<お知らせ>

・パテント誌2023年1月号に、「知財戦略カスケードダウンによるオープン・クローズ戦略の実例検討」と題した論考が掲載されました。

2022年10月10日月曜日

かっぱ寿司の元社長による営業秘密漏えい事件(刑事事件)

先週からかっぱ寿司の社長による営業秘密の漏えい事件(刑事事件)が大きく報道されています。刑事事件としての営業秘密の漏えい事件は少なからず生じており、そのほとんどはニュース記事で少し取り合げられるだけで、大きく話題になることはありません。
かっぱ寿司の事件が大きく報道される背景としては、逮捕された社長が競合他社であるはま寿司の元取締役であり、かっぱ寿司とはま寿司は共に回転ずしチェーンとして多くの人に身近な存在であると共に、ライバル企業である、という背景があるためでしょう。

ここで、営業秘密の漏えいは”元従業員”が行う場合が多いと思われるかもしれませんが、部長以上の役職を持つ者が転職時に前職の営業秘密を持ち出す事件も多くあります。役職を有する者は多くの営業秘密に対するアクセス権限があるでしょうし、その営業秘密の有益性もよく理解しているでしょう。また、転職先でも好待遇の場合が多いでしょうから、転職先での成果をより求められるというプレッシャーも感じるでしょう。

例えば、日本ペイントデータ流出事件は、日本ペイントの元執行役員が競合他社である菊水化学へ転職する際に、日本ペイントの営業秘密を持ち出しています。また、リフォーム事業流銃事件では、エディオンの元部長が転職先の上新電機に営業秘密(リフォームに関する商品仕入れ原価や粗利のデータ等)を漏えいしています。これらの事件では、共に執行猶予付きですが懲役刑となっています。
営業秘密の漏えい事件では、執行猶予が付く場合が多いですが、被害企業の損害が多い場合等には執行猶予がつかない場合もあります。本事件は、食材の原価や取引先の情報等が営業秘密のようであり、これらの情報が回転ずしチェーン店にとって重要であることは想像に難くありません。そうすると、はま寿司の損害が大きいと裁判所に判断され、元社長は執行猶予がつかない懲役刑となる可能性もあるかもしれません。

参考ブログページ


また、前社長は、不正に持ち出した営業秘密をかっぱ寿司社内で開示して、かっぱ寿司はそれを使用していたという疑いがあります。

ここで、営業秘密を不正に持ち出して他社に転職した者には、大きく分けて下記の2パターンがあると思います。
・第1パターン:営業秘密を持ち出したものの転職先等で開示しないパターン
・第2パターン:営業秘密を持ち出して転職先で開示しするパターン

第1パターンは、例えば、不正に持ち出した営業秘密を転職先で開示するきっかけが無かったのかもしれませんし、開示しなければ罪に問われないと思って開示しなかったのかもしれません。何れにせよ、不正に持ち出した者は罪に問われる可能性がありますが、持ち出された企業は実質的な損害は生じないでしょう。

第2パターンは、さらに2パターンに分かれるかと思います。
・第2パターンA:転職先企業が開示された他社の営業秘密を使用しない。
・第2パターンB:転職先企業が開示された他社の営業秘密を使用する。
第2パターンAは、転職先企業が営業秘密の流入リスクを理解している場合でしょう。営業秘密の流入リスクを理解していなければ、転職者が良い情報を持ってきてくれたと考え、第2パターンBとなるでしょう。
また、第2パターンAの場合は、転職先企業が営業秘密の漏えい元(転職者の前職企業)に問い合わせる場合もあり、そうすることで営業秘密の漏えいに自社が関与していないことを証明することにもなるでしょう。

一方、第2パターンBは、不正に持ち出された営業秘密を転職先が使用することになるので、この転職先も罪に問われる可能性があります。この場合、転職先企業は億単位の罰金刑となる可能性があり、当然、社会的信用も大きく失われるでしょう。
さらに、それだけに留まらず、被害企業から民事訴訟を提起され、損害賠償や当該営業秘密の使用差し止めを求められる可能性があります。損害賠償の額も億単位になる可能性がありますし、何より営業秘密の使用差し止めはその後の経営に大きな影響を与える可能性があります。

