2017年9月29日金曜日

外国の営業秘密関連リンク

外国の営業秘密関連リンクを作りました。
ブログの右側のコンテンツに追加しています。
あまりまとまっていませんし、私自身が中身を十分に確認していないものもありますので、リンク先には重複しているものもあるかもしれません。
少しずつ整理して、分かりやすいものにしたいと思います。

リンクの中には、少々古いものも含まれていますので、実際にビジネス上の判断が必要な場合には法改正等がないか確認しないといけませんね。
まあ、そのときは日本だけで判断せずに現地の代理人等に確認することが間違いが少ないでしょう。


ところで、外国の営業秘密関連の情報を探してみると、経済産業省、特許庁、INPIT、JETROなどが資料を作成、又は作成の委託しています。
おそらく、これらをまとめ上げると、世界中の営業秘密関連の情報をそれなりに網羅できると思うのですが、バラバラになっており、大変そうです。

うーん、そもそも、だれもが常日頃から思うことですが、国として一本化して欲しいですよね。
海外における営業秘密に関する情報は、今後益々重要になるわけですから。
そうすれば、このようなリンク集を作る必要もなくなります。
まあ、海外の特許法等の情報も国が一本化して配信してませんから、無理なお願いでしょうね。

2017年9月27日水曜日

営業秘密と共に秘密保持義務も認められなかった事例

裁判において当該情報が営業秘密に該当しないとされ、さらにその秘密保持義務違反も認められなかった事例があります。

これは、大阪地裁平成24年12月6日判決(大阪地方裁判所平成23年(ワ)第2283号)です。
この事件は、被告が訴外フロイントから攪拌造粒機の製造委託を受け、これを製造・販売した製品が原告の特許権を侵害していると共に、被告製品には、原告から被告に示された原告製品図面中の営業秘密が被告からフロイントに不正に開示された上、使用されていると、原告が主張しているものです。

なお、原告は、被告に対し、原告が開発した製品やその部品等の製作を委託しており、その際、原告と被告は、取引基本契約書を交わし、本件基本契約には以下のような条項がありました。
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第35条(秘密保持)
1)乙は,この基本契約ならびに個別契約の遂行上知り得た甲の技術上および業務上の秘密(以下,機密事項という。)を第三者に開示し,または漏洩してはならない。但し,次の各号のいずれかに該当するものは,この限りではない。
〔1〕乙が甲から開示を受けた際,既に乙が自ら所有していたもの。
〔2〕乙が甲から開示を受けた際,既に公知公用であったもの
〔3〕乙が甲から開示を受けた後に,甲乙それぞれの責によらないで公知または公用になったもの。
〔4〕乙が正当な権限を有する第三者から秘密保持の義務を伴わず入手したもの。
2)乙は,機密事項を甲より見積作成・委託・注文を受けた本業務遂行の目的のみに使用し,これ以外の目的には一切使用しない。
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この秘密保持契約について、営業秘密に関係しそうな項目は、〔2〕,〔3〕でしょうか。しかし、〔2〕,〔3〕について、秘密保持契約には通常含まれている項目あると考えられます。


本事件において原告は、原告製品図面が営業秘密であると主張していますが、裁判所は原告製品図面は営業秘密ではないと判断しています。
さらに、原告は、被告が原告製品図面を訴外フロイントに開示したことが、秘密保持義務に違反すると主張しています。
これに対して、裁判所は下記のように判断し、秘密保持義務違反であることも否定しています。
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5 争点4(本件基本契約上の秘密保持義務違反)について
 原告は,被告が原告製品図面をフロイントに開示したとした上,そのことが,本件基本契約35条の規定する秘密保持義務に違反するものである旨主張する。
 そこで検討するに,まず本条における秘密保持義務の対象については,公知のものが明示で除外されている(本件基本契約35条1項〔2〕及び〔3〕)。そして,被告は,原告の「技術上および業務上の秘密」(本件基本契約35条1項本文)について秘密保持義務を負うと規定されているが,その文言に加え,被告の負う秘密保持義務が本件基本契約期間中のみならず,契約終了後5年間継続すること(本件基本契約47条2項)に照らせば,原告が秘密とするものを一律に対象とするものではなく,不正競争防止法における営業秘密の定義(同法2条6項)と同様,原告が秘密管理しており,かつ,生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な情報を意味するものと解するのが相当である。
 このように本件基本契約上の秘密保持義務についても,非公知で有用性のある情報のみが対象といえるため,前記4で論じたことがそのまま当てはまるところ,被告に上記秘密保持義務違反は認められないというべきであり,原告の上記主張は採用できない。
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上記裁判所の判断は、原告製品図面が営業秘密と認められないのであれば、営業秘密の要件(有用性、非公知性)と同様の要件である上記本件基本契約からすると、当然に原告製品図面も秘密保持義務の対象とはならないとのことのようです。
本件基本契約35条1項〔2〕及び〔3〕が営業秘密の定義(非公知性、有用性)と同じであるとすることに少々疑問はありますが・・・。

