営業秘密関連ニュース

2020年7月6日
・<韓国>韓国の自動運転技術、中国に渡ったか…KAIST教授、金もらい流出させた疑惑(中央日報)

2020年7月3日
・ソフトバンク機密情報漏洩事件 露通商部元幹部を不起訴処分 東京地検(産経新聞)
・ソフトバンク機密持ち出し、教唆容疑の露元外交官を不起訴…「再入国の見込みない」(読売新聞)
・ロシア元外交官を不起訴 ソフトバンク情報漏洩(日経新聞)
・ロシア元外交官を不起訴 ソフトバンク情報漏えい―東京地検(JIJI.COM)
・ロシア元外交官を不起訴 機密情報取得そそのかした容疑(朝日新聞)

2020年7月2日
・7月2日付、日本経済新聞の報道について(株式会社ディー・エヌ・エー)
・「大手が模倣」新興に不信感 チュートリアルとDeNA 協業、知財でトラブル(日本経済新聞)
・新興「大企業にマネされた」 協業で知財トラブル(日本経済新聞)

2020年7月1日
・顧客情報を漏えいした罪 百十四銀行の元行員2人に懲役1年と懲役8カ月を求刑 高松地検(瀬戸内海放送)

2020年6月30日
・「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」を取りまとめました(経済産業省)

2020年6月29日
・<米国>経済スパイで有罪、15年に逮捕・起訴の中国人教授-米連邦地裁(bloomberg)

2019年12月5日木曜日

営業秘密に関する従業員(発明者)との秘密保持契約

従業員が発明を創出した場合には、企業は特許出願を検討するかと思います。
一方で、特許出願は特許化の有無にかかわらず公開されるため、発明の内容によっては秘密管理を行うことで秘匿化を選択する企業も多いでしょう。

ここで、発明者が創出した発明を営業秘密とした場合、その帰属が問題になります。
まだ、明確にはなっていませんが、もし、発明者が自身が創出した発明に係る営業秘密を持ち出して他社に転職した場合等であっても、この行為は不正競争防止法2条1項7号違反にはならない可能性があります。

また、当該発明を使用等した転職先企業に対して不正競争防止法2条1項8号又は9号違反の責を負わせるためには、上記発明者による転職先企業への発明の開示が「秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為」等でなければなりません。

発明者による転職先企業への発明の開示等を確実に「秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為」するためには、当該発明者と発明者の所属企業との間で秘密保持契約を結ぶことが好ましいでしょう。

また、多くの就業規則において秘密保持の条項が設けられています。このため、この就業規則によって従業員は秘密保持義務が存在し、2条1項8号等でいうところの「秘密を守る法律上の義務」を有しているとも解されます。


しかしながら、就業規則による秘密保持義務は退職した従業員に対して、どの程度有効なのでしょうか?

就業規則における一般的な秘密保持の条項は下記のようなものかと思います。
「会社の内外を問わず、在職中、又は退職若しくは解雇によりその資格を失った後も、 会社の秘密情報を、不正に開示したり、不正に使用したりしないこと。」
参考:経済産業省 秘密情報の保護ハンドブック 「参考資料2 各種契約書等の参考例」 

このような就業規則における秘密保持の条項において、一般的には、下記のような例外規定は設けられません。
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① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出し た情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
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このため、就業規則における秘密保持義務は包括的であり、非常に広範囲な情報、換言すれば、既に公知となっている情報や、従業員が企業から示される前から知っていた情報であってもその対象となり得てしまうでしょう。
また、就業規則における秘密保持条項では、取引先等と締結されるような一般的な秘密保持契約で設けられている有効期限の条項もないでしょう。このため、発明者は、発明を行った企業を退職した後に、いつまで秘密保持義務があるのか定かではありません。
このようなことから、営業秘密とした発明を創出した発明者に対して、就業規則における秘密保持条項が「秘密を守る法律上の義務」としての機能を果たすのか個人的には疑問を感じます。

そのようなこともあり、発明者が自身の発明が企業にとって営業秘密であることを確実に認識させるためには、個別に秘密保持契約を結ぶことがより好ましいと考えられます。
この際、秘密保持の対象となる発明(技術情報)の内容を明確に特定し、上記例外規定も設けるべきでしょう。

また、当該秘密保持契約の有効期限は無期限としても良いかもしれません。
一般的には、リバースエンジニアイング等によって当該情報が公知化(陳腐化)する時期を考慮して、有効期限を定めるべきとの考えも多いようです。しかしながら、有効期限を定めると、有効期限が経過した時点から当該情報を自由に開示、使用してよいことになります。
これでは、これでは企業側に不利益が生じる可能性があるので、秘密保持義務を無期限とする方が当然好ましいでしょう。一方で、秘密保持義務を無期限とするような契約は無効とされるリスクもあるようです。
しかしながら、有効期限を定めないことに合理的な理由があればその契約は認められるのではないでしょうか。すなわち、企業は発明に相当する営業秘密に関しては、その重要性から無期限に渡って秘密とすることに合理的な理由があると考えられ、さらに、上記のような例外規定を定めることで、秘密保持義務が失われる場合を明確に規定することで、有効期限を定めないことに対する合理性をさらに高めるとも考えられます。

さらに、企業と従業員との間の力関係に基づいて、従業員に無理やり秘密保持契約を結ばせたと解釈させることを防止するためにも、秘匿化する発明であっても、企業は発明者に対して報奨金等のインセンティブを与えるべきかと思います。

なお、秘密保持契約を従業員の退職時に結ぶという考えもあるかと思いますが、退職時に秘密保持契約の締結を企業側が申し出ても、必ずしも従業員が秘密保持契約に応じるとも限りません。そういったことを回避するためにも、企業が従業員にインセンティブを与える際に秘密保持契約の締結をセットとすることで、秘密保持契約の締結がスムーズに進むのではないでしょうか。

弁理士による営業秘密関連情報の発信