2024年2月13日火曜日

判例紹介:高裁で無罪判決となった営業秘密侵害事件(刑事事件)その2

前回のブログ記事で紹介した高裁で無罪判決となった事件(札幌地裁令和5年3月17日判決 事件番号:令3(わ)915号)、札幌高裁令和5年7月6日判決(事件番号:令5(う)74号))の続きです。

この事件では、地裁において肯定したものの高裁では否定された秘密管理措置が複数あります。前回のブログでは、本件情報(販売先、販売商品、販売金額等の履歴が記録された得意先電子元)を管理する△△システムのIDやパスワードを、地裁では本件情報に対する秘密管理措置として認めたものの、高裁ではそれを認めなかったということを解説しました。

上記の他にも△△システムの画面には「出力データの取扱注意事項」と題する警告画面が表示されており、本事件ではこの警告画面の表示も秘密管理措置となり得るのかが争点となっています。なお、警告画面の表示は以下のようなものであり、「同意します」と記載されたボタンを押下しなければ、情報を出力できない仕組みになっていたようです。
株式会社eが提供するデータの利用範囲は、データ入手元から使用を認められている範囲に制限され、貴社内における経営分析等、通常業務の範囲内に制限されます。したがって、第三者へのデータ提供等は『契約違反』に該当します。
以下の制約事項を遵守することに同意しますか。 
1.貴社内における通常業務の範囲を超えて利用しないものとします。 
2.第三者に開示しないのはもちろんのこと、目的を果たすために必要最低限の役員及び従業員以外には開示しないものとします。
「警告画面」の表示に対して被告の弁護人は以下のようにa社(被害企業)とe社(△△システムのメーカー)との秘密保持契約を示していると主張しました。
前記警告画面の文言と、a社とe社の間で締結された秘密保持等確認書の文言において、第三者へのデータ提供等は「契約違反」に該当するとされており、a社とe社の間の契約を念頭に置いていると考えられること、テキスト形式で出力され、データの加工が可能になる場合に限って前記警告画面が表示される仕組みになっていることなどを理由として、e社がa社の従業員に対して、e社の「秘密情報」の不正使用等を禁止したものと解釈すべきという。
一方で、「警告画面」の表示に対して地裁は以下のように判断し、弁護人の主張を認めませんでした。
得意先電子元帳の情報を出力する際の仕組みについて検討すると、前記前提事実のとおり、出力する際には警告画面が表示され、「制約事項」に同意するかどうかの確認が求められていた。このことは、アクセスする従業員に対し、△△システムの情報の中でも、本件情報を含む得意先電子元帳の情報が、特に厳重に管理されるべき秘密であることを認識させるものであったといえる。

しかしながら高裁はこのような地裁の判断を否定し、以下のように警告画面を秘密管理措置として認めませんでした。この高裁の判断は、弁護人の主張と同様であると思われます。
・・・警告文の主語は、「株式会社eが提供するデータの利用範囲は」となっており、第三者への情報提供等の制限の対象は、△△システムを提供するe社が提供するファイルレイアウト等の秘密情報と解するのが文面上自然であるし、文末が「第三者へのデータ提供等は『契約違反』に該当します。」となっており、ここでいう「契約」は、e社とa社との間の契約を指すとみるのが自然である上、警告画面末尾には、「※詳細については、締結致しました『秘密保持等確認書』をご確認ください。」と付記されていることから、a社からe社に提出された「秘密保持等確認書」(原審甲31添付資料4)をみてみると、その1条2項1号において、第三者への情報提供等が制限される秘密情報の範囲から、a社が△△システムの使用を通じて自ら入力・作成・登録等した純粋な同社固有のデータを明確に除外しており、これに該当する同社固有のデータであると解される本件情報は、前記警告画面が第三者への情報提供等を制限する対象とはなっていないものと認められる。したがって、前記警告画面の趣旨は、所論がいうようにe社のファイルレイアウトなどの秘密情報を保持するところにあるものと解されるから、これをもって、a社自身の秘密管理意思の現れとみることはできないといわざるを得ない。前記警告画面の趣旨がこのように解される以上、確かに、原判決のいうように、同警告画面を見たa社従業員が、本件情報を含め得意先電子元帳機能から出力しようとしている情報を社外の者に漏洩することが禁じられている旨の警告と誤解する場合があることは想像するに難くないところではあるが、そうだかからといって、上記結論を左右するものではない。
このように高裁は「誤解」が生じる可能性があることを認めつつも、警告画面の内容を文字通りに解釈し、本件情報に対する秘密管理措置とは認めませんでした。このような高裁の判断は、秘密保持の対象となる情報が何であるかを厳密に判断した結果であり、妥当なものであると思われます。