このように本事件では、本件基本契約35条1項〔2〕及び〔3〕等を含む秘密保持義務契約を原告と被告とが結んでいたがために、原告製品図面が営業秘密と認められないことに引きずられ、原告製品図面の開示も秘密保持義務違反とは認められないことになりました。
まさに、原告にとっては泣きっ面にハチであり、秘密保持契約がその意味をなさない状態となったわけです。

この事件を鑑みると、契約書、特に秘密保持契約において、秘密保持の対象とする情報(以下「秘密保持対象情報」といいます。)を相手方に提供する側は、秘密保持契約において秘密保持対象情報を営業秘密として捉えられないようにする必要性を感じます。

もし、秘密保持対象情報=営業秘密とすると、上記判決のように、当該情報が営業秘密でないとされると、たとえ相手方が秘密保持対象情報を開示しても、それが不法行為であるとは認められないことになってしまいます。

ではどうすればいいのか?
単純には、上記〔2〕,〔3〕のような項目を契約に加えないことかと思います。
でも、秘密保持契約の参考書等には、秘密保持の例外として、当然のようにこのような項目を加えることが記載されているんですよね・・・。

それが無理な場合は、決して漏えいされたくない情報に関しては、それを明確に特定し、その情報に関しては上記〔2〕,〔3〕の例外から除外するといったような工夫が必要ではないでしょうか。
一番重要なことは、秘密保持対象情報が漏洩された場合に、この秘密保持対象情報が営業秘密ではないとされても、秘密保持契約に基づいて不法行為が認められるようにすることかと思います。

2017年9月25日月曜日

営業秘密の帰属について「示された」とは?

営業秘密の帰属について、キーワードは「営業秘密を保有者から示された」であるようです。

すなわち、営業秘密に係る情報を作成した従業者(創出者)は、「営業秘密を保有者から示された者」には該当しないという考えです。この場合、創出者との関係では「営業秘密を保有者から示された者」は、企業側となります。
確かに、従業者が新たに情報を創出した場合、その情報は従業者がまず保有しており、その後、この情報は従業者から企業に示され、企業の判断で営業秘密として管理することになるとも考えられます。このように考えると、この営業秘密は、企業から従業者(創出者)に示されたとは考え難いと思われます。

そして、企業がこの情報を営業秘密として管理するのであれば、創出した従業者との間で契約を取り交わし、営業秘密の帰属先を企業側としなければならないとの考えです。

もし、企業と創出者たる従業者が契約を交わすことなく企業がこの情報を秘密管理していたら、他の従業者との間では、企業は営業秘密であることを主張できるものの、創出者との間では、企業は営業秘密であることを主張できないということになります。

そして、創出者たる従業員が転職して、転職先等でこの情報を開示・使用しても、営業秘密の侵害にはあたらないことになります。


この考えに該当する判例は未だありません。そのため、この考えの正否は今後の判例を待つ必要があります。

しかし、そもそも 営業秘密とする情報がその創出者たる従業者に帰属すると考えると、その情報が技術情報の場合には、特に、特許法の職務発明との親和性が高いと思われます。
すなわち、企業が、技術情報を営業秘密として管理しても、特許として管理しても、その創出者たる従業者に対する保護は同等であることになるのではないでしょうか?

