少々古い話題、2014年に起きたことです。朝日新聞出版がデアゴスティーニの内部資料を違法に入手し不正利用していた、と週刊誌で記事にされて疑われたことがありました。
これに関して、朝日新聞出版はお知らせをホームページに掲載しています。
直接的に「営業秘密」という文言を使用していませんが、営業秘密又はそれに類する情報の持ち込みが転職者を介してデアゴスティーニから朝日新聞出版にあったようです。
以下に、このお知らせの一部を抜粋します。
「弊社がデアゴ社の内部資料を意図的に持ち出したり、持ち出させたりした事実はありません。しかし、デアゴ社から転職してきた弊社社員が退職時に返却、処分することなく、弊社入社後も前の会社の資料を持っていたことは、転職に際しての会社情報の取り扱いに関する認識が乏しく、弊社としても社員教育が徹底しておりませんでした。みなさまに深くお詫びいたします。」
ここでいう「社員教育」とは、例えば、「転職者に対して前職の営業秘密を持ち込まないこと」等のことでしょう。その際に、誓約書に署名してもらうことが考えられます。
朝日新聞出版社は、このようなことをしていなかったのでしょう。
その結果、このような「お知らせ」を報じる事態となっています。
ちなみに、上記ホームページによるとデアゴスティーニは下記のような対応だったようです。
「朝日新聞出版に対する事情聴取を含め、現時点までの弊社の調査によれば同社による不正利用の事実が以前同社により弊社に開示された重要性の低いデータ以外は確認されていないこと、また弊社データの更なる流出が確認されていないこと、更に、弊社として認識すべき実害が現時点で確認できていないこと等の理由により、現時点で朝日新聞出版を告訴することは考えておりません。」
情報漏えいが発覚した過程がよく分かりませんが、他方当事者のデアゴスティーニは、自社の情報管理をそれなりに行っていたのではないでしょうか?
だからこそ、離職者を介して情報漏えいを察知できたのかもしれません。
しかし、そうだとしてもやはり離職者に対する情報管理に対する社員教育が不十分だったと思われます。
この離職者がデアゴスティーニの情報を取得したまま朝日新聞出版に転職したわけですからね。
現在の就業環境では、どの企業も転職者がいると思われます。
このため、どの企業でも、この朝日新聞出版と同じ状態になる可能性はあり得ます。
例えば、本ブログの「営業秘密における民事訴訟と刑事訴訟との関係」でも挙げたいすゞ自動車に転職した元日産の従業員が営業秘密を持ち出した件では、刑事事件となり、その過程でいすゞ自動車の関与は否定されています。
また、この他にも、民事訴訟で営業秘密を持ち出した元従業員と共に転職先企業が訴えられ、この訴訟の過程で転職先企業の関与が否定される場合もあります。
このように、企業は、転職者を迎え入れるにあたって、転職者の前職企業の営業秘密が意図せずに流入し、トラブルとなるリスクがあります。
今後、以前にもまして従業員の転職は盛んになると思われます。このため、離職・転職のタイミングにおいて、営業秘密の持ち出し及び持ち込みの防止に関する措置をとることは、企業にとって益々重要なことになると思われます。
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