<おしらせ>
<営業秘密関連ニュース>
・機械工作会社の情報漏洩、容疑で露政府職員ら書類送検「ウクライナ人」かたり社員に接触か(産経新聞)
・ウクライナ人名乗ったスパイか 「偶然」の出会いと封筒の70万円(朝日新聞)
・道案内、気づけば「情報提供者」に 先端技術狙い接近するロシアスパイの常套手段(産経新聞)
・「ウクライナ人」名乗りスパイ活動か、在日ロシア通商代表部元職員に出頭要請…精密機械製造会社元社員が機密情報漏えいか(読売新聞)
・ロシア元職員とメーカー元社員、営業秘密漏洩容疑 「スパイ」か(朝日新聞)
・ロシア元職員ら書類送検 メーカー機密情報漏洩疑い、スパイ活動か(日本経済新聞)
・元ロシア通商代表部員ら書類送検 営業秘密漏えい容疑―現金70万円見返りか・警視庁(JIJI.COM)
・ロシア通商代表部元職員ら、金銭で新製品情報を取得疑い 書類送検(毎日新聞)
2026年1月9日
・顧客情報などを同業他社に漏えいか 台湾出身の女逮捕(チバテレ+)
2026年1月25日日曜日
知財戦略:ユーグレナの知財戦略を知財戦略カスケードダウンへの当てはめ
2026年1月18日日曜日
知財戦略:ユーグレナ社の知財戦略
2025年12月30日火曜日
公益通報を目的とした秘密情報の持ち出し
・情報持ち出し「公益通報目的」 汚職告発した元社員の免責認める(日本経済新聞)
・医療機器販売会社と病院医師の贈収賄を「公益通報」 元社員に損害賠償求めた裁判 会社側の請求退ける 東京地裁(ABCニュース)
・「情報持ち出しは公益通報目的」 元社員に賠償を求めた会社が敗訴(朝日新聞)
「有用性」の要件は、公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂れ流し等の反社会的な情報)など、秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。
2025年12月22日月曜日
判例紹介:5割の従業員がアクセス可能なサーバでの情報管理
ア 原告の令和4年9月1日時点の従業員数は50名(本社9名、関東出張所7名、岬工場20名、千葉工場14名)であった。本社及び関東出張所の従業員16名は、構造計算・設計・見積書作成、経理・事務、窓口等を、各工場の事務所に所属する従業員9名は、設計・発注、窓口等を担当しており、これら25名に原告からパソコンが貸与されていた。イ 原告製品情報、原告取引情報及び原告原価情報は、外部から接続ができない原告社内のサーバのフォルダ内に格納されており、上記パソコン貸与者において当該パソコンから上記フォルダにアクセスすることができた。なお、上記各情報は、手間の煩わしさからパスワード付されずに格納されていた。ウ 原告の就業規則(令和2年4月1日適用)には、従業員の秘密義務として、① 製品技術・設計、企画、開発に関する事項、② 製品販売・顧客情報に関する事項、③ 財務・経営に関する事項、④ 人事管理に関する事項、⑤他社との業務提携に関する事項等について従業員は、在職中及び退職後において、以下の秘密情報につき、厳に秘密として保持し、会社の事前の許可なく、いかなる方法をもってしても、開示、漏えい又は使用してはならない旨が定められていた。(甲17)
本事件は、前回紹介した事件よりも少ない、50%程度の従業員に貸与したパソコンでサーバへの自由なアクセスが可能とされています。このような場合でも、フォルダ等へのパスワードが設定されていないため、「業務上必要性のない情報であるにもかかわらずアクセスできた者も存在したといえる。」とされ、秘密管理性が認められませんでした。イ ・・・原告は就業規則において従業員に秘密保持義務を課し、上記各情報については外部から接続できない社内サーバで管理し、貸与したパソコンに限ってアクセスできる措置を講じている。しかし、具体的な秘密管理措置についてみると、上記各情報(データ)には、円滑な業務遂行を優先して手間の煩わしさを解消する目的でパスワードが付されておらず、これらに「部外秘」「秘密情報である」などと付記されていた事情もうかがわれない。また、情報へのアクセスが貸与されたパソコンに制限されているとしても、貸与されたパソコンの使用者の担当業務は様々であって、全ての貸与者において、業務の遂行上これらの情報すべてが必要な情報であるとは解し難く、業務上必要性のない情報であるにもかかわらずアクセスできた者も存在したといえる。さらに、就業規則には、秘密保持の対象となる事項が列挙されているが、本件で問題となっている原告製品情報、原告取引情報及び原告原価情報がこれに該当するか否かを明示的に記載しているものではなく、別途、原告がこれらの情報が秘密情報に当たる旨を明示的に表示した事情もうかがわれない。以上によれば、原告においてこれらの情報を秘密として管理する意思があったとしても、被告Aや原告の従業員においてこれを十分認識し得る程度に秘密として管理する体制が講じられていたと認めることはできない。したがって、秘密管理性は認められない。ウ 以上から、その余の要件(非公知性及び有用性)について検討するまでもなく(なお、原告製品情報については、これらによる製品が一般の建築に供される建築資材であることや、原告自身も当該資材それ自体を秘密と扱っていないこと(甲2)からすると、原告主張の事実が仮にあったとしても、非公知性を認めることも困難である。)、原告製品情報、原告取引情報及び原告原価情報は、不競法2条6項所定の「営業秘密」に当たらない。
