすると、その被害額が高額になる場合もあります。
特に技術情報に関しては、特許出願件数が減少傾向にあるということは、必然的に秘匿化される情報も多くなっていると思われます。

このため、秘匿化している技術情報が真に営業秘密となり得るものなのかを企業は検討することの必要性が高まるのではないでしょうか?
具体的には、営業秘密の有用性については、格段の作用効果の有無について、また、非公知性についてはリバースエンジニアリングとの関係についてが議論となるかと思います。
さらに、今後は、営業秘密の帰属についても議論になるかもしれません。

そして、営業秘密となり得る要件を正しく理解することで、営業秘密として管理するべき情報もより精査されるでしょう。
そのためにも、営業秘密に関する研究、主に判例研究となるかと思いますが、それが必要になり、誰かがやらないといけないことかと思います。