前回のブログでも書いたように、最近では営業秘密の漏えい元企業が刑事訴訟の後に民事訴訟を起こすという流れがあります。
逆の場合は少ないかと思いますが、例えば東芝とSKハイニックスとの間で起きた半導体製造方法の漏えい事件は、東芝がSKハイニックスに対して民事訴訟を起こした後に、情報漏えいした者(犯人)を刑事告訴しているかと思います。
刑事訴訟の後に民事訴訟を起こした事件として下記のものがあります。
・日本ペイント事件
日本ペイントの営業秘密(塗料「水性エンケース」の情報をUSBに複製)を持ち出したとして平成28年2月16日逮捕
・自動包装機械事件
原告会社の元従業員4人が競合他社へ営業秘密(自動包装機の設計図)を持ち出して転職。営業秘密の漏えい事件で初めて被告会社に刑事罰が科された事件
被告人4名、懲役1年2ヶ月~2年6ヶ月(執行猶予3年又は4年)、罰金60万円~100
被告会社 罰金1400万円(横浜地判平成28.1.29)
・エディオン営業秘密事件
原告会社(エディオン)の元部長(被告)が転職先の上新電機に営業秘密(リフォームに関する商品仕入れ原価や粗利のデータ等)を漏えい。
懲役2年(執行猶予3年)、罰金100万円(大阪地判平成27.11.13)
このように、刑事告訴と民事訴訟をセットにするパターンが増えた背景には、転職に伴い営業秘密を漏えいする事件が増加したからではないでしょうか。
刑事告訴されて有罪が確定した事件の一覧を参照すると、以前は売却する目的で顧客情報や技術情報を持ち出しした事件が多かったようですが、近年は転職に伴い営業秘密を転職先に持ち出す時間の割合が増加していると思います。
営業秘密の売却では、売却先が名簿業者であったりすると、そもそも名簿業者の企業規模も小さく、既に存在しなくなっている場合もあったでしょうから、高額な損害賠償の請求や営業秘密の使用の差し止めにあまり意味がないと思われます。
一方で、転職先企業に営業秘密を漏えいさせた場合は、その転職先企業で営業秘密を使用することも想定され、かつ高額な損害賠償に対する支払能力もあるでしょう。
こういう背景から、刑事告訴と民事訴訟とがセットになるパターンが増えたとも考えられます。
また、前回のブログでは刑事告訴を先に行うメリットとして、漏えい元企業のメリットについて述べましたが、刑事告訴を先に行うメリットは、転職者等を介して営業秘密が意図せずに流入した企業にもあると考えられます。
例えば、日産自動車の元従業員が日産自動車の営業秘密を転職先であるいすゞ自動車に持ち込んだ例があります。
この場合、いすゞ自動車は、日産自動車の営業秘密を使用したと疑われる立場にあります。
しかしながら、刑事事件の取り調べの過程において、いすゞ自動車において営業秘密の使用はなかったことが分かったようです。
参照記事:http://www.asahi.com/articles/ASJB0513VJB0ULOB015.html
刑事事件においてそのような判断がなされたのであれば、日産自動車もいすゞ自動車に対して民事訴訟を提起する可能性は相当低いでしょう。
もし、日産自動車が民事訴訟を先に提起した場合、いすゞ自動車は日産自動車の元従業員と共に被告の立場として自らの潔白を立証する必要があったでしょう。
すなわち、先に日産自動車が先に刑事告訴をし、それが確定したとしたことにより、いすゞ自動車は民事訴訟において被告となることを回避できたとも考えられます。
このように、営業秘密が意図せずに流入した企業は、刑事事件となった場合には、自らの潔白を証明するためにも、警察に対しては協力的な態度で臨むに限ると思われます。
<営業秘密関連ニュース>
2026年10月8日
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・半導体製造の情報を中国企業に流出疑い 旭化成元社員の男再逮捕(日本経済新聞)
・半導体情報を海外企業に流出疑い 旭化成元社員の男を再逮捕 愛知県警(産経新聞)
・https://www.asahi.com/articles/ASVB72Q2MVB7OIPE007M.html(朝日新聞)
・別の技術情報 漏えいか 容疑の旭化成元社員 再逮捕(読売新聞)
2026年10月5日
・トヨタ子会社情報流出疑い(中国新聞)
・トヨタ子会社情報流出疑い 元社員の男女逮捕、愛知(47NEWS)
・営業秘密情報を漏洩か、トヨタ子会社元社員2人逮捕 愛知県警(日本経済新聞)
・トヨタ子会社の営業秘密漏えい容疑 元社員2人を逮捕 元上司と部下(朝日新聞)
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・シンテックホズミ情報流出疑い 元社員の男女逮捕(中部経済新聞)
・競合他社サーバーに不正アクセス容疑 取得情報基に営業か、2人逮捕―警視庁(JIJI.COM)
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・https://www.asahi.com/articles/ASVB72Q2MVB7OIPE007M.html(朝日新聞)
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