2025年12月14日日曜日
判例紹介:8割の従業員がアクセス可能なシステムでの情報管理
本件パートナーフィーは、Ciにより毎月集計され、被告の営業チームの従業員等に共有されており、共有する際のメールや支払に係る業務稟議書に営業秘密である旨の表示がされていなかったこと、本件パートナーフィーの月ごとの算定は、Ciが本件システムの情報を前提として算定しているところ、前記認定事実⑵アのとおり、本件システムには、被告従業員のうち現業社員以外の約8割の従業員がアクセス可能であったことが認められる。さらに、本件システム内において本件パートナーフィーに関する情報が他の情報と区別して営業秘密であると表示されていたことを認めるに足りる証拠はなく、その他、本件情報1について具体的な管理方法を認めるに足りる証拠はない。そうすると、たとえ就業規則において職務上知り得た機密事項(個人情報を含む)の外部への漏洩が禁止されていたとしても、営業秘密であると明示されていない本件情報1について、秘密管理していたとは認められない。
2025年11月30日日曜日
判例紹介:念書(契約書)に基づく秘密情報の廃棄や使用の制限について
本件念書は、その有効期間は実験の目的が完了するまでの期間とし(本件念書8条本文)、ただし、その失効後も、情報の使用目的等に関する規定(本件念書3条から5条まで)は有効に存続するものと定めるところ(本件念書8条ただし書き)、廃棄や削除に係る義務(本件念書6条)は、上記期間の終了後にも存続するものとして挙げられていないから、上記期間の終了後には存続しないと解される。そして、本件念書について、令和元年7月12日に有効期間が終了したことは、原告が(本件情報を使用しないことについての請求に関し)自認するとおりであって、同日に本件念書の有効期間が終了した以上、廃棄や削除に係る義務は消滅したものというべきであるから、本件情報を廃棄又は削除することについての請求は理由がない。
本件念書は、被告において、原告から開示される使用済み紙おむつ燃料化事業における紙おむつ混合ペレットの成形実験及び燃焼実験に関する秘密情報を「本事業」の目的のためにのみ使用するものとし、他の目的に使用しないことに同意する旨を定め(3条)、「本事業」については、「使用済み紙おむつ燃料化事業」をいうものであって(本件念書の前文〔甲7〕)、その文言上、原告が被告から受託する業務に限定されていない上、本件念書は、被告が原告から開示を受けた情報等を利用して紙おむつ燃料化事業を行うために締結されたものであること(認定事実(4)ウ)に鑑みると、被告の行う紙おむつ燃料化事業のために原告から開示を受けた情報を利用することは、「他の目的」に該当しないというべきである。そして、被告において、紙おむつ燃料化事業のほかに上記(1)ケの情報を利用していることを認めるに足りる証拠はないから、原告において、当該情報を使用しないよう求めることはできないというべきである。
2025年11月23日日曜日
報道に用いられる営業秘密の違法性
・ニデック元社員に損害賠償命令 営業秘密を記者へ提供(47NEWS)
・営業秘密を東洋経済記者に提供 ニデック元社員に275万円賠償命令(朝日新聞)
不正競争防止法第2条第1項第7号営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
不正競争防止法第2条第1項第8号その営業秘密について営業秘密不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
不正競争防止法第1条この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
2025年11月16日日曜日
引っ越しに関する顧客リストを同業の転職先企業に持ち出した刑事事件
2025年10月30日木曜日
フランチャイズ契約をした被告が自身で取得した顧客情報の取り扱いについて
第28条(個人情報管理)4.乙及び丙は、生徒等の個人情報の取得を必要な範囲内で適切かつ公正な手段により行うものとし、前項の利用目的の達成に必要な範囲内でのみ利用する。