ちなみに、このような営業秘密の創出者は「営業秘密を保有者から示された者」に該当しない、との考えは、単に不競法の2条1項7号の要件違反に該当するか否かの問題であり、「帰属」の問題ではないとの考えもあるようです。

なお、技術情報を営業秘密として管理する場合には、“帰属”の問題とは関係なく、従業者との間で契約、特に対価(相当の利益)に関する定めを取り交わした方が良いかと思います。
すなわち、従業者が創出した技術情報を特許出願する場合には、従業者に利益が与えられるものの、それが営業秘密とされる場合には、従業者に利益が与えられないとすると、従業者には不公平感が残るでしょう。
その結果、仕事に対するモチベーションの低下にもつながるでしょうし、転職の動機付けにもなるでしょう。さらには、その従業者が転職した場合に、営業秘密とされた技術情報を転職先に持ち出す動機付けにもなり得るかもしれません。
また、営業秘密として管理した情報によって企業が大きな利益を得たにもかかわらず、その創出者に対しては何ら利益を与えなかった場合には、過去に多くあった特許権の主組む発明の問題のように、その創出者との間で訴訟に発展する可能性もあるかと思われます。

現在の法律では、情報、特に技術情報を営業秘密とする場合には、その創出者に対する保護規定は設けられていません。だからといって、企業側が、何ら手立てを施さない場合には、その後、その創出者との間でトラブルが生じるリスクを潜在的に抱えることになるかと思われます。

このブログ記事の参考文献
田村 善之 不正競争防止法概説(第2版)(有斐閣 2003年)
TMI総合法律事務所 編 Q&A営業秘密をめぐる実務論点(中央経済社 2016年)
服部 誠 小林 誠 岡田 大輔 泉 修二 営業秘密管理実務マニュアル(民事法研究会 2017年)

2017年9月22日金曜日

営業秘密の帰属について「疑問点」

営業秘密は誰に帰属するのでしょうか?
実は、これは未だ明確になっていないところもあります。

まず、営業秘密は、営業秘密を秘密管理している企業に帰属しているとも考えられます。
例えば、営業秘密とされる情報の作成に全く寄与していない者が、不正の利益を得る目的でこの営業秘密を取得して転職先で開示・使用した場合、これを秘密管理している企業(前職企業)に帰属しているのであるから、この取得者を罰すると考えることに異を唱える人はいないかと思います。

では、営業秘密を取得した者が、その営業秘密を作成した本人(創出者)であり、転職先でその営業秘密を開示したとしたらどうでしょうか?そして、その営業秘密は、その本人ただ一人で作成されていたとしたら?
この様な場合でも、営業秘密は企業に帰属するので、その創出者は罰せられるのでしょうか?

ここで、例えば、特許法第35条(職務発明)の第3項には「従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。 」とあります。
すなわち、職務発明については、契約等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めないと、特許を受ける権利は使用者等(企業)に帰属しません。このような場合、特許を受ける権利は原始的に従業者が有します。

ちなみに、不正競争防止法には営業秘密に関して、特許法第35条のように、その創出者の権利を保護するような規定はありません。


特許法と不正競争防止法とをリンクして考えることは、そもそも正しくないのかもしれませんが、技術情報を特許出願する場合には、契約等が無い限り特許を受ける権利の帰属先は従業者であるにもかかわらず、技術情報を営業秘密とする場合には、契約等が無くてもその帰属先は従業者ではなく、企業となるのでしょうか?
すなわち、営業秘密の帰属先は原始的に企業なのでしょうか?

もし営業秘密(技術情報)の帰属先が企業であるとすると、その創出者が転職し、転職先でその営業秘密を開示して転職先が侵害行為を行うと、その創出者個人にも実際に民事的責任、刑事的責任を問われる可能性が高いです。
一方で、同じ技術情報であり、企業が特許出願をして特許とされた後に、その発明者が転職し、特許となった技術情報を転職先で開示して転職先が侵害行為を行っても、その発明者個人が民事的責任、刑事的責任を問われることは実際にはないでしょう(特許法でも刑事罰等はありますが、適用された例を知りません。)。

このように、営業秘密が原始的に企業に帰属するとした場合では、同じ技術情報でも営業秘密とされた場合と特許とされた場合とで、それを作成した者による侵害行為において非常に大きな差が生じる可能性があるように思えます。
そして、営業秘密に関しては、その創出者に対する保護規定は法律で定められておりません。

