2025年6月23日月曜日

判例紹介:業務に必要なファイルを退職時に故意に削除した場合

営業秘密の侵害ではないものの、情報の財産的価値を裁判所が認めた事件(徳島地裁令和7年1月16日判決(事件番号: 令和5(ワ)38号))を紹介します。
この事件は、原告の元従業員である被告Aが原告を退職する際、故意に原告の管理するサーバー内に保存された業務に必要な電子ファイルを削除したとして、被告Aに対して不法行為に基づく損害賠償が求められたというものです。また、身元保証契約に基づく保証債務の履行として被告Aの妻と被告Aの母も被告となっています。
判決は、被告らに対して連帯して577万4212円の損害賠償が認められています。

原告は、半導体及び関連材料、部品、応用製品の製造、販売並びに研究開発等を目的とし、青色半導体レーザー分野では大きな世界シェアを有している会社です。被告Aは、令和元年9月2日に原告に入社し、レーザーダイオード(LD)開発部門の金属加工用レーザー光源開発業務等に携わっていました。
被告Aは、令和3年7月31日に原告を退職しました。この際、被告Aは、6月29日に本件研究所において使用されている本件共有サーバーに保存されていた特定のフォルダのファイル及び本件プログラム自体を削除するプログラムをバッチファイルで作成しました。そして、被告Aは、同日、自宅のパソコンから本件研究所内の共有パソコンにリモート接続し、共有パソコンに本件プログラムを設定した上で、7月31日に本件プログラムが起動するよう設定しました。その結果、7月31日に本件プログラムが起動し、本件共有サーバーに保存されたフォルダ内のファイル及び本件プログラムが削除されました。

原告が主張する削除されたファイルは、以下です。被告Aは原告に在籍していた間に行った業務の成果物のほとんどを故意に消滅させて退職したと原告は主張しており、 一見して装置の開発等に必要なデータであることがわかります。

関連する業務:ファイルの内容 
本件業務①: ➊加工実験装置の操作手順書、❷装置稼働用ソフトウェア関連資料、❸部品関連資料、❹加工実験データ、❺加工デモルーム資料 
本件業務② :➊レーザー光源装置の操作手順書、❷測定器稼働用ソフトウェア関連資料、❸部品関連資料、❹実験データ 
本件業務③ :➊高出力レーザー光源の特性確認用実験装置の資料、❷光ファイバー関連資料 
本件業務④ :➊レーザー光源装置の使用方法、加工手順の作業手順書、❷社外受講のレーザー安全スクールの受講内容まとめ、❸レーザー加工技術書籍内容のまとめ