今後、被害企業であるはま寿司はかっぱ寿司に対して損害賠償及び営業秘密の使用差し止めを求めて民事訴訟を提起する可能性が相当高いと思われます。
報道によるとかっぱ寿司は、「はま寿司のデータと自社の商品を比較して、商品開発に利用する」等していたようです。そうすると、営業秘密の使用差し止めが裁判所によって認められた際には、当該商品は今後販売できない可能性もあるでしょう。また、はま寿司から持ち出された営業秘密には、はま寿司の取引先に関する情報も含まれていたようです。もし、この営業秘密を用いてかっぱ寿司が新たな取引先を開拓していたらどうなるのでしょうか?その取引先とは今後取引をしてはならないのでしょうか?不正に取得した営業秘密を使用してはならないとは、いったいどの範囲までのことになるのか私もよく分かりません。

このように、転職者によって転職先企業に営業秘密が持ち込まれ、転職先企業がそれを使用したとすると転職先企業が多大なる損害を被る可能性があります。
したがって、企業は営業秘密の漏えい(流出)リスクと共に流入リスクも意識しなければなりません。例えば、転職者が前職企業の社名等が表示された資料を開示したとすると、それは高い確率で不正に持ち込まれた営業秘密である可能性があります。このような場合には、当該情報を使用しないだけでなく、自社内で当該情報が広まらないように対応すると共に転職者から当該情報の入手経路を確認し、もし前職企業の営業秘密である場合には前職企業に問い合わせるべきでしょう。また、転職間もない転職者が自社で得たとは思えないような情報を開示した場合にも同様です。

このため、企業は転職者が転職間もない時期に開示する情報には特段の注意が必要であり、自社内で作成されたと思えない情報はその入手経路を確認しなければなりません。転職者が部下や同僚であれば、入手経路を確認し易いでしょうが、転職者が上長さらには社長であっても躊躇してはならないでしょう。
万が一、開示された情報が他社の営業秘密であり、それを使用すると自社が責任を負うことになるでしょうし、もしかしたら、自身も逮捕されるかもしれません。現に、本事件では、元社長だけでなく、かっぱ寿司の部長職の人物も逮捕されています。自社に営業秘密が不正に持ち込まれると、それを知って使用した場合には自身も逮捕される可能性を意識しなければなりません。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2022年9月26日月曜日

判例紹介:新規製品の開発・製造委託の取りやめ 宅配ボックス事件(有用性)

前回の判例紹介の続きです(東京地裁令和4年1月28日判決 事件番号:平30(ワ)33583号)。
この事件は、原告が被告から宅配ボックスの開発・製造の委託を受けたものの、被告が本件新製品の製造を原告に発注するのを取りやめ、原告の営業秘密である本件データを使用して被告製品を製造・譲渡したというものです。
この事件は、被告は原告の営業秘密である本件データを不正に使用したとして、原告による差し止めや損害賠償請求が認められました。

前回は本件データの秘密管理性についてでしたが、今回は有用性と非公知性についてです。
まず、本件データの有用性について、裁判所は下記のようにして認めており、この判断は至極妥当であると考えられます。
❝本件データは,前記(1)のとおり,本件新製品の最終試作品の製作のために原告が作成した3Dデータであり,3次元の空間における部品の構造(部品の長さ,形状,厚みなどの全ての構造)が詳細に記録され,本件データがあれば本件新製品の試作品を容易に製造することができるものであるから,原告の事業活動において有用な情報であり,有用性が認められる。❞
一方で、被告は❝本件データは,本来であれば被告製品の基となることが予定されていたものであるから,原告の事業活動において有用な情報であるとはいえない❞とのように主張したようです。しかしながら、裁判所は、以下のようにして被告の主張を認めませんでした。
❝本件データについて,被告製品の製造以外に用いることができないといった事情はうかがわれないから,被告製品の基となることが予定されていたことをもって原告の事業活動における有用性が否定されるとはいえない。❞
この裁判所の判断からすると、本件データが被告製品の製造にのみ用いるものであれば、有用性が否定されるとも解釈できます。1つの企業でしか用いることができないデータが存在するのか分かりませんが、そのようなデータは有用性が認められないということでしょうか。そのような理由で有用性が否定され得るのか、少々疑問に感じます。


