2017年11月6日月曜日

特許と営業秘密の違い

「特許法と営業秘密の違い」のページを新たに作成しました。

技術情報の管理の手法として、「特許出願による特許権の取得」と、「営業秘密として管理」するという2つの手法があると考えます。

そして、特許と営業秘密は多くの点で異なります。
大きな違いは特許はその技術が公に公開されることである一方、営業秘密はその技術が公には公開されないことであると考えられますが、その他、多くの点で違いがあると考えます。

その違いを項目立て示しています。
技術情報の管理の一助にして頂ければと思います。


2017年11月3日金曜日

営業秘密は弁理士にとってブルーオーシャン?

営業秘密に関するサービスが弁理士にとって新しい業務となり得ると私は考えています。
まあ、今更言わなくても、このようなブログをやったりセミナーを開催していますからね。

そもそも特許出願(実用新案、意匠含む)とは何でしょうか?
知的財産ですね。
しかし、もっと根源的なことを考えると、情報管理の一態様ではないでしょうか?
そして、営業秘密も知的財産の一つであり、情報管理の一態様ではないかと私は考えます。
では、弁理士としては、特に技術情報管理の一態様として、「特許出願」又は「営業秘密」の何れかとすることをクライアントに提案できると思います。
いまさら言わなくても、技術を「特許出願」を実行の有無の相談(コンサル)ならば多くの弁理士が行っていると思います。さらには、当該技術のどこまでを明細書に記載するかしないかの判断も弁理士ならば行っているはずです。

では、特許出願を行わなかった技術情報に対するケアを行っている弁理士はどの程度いるのでしょうか?
特許出願を行わなかった技術情報は、場合によっては「営業秘密」として管理するべきものではないでしょうか?
そして、「営業秘密」として管理する技術情報は、それを特定できるように文章化等の視認化が必要です。この技術情報の文章化は弁理士が最も得意とする業務ではないでしょうか?


上記グラフに示すように、国内の特許出願件数は右肩下がりである一方、企業の研究開発費はリーマンショック前にまで回復しています。
少々乱暴な考え方ですが、この特許出願件数の最大値と今の特許出願件数との差が営業秘密として管理するべき技術情報の数であるとも考えられます。
さらにいうと、特許出願件数が最大であった2001年前後よりも今の方が企業の研究開発費が多いのですから、営業秘密として管理するべき技術情報の数は、特許出願件数の差よりもさらに多いとも考えられるかもしれません。
そして、この特許出願されていない技術情報はどのように守られているのでしょうか?

おそらく、今後日本国内の特許出願件数は、増加することなく、ある程度まで減少し続けるのではないでしょうか。
そうなれば、企業としては、「特許出願を行わなかった技術情報をどのようにして守るか」という課題がより顕在化するはずです。
この課題に対しては、技術情報を「営業秘密」として管理する以外に答えはないと思います。

そして、「情報管理」というキーワードの元に技術情報を「特許出願」又は「営業秘密」の何れで管理するかという課題に対して、特に技術情報の特定(文章化)も含めると、確実に対応できる業種としては弁理士が最適であると考えます。
さらに、昨今の営業秘密漏えいに対する企業の意識が高まっている状況や、オープン&クローズ戦略なる言葉が唱えられ始めているいる現在、上記の需要は高まっていると考えます。

しかしながら、このようなサービスは、未だ行われていないのではないでしょうか?(私が知らないだけですでに行っている人もいるかもしれませんが。)

そうであるならば、営業秘密に関する業務は、特に弁理士による業務はブルーオーシャンなのではないかと思います。
いや、弁理士等の資格を有している者がこの業務に有利であるとも考えると、ブラックオーシャンかもしれません。


そう信じて、がんばりましょう。
実際には色々な難しさを感じる今日この頃です。

2017年11月1日水曜日

入札情報の漏洩って営業秘密の漏洩ではないの?

営業秘密の事件ではないようですが、埼玉の上尾市長と議長が入札情報を業者に漏洩して逮捕されています。
私も一時期上尾市に住んでいたことがあるのですが・・・。

2017年10月30日 埼玉新聞「<上尾入札汚職>上尾市長、議長ら逮捕 入札情報漏えいの疑い、ごみ処理巡りあっせん収賄も」
2017年10月30日 朝日新聞 「埼玉・上尾市長と議長を逮捕へ 入札情報漏洩の疑い」

この報道を参照すると、「公契約関係競売入札妨害などの疑い」で逮捕ということのようです。この「公契約関係競売入札妨害」とは、下記の規定に基づくものかと思います。
刑法は全く詳しくないので間違っていたらすいません。

<刑法>
(公契約関係競売等妨害)
第九六条の六 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。

この公契約関係競売等妨害の罪は、営業秘密漏洩の罪よりも軽いんですね。
営業秘密の漏洩は、「十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金」(不正競争防止法第21条第1項)ですから。


ここで、入札情報は「秘密管理」されているはずのものであり、当然「非公知」です。
そして、行政の事業活動に有用なものでしょうから「有用性」も満たすのではないでしょうか。それとも、「有用性」は企業の事業活動においての有用性であって、行政の事業活動には当てはまらないのでしょうか?

もし、入札情報に「有用性」が認められるのであれば、入札情報は「営業秘密」と考えることができるかと思います。
さらに、入札情報を業者に漏洩する行為は、「不正の利益を得る目的」でしょう。

一方で不競法の営業秘密漏洩に関する刑事罰の規定において少々気になる文言があります。
例えば、不正競争防止法第21条第1項第5号では、この罪の主体が「営業秘密を保有者から示された役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、幹事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、」とあります。
この主体は、「経済産業省 知的財産政策室 編 逐条解説 不正競争防止法」を参照しても、やはり企業の役員や従業者等を対象としているようです。

そう考えると、営業秘密の漏洩の罪は、行政の長等には適用できないのでしょうか?
また、上述したように、営業秘密における「有用性」は行政の事業活動には当てはまらないのでしょうか?
ちなみに、大学に対しては、本ブログ記事「大学等の公的研究機関における秘密情報の管理」でも挙げているように、経済産業省がハンドブックを作成しているので、営業秘密は大学においても適用されると考えられます。

しかしながら、行政も入札情報等、営業秘密と考えられる情報は多々有しているとも思われます。
このような情報を行政がどのようにして守るのか?守っているのか?
行政の秘密情報の漏洩に対しては、現行の他の法域で網羅的に守ることができているのか?
行政の秘密情報は、不競法でいうところの営業秘密として守ることはできないのか?

行政が有する情報の漏洩は、場合によって国民の生活に直結するかもしれません。
営業秘密に関連して、行政が管理している情報の在り方を考えてみても良いのかもしれません。