このような被告の行為に対して裁判所は以下のように判断しています。
本件各ファイルは、被告Aが原告の業務に従事する過程で作成し、原告の管理する本件共有サーバー内に保存していたものであるから、本件各ファイルに関する利益は、削除されたファイルの財産的価値を否定すべき特段の事情がない限り、原告の法律上保護される利益であったということができ、そのような原告の法律上保護される利益を、原告の同意なく滅失させた行為には不法行為が成立し得る。
一方で、被告は「ⅰ被告Aが上司から引き継ぐよう指示を受けていたファイルは、本件ファイル①-➊の操作手順書及び本件業務④のファイルの一部であり、これら以外のファイルについては引継不要とされていたから、削除しても原告の法律上保護される利益を侵害したとはいえない」とも主張しています。
これに対して裁判所は、上記の引継不要とされたことを認めつつも、以下のように判断しています。
しかしながら、本件証拠から認定できる事実関係に照らせば、引継相手を指定されなかったということをもって、ファイルを削除することにつき原告の同意があった又はファイルが原告にとって財産的価値のないものであったということはできない。 
すなわち、本件業務①関連のFθレンズは、・・・本件装置の財産的価値を高めるものであったから、本件ファイル①-❸にも財産的価値があったといえる。このような価値のあるファイルを削除することに原告が同意したとは考え難く、他に原告による同意を示す証拠もない。なお、被告Aは、・・・被告Aの退職後も本件装置が原告で使用される予定であることを認識していたと認められ、本件ファイル①-❸が不要である又は削除してもよいと誤信していたとも認め難い。 
また、本件業務②関連の平行度測定器(本件測定器)は、・・・原告の従業員等により本件測定器が利用されることは容易に想定されるものであった。このような本件測定器に関する資料(本件ファイル②-❷ないし❹)の削除に原告が同意することは考え難く、他に原告による同意を示す証拠もない。なお、被告Aは、本件業務③に携わり、本件プロジェクト等で本件測定器が利用されていることを認識していたのだから、本件測定器及びそれに関する資料が原告にとって不要である又は削除してもよいと誤信したとは認められない。 
また、被告らは「ⅱ本件ファイル①-❷及び本件ファイル②-❷のソフトウェア関連資料は、商用利用できない統合開発環境を用いて作成したものであり、原告において使用すれば原告や被告Aが莫大な損害賠償義務を負いかねないようなものであったから、原告にとって財産的価値のないものであった」とも主張しています。
これに対して裁判所は、本件ソフトウェア②は被告らの主張するとおりライセンス規約上、原告において商用利用することができない統合開発環境を用いて開発されたことを認めつつも、以下のように判断しています。
もっとも、ライセンス規約に違反して開発されたソフトウェアであったとしても、原告が正規のライセンスを取得した上で、本件ソフトウェア②のコードを転記、修正したソフトウェアを再開発することは可能であったから、本件ソフトウェア②に財産的価値がなかったということはできない(・・・)。したがって、本件ソフトウェア②にライセンス上の問題があり、同ソフトウェアの利用方法次第では将来的に原告や被告Aに対する損害賠償請求がされる危険性を含んでいたとしても、被告Aが上司らに無断で本件ソフトウェア②の関連資料を削除することは原告の利益を侵害するものと評価せざるを得ない。 
他方で、本件ソフトウェア①は、被告Aが統合開発環境を利用した当時のライセンス規約においても原告における商用利用が禁止されていたとまでは認められない(認定事実⑶ア、オ及び前記2⑵ア)。仮に本件ソフトウェア①の開発後にライセンス規約が変更されたとしても、遡及的に商用利用が禁止されるとは考え難く、本件ソフトウェア①の財産的価値に影響を及ぼすものではない。・・・
以上のようなことから、裁判所は「被告Aが本件プログラムにより本件各ファイルを削除し
た行為は、原告の法律上保護される利益を侵害したものであるということができる。」と判断しています。

ここで、前職企業の退職時に財産的価値のあるデータを同意なく故意に削除することは、営業秘密侵害でいうところの「保有者に損害を与える目的」に該当するとも考えられますが、「削除」は「公開」や「使用」には含まれないので、仮に削除したデータが営業秘密であったとしても、営業秘密侵害とはなりません。また、このような行為は「事業者間の公正な競争」を妨げるものであるかというと、直接的にはそうではないようにも思えます。
しかしながら、財産的価値のある情報を法的に守るべく、このような行為に対する法的な整備が必要かもしれません。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2025年6月15日日曜日

判例紹介:産総研の刑事事件 「営業秘密を保有者から示された」について

不正競争防止法の第2条第1項第7号には営業秘密に関する不正競争行為として、下記のように規定されています。

第2条第1項第7号
営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

この条文を素直に解釈すると、不正の利益を得る目的等のために使用等してはいけない営業秘密は、「営業秘密保有者(会社)から示された営業秘密(情報)」ということになります。そうすると、自身が作成して会社に示した情報は会社から示された情報ではないので、不正使用の対象とはならないという解釈もあるでしょう。
例えば、業務として従業員が創作した発明は、外形的には従業員から会社に示すものであり、会社から発明を捜索した従業員に示された情報ではありません。
また、発明は、従業員から会社に示されるまで、外形的には会社は当該発明を秘密管理することはできません。