本件契約第28条4項は、被告明光らが取得した生徒等の個人情報について、「前項(学習支援サービスの提供、明光義塾の運営)の利用目的の達成に必要な範囲内でのみ利用する。」とされ、同条11項において、「本条で定める被告明光らの個人情報管理義務は、本件契約の終了又は解除後も有効とする。」と規定されているから、被告明光らは、明光義塾の運営以外に生徒等の個人情報を利用することはできないと解される。そして、本件顧客情報は、いずれも、同条3項の生徒等の個人情報に該当するとところ、被告明光らは、本件解除により明光義塾のエリアフランチャイザー及びフランチャイジーの地位を喪失しており、明光義塾に係る事業を継続することはできないから、上記生徒等の個人情報を用いて連絡をすることはできない。したがって、不競法に基づく請求の成否について検討するまでもなく、原告の被告明光らに対する本件顧客情報の使用の差止請求は理由がある。
第27条(守秘義務)1.乙及び丙は、甲に対し、下記事項について義務を負う。(1)乙及び丙は、本契約によって知り得て甲の事業上の秘密(以下「秘密情報」という。)及び甲の不利益となる事項、情報を第三者に漏らしてはならない。
原告は、被告明光らは、本件契約第27条、第28条及び第46条により、本件顧客情報を廃棄する義務があると主張する。しかし、本件契約第27条1項は、被告明光らが本件契約によって知り得た原告の事業上の秘密を「秘密情報」と定義しているところ、本件顧客情報は、本件契約第28条3項のとおり、被告明光らが生徒等から取得するものであるから、そもそも本件契約上の「秘密情報」に該当するものとはいえない。また、同条は、生徒等の個人情報の目的外利用を禁止しているものの、当該情報の破棄について定めておらず、本件契約第46条1項も、フランチャイズ展開に使用した資料及び書類を原告に返還する旨定めているものの、本件顧客情報が上記フランチャイズ展開に使用した資料及び書類に含まれるかは明らかでない上、同条項も、原告への返還義務を規定しているにすぎず、廃棄について定めたものとはいえない。以上によれば、本件契約に基づき、本件顧客情報の廃棄を求めることはできない。
2025年10月19日日曜日
自社製品の市場、自社の立ち位置、技術内容等に応じた特許化又は秘匿化の選択
2025年10月13日月曜日
リバースエンジニアリングによる営業秘密の非公知性判断と特許の新規性判断
法29条1項2号にいう「公然実施」とは,発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいい,本件各発明のような物の発明の場合には,商品が不特定多数の者に販売され,かつ,当業者がその商品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろん,外部からそれを知ることができなくても,当業者がその商品を通常の方法で分解,分析することによって知ることができる場合も公然実施となると解するのが相当である。
【請求項1】菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とするグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材。Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)ここで、P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。
・・・本件特許出願前から,被告伊藤は,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品A1ないし3及び本件各発明の技術的範囲に属する被告製品A4ないし11を,被告西村は,本件各発明の技術的範囲に属する被告製品B1及び本件発明1の技術的範囲に属する被告製品B2を,日本黒鉛らは,本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛製品1ないし3並びに本件発明1の技術的範囲に属する日本黒鉛製品4及び5を,中越黒鉛は,本件発明1の技術的範囲に属する中越黒鉛製品1及び2並びに本件各発明の技術的範囲に属する中越黒鉛製品3をそれぞれ製造販売していたものである。そして,前記2(1)イのとおり,本件特許出願当時,当業者は,物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし,これにより得られた回折プロファイルを解析することによって,ピークの面積(積分強度)を算出することは可能であったから,上記製品を購入した当業者は,これを分析及び解析することにより,本件各発明の内容を知ることができたと認めるのが相当である。したがって,本件各発明は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされたものであるから,本件各特許は,法104条の3,29条1項2号により,いずれも無効というべきである。
