過去の営業秘密流出事件で挙げている「日本ペイントデータ流出事件」のように、元役員が転職先で前職の営業秘密を開示・使用することは少なからずあります。
また、転職先だけでなく、元役員が前職を退職して独立して自身の会社を起こし、その会社で前職の営業秘密を開示・使用することもあります。
役員であれば、営業秘密へのアクセス権も持っている場合が多いでしょうし、その営業秘密の重要性・有用性も十分に理解できているでしょう。
ここで、私は、営業秘密の漏えいに対して刑事罰があり、実際に実刑判決まで出ていることを従業員に理解してもらう社員教育を行うことで、従業員による営業秘密の漏えいの多くは防ぐことができると考えています。当然、100%はありえませんが。
営業秘密を不正に漏えいさせた人は、基本的に悪人ではないと思ってます。
その人達は、何時も隣で仕事をしていた同僚、部下、又は上司でしょうから。
しかし、不競法の理解が出来ていなかったために、転職時に安易に営業秘密を持ち出して逮捕されているのではないでしょうか?
そういった人に対しては、正し知識を得てもらうことで、営業秘密の漏えいは防げていたのではないかと思います。営業秘密の持ち出しに対するリターンよりもリスクが高いですからね。
さらに、従業員に対しては、就業規則で秘密情報(営業秘密)を漏えいした場合には退職金の返還等の罰則規定を設けることで、さらに抑止効果は高まるでしょう。
では、役員に対しては?
当然、営業秘密に関する社員教育は、役員に対してもおこなうべきです。
たとえ、役員であっても、営業秘密の漏えいは犯罪であることを認識してもらう必要があります。特に、役員は営業秘密に触れる可能性が一般の従業員よりも高いでしょうから。
しかし、就業規則は、役員には適用されません。
就業規則は労働者に適用されるものです。
そこで、役員用の就業規則があれば、それに秘密情報を漏えいさせた場合の罰則規定を設けることが考えられます。
また、今後、営業秘密の漏えいへの対応を整備したいのであれば、秘密情報管理規定を作成することも考えられるでしょう。
秘密情報管理規定では、社内における秘密情報の取扱いに対する規定を定めます。
この秘密情報管理規定に、秘密情報を漏えいした場合に対する罰則も定めます。
そして、その対象を従業員及び役員とします。
このように、営業秘密の漏えいを防止するために、従業員だけでなく、役員に対する縛りも策定する必要があると考えます。
<営業秘密関連ニュース>
<お知らせ>
2017年10月11日水曜日
2017年10月9日月曜日
過去の営業秘密流出事件
過去の営業秘密流出事件における刑事罰が適用された事件の主なものです。
表が見難い場合はクリックしてください。
さらに過去に起きた営業秘密の流出事件のうち、ニュース報道が行われたものをまとめました。
インターネットに公開されているニュース報道等のリンクのまとめです。
興味のある方は↑上のページ「過去の営業秘密流出事件」からどうぞ。
「過去の営業秘密流出事件」では、ニュース報道のリンクだけではなく、当該企業のリリースもピックアップしています。
これによって、営業秘密が流出した被害企業(原告企業)や、その営業秘密が流入した企業(被告企業)の対外的な対応の一端が分かるかと思います。
何もしない企業や、頻繁にリリースを発表する企業、流出した営業秘密の内容等によっても様々かと思います。
また、各事件がどのように報道されているのかもわかるかと思います。
古い事件や新しい事件でも既に当該記事が削除されてている場合もあり、リンク先の記事も早晩削除されるかもしれませんが・・・。しかし、当該企業のリリースは比較的長く残るのではないでしょうか。
営業秘密の流出は、流出先の企業が被害者であるにもかかわらず、それが個人情報を含むものであったりすると、一転して加害企業のような取り扱いになる可能性もあります。
また、他社の営業秘密が流入した企業は、それが転職者による持ち込みである場合等、自社に過失が無くても報道により社名が出てしまう可能性もあります。
過去の事件は、自社に万が一のことが生じることを想定する場合に参考になるかもしれません。
表が見難い場合はクリックしてください。
2020.8.15更新
さらに過去に起きた営業秘密の流出事件のうち、ニュース報道が行われたものをまとめました。
インターネットに公開されているニュース報道等のリンクのまとめです。
興味のある方は↑上のページ「過去の営業秘密流出事件」からどうぞ。
「過去の営業秘密流出事件」では、ニュース報道のリンクだけではなく、当該企業のリリースもピックアップしています。
