週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」を引き続きちゃんと考えます。
これは、印刷会社から取次会社に渡された週刊新潮の電車中刷り広告を文春が取得し、使用したのでは?というもの。
主な登場人物は、①週刊新潮、②取次会社、③週刊文春です。
前回では中吊り広告の秘密管理性について検討しました。
私の心象としては、中吊り広告は取次会社において秘密管理措置が取られていなかったのではないかと思います。
もう少し、秘密管理性について検討してみたいと思います。
ここで、一般論として、「電車に吊られる前、すなわち人目に触れる前の中吊り広告の内容は秘密である」とも考えられます。
そうであるならば、「取次会社が秘密管理措置を取っていないとしても、中吊り広告が秘密とされるべきであることは、社会人として当然に認識しうるものである」とも考えられ、黙示的にですが中吊り広告の秘密管理性を認められる、との考えもなるかもしれません。
このような考えについて関連しそうな判例があります。
この判例は、平成27年5月27日知財高裁判決(平成27年(ネ)第10015号)であり「タンクローリー用の鏡板の成形用金型に関する技術情報」に関するものです。営業秘密に関する訴訟であまり多くない知財高裁での判決であり、影響力もあるかと思います。
事件の概要としては、「被告は原告に対して金型製作費用の概算見積りの提出を依頼し、原告は金型製作費用の概算見積りを提出した。この際、原告は、被告に対して技術情報を開示した。」というものです。
結論として、当該技術情報の秘密管理性は認められなかったのですが、判決には以下のようなことが記されています。
「控訴人代表者作成の陳述書(甲16)にも,控訴人の取引する業界では,お互いにそれぞれの有する技術ノウハウを尊重しており,契約の成約時に秘密保持契約を締結していること,成約までの過程で技術資料の交換を行うことはあるが,その際,いちいち秘密保持契約を締結するわけにはいかないため,成約時に契約すること,その間は当事者同士が互いに秘密を守ってきていることが記載されているにとどまっている。」
上記「控訴人」とは当該情報の保有者である原審原告です。
そして、上記のことは、原告が「業界の一般論として技術情報を開示されたら、秘密保持契約等をしなくても、秘密とすることが当然」と主張しているかと思います。
しかしながら、裁判所は以下のように判断して秘密管理性を否定しています。
「上記陳述書の記載は,本件において,控訴人が被控訴人に開示した技術情報について,これに接する者が営業秘密であることが認識できるような措置を講じていたとか,これに接する者を限定していたなど,上記情報が具体的に秘密として管理されている実体があることを裏付けるものではない。」
すなわち、裁判所は、一般論を秘密管理措置として認めず、やはり「情報が具体的に秘密として管理されている実体」 がなければ秘密管理性を認めないと解されます。
うーん、一般論では秘密管理措置は認められそうにありませんね。
困りましたね。何が困るかというと、ここで、秘密管理性が無いとなるとこれ以上検討を進めてもねえ・・・。
というわけで、本件については、週刊新潮の記事だけでは中吊り広告の秘密管理性に認めがたいと思われるものの、次からは中吊り広告が「営業秘密」であるとして他の事項も検討してみたいと思います。
そもそも、記事には書かれていないだけで、取次会社は、中吊り広告に対して秘密管理措置を適切に行っているのかもしれませんしね。
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