ここで、近年の営業秘密侵害事件において、容疑者がその営業秘密は自身が開発に携わっていと主張しているものもあります。下記の記事が参考になりますが、その主張がどの程度のものかは分りかねるものの、もし容疑者がその営業秘密の開発の中心的役割を担っていたらどうなるのでしょうか?
企業法務ナビ:日本ペイントデータ流出事件と営業秘密開示

この疑問のキーワードは、「営業秘密を保有者から示された」にあるようです。
営業秘密の帰属に関する問題は、企業が営業秘密管理を行う上で非常に有用な事項であると個人的には考えます。
続きは次のブログで・・・。

このブログ記事の参考文献
田村 善之 不正競争防止法概説(第2版)(有斐閣 2003年)
TMI総合法律事務所 編 Q&A営業秘密をめぐる実務論点(中央経済社 2016年)
服部 誠 小林 誠 岡田 大輔 泉 修二 営業秘密管理実務マニュアル(民事法研究会 2017年)

2017年9月20日水曜日

今月のパテント誌の特集

今月のパテント誌は、「不正競争防止法」が特集されています。
不正競争防止法の特集なので、周知著名商品等表示がメインなのかと思っていましたが、以外にも、営業秘密、しかも米国や韓国の営業秘密に関することがメインでした。

外国、特に、米国、欧州、韓国、中国(一応)における営業秘密に関する法律は、理解しておいた方がいいだろうなと思いながら、未だほとんど手付かずです。

せいぜい、営業秘密の保護が強化されたのは日本だけでなく、米国で2016年に営業秘密保護法が連邦法で制定されたり、EUでも2016年に営業秘密の保護に関するEU指令案が採択されたり、とのように世界的にも営業秘密保護がさらに重要視されているようだということを知っている程度です。
参照:BIZLAW「米国でついに成立!営業秘密の連邦民事保護法」
   ジェトロ「欧州理事会、営業秘密の保護に関するEU指令案を採択 」



しかしながら、外国における最新の営業秘密保護規定を理解しようと思っても、“日本語”の資料、しかも、まとまったものはあまりないようで・・・。
その国のサイトを調べればいいのですが、私は英語があまり得意ではないので・・・。

しかしながら、少し調べると、下記のように経済産業省の報告書が出てきました。

・平成26年度産業経済研究委託事業「営業秘密保護制度に関する調査研究)報告書」
・平成25年度経済産業省委託事業「諸外国における営業秘密保護制度に関する調査研究報告書」
・平成21年度経済産業省委託事業「諸外国の訴訟手続における営業秘密保護の在り方等に関する調査研究報告

ちなみに、経済産業省ホームページには「不正競争防止法に関するこれまでの報告書一覧」というものがあり、ここに上記報告書を含む様々な報告書がリンクされています。

他にもJETROでも幾つか報告書があります。
2015年「経済産業省委託事業 営業秘密流出対応マニュアル(韓国)」
2013年「中国における営業秘密管理と対策」 
2011年「特許庁委託事業 模倣対策マニュアル 簡易版 インド編-インドにおける営業秘密等の保護-」

ただし、古いものになると、法改正等によって少々変わっている可能性もあります。
もし、実務でどうしても外国の営業秘密保護法を知る必要があれば、現地代理人に聞くことが一番なのでしょう。

とはいっても、探せば色々資料が出てきそうなので、海外の営業秘密に関するリンク集でも作ろうかなと思います。

2017年9月18日月曜日

中小企業の7割は営業秘密規定が未整備

前回のブログで「営業秘密管理体制が整っている企業は果たしてどの程度あるのか?」という疑問を自身で述べましたが、これの答えの一つが最近発表されました。

7割の中小企業が営業秘密規定を未整備、とのことです。
参照:ヤフーニュース・日刊工業新聞「営業秘密規定、中小7割が未整備 不正競争防止法で守れず」

このニュースはINPITの調査の結果に基づくもので、下記のようなプレスリリースが発表されています。
参照:INPIT プレスリリース


7割の中小企業が営業秘密規定を未整備であることにさほどの驚きはありません。
多くの中小企業が営業秘密規定が未整備であろうことは、何となく想像していました。
一部の大企業ですら、営業秘密規定があるかもしれませんが、実際には営業秘密が適正に管理できていないようですからね。



この調査で驚いたことは、実に25%もの企業が「規定は今は不要と考えている」ことです。
では、このような企業は、何時になったら規定が必要となると考えているのでしょうか?
自社には「秘密とする情報がない」という人も居るかと思います。
おそらく、 「規定は今は不要と考えている」と答えた企業の担当者は、そのように考えているのではないでしょうか?