なお、本事件において高裁は、被害企業であるa社が各従業員の入社時に誓約書を提出させていることも秘密管理意思の根拠として考え得る、とのように指摘しています。この誓約書について地裁では指摘していないものの、高裁では以下のように誓約書に基づく秘密管理性も否定しています。また、就業規則における秘密管理の規定についても、高裁は下記のように秘密管理措置とは認めていません。
・・・現に被告人Y1がa社に対し提出した平成24年6月6日付誓約書には「貴社の諸規則や命令を必ず遵守します。」「貴社の利害に関する機密、取引先の内情等は一切他言いたしません。」(原審甲21)、被告人Y2がa社に対し提出した平成5年3月21日付誓約書にも「貴社の諸規則や命令を必ず遵守致します。」「貴社の利害に関する機密、取引先の内情等は一切他言致しません。」(原審甲23)との記載が認められる。しかしながら、これらによっても本件情報が上記誓約書における守秘義務の対象か否かその範囲は客観的に明らかになってはおらず、これらをもってa社が、本件情報について秘密として管理する意思を表示していたと認めることは困難である。
さらに、a社の就業規則においては、その9条において、「(27) 会社内外を問わず、在籍中又は退職後においても、会社、取引先等の秘密、機密性のある情報、顧客情報、企画案、ノウハウ、データ、ID、パスワードおよび会社の不利益となる事項を第三者に開示、漏洩、提供しないこと。また、コピー等をして社外に持ち出さない事。」(原審甲4)との規定があり、この点に照らすと、本件情報が社外への持ち出しを禁止されるいずれかの情報に当たると解されるところであるが、a社の従業員に対する就業規則の周知等の手続が適正になされていたかについては疑義が残るところであるし、その他、a社において、営業秘密の取扱いについて、従業員に注意喚起をしていたような事情もうかがえないことにも照らせば、この点をもって秘密管理措置が十分であったということもできない。
以上のように、本事件は、本件情報の有用性及び非公知性、被告人による本件情報も持ち出しも認められているものの、本件情報の秘密管理性は認められず、高裁において被告人は無罪となっています。
一方で、本件情報に対して適切な秘密管理措置さえ行われていれば、被告人は有罪となった事件であると思われます。適切な秘密管理措置とは、決して難しいことではなく、例えば、△△システムを用いて本件情報を表示する際に、本件情報が営業秘密であることを明確に認識させる表示を行う、とのようなことで足り得るものだったと考えます。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2024年1月28日日曜日

判例紹介:高裁で無罪判決となった営業秘密侵害事件(刑事事件)

営業秘密侵害の刑事事件でも、まれに裁判において無罪判決となる場合があります。
今回紹介する事件は、地裁判決(札幌地裁令和5年3月17日判決 事件番号:令3(わ)915号))において有罪であったにもかかわらず、高裁判決(札幌高裁令和 5年7月6日判決(事件番号:令5(う)74号))において無罪となった事件です。