また、被告は❝本件データの内容に技術的な特殊性及び革新性はなく,公知情報の組合せであって,予想外の特別に優れた作用効果を奏するものでもない❞とも主張したようです。しかしながら、これについても裁判所は、以下のようにして被告の主張を認めませんでした。
❝本件データは,具体的な試作品の作成が可能な程度に部品の構造や寸法が詳細に記録されたものであり,単にコンテナボックスに化粧板を取り付けることを記載したものではないから,本件データが公知情報の組合せにすぎないとはいえない。❞
この裁判所の判断も妥当なものと思われます。
しかしながら、上記判断では、本件データは❝部品の構造や寸法が詳細に記録されたもの❞であるから有用性を認めるとしており、仮に本件データが❝単にコンテナボックスに化粧板を取り付けることを記載したもの❞であれば有用性は認められないとも解釈できます。このことは、営業秘密が有用性を満たすか否かの判断において重要なことを示唆していると思われます。
すなわち、他の裁判例でもあったように、特許で言うところの進歩性が低い情報については有用性が認められない可能性を示唆しています。なお、原告は、被告の主張に対して❝有用性と特許制度における進歩性の概念とを混同したものであって,失当である❞とも主張しましたが、この原告の主張に対して裁判所は何ら述べていません。
また、被告の上記主張は非公知性としても述べられていますが、非公知性としても同様の判断で裁判所は被告の主張を認めませんでした。

さらに、被告は❝本件データには原告と被告が共同作成したものといえ,被告のアイデアが多分に含まれているから,原告にとっての有用性は非常に低い❞とも主張しました。これについても裁判所は、以下のようにして被告の主張を認めませんでした。
❝本件新製品の仕様等について原告と被告は打合せを繰り返したが,弁論の全趣旨によれば,本件データの作成自体は原告が単独で行ったものと認められるから,この点も本件データの有用性を否定するものとはいえない。❞
このように裁判所は、❝本件データの作成自体は原告が単独で行ったもの❞であるとして、被告の主張を認めませんでしたが、この判断はどうでしょうか。仮に、本件データを原告が被告と共に作成しても本件データの有用性は否定されないと思います。

なお、被告は❝本件データは樹脂製品及び宅配ボックスについての知識経験を豊富に有する被告の助言・監修の下で作成されたものであるから,原告と被告が共同作成したものといえ,被告のアイデアが多分に含まれている。❞とも主張しています。これに対して、原告は❝本件データの作成過程において,原告が被告の意向を踏まえてデータを作成することがあったとしても,その意向は抽象的な要望やアイデアにすぎなかった。❞とのように反論しているものの、本件データに被告のアイデアが含まれていることは否定していません。

このようなことから、被告は本件データを共同作成したことを有用性の有無で争うのではなく、本件データは原告と被告とが共同作成したものであるから、本件データの保有者には被告も含まれることで主張した方が良かったように思えます(この主張が認められる可能性は低いかもしれませんが)。もし、この主張が認められたら、本件データは原告と被告とが共同で保有しているので、被告も使用可能であり、被告による営業秘密侵害にはならない可能性があるのではないでしょうか。

ここで、発明については「具体的着想を示さず単に通常のテーマを与えた者又は発明の過程において単に一般的な助言・指導を与えた者」は発明者とはなりません。すなわち、原告と被告の共同作成を発明に当てはめると、被告が原告に抽象的なアイデアを与えただけでは発明者とはなり得ないでしょう。一方で、「提供した着想が新しい場合は、着想(提供)者は発明者」とされます。もし、被告が原告に与えたアイデアが新しい着想である場合には、被告は発明者となり得、当該発明に対して特許を受ける権利を有することとなります。

