・公益通報者への賠償請求棄却 情報持ち出し「違法性ない」―東京地裁(JIJI.COM)
・情報持ち出し「公益通報目的」 汚職告発した元社員の免責認める(日本経済新聞)
・医療機器販売会社と病院医師の贈収賄を「公益通報」 元社員に損害賠償求めた裁判 会社側の請求退ける 東京地裁(ABCニュース)
・「情報持ち出しは公益通報目的」 元社員に賠償を求めた会社が敗訴(朝日新聞)
・情報持ち出し「公益通報目的」 汚職告発した元社員の免責認める(日本経済新聞)
・医療機器販売会社と病院医師の贈収賄を「公益通報」 元社員に損害賠償求めた裁判 会社側の請求退ける 東京地裁(ABCニュース)
・「情報持ち出しは公益通報目的」 元社員に賠償を求めた会社が敗訴(朝日新聞)
この事件は、「医療機器の販売会社が、奈良県にある病院の医師へわいろを送ったことを警察に「公益通報」した元社員の50代の男性に対し、「報道機関に営業秘密を漏らした」として損害賠償を求めた裁判」(ABCニュース)といものです。
報道によると「元社員は2021年、医師との契約書など機密情報を記録媒体に保存して持ち出した。その後、スター社の白内障用眼内レンズを使った手術動画の提供を受ける見返りに金銭を支払っているとの告発文書を複数の警察に送った。」(日本経済新聞)とされ、わいろを送った医療機器の販売会社の関係者及び受け取った医師は書類送検されています。
ここで、経済産業省が発行している営業秘密管理指針には営業秘密の有用性について以下のような解説があります。
「有用性」の要件は、公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂れ流し等の反社会的な情報)など、秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。
元社員が持ち出したとされる「医師との契約書など機密情報」がどのような内容であるかは分かりませんが、「秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報」であれば有用性が認められず、上記機密情報は営業秘密ではないということになります。
一方で、判所所がこのような判断をしたとのような報道はなく、「秘密情報を持ち出した目的が犯罪の告発であった」として違法性はない、とのように判断したとの報道がなされています。
そうであれば、元社員には「不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的」がないとして違法性はないと裁判所が判断したようにも思えます。なお、この元社員が報道機関に営業秘密を漏らしたとする証拠はないとのようにも裁判所は判断しています。
従って、元社員は犯罪の証拠と告発文を警察に送っただけであり、そのような行為では「不正の利益」を得ることはできず、また、警察への告発が「営業秘密保有者に損害を加える目的」とは解されないでしょう。
一方、少し前にも同様に公益通報を目的としたと被告が主張してメディアに営業秘密を開示した行為についての民事訴訟の判決がありました。この事件において裁判所は元社員による公益通報を認めず、元社員に対する損害賠償請求を認めました。
この二つの事件に対する民事訴訟の判決の違いの理由が何であるかはよく分かりません。一方が警察への告発であり、他方がメディアへの告発であることが理由でしょうか?
弁理士による営業秘密関連情報の発信