本事件の概要は高裁判決文において以下のように記されています。
本件は、自動車部品の仕入れ及び販売等を業とするa社(以下、略称等は原判決のそれに従う。)の従業員として、同社から同社の営業秘密である同社の販売先、販売商品、販売金額等の履歴が記録された得意先電子元帳を示されていた被告人Y1が、(1)Aと共謀の上、不正の利益を得る目的で、令和2年10月27日、被告人Y1が同社の前記得意先電子元帳を管理する同社サーバコンピュータにアクセスし、同得意先電子元帳の、得意先b社及び仕入先c社に係る本件情報①を記録したファイルをa社から貸与されていたパーソナルコンピュータに保存し、その複製を作成する方法で同社の営業秘密を領得し(原判示第1)、(2)被告人Y2と共謀の上、不正の利益を得る目的で、同月28日、被告人Y1が同社の前記サーバコンピュータにアクセスし、同得意先電子元帳の、得意先d社に係る本件情報②を表示し、SNSアプリケーションソフトLINEの画像キャプチャ機能を利用して本件情報②を画像ファイルとして記録してその複製を作成する方法でa社の営業秘密を領得した(原判示第2)という事案である。原判決は、いずれの事実についても有罪と認め、被告人両名をいずれも罰金30万円に処した。
このように、被告人Y1,Y2は、被害企業であるa社の販売先、販売商品、販売金額等の履歴が記録された得意先電子元帳のb社、c社、d社の情報(本件情報)を持ち出しています。このように企業の得意先の情報の履歴は一般的には公知とされず、秘密として扱う企業も多いかと思います。
なお、被告人Y2はa社の元従業員であり、その後にf社を設立しています。また、上記で登場するAもa社の元従業員であり、その後にf社に入社して営業を担当していました。そして、被告人Y1,Y2及びAは「f社」という名のLINEトークグループを作成し、データのやり取りをしていたようです。

ここで、地裁、高裁共にa社の本件情報に対する有用性、非公知性を認めているものの、地裁と高裁とでは本件情報に対する秘密管理性の判断が異なるものとなりました。

まず、地裁による秘密管理性の判断は以下のようなものでした。
△△システムへのアクセス方法について検討する。本件情報は△△システムで保管されていて、本件情報にアクセスするためには、a社共通のアカウントに加え、個々の従業員のログインID及びパスワードの入力が求められる仕組みとなっていた。△△システム起動のためのUSBキーは従業員用パーソナルコンピュータに事実上挿したままの状態であったとはいえ、アカウント等の管理により本件情報にアクセスできる者を従業員に限定していたといえる。実際には、a社のアルバイトや委託業務者も△△システムを使用していたが、△△システムを立ち上げる際には従業員がIDやパスワードを入力しており、アカウント等を用いた本件情報へのアクセス制限の実効性が失われていたとはいえない。また、アルバイトらが△△システムを使用し本件情報にアクセスすることができる状態にあったとしても、これらの者はa社の指揮監督に従って同社の業務に従事している点では従業員と同様の立場であり、また、これらの者が△△システムを使用するのは伝票再発行等の業務上必要な場合であった。
以上のような△△システムへのアクセス方法は、△△システムで保管されている本件情報が秘密であることを十分認識させるものであったといえる。
地裁では、本件情報へアクセスするためには△△システムにIDとパスワードを入力しなければならず、それを持って本件情報の秘密管理性を認めたようです。