上記秘密管理の件については、前回のブログ記事で紹介した刑事事件判決(東京地裁令和7年2月25日判決 事件番号:令5(特わ)1278号)では、「産総研法及び規則は、産総研職員に対し、職務上得られた秘密に関する守秘義務を定め、成果物規程は、全ての研究成果物等について秘密保持義務を定め、各職員において研究成果物等を秘密として厳重に管理すべきこと、公表したり第三者に提供したりする場合には産総研の承認が必要であることなどを明記している。」として、㊙マーク等のない発明に関しても産総研による秘密管理措置が認められています。

一方で、 「営業秘密を保有者から示された」については、秘密管理性とは直接的な関係はなく、秘密管理性を満たしたからと言って「営業秘密を保有者から示された」との要件を満たすものではありません。
上記事件では、営業秘密(本件ノウハウ)は、被告人が創作したものではなく、被告人が受入責任者となって契約職員として産総研で雇用されたDから被告人に対してメールで提供されているものの、産総研には報告されていません。したがって、外形的には、被告人は本件ノウハウを産総研から示された者にはなりません。
これに対して、裁判所は以下のように判断しています。
・・・一般に、営業秘密に当たる研究成果物等は産総研との雇用契約に基づき適用される成果物規程により原始的に産総研に帰属するから、当該研究成果物等の発生を職務上認識していればその職員は「営業秘密を保有者から示された者」に当たる・・・

上記裁判所の判断によると、「成果物規程により原始的に産総研に帰属」とあるので、この成果物規定がどのようなものであるかが気になるところです。判決文によると、成果物規定(研究成果物取扱規定)では下記のような記載があるようです。
研究成果物等取扱規程(以下「成果物規程」という。)3条1項で「研究成果物等」を「論文、報告等としてまとめられるもの」(同項1号)、「研究によって又は研究を行う過程で得られたデータ、試薬、試料、実験動物、化学物質、菌株、試作品、実験装置及びソフトウェア」(同項2号)等と定義しており、研究成果物等は「特段の登録等を必要とせず、発生した段階で研究成果物等として取り扱う」(4条)、「職員等によって研究所において職務上得られた研究成果物等は、特段の定めのない限り、研究所に帰属する」(5条1項)ものとしていた。
そして裁判所は本件ノウハウの「帰属」について下記のように判断しています。
これらの定めの目的・趣旨によれば、成果物規程5条1項は産総研に帰属する研究成果物等の範囲に産総研の施設で行われたものに限るとの場所的限定を付したとは考えられないから、兼業等が許されない限り、産総研の職員が職務上の研究により得た研究成果物等は基本的に産総研に帰属すると解される。殊に、産総研の施設及び機器を用いて行った研究は、目的外使用禁止の上記規程と相まって、職員等によって職務上得られた研究成果物等に例外なく該当することになると考えられる。そして、当該研究成果物等は発生した時点で当然に産総研に帰属するから、産総研職員が職務上得た研究成果物等が当該職員に帰属する余地はないといえる。
以上の前提に従えば、本件ノウハウは、被告人の研究業務を補助するために産総研に雇用された契約職員であるDが被告人に提供したものであるから、Dの産総研における研究によって職務上得られた研究成果物等であると通常は考えられる。
このように、裁判所は、研究成果物が産総研に帰属することは被告人も認識していたはずであるから、研究成果物が創作された時点で当該研究成果物は産総研から被告人に示されたことになる、と判断しているようです。すなわち、裁判所は、「営業秘密を保有者から示された」を実際に「示された」か否かで判断するのではなく、規定等による産総研での取り決めに基づいて「帰属」と共に判断していると考えられます。
このように判断しないと、業務として発明を創出しても会社(上記判例では産総研)に報告しなければ、当該発明は会社から示されたものとはならず自由に使用できることとなるため、妥当とも考えられるでしょう。
しかしながら、このような判断を可能とするためには、会社は上記成果物規定のような規定を予め作成し、研修等によってそれを従業員に認知させる必要があると思えます。仮に、上記成果物規定のような取り決めもなく、研究成果物が会社の帰属となるという研修を従業員に対して行っていなければ、従業員が職務として創出した発明を会社に報告せずに他社等で使用してもそれは営業秘密侵害とはならない可能性もあるでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信

