2017年10月6日金曜日

不競法第5条の2(推定規定)の「その他政令で定める情報」の検討

経済産業省で行われている不正競争防止小委員会が既に5回目となっていました。
この小委員会は、「営業秘密の保護・活用に関する小委員会」を引き継いだもので、データの利活用の法的保護、不正競争防止法の改正について検討されています。
かなり精力的に行われているようです。

関連ブログ記事:データ利活用の促進に向けた不競法改正案 (2017年7月31日)

5回目の小委員会では、データの利活用だけではなく、不競法第5条の2(技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等 の推定)に関することが検討されていtたようです。

不競法第5条の2は、平成27年改正で追加された条文であり、原告側が被告による不正取得や原告の営業秘密を用いて生産できる物を生産していること等を立証した場合には、被告による営業秘密の使用行為を推定し、不使用の事実の立証責任を被告側に転換することとしたものです(参考:小倉 秀夫 著「不正競争防止法 平成27年改正の全容」 (レクシスネクシス・ジャパン株式会社 平成27年) )。 特許法第104条(生産方法の推定)と同様の規定ですね。

ここで、第5条の2には「技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係 るものに限る。以下この条において同じ。)について・・・」とあり、対象となる技術上の秘密は、「生産方法」と「その他政令で定める情報」です。
ちなみに、特許法第104条では、推定の対象が「物を生産する方法」だけであり、「その他政令で定める方法」というような文言は含まれておりません。特許法と比べることにあまり意味はないかと思いますが、不競法第5条の2の方がより広い範囲で推定規定が働くイメージですね。


この「その他政令で定める情報」は、経済産業省知的財産政策室 編 逐条解説・不正競争防止法によると「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合に備え、政令で定める情報については推定規定の対象となり得ることとしている。」とされているものです。

そして、今回の小委員会では、データの利活用のほかに「資料3 技術的な営業秘密の保護(不正使用の推定規定)」によると上記「その他政令で定める情報」を検討したようです。
この資料3には「データの価値が高まり、データの分析もAI等の実装により高度化が進み、その分析方 法等の開発にも相当の投資がなされている。企業は、分析方法等を、営業秘密として秘密 管理し競争力を維持している。一方で、万が一、その方法が他者に不正に取得されて使用 されたとしても、その使用に関しては、外部からの立証が困難な状況。  そのため、分析・解析・評価方法等について、営業秘密の不正な取得等が認められる場合 において、その秘密を使用したことを推定することを検討する。 」とあり、まさに、「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合」に応じた検討であると思われます。

そして、「その他政令で定める情報」としては、「分析方法」や「予測方法」を含むことを検討しています。
この、「分析方法」や「予測方法」は、具体的には、 「疾患の可能性等を評価(予測)する方法」、「機器の稼働状況を評価(予測)する方法」、 「気象を予測する方法」、「需要を予測する方法」、「混雑状況を予測する方法」、「人車、物等の 行動等を評価(予測)する方法」、「データを可視化・構造化する分析方法」 を分類したもののようです。

これらの具体的な方法は、直感的には膨大なデータ、所謂ビッグデータを活用した方法のようにイメージできます。だからこそ、今の委員会で検討しているのでしょう。
そして、「その他政令で定める情報」に上記方法を加えることで、不競法を改正することなく、ビッグデータを用いた営業秘密に対する法的保護をより積極的に与えるということでしょうか。