特許と営業秘密とを同様に考えることは必ずしも適切ではないと思います。しかしながら、原告が作成した本件データが、仮に被告が独自に着想した新規(非公知)のアイデアに基づいて図面とされているものであれば、本件データは被告のアイデア無くして作成できたものではありません。そうであれば、被告も本件データの保有者という主張も議論の余地があるのではないかと思います。
なお、仮に被告が本件データの保有者であると認められ、被告の営業秘密侵害が否定されたとしても、被告は原告に対して少なくとも本件データの作成費用の支払い義務はあるでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信 

2022年9月18日日曜日

判例紹介:新規製品の開発・製造委託の取りやめ 宅配ボックス事件(秘密管理性)

自社製品の開発・製造を他社に委託することは一般的に行われていることです。しかしながら、実際に製造・販売までに至らず、途中で取りやめになることも少なからずあるでしょう。
今回紹介する判例(東京地裁令和4年1月28日判決 事件番号:平30(ワ)33583号)は、そのような事例についてのものです。

本事件の概要は以下の通りです。
①平成29年5月8日頃に原告が被告から、被告が販売する樹脂製の新規の宅配ボックスの開発・供給の引き合いを受ける。
②初回ミーティング後に、本件新製品の企画が外部漏洩するおそれを極力なくすため、被告は原告に対して機密保持契約の締結を提案し、平成29年5月19日までにその契約書の雛形を電子メールに添付して送信した。その後、被告は被告の押印済みの機密保持契約書を原告に2部郵送し、原告の押印済みのものを1部返送するように依頼した。原告は、原告の押印済みの同年6月20日付けの機密保持契約書を1部保持している。
③平成29年9月4日に原告の従業員Aは、Mタイプの製品に係るCADシステムのデータである本件データ1を、同月7日にSタイプの製品に係るCADシステムのデータである本件データ2を、それぞれ被告の従業員Bに電子メールで送信した。
④平成29年7月から9月初めにかけて、被告作成のモックアップの試験が行われ、原告と被告との間で、納期、コスト、仕様等の点で意見の食い違いがあり、仕様変更を含めた本件新製品の製造に関する打合せが繰り返し行われた。
⑤平成29年9月18日に、原告は本件新製品の製造費用についての同月14日付けの見積書を電子メールに添付して送信した。原告と被告とは、本件新製品の組立てに要する費用を原告が負担するか否か等の条件面での意見が一致せず、被告は本件新製品の製造を原告に発注するのを取りやめることとし、原告と被告との間での本件新製品の開発プロジェクトは同月中に終了することとなった。
⑥平成29年10月9日に、原告は本件プロジェクトが終了したことを受けて、被告に対し,本件新製品の「設計費・機会損失額」として合計1699万2800円の支払を求める旨の見積書を電子メールに添付して送信するものの、「設計費・機会損失額」の支払義務の有無及び額については合意に至らなかった。
⑦少なくとも平成30年7月25日頃から令和2年3月末までの間、被告は、被告製品を製造し、被告製品の譲渡を行った。

以上のような経緯があり、原告の営業秘密である本件データ1,2を使用して被告が被告製品を生産、譲渡及び譲渡のための展示を行ったことは、不正競争に該当するとして、原告が被告に対して差し止めや損害賠償を求めました。
この事件の結論からすると、被告による被告製品の生産等は、原告の営業秘密である本件データ1,2を不正に使用したとして、原告による差し止めや損害賠償請求(610万1962円)が認められました。


次に、本件データに対する秘密管理性、有用性、非公知性に対する裁判所の判断についてです。本事件は原告の勝訴となっているので、当然、これらはすべて裁判所によって認められています。