これによって、営業秘密が流出した被害企業(原告企業)や、その営業秘密が流入した企業(被告企業)の対外的な対応の一端が分かるかと思います。
何もしない企業や、頻繁にリリースを発表する企業、流出した営業秘密の内容等によっても様々かと思います。
また、各事件がどのように報道されているのかもわかるかと思います。
古い事件や新しい事件でも既に当該記事が削除されてている場合もあり、リンク先の記事も早晩削除されるかもしれませんが・・・。しかし、当該企業のリリースは比較的長く残るのではないでしょうか。
営業秘密の流出は、流出先の企業が被害者であるにもかかわらず、それが個人情報を含むものであったりすると、一転して加害企業のような取り扱いになる可能性もあります。
また、他社の営業秘密が流入した企業は、それが転職者による持ち込みである場合等、自社に過失が無くても報道により社名が出てしまう可能性もあります。
過去の事件は、自社に万が一のことが生じることを想定する場合に参考になるかもしれません。
2017年10月6日金曜日
不競法第5条の2(推定規定)の「その他政令で定める情報」の検討
経済産業省で行われている不正競争防止小委員会が既に5回目となっていました。
この小委員会は、「営業秘密の保護・活用に関する小委員会」を引き継いだもので、データの利活用の法的保護、不正競争防止法の改正について検討されています。
かなり精力的に行われているようです。
関連ブログ記事:データ利活用の促進に向けた不競法改正案 (2017年7月31日)
5回目の小委員会では、データの利活用だけではなく、不競法第5条の2(技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等 の推定)に関することが検討されていtたようです。
不競法第5条の2は、平成27年改正で追加された条文であり、原告側が被告による不正取得や原告の営業秘密を用いて生産できる物を生産していること等を立証した場合には、被告による営業秘密の使用行為を推定し、不使用の事実の立証責任を被告側に転換することとしたものです(参考:小倉 秀夫 著「不正競争防止法 平成27年改正の全容」 (レクシスネクシス・ジャパン株式会社 平成27年) )。 特許法第104条(生産方法の推定)と同様の規定ですね。
ここで、第5条の2には「技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係 るものに限る。以下この条において同じ。)について・・・」とあり、対象となる技術上の秘密は、「生産方法」と「その他政令で定める情報」です。
ちなみに、特許法第104条では、推定の対象が「物を生産する方法」だけであり、「その他政令で定める方法」というような文言は含まれておりません。特許法と比べることにあまり意味はないかと思いますが、不競法第5条の2の方がより広い範囲で推定規定が働くイメージですね。
この「その他政令で定める情報」は、経済産業省知的財産政策室 編 逐条解説・不正競争防止法によると「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合に備え、政令で定める情報については推定規定の対象となり得ることとしている。」とされているものです。
そして、今回の小委員会では、データの利活用のほかに「資料3 技術的な営業秘密の保護(不正使用の推定規定)」によると上記「その他政令で定める情報」を検討したようです。
この資料3には「データの価値が高まり、データの分析もAI等の実装により高度化が進み、その分析方 法等の開発にも相当の投資がなされている。企業は、分析方法等を、営業秘密として秘密 管理し競争力を維持している。一方で、万が一、その方法が他者に不正に取得されて使用 されたとしても、その使用に関しては、外部からの立証が困難な状況。 そのため、分析・解析・評価方法等について、営業秘密の不正な取得等が認められる場合 において、その秘密を使用したことを推定することを検討する。 」とあり、まさに、「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合」に応じた検討であると思われます。
そして、「その他政令で定める情報」としては、「分析方法」や「予測方法」を含むことを検討しています。