一方で、高裁による秘密管理性の判断は以下のようなものです。
まず、本件情報は△△システム内の得意先電子元帳内に保管されていた情報であるところ、△△システムにアクセスする際には、原判決が適切に認定しているとおり、USBアクセスキーを挿入し、企業認証ログイン画面において、a社共通の企業認証アカウントを入力し、更に従業員ログイン画面において、各従業員に付与されたIDとパスワードを入力するといった手順が要求されている。もっとも、△△システムには、本件情報のような営業秘密にかかわるものに限らず、在庫数や日報といった機能も搭載されており、上記の手順は、本件情報を含む営業秘密に属する情報へのアクセスのみならず、△△システムに搭載された諸機能を利用するために要求される手順にすぎないとも考えられる。また、△△システムは、上記のように多岐にわたる機能が搭載されているため、a社の従業員であれば、自己に付与されたID及びパスワードを用いてアクセスすることができ、得意先電子元帳自体にアクセスする際に新たにパスワード等の入力を求めるなどといった制限は設けられていなかった。そうすると、本件情報を含む得意先電子元帳に記録されている情報に接する従業員において、a社が当該情報をその他の秘密とはされない情報と区別し、特に秘密として管理しようとする意思を有していることを明確に認識できるほど、客観的な徴表があると認めることはできず、△△システムにアクセスする際に、IDやパスワード等を入力するなどの手順を要するということのみでは、a社が十分な秘密管理措置を講じていたと認めることはできないというべきである。
このように高裁では、△△システムにアクセスするためにはIDとパスワードの入力が必要であることを認めているものの、△△システムは本件情報だけでなく在庫数や日報といった機能も搭載されていることをもって、本件情報の秘密管理性を認めませんでした。
すなわち、△△システムを用いて従業員がアクセスできる情報には、本件情報だけでなく様々な情報が含まれるため、△△システムのIDとパスワードは本件情報に対する秘密管理措置とは認められないと判断したようです。
このように、営業秘密と主張する情報とその他の情報が混在して管理されていたために、営業秘密とする情報に対する秘密管理性を従業員等が認識できないとして、当該情報の営業秘密性が認められなかった例は他にもあります。

例えば、民事事件である接触角計算プログラム事件 (知財高裁平成28年4月27日、事件番号:平成26年(ネ)10059等、東京地裁平成26年4月24日判決等)です。
この事件は、被控訴人(一審原告)が営業秘密と主張する原告アルゴリズムが表紙中央部に「CONFIDENTIAL」と大きく印字され,各ページの上部欄外に「【社外秘】」と小さく印字された本件ハンドブックに記載されていました。このような措置は一見、原告アルゴリズムに対する秘密管理措置とも思われます。
しかしながら、本件ハンドブックは、公知の他の情報も記載されており、また、本件ハンドブックを顧客にも見せていたため、従業員は本件ハンドブックのどの部分の記載内容が秘密であるかを認識することが困難であった、として本件アルゴリズムの秘密管理性が否定されました。

今回の刑事事件は、まさに接触角計算プログラム事件と同様の判断であり、過去の判例に基づくと、無罪判決とした高裁の判断は妥当であるとも思われます。
このように、営業秘密とする情報は、それが秘密であることを従業員が認識できるように直接的な秘密管理措置を行う必要があります。本事件の例では、△△システムで営業秘密とする本件情報を管理するのであれば、△△システムを介して本件情報にアクセスして場合にはに、本件情報が秘密であることを認識させるためのアラート等を発したり、画面の分かり易い位置に秘密であることを示す表示を行う等の措置が必要であったと思います。

なお、地裁において被告人の弁護人は、下記のように高裁の判断と同様の主張を行っていました。しかしながら、地裁は弁護人の主張を認めなかったという経緯もあります。すなわち、高裁は、地裁のこのような判断を真っ向から否定したものとなります。
弁護人は、各従業員に割り当てられていたIDとパスワードは、在庫数や日報といった機能を含めた△△システムのシステムを使用するためのものにすぎず、得意先電子元帳にアクセスするためのものではないから、本件情報を秘密として管理しているとはいえないと主張する。しかし、△△システムへのアクセスを制限することは、本件情報も含めて△△システムで管理されている情報についてアクセスを制限していることにほかならない。弁護人の主張が、本件情報のみに限定して管理する措置が必要という趣旨であるとすれば、そのように限定する理由はないというべきであり、前記のとおりの本件情報の性質や後記の警告画面等の事情と相まって、本件情報の秘密管理性を十分根拠付けるものというべきである。
弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2024年1月18日木曜日

判例紹介:従業員が会社に秘密保持誓約書を提出しなくても秘密管理性が認められた事例

所属している会社から秘密保持誓約書の提出を求められる場合があるかと思いますが、秘密保持誓約書を提出しなければ、会社の営業秘密を持ち出しても大丈夫なのでしょうか。
東京地裁平成14年12月26日中間判決(事件番号:平12(ワ)22457号)はこのような事例について争った裁判例です。

