2017年9月20日水曜日

今月のパテント誌の特集

今月のパテント誌は、「不正競争防止法」が特集されています。
不正競争防止法の特集なので、周知著名商品等表示がメインなのかと思っていましたが、以外にも、営業秘密、しかも米国や韓国の営業秘密に関することがメインでした。

外国、特に、米国、欧州、韓国、中国(一応)における営業秘密に関する法律は、理解しておいた方がいいだろうなと思いながら、未だほとんど手付かずです。

せいぜい、営業秘密の保護が強化されたのは日本だけでなく、米国で2016年に営業秘密保護法が連邦法で制定されたり、EUでも2016年に営業秘密の保護に関するEU指令案が採択されたり、とのように世界的にも営業秘密保護がさらに重要視されているようだということを知っている程度です。
参照:BIZLAW「米国でついに成立!営業秘密の連邦民事保護法」
   ジェトロ「欧州理事会、営業秘密の保護に関するEU指令案を採択 」



しかしながら、外国における最新の営業秘密保護規定を理解しようと思っても、“日本語”の資料、しかも、まとまったものはあまりないようで・・・。
その国のサイトを調べればいいのですが、私は英語があまり得意ではないので・・・。

しかしながら、少し調べると、下記のように経済産業省の報告書が出てきました。

・平成26年度産業経済研究委託事業「営業秘密保護制度に関する調査研究)報告書」
・平成25年度経済産業省委託事業「諸外国における営業秘密保護制度に関する調査研究報告書」
・平成21年度経済産業省委託事業「諸外国の訴訟手続における営業秘密保護の在り方等に関する調査研究報告

ちなみに、経済産業省ホームページには「不正競争防止法に関するこれまでの報告書一覧」というものがあり、ここに上記報告書を含む様々な報告書がリンクされています。

他にもJETROでも幾つか報告書があります。
2015年「経済産業省委託事業 営業秘密流出対応マニュアル(韓国)」
2013年「中国における営業秘密管理と対策」 
2011年「特許庁委託事業 模倣対策マニュアル 簡易版 インド編-インドにおける営業秘密等の保護-」

ただし、古いものになると、法改正等によって少々変わっている可能性もあります。
もし、実務でどうしても外国の営業秘密保護法を知る必要があれば、現地代理人に聞くことが一番なのでしょう。

とはいっても、探せば色々資料が出てきそうなので、海外の営業秘密に関するリンク集でも作ろうかなと思います。

2017年9月18日月曜日

中小企業の7割は営業秘密規定が未整備

前回のブログで「営業秘密管理体制が整っている企業は果たしてどの程度あるのか?」という疑問を自身で述べましたが、これの答えの一つが最近発表されました。

7割の中小企業が営業秘密規定を未整備、とのことです。

参照:ヤフーニュース・日刊工業新聞「営業秘密規定、中小7割が未整備 不正競争防止法で守れず」

このニュースはINPITの調査の結果に基づくもので、下記のようなプレスリリースが発表されています。

参照:INPIT プレスリリース

7割の中小企業が営業秘密規定を未整備であることにさほどの驚きはありません。
多くの中小企業が営業秘密規定が未整備であろうことは、何となく想像していました。
一部の大企業ですら、営業秘密規定があるかもしれませんが、実際には営業秘密が適正に管理できていないようですからね。


この調査で驚いたことは、実に25%もの企業が「規定は今は不要と考えている」ことです。
では、このような企業は、何時になったら規定が必要となると考えているのでしょうか?
自社には「秘密とする情報がない」という人も居るかと思います。
おそらく、 「規定は今は不要と考えている」と答えた企業の担当者は、そのように考えているのではないでしょうか?

ここで、個人や法人の顧客情報や取引先の情報を所有していない企業は存在しないと思います。
もし、自社のみの情報しか含まれていない情報が流出しても、それは自社のみに影響を及ぼすものですが、前回のブログで書いたように、顧客情報や取引先の情報(以下「第3者情報」といいます。)が流出したら、顧客や取引先にまで影響を及ぼすことになります。
その結果、自社の信用は大きく損なわれることになります。
少なくとも第3者情報は、営業秘密として管理すべきだと考えます。
第3者情報であれば、自社が所有している情報のうち、どれであるかの特定は比較的容易ではないでしょうか?
そして、第3者情報を営業秘密として管理する目的は、第3者の情報を自社から流出させないことであり、自社の信用を守ることです。
これは、企業として最低限、必要な措置ではないでしょうか?

2017年9月14日木曜日

佐賀銀行の営業秘密流出事件

しばらく前に佐賀銀行で営業秘密に関連した事件が起きていたようです。

参照:2017年7月28日 佐賀新聞「佐銀元行員が一転関与認める」
参照:2017年7月6日 佐賀新聞「福岡県警、佐銀元行員を再逮捕 預金者情報漏えい疑い」
参照:2017年6月19日 佐賀新聞「佐銀事件で1億円超預金者169人分、情報流出」
参照:2016年12月18日 佐賀新聞「佐銀2支店侵入事件、暴力団関与の可能性」
参照:佐賀銀行ホームページ「お客さま情報漏洩の報告とお詫びについて」

このニュースは、あまり全国的に取り扱われていないような気がしますが、非常に重大な事件であると思われます。

元々は、佐賀銀行に窃盗(金庫破り)の目的で侵入して現金を盗んだ事件のようですが、元行員が協力しており、この元行員が自身がアクセス権限を有している預金者リストをも不正に取得したようです。そして、実際に使用されなかったものの、この預金者リストに元にに福岡市内の預金者宅で空き巣をしようと計画していたようです。

はっきり言って、もし預金者リストが窃盗事件に使用されていたらと考えると、かなり恐ろしい事件です。窃盗団と被害者が鉢合わせする可能性もありますからね。


営業秘密の中でも流出した場合に最も対応に苦慮するものが、個人情報を含んだ顧客情報ではないでしょうか。
我が家の情報も流出したベネッセの事件では、本来“被害者”であるはずのベネッセも責任を問われ、その対応に多額の費用を費やしています。
今回の佐賀銀行の事件でも、もし、預金者リストを基にして預金者が窃盗被害等にあってしまった場合には、単に佐賀銀行だけの問題に終わらず、佐賀銀行の道義的な責任が問われるかもしれません。

しかしながら、今回の事件やベネッセの事件もそうですが、営業秘密を不正取得する犯人は多くの場合で内部の人間です。
どうやったらこのようなことを防げるのでしょうか?
一つとしては、“社員教育”だと考えます。また、社内の管理体制を従業員に周知し、もし、営業秘密を不正取得した場合にはそれが発覚することを理解してもらうことが必要かと思います。
今回の佐賀銀行の事件でも、犯人である元行員が預金者リストにアクセスした履歴が残っていたようです。犯人はアクセスログが残ることを理解していたのでしょうか?
そして、佐賀銀行はアクセスログが残ることを従業員に周知していたのでしょうか?もし、周知していなかったのであれば、その管理体制の不備が指摘されても致し方ないと思います。

このように、営業秘密の流出、特に顧客情報や取引先に関する情報の流出は、被害者であるはずの流出元企業の管理責任が問われかねない場合があり、このことは既に広く知られているかとも思います。
では、実際に管理体制が整っている企業は果たしてどの程度あるのでしょうか?
この疑問に対して、最近興味深い調査結果が公開されています。
これは次のブログで。