この、「分析方法」や「予測方法」は、具体的には、 「疾患の可能性等を評価(予測)する方法」、「機器の稼働状況を評価(予測)する方法」、 「気象を予測する方法」、「需要を予測する方法」、「混雑状況を予測する方法」、「人車、物等の 行動等を評価(予測)する方法」、「データを可視化・構造化する分析方法」 を分類したもののようです。
これらの具体的な方法は、直感的には膨大なデータ、所謂ビッグデータを活用した方法のようにイメージできます。だからこそ、今の委員会で検討しているのでしょう。
そして、「その他政令で定める情報」に上記方法を加えることで、不競法を改正することなく、ビッグデータを用いた営業秘密に対する法的保護をより積極的に与えるということでしょうか。
この小委員会は、「営業秘密の保護・活用に関する小委員会」を引き継いだもので、データの利活用の法的保護、不正競争防止法の改正について検討されています。
かなり精力的に行われているようです。
関連ブログ記事:データ利活用の促進に向けた不競法改正案 (2017年7月31日)
5回目の小委員会では、データの利活用だけではなく、不競法第5条の2(技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等 の推定)に関することが検討されていtたようです。
不競法第5条の2は、平成27年改正で追加された条文であり、原告側が被告による不正取得や原告の営業秘密を用いて生産できる物を生産していること等を立証した場合には、被告による営業秘密の使用行為を推定し、不使用の事実の立証責任を被告側に転換することとしたものです(参考:小倉 秀夫 著「不正競争防止法 平成27年改正の全容」 (レクシスネクシス・ジャパン株式会社 平成27年) )。 特許法第104条(生産方法の推定)と同様の規定ですね。
ここで、第5条の2には「技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係 るものに限る。以下この条において同じ。)について・・・」とあり、対象となる技術上の秘密は、「生産方法」と「その他政令で定める情報」です。
ちなみに、特許法第104条では、推定の対象が「物を生産する方法」だけであり、「その他政令で定める方法」というような文言は含まれておりません。特許法と比べることにあまり意味はないかと思いますが、不競法第5条の2の方がより広い範囲で推定規定が働くイメージですね。
この「その他政令で定める情報」は、経済産業省知的財産政策室 編 逐条解説・不正競争防止法によると「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合に備え、政令で定める情報については推定規定の対象となり得ることとしている。」とされているものです。
そして、今回の小委員会では、データの利活用のほかに「資料3 技術的な営業秘密の保護(不正使用の推定規定)」によると上記「その他政令で定める情報」を検討したようです。
この資料3には「データの価値が高まり、データの分析もAI等の実装により高度化が進み、その分析方 法等の開発にも相当の投資がなされている。企業は、分析方法等を、営業秘密として秘密 管理し競争力を維持している。一方で、万が一、その方法が他者に不正に取得されて使用 されたとしても、その使用に関しては、外部からの立証が困難な状況。 そのため、分析・解析・評価方法等について、営業秘密の不正な取得等が認められる場合 において、その秘密を使用したことを推定することを検討する。 」とあり、まさに、「今後の技術進歩に応じ、将来的に別の技術情報を推定の対象とすべきニーズが生じた場合」に応じた検討であると思われます。
そして、「その他政令で定める情報」としては、「分析方法」や「予測方法」を含むことを検討しています。
この、「分析方法」や「予測方法」は、具体的には、 「疾患の可能性等を評価(予測)する方法」、「機器の稼働状況を評価(予測)する方法」、 「気象を予測する方法」、「需要を予測する方法」、「混雑状況を予測する方法」、「人車、物等の 行動等を評価(予測)する方法」、「データを可視化・構造化する分析方法」 を分類したもののようです。
これらの具体的な方法は、直感的には膨大なデータ、所謂ビッグデータを活用した方法のようにイメージできます。だからこそ、今の委員会で検討しているのでしょう。
そして、「その他政令で定める情報」に上記方法を加えることで、不競法を改正することなく、ビッグデータを用いた営業秘密に対する法的保護をより積極的に与えるということでしょうか。
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