本事件は、人材派遣事業等を行う原告会社の元従業員であった被告A及びBが人材派遣事業等を行う被告会社を設立し、被告A及びBが原告の営業秘密である派遣スタッフ及び派遣先事業所に関する情報を被告会社に不正に開示したというものです。なお,被告A及びBは各々、原告会社の取締役営業副部長、原告会社の取締役営業部長でした。

まず、裁判所は、派遣スタッフ及び派遣先事業所に関する情報が原告会社においてコンピュータとスタッフカード(帳簿)によって管理されており,その両方において下記のように秘密管理性を認めました。
本件においては,上記ア(ア)~(ウ)に認定のとおり,派遣スタッフ及び派遣先の事業所の情報が様々な形態で存在するが,このうち,上記情報のコンピュータにおける管理状況は,ア(ア)に認定したように,秘密であることの認識及びアクセス制限のいずれの点でも,秘密管理性の要件を満たすものと認められる。・・・
これらのスタッフカードについては,利用の必要のある都度,コーディネータあるいは営業課員により複写機でコピーが作成されて,営業課員がこれを持ち歩くこともあったというのであるが,これらのコピーの作成とその利用は,スタッフカードのうちの数名分について一時的に行うものであって,・・・,業務の必要上やむを得ない利用形態と認めることができる。また,営業課員が自分の手帳等に自己の担当する派遣スタッフや派遣先事業所に関する情報を転記して携帯していたことも認められるが,・・・,その必要上やむを得ない利用形態と認められる。他方,前記ア(エ)において認定したとおり,原告会社では,派遣スタッフや派遣先事業所の情報の重要性やこれらを漏洩してはならないことを研修等を通じて従業員に周知させていたうえ,該当部署の従業員一般との間に秘密保持契約を締結して秘密の保持に留意していたものである。

一方で被告A及びBは、原告会社から求められた秘密保持誓約書を提出していませんでした。このため、被告A及びBは、原告会社が一部の従業員から秘密保持誓約書を徴していたとしても、派遣スタッフ及び派遣先事業所に関する情報を秘密と認識できた根拠とはならない、とのように主張しました。被告A及びBが秘密保持誓約書を提出しなかった点に関して、裁判所は下記のように判断しました。
なお,被告B及び被告Aは,誓約書を差し入れていないが,他の従業員との間に秘密保持契約を締結した当時,被告Bら両名は既に取締役であったためにたまたま誓約書を差し入れていないというにすぎず,上記情報の重要さについては一般の従業員以上に知悉していたというべきであるから,このことをもって秘密として管理されていないとはいえない。
そして裁判所は、原告会社が保有する営業秘密を被告A及びBが使用して被告会社に開示した行為、及び被告会社が被告A及びBから各情報の開示を受け、これを取得して使用した行為はいずれも不正競争行為に該当すると判断しました。

本事件では、被告A及びBが秘密保持誓約書を提出していなかったものの、原告会社に所属していたときの被告A及びBの役職(取締役営業副部長又は取締役営業部長)も考慮にいれて、被告A及びBは原告会社が保有する派遣スタッフ等に関する情報が秘密であると認識できたと裁判所は判断しています。

このように,営業秘密とする情報に対する秘密管理措置が適切であれば,秘密保持誓約書を提出しなかったことをもって秘密の認識が否定されることはないと考えられます。一方で、下記のブログ記事で紹介したように、秘密保持誓約書の提出を拒否しても、会社が情報の秘密管理をしていなければ、当然、当該情報は営業秘密とは認められません。すなわち、情報の秘密管理性は、当該情報に対する秘密管理措置の実態に基づいて判断され、秘密保持誓約書のみをもって秘密管理性が認められる可能性は低いでしょう。


弁理士による営業秘密関連情報の発信