2025年5月31日土曜日

判例紹介:産総研の刑事事件 秘密管理性について

産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)で研究員として勤務していた中国人が営業秘密侵害で逮捕・起訴された事件の刑事事件判決(東京地裁令和7年2月25日判決 事件番号:令5(特わ)1278号)において、非常に興味深い裁判所の判断がなされたので、それを紹介します。本事件は、営業秘密侵害事件としてはメディアでも報道されたものであり、覚えている人も少なからずいるかと思います。
なお、本事件の地裁判決において被告人は、懲役2年6月(執行猶予4年)及び罰金200万円の有罪判決となっています。

本事件は、主に絶縁ガスとして使用されるフッ素化合物であるC4の合成工程と効率的な反応条件等に関するものが営業秘密(本件ノウハウ)とされています。
本事件では、争点が複数あり、そのうちの一つとして本件ノウハウの秘密管理性について争っています。これに対して裁判所は以下のようにして本件ノウハウの秘密管理性を認めています。
なお、本件ノウハウは、被告人が創作したものではなく、被告人が受入責任者となって契約職員として産総研で雇用されたDから被告人に対してメールで提供されたものです。
⑴ 産総研における研究成果物等の取扱い
産総研法及び規則は、産総研職員に対し、職務上得られた秘密に関する守秘義務を定め、成果物規程は、全ての研究成果物等について秘密保持義務を定め、各職員において研究成果物等を秘密として厳重に管理すべきこと、公表したり第三者に提供したりする場合には産総研の承認が必要であることなどを明記している。さらに、産総研では、研究成果物の秘密管理を徹底するため、職員以外が立ち入ることができないよう研究施設を施錠するほか、職員固有のパスワードを入力しなければ産総研が貸与するパソコンを使用できないようにするなど秘密が漏洩しないための措置がなされていた(前記第2の2⑵、3⑶)。
以上によれば、産総研は、研究成果物等全般について包括的に秘密管理意思を有しており、これは、産総研に所属する各研究者が職務として従事する日常的な研究の過程で得られた産総研に帰属する研究成果物等を産総研の国立研究開発法人としての性質に沿って我が国の公益のために最大限の研究成果物等を確保するための合理的な秘密管理の方法であるといえる。
そして、産総研では、職員全員に秘密保持に関する研修の受講を義務付け、成果物規程や規則が定める秘密保持義務の内容や秘密として管理されるべき研究成果物等の範囲や秘密管理の方法等について周知を徹底していた。また、研究成果物等の定義についても上記のとおり明確に成果物規程で示されていた。産総研の職員は、産総研が研究成果物等について秘密として管理する意思があることも、その研究成果物等の対象範囲についても明確に認識できる状況にあったといえる。
したがって、産総研の研究成果物等である本件ノウハウについても、秘密管理性を有するといえる。
また、これらが規則や成果物規程に記載されていることや上記研修を被告人も受講していること、被告人自身が産総研での長期間にわたる研究の結果、特許ないし営業秘密に当たる種々の研究成果物等を得た経験があり、研究成果物等の産総研での取扱い方法等を熟知していたと考えられること等からすれば、被告人にこの点の認識があったことは明らかである。

