2017年6月22日木曜日

東芝の半導体部門、日米韓連合への売却交渉

またまた時事ネタです。

21日のニュースで東芝の半導体部門、日米韓連合への売却交渉と報道されています。
この報道では、日米韓とは、日本は革新機構と日本政策投資銀行や民間企業、米国は投資ファンドのベインキャピタル、韓国はSKハイニックスとあります。

おいおい、SKハイニックス?も加わった企業連合に売却確定?
先日のブログでもちょっと触れましたが、SKハイニックスは、東芝の半導体製造技術の営業秘密を不法に取得した会社です。
この事件は、営業秘密の漏えいで初めて執行猶予無しの実刑(懲役5年)が確定した事件です。

まあ、ちょっと前から東芝の半導体部門をSKハイニックスが狙っているという噂のような報道はありましたし、また、営業秘密の漏えいを機に東芝はSKハイニックスと共同開発なんかもやっていたようですけどね。

今回の売却交渉では、SKハイニックスは出資ではなく融資であり、経営権は握らないため技術流出や人材流出の懸念はないとのことです(参照:毎日新聞21日記事)。
ここからは素人考えですが、SKハイニックスが金だけ出すわけないですよね。
当然、SKハイニックスは、長期的なことを視野に入れ、分社化された半導体部門を経営権を握ることを模索するでしょうね。ベインキャピタルの持ち分をSKハイニックスが手に入れるとか。
そんなこと素人でも想像できるので、東芝及び政府側もその可能性は分かっているのでしょう。
それとも契約でSKハイニックスを雁字搦めにしているのでしょうか?

ところで、東芝の営業秘密をSKハイニックスへ漏えいさせた犯人(漏えい者)は、未だ刑務所に入っているのでしょうが、もし、東芝の半導体部門がSKハイニックスのものになったら何を思うのでしょうか?

2017年6月21日水曜日

イチゴ品種の韓国への流出

日本農業新聞に6月20日付けで「イチゴ品種 韓国に流出 損失5年で220億円 農水省試算」との記事がありました。
このような話は度々聞く話ですね。
東芝の半導体製造技術が韓国のSKハイニックスに流出したり、新日鉄の鋼板製造技術が韓国のポスコに流出したり・・・。

この記事の中では、「栃木県の「とちおとめ」や農家が開発した「レッドパール」「章姫」などが無断持ち出しなどで韓国に流出し、」とあります。
無断持ち出しって・・・、苗や種でしょうか。普通に窃盗ですよね。
それに、これこそ営業秘密として管理されるべきものではないでしょうか。

なお、顧客情報や技術情報等のデータのみならず、このような苗や種も営業秘密の対象となる考えられます。
例えば、東京地裁平成22年4月28日判決(平成18年(ワ)第29160号)では、苗や種でないものの、コエンザイムQ10の生産菌を営業秘密として認めた判例があります。
また、不正競争防止法では、平成27年改正において「日本国外において使用する目的で、営業秘密を取得した者」に対しては、「十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金」(二十一条3項)とされています。一方で、「日本国外において使用する目的」という要件がない場合には、「十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金」(二十一条1項)とされており、国外で使用する目的で営業秘密を漏えいさせる場合の方がより重い罪とされています。
この法目的は、まさに、海外へ営業秘密が漏えいすることを防止することにあります。

記事にあるように、品種登録も手の一つのなのでしょうが、営業秘密の漏えいに関して法整備が進んでいるわけで、自分の技術を守ろうとするのであれば、それなりの対応が必要ではないでしょうか?
例えば、海外からの研修生であっても、秘密保持契約を行い、また、日本の法律における営業秘密の漏えいについても教育を行い、まずは漏えいしないようにするべきかと思います(そもそもたエ種や苗の持ち出しは窃盗ですが・・・)。

2017年6月19日月曜日

特許庁における知的財産分科会

先日特許庁の「お知らせ」において「特許庁における知的財産分科会」の第10回議事録を掲載したことが告知されていました。

ざっと斜め読みし、営業秘密やデータの利活用についてどんな発言がされているのか見てみました。

データの保護に関しては、原状において企業は営業秘密として管理している場合が多いようです(p.11)
さらに、p.11には「営業秘密としての保護ではないのだけれども、ある一定の条件のもとで管理しているものについて、例えば、コピーされたり、模写、複製でばらまかれたりすることによって、権利の無い方々が取得あるいは使用することを止めてほしい、そしてさらに差止を行いたいといった御意見をいただいてきたのが、この検討を始めるに当たっての出発です。 」
との内容が記載されており、やはり「営業秘密」として管理されていないデータであっても、「管理」されているデータに関しては保護する方向に検討しているようですね。
ところで「管理」の定義はどうなるのでしょうか?
考え方によっては、サーバ内に記憶されているデータは全てが「管理」されていると言えるかもしれません。一応、誰かがフォルダの指定等を行いデータを記憶させているのですからね。

また、データに含まれるものとしてp.12には「 データと書かせていただきましたけれども、人間が目や耳で感知することができないもの、例えば、位置情報であるとか、電気的な変化であるとかを暗号化などしたデータの流通も今後増えてくると思いますので、その辺に対しても保護対象として追加してはいかがかといった検討を行っております。」
との記載があり、データは非常に広範囲なものになりそうですね。




さらに、この議事録には日本弁理士会会長が以下のように発言しています(p.37)。
「このほか、オープン・クローズ戦略、それから営業秘密のほうも弁理士にしっかり対応できるように計画して、研修を強化していこうと思っています。
 そのほか、ここで入っていますデータの保護については、これから具体的な法整備に入るということになると思いますが、弁理士も積極的にこの保護に関与していこうと思っております。
 それについて、この法整備を進めるとともに、できれば弁理士が関与しやすい法環境を整備していただけたら非常にありがたいなと思っております。 」

ちなみに、不正競争防止法の営業秘密における弁理士の業務内容は、「技術上の秘密関連に限る」との限定が入っております。(参考:日本弁理士会「不正競争防止法における弁理士の業務」
そうすると、「データ」を不正競争防止法の保護範囲とした場合には、このデータ(例えばビッグデータ)は「技術上の秘密関連」になるのでしょうか?
例えば、膨大な数におよぶ電車の乗降者数のビッグデータ等は、単なる数値の羅列に過ぎないでしょう。そうすると、このビッグデータを使用するソフトウェア等は「技術」でしょうけれど、「ビッグデータ」そのものは技術といえるのでしょうか?
いわゆる非弁行為とならずに「弁理士」としてどこまで関与してよいのか?確かに、データの保護に付随して、弁理士に対する法環境の整備は必要だと思います。