ここで、個人や法人の顧客情報や取引先の情報を所有していない企業は存在しないと思います。
もし、自社のみの情報しか含まれていない情報が流出しても、それは自社のみに影響を及ぼすものですが、前回のブログで書いたように、顧客情報や取引先の情報(以下「第3者情報」といいます。)が流出したら、顧客や取引先にまで影響を及ぼすことになります。
その結果、自社の信用は大きく損なわれることになります。
少なくとも第3者情報は、営業秘密として管理すべきだと考えます。
第3者情報であれば、自社が所有している情報のうち、どれであるかの特定は比較的容易ではないでしょうか?
そして、第3者情報を営業秘密として管理する目的は、第3者の情報を自社から流出させないことであり、自社の信用を守ることです。
これは、企業として最低限、必要な措置ではないでしょうか?




2017年9月14日木曜日

佐賀銀行の営業秘密流出事件

しばらく前に佐賀銀行で営業秘密に関連した事件が起きていたようです。

参照:2017年7月28日 佐賀新聞「佐銀元行員が一転関与認める」
参照:2017年7月6日 佐賀新聞「福岡県警、佐銀元行員を再逮捕 預金者情報漏えい疑い」
参照:2017年6月19日 佐賀新聞「佐銀事件で1億円超預金者169人分、情報流出」
参照:2016年12月18日 佐賀新聞「佐銀2支店侵入事件、暴力団関与の可能性」
参照:佐賀銀行ホームページ「お客さま情報漏洩の報告とお詫びについて」

このニュースは、あまり全国的に取り扱われていないような気がしますが、非常に重大な事件であると思われます。

元々は、佐賀銀行に窃盗(金庫破り)の目的で侵入して現金を盗んだ事件のようですが、元行員が協力しており、この元行員が自身がアクセス権限を有している預金者リストをも不正に取得したようです。そして、実際に使用されなかったものの、この預金者リストに元にに福岡市内の預金者宅で空き巣をしようと計画していたようです。

はっきり言って、もし預金者リストが窃盗事件に使用されていたらと考えると、かなり恐ろしい事件です。窃盗団と被害者が鉢合わせする可能性もありますからね。


営業秘密の中でも流出した場合に最も対応に苦慮するものが、個人情報を含んだ顧客情報ではないでしょうか。
我が家の情報も流出したベネッセの事件では、本来“被害者”であるはずのベネッセも責任を問われ、その対応に多額の費用を費やしています。
今回の佐賀銀行の事件でも、もし、預金者リストを基にして預金者が窃盗被害等にあってしまった場合には、単に佐賀銀行だけの問題に終わらず、佐賀銀行の道義的な責任が問われるかもしれません。

しかしながら、今回の事件やベネッセの事件もそうですが、営業秘密を不正取得する犯人は多くの場合で内部の人間です。
どうやったらこのようなことを防げるのでしょうか?
一つとしては、“社員教育”だと考えます。また、社内の管理体制を従業員に周知し、もし、営業秘密を不正取得した場合にはそれが発覚することを理解してもらうことが必要かと思います。
今回の佐賀銀行の事件でも、犯人である元行員が預金者リストにアクセスした履歴が残っていたようです。犯人はアクセスログが残ることを理解していたのでしょうか?
そして、佐賀銀行はアクセスログが残ることを従業員に周知していたのでしょうか?もし、周知していなかったのであれば、その管理体制の不備が指摘されても致し方ないと思います。

このように、営業秘密の流出、特に顧客情報や取引先に関する情報の流出は、被害者であるはずの流出元企業の管理責任が問われかねない場合があり、このことは既に広く知られているかとも思います。
では、実際に管理体制が整っている企業は果たしてどの程度あるのでしょうか?
この疑問に対して、最近興味深い調査結果が公開されています。
これは次のブログで。

2017年9月12日火曜日

新潮と文春の中吊り広告に関する問題の顛末

このブログを始めたころに、新潮と文春との間で中吊り広告に関する問題が起きました。
具体的には、「印刷会社から取次会社に渡された週刊新潮の電車中刷り広告を文春が取得し、使用したのでは?」というものです。

