2017年8月21日月曜日

第4次産業革命に関するセミナーが開催されます。

弁理士同友会主催で、9月13日に『第4次産業革命と知的財産法制度』という題目でセミナーが開催されるようです。

講演者は、北海道大学の田村善之先生。
知財関連では有名な方ですよね。

以前のブログでも紹介した「産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会」でも委員をされています。
第4次産業革命に重点を置いた知財セミナーは未だほとんどないと思われます。


私もセミナー及び懇親会に参加する予定ですが、次の日は朝から健康診断なんですよね。
懇親会、どうしようかな。
まあ、飲食しなければいいだけですが・・・。

2017年8月18日金曜日

データどろぼう?って、いくら何でも・・・。

土木建築会社の元従業員が、転職先で利用するために顧客情報や仕入れ先情報の営業秘密を持ち出し、書類送検されたようです。
そして、そのデータを「データどろぼう」 と名付けたフォルダに入れ、そのフォルダを前職のパソコンから削除することなく、退職したようで・・・。
参照:毎日新聞「フォルダー名「データどろぼう」で不正入手発覚

この元従業員をマヌケと言ってしまえばそこまでですが、転職時に営業秘密を持ち出すときには、色々“足”が付きます。

典型的なものはアクセスログ。
退職直前に日頃アクセスしない営業秘密にアクセスしたとか、業務とは考えられないほど多量の営業秘密を退職直前にダウンロードしたとか・・・。

私がセミナーで聞いた例では、退職直前に夜中こっそりとデータをダウンロードしている様を同僚に見つかったとか。
他にも、メールアドレスが記載された顧客データを転職先で使用してメールを送信したところ、この顧客データにテスト用の前職会社のメールアドレスが含まれており、そこにもメールを送ってしまい、営業秘密の持ち出し及び使用がばれたとか・・・。


この図は、INPITの「企業における営業秘密管理に関する実態調査」報告書のアンケート結果ですが、色々なルートで営業秘密の漏えいが認識されるようです。
今回の事件はたまたま見つけただけの様ですが、企業側も営業秘密の漏えいには敏感になっているので、 今後も営業秘密の漏えいは発覚しやすくなるでしょうね。

営業秘密、企業秘密、ノウハウ、似て非なる言葉

営業秘密と似たような言葉として、企業秘密やノウハウがあるかと思います。

営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性を満たす情報とのように、法的(不競法2条6項)にもその定義が明確になっています。

一方、企業秘密、ノウハウは法的にはその定義が明確になっていないと思います。

企業秘密は、営業秘密の上位概念とでもいうべき言葉でしょうか?
おそらく、企業が秘密としたい情報なのでしょうが、秘密管理性、有用性、非公知性を満たしているとは限らない情報も含まれると思います。
企業秘密は営業秘密に近い概念かと思われますが、「企業秘密=営業秘密」ではありません。

ノウハウは、ウィキペディアにもその項目がありますが、定義があいまいです。
企業によってもその使い方が異なると思われます。
ノウハウの中には秘密管理されているものもあれば、秘密管理されておらず、敢えて開示しているものもあるでしょう。一方、開示していないノウハウ、すなわち非公知性を有するのノウハウは企業が開示しないのであるから有用性を有している可能性が高く、秘密管理さえすれば営業秘密となるものでしょう。


ちなみに、私は、ノウハウという言葉を、特許明細書に記載すべきではない下位概念として用いることもあります。
例えば、拒絶された場合にその内容で補正しても進歩性の要件を満たさないような事項、グラフの縦軸及び横軸の値や、数値限定にも使えないような数値範囲等を個人的にはノウハウと呼ぶことがあります。
より具体的には、装置を構成する各部品のサイズ、その装置の動作に関する物理量、制御パラメータ、混合物の重量比等、これらの数値が他社に知られると、特許明細書に記載の技術をより簡易に再現できるものを、私はノウハウという場合があります。

そして、私の経験というか感覚では、特許出願を前提としたクライアントとの発明相談の場において、これは「ノウハウでしょうから明細書に記載することはやめましょう」となり、実際に明細書に記載しなかった「ノウハウ」がその後クライアント先で適切に管理されていないのではないかと思われます。
当然、「ノウハウ」とした情報の質にもよりますが、この「ノウハウ」はおそらく、発明者のパソコンやサーバのどこかに埋もれている可能性が高いと思います。
これでは、「ノウハウ」は営業秘密にはなり得ていない可能性が高く、「ノウハウ」が持ち出されても企業は文句は言えません。
さらには、特許出願をせずに、自社内でノウハウとされた技術に関しては、特許事務所に対して発明相談も行われないため、どのように管理されているか知る由もありません。

このように、「営業秘密」、「企業秘密」、「ノウハウ」は、各々意味合いが異なるものであり、これらの言葉を正しく使い分ける必要があると思います。
ただし、「企業秘密」は“秘密”と言っているために、営業秘密である可能性が高いとも思われます。
一方、「ノウハウ」は必ずしも秘密管理されているとは限りません。「ノウハウ」をどのように管理するのか、これを課題とするべき企業は多いのではないでしょうか。