このグラフから分かるようにコロナ禍を過ぎ、2023年、2024年共に前年よりも出願件数が増えています。その数は2023年では2022年に比べて+10,603件、2024年は2023年に比べて+6,722件です。2年連続でこれほど増加した例は近年にはなく、コロナ禍で減った特許出願が順調に回復しているようにも思えます。
しかしながら、これは一過性のものかもしれません。その理由は、ソフトバンクによる膨大なAI関連の特許出願にあります。2023年以降にソフトバンクは膨大なAI関連の特許出願を行っていることが明らかになり、その数は1万件ともいわれています。
2022年を基準とすると2024年までの増加件数は17,325件です。そうすると、この増加件数の60%近くがソフトバンクの出願とも考えられます。なお、公開公報が発行されていない出願も多いでしょうから、もしかすると、ソフトバンクの出願はもっと多いのかもしれません。
ソフトバンクの出願件数は一社で、しかもAIの分野だけと考えると異常なほどの多さであり、実施形態が同一の出願も多数あるようです。このことから、実質的な発明としては出願件数よりもかなり少ないのかもしれません。
とはいえ、ソフトバンクによるこのような膨大な特許出願は、AI分野の技術を特許権で独占することを目的とした知財戦略(事業戦略)であると考えられ、これは全社を挙げなければできなことであり、これを成しえていることは素晴らしいと思います。
さらにソフトバンクは、自社でのAI利用を義務化するとのことであり、これにより、AIに関するノウハウを蓄積でき、さらに特許出願も行うことができるでしょう。
これは事業戦略と知財戦略とを組み合わせた事業活動です。
これにより、ソフトバンクが今後日本だけでなく世界のAI分野の多くを、独占又はラインセンス等により主導権を握ることができるか注視したいところです。
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