このような裁判所のよる秘密管理性の判断は本件ノウハウに対して㊙マークやアクセス制限が行われていたというものではなく、本件ノウハウに対する直接的な秘密管理措置はされていたことはうかがえません。そうであれば本件ノウハウには秘密管理性が認められないのでは?とも思ってしまいます。この点については、弁護士も以下のように主張しています。
⑵ 弁護人の主張
弁護人は、秘密管理意思としては、情報一般についての管理意思では足りず特定の情報の秘密管理意思が必要であるところ、本件当時、産総研は、本件ノウハウもC4の研究の存在自体すらも把握しておらず、内部調査後に初めてその存在を認識したのだから、産総研に本件ノウハウの秘密管理意思は存在せず、また、本件ノウハウに機密であることが付記されてないから、秘密管理意思についての客観的な認識可能性も認められないなどと主張する。
上記の弁護士の主張に対して裁判所は以下のように判断し、弁護士の主張を認めることはありませんでした。
しかし、弁護人の主張は、いわゆる職務発明ないし事業者が保有する営業秘密について使用者等に秘匿して従業者等がし又は取得した場合は使用者等が何らの権利を有しないとする点で関連法規(特許法35条、不正競争防止法2条1項4号、7号等)にそぐわない独自の見解といわざるを得ない。本件においては、上記の規程等が全ての研究成果物等について、産総研の把握の有無を問わず、これらを産総研に帰属させて研究者に秘密として管理させる意思が客観的に示されていることは明らかで、これが産総研の国立研究開発法人としての性質に沿った合理的な秘密管理の方法であることは既に述べたとおりであり、産総研に個別の成果物の具体的な認識があることは秘密管理性の前提となるという主張は採用できない。一般に、営業秘密に当たる研究成果物等は産総研との雇用契約に基づき適用される成果物規程により原始的に産総研に帰属するから、当該研究成果物等の発生を職務上認識していればその職員は「営業秘密を保有者から示された者」に当たるのであって、産総研職員等が秘密性の明認を怠ったとしても秘密管理性に影響を及ぼすことはない。
上記のような弁護士の主張は、これまでの営業秘密管理に関する裁判例からすると理解はできます。しかしながら、新規な発明(情報)等に対して、これを創出した発明者が所属先に報告しない限り、所属先が秘密管理措置を行うことは実際に不可能であり非現実的です。そうであるにもかかわらず、発明者が報告しなかった発明(情報)に対して、所属先に秘密管理意思がないとすることは酷なことであるとも考えられます。
また、産総研のような研究開発を主とする組織であると、研究者自身が情報管理等を行うと考えられます。そうすると、自身が創出した発明に対して自身が秘密管理措置を行うことになり、産総研自身が個々の研究者が創出した発明に対して逐一秘密管理措置を行うことは現実的ではないでしょう。
さらに、本事件では、被告人自身が本件ノウハウを中国において特許出願しています。そうすると、被告人は、少なくとも本件ノウハウは新規性(非公知性)を有していることを認識していたことになります。そして、特許出願の対象となる発明は新規性を維持するために少なくとも特許出願までは秘密とすることは発明者であれば当然認識していることです。
そのように考えると、被告自身が本件ノウハウが秘密であることを認識していたことになり、裁判所の判断は妥当であると言えるでしょう。

逆に、このように解釈しなければ、研究者(発明者)が業務として創出した新規な発明(非公知の情報)を自らの意思で所属先に報告せずに外部に持ち出したとしても、何ら違法ではないことなり、所属先は多大なる損害を被ることになります。
本事件は産総研という研究を行うことを主目的とした法人ですが、発明に対する上記のような裁判所の判断は、一般的な企業でも当てはまるのではないかと思います。

しかしながら、本判決が一般化できるとしても、企業における秘密管理措置を緩くできることにはならないでしょう。やはり、企業は適切な秘密管理措置を行う必要があり、そのうえで秘密管理措置から漏れてしまう情報に対して本判決のような解釈が成り立つのだと思います。

なお、本判決は地裁判決です。被告人は控訴しているでしょうから高裁でどのような判決になるか非常に興味があります。仮に、秘密管理性の解釈について地裁とは異なる判断を高裁が行った場合には被告人は無罪となる可能性があります。
弁理士による営業秘密関連情報の発信