営業秘密にも絡んでそうな話題だったので、本ブログでもこれに飛び着き、下記のように複数回記事にしています(その1は殆ど関係ない話題です。)。

週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その2
週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その3
週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その4
週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その5
週刊新潮の「『文春砲』汚れた銃弾」その6(まとめ)

私としては、中吊り広告が取次会社でも“秘密管理”されていない限り、新潮は営業秘密の侵害という不法行為を文春に問うことはできないと考えています。



そして、この問題に関しては、文藝春秋の社長が新潮社を訪れ、謝罪文書を手渡すことで、一件落着したようです。
参考:NHKニュース
問題発覚が5月ですが、文藝春秋もこれまで放置していたわけではなく、おそらく新潮社が納得いくような落としどころを互いに模索していたのではないでしょうか?

ニュースを見る限り、「中吊り広告を長期にわたり借り受け」とのように、違法行為とは取られないような表現を使っているところが面白い、というか常套手段ですね。
また、このニュースでは、「週刊新潮が同じような内容の記事を掲載することを知りながら、あたかも週刊文春の独自スクープであるかのような速報をWEBサイト上で先に流した事例があったことを認め、これについても謝罪しています。」とも報じられているように、文藝春秋が全面的に非を認め謝罪しています。

このように、他社の情報を不正に取得した場合は、例え、民事や刑事事件に発展しなくても、朝日新聞出版の件でもあったように、社を挙げての謝罪に追い込まれる可能性があります。
いや、民事・刑事事件に発展させないために、謝罪するのかもしれません。

一昔前は、他社が秘密にしている情報を取得し、それを利用することが当たりまえであり、従業員もそれを求められていたかもしれません。
しかしながら、今の時代では、他社が秘密にしているであろう情報を容易に取得できる状況にあっても、それを取得して利用することは許されないことであることを各企業,
特に経営層は認識するべき事項であると思われます。

2017年9月7日木曜日

営業秘密が流行るタイミング

最近、営業秘密に関する古い本をネットでいくつか購入しました。
1冊200~300円のものを数冊。
古い書籍は、当然現在の法改正に対応していないものの、それを理解していれば、情報を“安く”仕入れることができます。
また、営業秘密が法的に保護されるようになった当時の状況も知ることができるかな?との思いもあり、購入しました。

そこで気が付いたこと。
10年ぐらい前にも「営業秘密」がちょっと流行ったんだな、ということ。
10年前というと、2006年前後ですが、このころは、平成15(2003)年法改正によって営業秘密の刑事的保護が規定され,平成17(2005)年法改正により営業秘密の刑事的保護が強化されてます。さらに、法改正に合わせて、営業秘密管理指針が一部改訂されてます。
これに合わせて出版されたと思われる書籍が複数ありました。

ちょうど、平成27年の不競法の法改正によって、営業秘密の刑事的保護がさらに強化され、営業秘密管理指針が全部改訂になったときと同じ感じですね。
このときも、営業秘密に関する書籍が多く出版されていると思います。
私も平成27年の法改正から営業秘密に興味を持った一人ですが・・・。

しかしながら、企業における現在の知財管理の状況を鑑みるに、10年前の“流行”では、営業秘密管理はさほど浸透しなかったようですね。
下記図のように、10年ちょっと前から既に特許出願件数は減っていますが、これは2000年前後の特許出願の“流行”の反動もあったでしょうから、企業が積極的に技術を非開示する傾向ではなかったのかもしれません。
また、転職も今ほど多くはなかったかもしれませんし、派遣社員や契約社員の数も今ほど多くなかったはずです。


しかしながら、10年前と現在とでは、雇用状況も異なりますし、特にリーマンショックを機に特許出願件数がさらに減少していることを鑑みると、企業が秘密とする情報量も多くなっているはずです。
さらに、大容量記憶媒体の性能向上・低価格化、ネットワークの通信速度の向上等、サイズの大きなデジタルデータを容易に持ち運べるようになっています。

これらのことから、現在は10年前に比べて、営業秘密を持ち出される又は持ち込まれるリスクが全く違うと思われます。
そして、営業秘密に関する対応を適切に行っていない企業は、トラブルに巻き込まれる可能性が必然的に高まるのではないでしょうか。

