前回のブログ「大学等の公的研究機関における秘密情報の管理」では、学生による営業秘密の流出の可能性についても述べました。
大学と企業との共同研究等において、その大学の学生(学部、修士、博士)及びポスドクが他企業に就職した場合に、共同研究企業の営業秘密を流出させてしまう可能性があると考えられます。
さらに、営業秘密の流出の裏返しとして、学生等が就職した企業において、大学在籍時に取得した他企業の営業秘密を開示、使用する可能性も否めません。
では、どのような対策が必要か?
やはり学生に対する教育が必要かと思います。
多くの学生は、営業秘密の漏洩に対する法的リスク等の知識を十分に有しているとは思えません。
企業に勤めている従業員や役員ですら、そうなのですから・・・。
学生と企業との間で秘密保持契約を結ぶことや、学生から秘密情報を漏洩しない旨の誓約書を得ること等も考えられますが、「大学における秘密情報の保護ハンドブック」にも記載されているように、学生と企業との間で過度な秘密保持契約等を行っても無効となる可能性もあるようです。
また、学生との間で秘密保持契約を結ぶことは、学生に対して秘密保持を実行させるという効果がありますが、秘密保持契約を結ぶことで当該秘密情報を漏洩させた場合に民事的責任、具体的には損害賠償を負わせることもその目的だと思います。
しかしながら、秘密保持契約を結んだ学生が当該秘密情報を漏洩したとしても、企業側は
その学生に対して訴訟等により民事的責任を本当に負わせるのでしょうか?
もし、秘密保持契約に基づいて秘密情報の漏洩を理由に学生に対して訴訟を提起し、そのことが報道等されたら、その企業は評判を落とすことになるでしょう。また、秘密情報の漏洩の賠償額は高額になるでしょうから、たとえ勝訴又は和解となっても、資力に乏しい学生に賠償金の支払い能力があるとは思えません。
そうすると、企業が学生との間で秘密保持契約等を行うことの意義があまりないかもしれません。秘密保持契約を行うことは、営業秘密の漏えいに対する抑止力となるかもしれませんが、そもそもその前提としても、学生に対する営業秘密の教育は必要かと思います。
ここで、学生に対する営業秘密に関する教育は、第一に大学側が主体となって行うべきでしょう。
しかしながら、大学による営業秘密の教育が不十分な場合には、企業が共同研究を行う研究室等を対象に営業秘密の教育を直接行うことも検討しては如何でしょうか。そのときに、その研究室における自社の秘密情報(営業秘密)の管理体制の確認等を行ってもよいかと思います。
さらに、新卒社員を入社させる場合にも注意が必要かと思います。
新卒社員が技術系の学生等であれば、在学中に競合他社との間での共同研究に携わっていた学生もいるかもしれません。
そのような新卒社員を介して競合他社の営業秘密が自社に流入する可能性も否めません。
このため、技術系の新卒社員に対して、在学中に他社との共同研究に携わっていたか否かを確認し、場合によっては他社の営業秘密を持ち込まない旨の誓約書を取ることが考えられます。
今後、産学連携による共同研究がより活発化するでしょうから、このように、企業は大学等からの営業秘密の流出、及び新卒採用時における他企業の営業秘密の流入防止を十分に検討する必要があるかと思います。
知財活動としては特許出願等の権利化のみではなく技術の営業秘密化(秘匿化)も意識しなければなりません。 このブログでは営業秘密を理解するために、民事事件の裁判例や刑事事件等を中心に情報発信を行っています。
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