お知らせ

2021年9月17日
知財実務オンライン(youtube)で「知財戦略カスケードダウンと三方一選択」と題して、このブログでも提案している知財戦略についてお話させていただきました。

2021年4月4日日曜日

IPA発表の「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」と警察庁発表の資料

先日、IPA(情報処理推進機構)から「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」が発表されました。この前回の調査は2017年に発表されたものであり、3年を経て新たに発表されたものです。

この調査で私が気にしているものは営業秘密の漏えいルートに関するアンケートです。
2020の実態調査では下記のような結果となっており、IPAでは「情報漏えいルートでは「誤操作、誤認等」が21.2%と前回調査に比べ約半減。その一方で「中途退職者」による漏えいは前回より増加し36.3%と最多(報告書P28)。 」とのように述べています。


「「誤操作、誤認等」が21.2%と前回調査に比べ約半減。」とありますが、私はちょっと違うのではないかと思います。
この「誤操作、誤認等」に対応する前回調査のアンケート項目は「現職従業員等のミスによる漏えい」です。そして今回調査では「現職従業員等のルール不徹底による漏えい」がアンケート項目に新設されました。
すなわち、前回調査のアンケート項目「現職従業員等のミスによる漏えい」が「誤操作、誤認等」と「ルール不徹底」の2つに分かれたのではないでしょうか?この2つの割合いを合算すると40.7%であり、前回調査の「ミスによる漏えい」43.8%とほぼ同じであす。

一方で、IPAが述べているように、中途退職者による漏えいは前回が28.6%であったものが今回は36.3%とのように増加しています。これは実際に中途退職者による漏えいがそのものが増加したのか、企業側の認識が高まったのかは判然としません。しかしながら、数値としては増加していることは事実です。

さらに注目したい結果は、国内の取引先や共同研究先を経由した(第三者への)漏えい」が前回の11.4%から2.7%へ大幅に減少したということです。
これに関連して、近年、大企業等が優越的地位を利用して中小企業等の知的財産の開示を強要するといったことに対する懸念を経済産業省や公正取引委員会が示し、報告書を作成したり、最近では「スタートアップとの事業連携に関する指針」を発表したりしています。
「国内の取引先や共同研究先を経由した(第三者への)漏えい」の減少は、こういった行政の活動の結果として表れているのではないかと思います。

また、「契約満了後又は中途退職した契約社員等による漏えい」も前回の4.8%から1.8%へ大幅に減少しています。契約社員等には企業が直接雇用した人の他に派遣社員も含まれるのではないかと思います。減少の理由は、契約社員等に与えるアクセス権限を減らしたことが考えられます。また、派遣社員に対しては、派遣会社による派遣先企業の営業秘密漏えい防止等の教育活動があるのかもしれません。

次に、警察庁生活安全局から「令和2年における生活経済事犯の検挙状況等について」が発表されました。
これによると、営業秘密侵害事犯の検挙事件数の推移は下記のとおりであり、絶対数としては少ないものの増加傾向にあります。
また、相談受理件数の推移は前年に比べて減少しています。



相談受理件数が減少している理由は分かりませんが、営業秘密の漏えいそのものが減少しているとは思えませんので、企業側が相談を行うことを躊躇するような理由があるのかもしれません。
企業にとっては、営業秘密の漏えいを刑事告訴することについてメリットがないと考え、警察対応等で本来の業務が滞ると考える場合もあるでしょうし、刑事告訴により広く報道がされる可能性もあり、それを良しとしない考えもあるでしょう。
一方で、刑事告訴することにより、警察が証拠収集をするので、民事訴訟において警察が収集した証拠を使用するという考えもあります。

弁理士による営業秘密関連情報の発信