秘密管理性について、裁判所は「原告内部における秘密管理の状況」、「被告との関係における秘密管理の状況」という2つの視点から判断しています。

「原告内部における秘密管理の状況」について、裁判所は下記のことから本件データの秘密管理性を認めています。
①従業員に対して就業規則によって機密保持義務を課していた。
②技術的アクセス制限を含む社内ネットワークを構築していた。
③技術情報をサーバ上の所定のフォルダに保存し、アクセス制限を設けていた。
④本件データも技術部用のフォルダに保管されていた。

次に「被告との関係における秘密管理の状況」についてです。
ここで、本件データに対する「被告との関係における秘密管理」に対して、被告は2つの主張を行ったようです。
①被告は、原告から押印済みの本件機密保持契約書の返送を受けなかったとして、本件機密保持契約は締結されていないと主張。
②本件データには、これが営業秘密であることの記載や閲覧のためのパスワードの設定はされておらず、また、本件データを送付した電子メールの本文にも本件データが営業秘密である旨の記載はされていなかった。

①の機密保持契約についてですが、裁判所は以下のようにして原告と被告との間で機密保持契約は成立していたと判断しています。
❝本件プロジェクトが終了するまでに,被告から原告に対して本件機密保持契約書の返送がないと指摘したり,原告が被告に本件機密保持契約の締結に応じないとの態度をとったりしたとの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,本件機密保持契約は,遅くとも原告が保管する本件機密保持契約書(甲4)の作成日である平成29年6月20日頃までには成立していたものと認めるのが相当である。❞
②については、本件データには確かに営業秘密であることを示す措置は直接的に行われていませんでした。しかしながら、裁判所は、下記のように、原告と被告との間における本件データの秘密管理性を認めています。
❝原告と被告との間でやりとりされた本件新製品に関する企画書,図面,見積書等には秘密である旨が明示されているものとないものがあったところ,前記イ(ウ)のとおり,原告が被告に対して送付したモックアップ用の別の3Dデータについて,秘密である旨の表示がなくても,これを受領した被告従業員が秘密であることを前提とした行動を取っていたものである。そうすると,前記イ(エ)のとおり,本件データの送付の際にこれが秘密である旨が明示されていなかったことを考慮しても,本件データを受領した被告において,本件データが秘密として管理されていることは容易に認識可能であったというべきである。
なお、上記の「秘密である旨の表示がなくても,これを受領した被告従業員が秘密であることを前提とした行動を取っていた」とは、以下のような行動です。
3Dデータの送信の際に原告はこれらのデータが秘密である旨の表示はしていなかったが,同月27日に送信されたデータを受領した被告従業員Cは,同月29日,原告従業員のAに対し,「頂きました図面データですが,先日のお打ち合わせの際にご説明させて頂きましたIOT化に向け,センサーの組み込みや通信機器の設置場所の検討にあたり,パートナーに共有させて頂いても宜しいでしょうか?/先方とはNDAを締結済みです。」と尋ねる電子メールを送信した(甲6,8,13,乙20,21)。❞
すなわち、秘密であることの表示がない3Dデータに対して、被告従業員Cはそれが秘密であるとの認識のもとにパートナーと共有しているのであるから、この3Dデータと直接的に関係のある本件データに対しても秘密であることは認識できていた、とのように裁判所は判断しています。

営業秘密とする情報に秘密管理性を求める理由は、当該情報の保有者に無断で当該情報を持ち出したり、使用等すると不正競争行為となる、ということを当該情報に触れた者に予測させるためです。
そのように考えると、たとえ、本件データに直接的に秘密である旨の表示が無くても、原告から被告への本件データを送信前後における他のデータの秘密管理の状態を考慮して総合的に判断することは妥当であると思われます。
また、新規製品の開発・製造の委託においては、様々なデータが取引先との間で行われます。その場合に、一部のデータに対して秘密である旨の表示やパスワード管理等が不十分だからとして、当該データの秘密管理性が否定されてしまうと、それは営業秘密の保有者にとって不合理であるといえるでしょう。
とはいえ、やはり、このようなトラブルを未然に防止するためにも、自社の営業秘密を他社に開示する場合には、その秘密管理性が保たれるように十分な注意が必要です。

弁理士による営業秘密関連情報の発信