2024年11月20日水曜日

刑事事件:自社による積極的な他社営業秘密の不正取得

先日、競合他社から顧客情報を不正取得して使用したとして、ガス事業会社の従業員3名が逮捕された事件がありました。 千葉県での事件であり、大きくは報道されていませんが、自社の従業員が自社の業務に関連して逮捕されるという事件です。


報道によると、この従業員3名が所属するガス事業会社と競合他社との間では、事業譲渡の協議が行われたものの、合意には至らなかったという経緯があるようです。そして、逮捕された従業員は、競合他社に対しては「許可を受けている」との嘘を言って顧客情報を持ち出したようです。

このように他社の営業秘密を取得することは、営業秘密侵害の規定が不正競争防止法で定められる以前は大きく問題にならなかったかもしれません。逆にそれを良しとしていたかもしれません。しかしながら、現在では当該顧客情報が営業秘密であれば刑事罰を伴う違法行為です。

そして、この不正取得は、エリアマネージャーの指示によって支店長等が行ったようでもあり、支店長等は上司の指示に従って”仕事”として行ったつもりでしょう。しかしがら、たとえ、上司の指示であっても犯罪行為には違いなく不問となることはありません。このことははま寿司からかっぱ寿司に転職した事件でも明確です。


また、他社の顧客情報の不正使用は露呈し易いかと思います。
ガス会社のような被害企業は自社との契約解除を行う顧客が多く発生した場合には、当然、その原因を探るでしょう。その結果、今回のように顧客情報の不正取得が露呈するかもしれません。また、懇意にしている顧客から、競合他社から営業を受けたとのようなことが報告されるかもしれません。実際にこのように顧客からの情報によって営業秘密侵害が発覚した事例もあったようです。

このような事件を防ぐためにも、本ブログでも度々述べているように、自社従業員に対する営業秘密に関連する教育と自社での報告相談制度の確立が必要であると思います。
教育とは、自社の営業秘密を転職時等に持ち出すことのみならず、他社の営業秘密を不正取得したり、不正使用したりすることが違法であるということを従業員に認識させるための教育です。
このような教育は、従業員だけでなく、社長を含む役員等にも必須の教育であると思います。実際にかっぱ寿司の事件のように、社長が部下に営業秘密侵害という犯罪行為を仕事として指示することがあるためです。今回の事件でも、上司であるエリアマネージャーが部下である支店長に指示を行っているようです。
このような犯罪行為の指示が上司から行われた際には、その部下は当該行為が良くないことと思いつつも、上司の命令に逆らえずに実行せざる負えない立場となるでしょう。そのようなことを防止するためにも、上記の指示をうけた部下が報告相談を行う部署を設けるべきかと思います。なお、この部署は、営業秘密に精通している法務部や知的財産部となるのでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信