2017年8月23日水曜日

ラーメンレシピは誰のもの?

営業秘密はだれのものでしょう?
先日、弁護士ドットコムの記事に「「ラーメン店」レシピは営業秘密? クビになった考案者がやめさせることはできるか」というものがありました。

この記事の結論を引用すると次のようなものです。
「問題のラーメンのレシピについて、ラーメン店のオーナーが秘密として管理して使っているのであれば、既に解雇された従業員が考案したレシピであってもオーナーの営業秘密として保護される可能性があります。この場合、元従業員は、自分が考案したレシピの使用や開示の差し止め、また使用や開示により発生した損害の賠償請求はできません。むしろ、オーナーがこれらを行うことができます。」
この結論については、まったく異論はありません。
そう、現在の法律において営業秘密はそれを管理する企業のものであって、それを開発した開発者のものではありません。

そして、営業秘密については、その営業秘密の開発者に対する法的保護は何らありません。
一方、特許、意匠、実用新案では、その開発者に対して、法的保護が与えられます(特許法35条等)。
このように、技術開発等を行い特許出願等を行えば、その開発者は法的保護のもと、それに対する利益を得ることが認められていますが、いったん営業秘密とされると開発者は法的保護をうけることができません。


ちなみに、特許庁における職務発明ガイドラインのQ&AのQ21「職務発明について使用者等が特許を受ける権利を取得した場合、特許出願せず に営業秘密又はノウハウとしたときであっても、発明者である従業者等に対して 相当の利益を付与する必要はありますか。」という質問があります。
これに対しては、【参考】として判例を挙げて「職務発明について使用者等が特許を受ける権利を取得した場合、特許出願せずに営業秘密又はノウハウとしたときであっても、発明者に対して相当の利益を付与する必要があ り得ると考えられます」とのように特許庁では回答しています。
しかしながら、これは法的な裏付けがあってのことではないため、企業は営業秘密の開発者に対して、利益を与える法的な義務はありません。

また、特許と営業秘密、この2つに対する法的な責任としては、共に民事的責任及び刑事的責任が法律で定められています。
しかしながら、特許権侵害において刑事的責任が問われた事件は聞いたことがありません。
さらに、特許侵害では個人の責任が問われることもほとんどないかと思います。

すなわち、転職者自身が開発に携わり、前職企業が権利者の“特許”に関する技術を転職先で使用しても、その転職先企業が民事的責任を負うことになっても転職者が民事的責任を負うことはないでしょう。
一方、転職者自信が開発に携わり、前職企業が“営業秘密”として管理している技術を転職先で使用すると、特許権侵害とは全く異なり、その転職先企業と共に転借者が民事的責任を負う可能性もあり、さらには刑事的責任を負う可能性もあります。

私は、特許権の取得も営業秘密としての管理も、共に「技術管理」及び「情報管理」の手法の一つであると思います。技術を特許とするか営業秘密とするかによって、現行法及び現行法の運用ではこのように大きな違いがあります。

果たして、これでいいのでしょうか?

2017年8月21日月曜日

第4次産業革命に関するセミナーが開催されます。

弁理士同友会主催で、9月13日に『第4次産業革命と知的財産法制度』という題目でセミナーが開催されるようです。

講演者は、北海道大学の田村善之先生。
知財関連では有名な方ですよね。

以前のブログでも紹介した「産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会」でも委員をされています。
第4次産業革命に重点を置いた知財セミナーは未だほとんどないと思われます。


私もセミナー及び懇親会に参加する予定ですが、次の日は朝から健康診断なんですよね。
懇親会、どうしようかな。
まあ、飲食しなければいいだけですが・・・。

2017年8月18日金曜日

データどろぼう?って、いくら何でも・・・。

土木建築会社の元従業員が、転職先で利用するために顧客情報や仕入れ先情報の営業秘密を持ち出し、書類送検されたようです。
そして、そのデータを「データどろぼう」 と名付けたフォルダに入れ、そのフォルダを前職のパソコンから削除することなく、退職したようで・・・。
参照:毎日新聞「フォルダー名「データどろぼう」で不正入手発覚

この元従業員をマヌケと言ってしまえばそこまでですが、転職時に営業秘密を持ち出すときには、色々“足”が付きます。

典型的なものはアクセスログ。
退職直前に日頃アクセスしない営業秘密にアクセスしたとか、業務とは考えられないほど多量の営業秘密を退職直前にダウンロードしたとか・・・。

私がセミナーで聞いた例では、退職直前に夜中こっそりとデータをダウンロードしている様を同僚に見つかったとか。
他にも、メールアドレスが記載された顧客データを転職先で使用してメールを送信したところ、この顧客データにテスト用の前職会社のメールアドレスが含まれており、そこにもメールを送ってしまい、営業秘密の持ち出し及び使用がばれたとか・・・。


この図は、INPITの「企業における営業秘密管理に関する実態調査」報告書のアンケート結果ですが、色々なルートで営業秘密の漏えいが認識されるようです。
今回の事件はたまたま見つけただけの様ですが、企業側も営業秘密の漏えいには敏感になっているので、 今後も営業秘密の漏えいは発覚しやすくなるでしょうね。