<お知らせ>

2024年1月10日
・no+eに新しい記事「営業秘密とする技術情報の特定」を投稿しました。

2024年1月8日月曜日

昨年末に報じられた営業秘密侵害事件(刑事事件)

昨年末には、下記のように営業秘密侵害事件(刑事事件)に関連する報道がいくつかありました。

・回転寿司チェーン店事件

かっぱ寿司の前社長が前職であるはま寿司の営業秘密を不正に持ち出した事件について、カッパ社及びその従業員も刑事告訴されていましたが、これに対して検察側の求刑が12月22日にありました。なお、前社長の有罪は既に確定しています。

そして、求刑から5日後の27日にはま寿司は、カッパ社や前社長に対して5億円の損害賠償等を求める民事訴訟を行いました。

これは、刑事告訴によりカッパ社が有罪となる可能性が高いと見通したタイミングで民事訴訟を提起したのだと思います。
カッパ社が有罪となると、持ち出された営業秘密をカッパ社が不正使用したことが認められたということになります。そうすると、民事訴訟では、実質的に損害論のみとなり、はま寿司にとって民事訴訟の負担は小さくなり、かつ民事訴訟でも勝訴する可能性は高くなります。
このように、刑事告訴を行い、その後に民事訴訟という流れは営業秘密の侵害事件においてよく用いられる手法のようです。

・航空保安情報事件

この事件は、航空会社であるオリエンタルブリッジ(ORC)の元管理職がトキエアに転職する際に、ORCの保安対策に関する情報を持ち出したというものです。この元従業員は、昨年の8月に書類送検されたものの、「起訴するに足りる証拠がないため」として不起訴となりました。

「起訴するに足りる証拠がない」とは具体的にどのようなことなのか報道からは分かりません。しかしながら、書類送検されたときに元管理職は「次の会社の業務に役立つかもしれないと思い、持ち出した」と証言していることから、当該情報の持ち出しはあったのでしょう。また、上記読売新聞の報道によると、「こうした秘匿性の高い情報を閲覧できる社員は限られていたが、男は立場上、閲覧に必要なパスワードを知っていたという。」とあることから、当該情報は秘密管理性を満たしていた可能性があります。
それにも関わらず、「起訴するに足りる証拠がない」ということは、当該情報は非公知性を満たしていなかった、すなわち誰にでも容易に入手できる情報であったのかもしれません。
仮にそうであったとすると、非公知の情報と公知の情報とが混在して秘密管理されていることとなり、営業秘密管理として問題のある管理方法であった可能性があります。


また、上記読売新聞の報道によると、トキエアは転職者は管理職扱いであったものの、降格処分とし、さらに、トキエア内での当該情報の開示がなかったものの、転職者が作成に関与したトキエアの安全管理規定を作り直したとのことです。
ここで、トキエアによるこのような対応は正しかったのでしょうか。そもそも、トキエア内での当該情報の開示がなかったのであれば、安全管理規定の作り直しは過剰な対応であったと思えます。さらにトキエアは、この転職者を降格処分としていますが、書類送検の段階でそのような処分を行うことは果たして適切だったのでしょうか。

実際、営業秘密侵害の刑事事件は、逮捕や書類送検されても不起訴となる場合が多々あります。不起訴となる理由は公開されませんのでわかりませんが、持ち出したとされる情報がそもそも営業秘密ではない可能性もありますし、持ち出し又は使用そのものが不法行為でない場合もあります。また、転職者も営業秘密に対する理解が不十分であることが多々あるため、「営業秘密を不正に持ち出した」とのような証言を行う可能性があります。しかし、このような証言を行ったとしても、不起訴となる可能性もあります。
このため、逮捕や書類送検の段階で転職者に対する処分を行うことについては、相当の熟慮が必要であると思います。

・車載電装機器事件

この事件は、アルプスアルパインの元従業員であって、ホンダに転職して中国籍の会社員がアルプスアルパインの車載電装機器に関する営業秘密を不正に持ち出したというものです。

本事件の捜査は警視庁公安部が行っています。
営業秘密侵害事件において警視庁公安部が捜査する場合とは、おそらく中国、ロシア、北朝鮮等の外国政府が関与している事件であると思われます。
警視庁公安部が捜査した事件としては、中国籍の研究員が産総研から営業秘密を漏洩させた事件や、ソフトバンクの5G基地局に関する情報をロシア外交官に漏洩させた事件があります。

このような事件を捜査している警視庁公安部が、アルプスアルパインからの情報漏洩に関する本事件も捜査しているということは、本事件も単なる転職者が前職企業の営業秘密を持ち出したという事件ではないのかもしれません。すなわち、ホンダも被害企業の立場であり、アルプスアルパインだけでなくホンダの営業秘密も持ち出され、海外に流出しているのかもしれません。

弁理士による営業秘密関連情報の発信