2017年9月5日火曜日

10月17日に横浜で営業秘密セミナーを開催します。

10月17日に下記のように、営業秘密のセミナーを横浜で開催しようと思います。
3枚目のjpgをプリントアウトしてFAXして頂いても構いませんし、私宛にメールで応募していただいても構いません。

私が営業秘密の概要を説明し、弁護士である高尾先生が営業秘密に関する契約等について話して頂く予定です。

ご興味のある方は、ぜひご参加ください。







2017年9月2日土曜日

「営業秘密ラボ」のドメインを取得


「営業秘密ラボ.com」のドメインを取得してみました。

そして、このブログのアドレスは「http://www.営業秘密ラボ.com/」になってます。

このブログは半分趣味ですが、弁理士として「営業秘密」に関するビジネスもできればなあと考えています。
色々うまくいきそうであれば、ブログの形態も変えたり(今はグーグルのblogerです。)、ビジネスライクなホームページの作成も?

取得金額も非常に安かったので、損はないだろうということで。





2017年9月1日金曜日

朝日新聞出版とデアゴスティーニ

少々古い話題、2014年に起きたことです。朝日新聞出版がデアゴスティーニの内部資料を違法に入手し不正利用していた、と週刊誌で記事にされて疑われたことがありました。

これに関して、朝日新聞出版はお知らせをホームページに掲載しています。
直接的に「営業秘密」という文言を使用していませんが、営業秘密又はそれに類する情報の持ち込みが転職者を介してデアゴスティーニから朝日新聞出版にあったようです。
以下に、このお知らせの一部を抜粋します。

「弊社がデアゴ社の内部資料を意図的に持ち出したり、持ち出させたりした事実はありません。しかし、デアゴ社から転職してきた弊社社員が退職時に返却、処分することなく、弊社入社後も前の会社の資料を持っていたことは、転職に際しての会社情報の取り扱いに関する認識が乏しく、弊社としても社員教育が徹底しておりませんでした。みなさまに深くお詫びいたします。」

ここでいう「社員教育」とは、例えば、「転職者に対して前職の営業秘密を持ち込まないこと」等のことでしょう。その際に、誓約書に署名してもらうことが考えられます。
朝日新聞出版社は、このようなことをしていなかったのでしょう。
その結果、このような「お知らせ」を報じる事態となっています。

ちなみに、上記ホームページによるとデアゴスティーニは下記のような対応だったようです。
「朝日新聞出版に対する事情聴取を含め、現時点までの弊社の調査によれば同社による不正利用の事実が以前同社により弊社に開示された重要性の低いデータ以外は確認されていないこと、また弊社データの更なる流出が確認されていないこと、更に、弊社として認識すべき実害が現時点で確認できていないこと等の理由により、現時点で朝日新聞出版を告訴することは考えておりません。」


情報漏えいが発覚した過程がよく分かりませんが、他方当事者のデアゴスティーニは、自社の情報管理をそれなりに行っていたのではないでしょうか?
だからこそ、離職者を介して情報漏えいを察知できたのかもしれません。
しかし、そうだとしてもやはり離職者に対する情報管理に対する社員教育が不十分だったと思われます。
この離職者がデアゴスティーニの情報を取得したまま朝日新聞出版に転職したわけですからね。

現在の就業環境では、どの企業も転職者がいると思われます。
このため、どの企業でも、この朝日新聞出版と同じ状態になる可能性はあり得ます。

例えば、本ブログの「営業秘密における民事訴訟と刑事訴訟との関係」でも挙げたいすゞ自動車に転職した元日産の従業員が営業秘密を持ち出した件では、刑事事件となり、その過程でいすゞ自動車の関与は否定されています。
また、この他にも、民事訴訟で営業秘密を持ち出した元従業員と共に転職先企業が訴えられ、この訴訟の過程で転職先企業の関与が否定される場合もあります。
このように、企業は、転職者を迎え入れるにあたって、転職者の前職企業の営業秘密が意図せずに流入し、トラブルとなるリスクがあります。

今後、以前にもまして従業員の転職は盛んになると思われます。このため、離職・転職のタイミングにおいて、営業秘密の持ち出し及び持ち込みの防止に関する措置をとることは、企業にとって益々重要なことになると思われます。