【請求項1】走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、前記第2の筒状部材に設けられた第1の突部が前記第3の支点を回動中心とする第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成されることを特徴とする作業機。
・・・本件展示会において、見学者が、エプロンを跳ね上げるのに要する力が、本件発明の構成要件Gに記載された技術的思想の内容であるエプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能であったとは認められないから、本件展示会において、検甲1により、本件発明の構成要件Gに係る構成が公然実施されていたと認めることはできず、本件発明が本件優先日前に検甲1により公然実施されていたとは認められない。
2025年9月29日月曜日
営業秘密を保有する事業者の秘密管理意思について
秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある。具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員等の職務、情報の性質その他の事情の如何によって異なるものであり、企業における営業秘密の管理単位(本指針17頁参照)における従業員等がそれを一般的に、かつ容易に認識できる程度のものである必要がある。下記グラフは、裁判の判決文において「秘密管理意思」との文言が用いられた回数を示したものです。このグラフから、裁判において「秘密管理意思」の認定は主に近年(2019年以降)になった行われたものであるようです。
「秘密管理性」が認められるためには、その情報を客観的に秘密として管理していると認識できる状態にあることが必要である。具体的には、①情報にアクセスできる者を特定すること、②情報にアクセスした者が、それを秘密であると認識できること、の二つが要件となる。
2025年9月23日火曜日
判例紹介:顧客との間での守秘義務契約と秘密管理性
(ア) 原告電子基板設計データについて、これが秘密情報であることを外形的に示す表示等はなされておらず、原告電子基板設計データを含む、原告において作成された電子基板設計データは、原告社内のNASサーバーに保存されていた。一方、作業中の電子基板設計データが、各従業員のパソコンに保存されることもあった。(イ) 原告社内のNASサーバーは、アクセスするために、ID及びパスワードによる認証を経る必要があった。一方、NASサーバー内のファイルやフォルダに対し、当該従業員とは無関係な情報にはアクセスができないようにするなどのアクセス制限は講じられていなかった。なお、NASサーバーのID及びパスワードは、従業員が使用するパソコンのログインID及びパスワードと同じものであった。(ウ) 被告個人は、原告の業務のために、私物のパソコンにデータを移して電子基板の設計作業をすることもあった。(エ) 原告、被告個人、ATOUN関係者及び新生工業関係者等との間で、別紙7「メール一覧表」記載のメールのやりとりがあった。なお、令和元年12月25日14時35分付けのRから被告個人に送信されたメールに添付されていたファイルは、電子基板2の設計に向けて作成された要求仕様書(乙8)及びPDF形式の令和元年7月17日に作成された HIMICO Ver2 の回路図(乙9)であった。また、同年12月26日午後4時48分付けのRから被告個人に送信されたメールに添付されていたファイルは、上記要求仕様書(乙8)の修正版(乙10)であった。イ 別紙7「メール一覧表」のとおり、原告代表者が、令和元年12月25日、被告個人に対し、回路図データが破損のため開けないので同人がローカルに持っているデータを送付して欲しい旨述べ、同人が社外で使用しているパソコンに電子基板設計データが存在することを前提に、そのデータの送付を依頼するメールを送信し、被告個人もこれに応じて手持ちのデータを送付している(ただし、このとき送付したデータに原告電子基板設計データは含まれていなかった。)ことを踏まえると、原告において、原告電子基板設計データは、役員又は従業員が担当している案件に関するものであるか否かを問わず、NASサーバーにさえログインすれば閲覧することができ、かつ、作業のために社外へ持ち出すことも容認され、その持出し状況も管理されていなかったものと認められる。そうすると、原告電子基板設計データは、他の社内データと区別して秘密として管理する意思が客観的に示されるような措置が講じられていたとは認められないから秘密管理性が認められない。
この点、原告は、原告電子基板設計データは、顧客との間で守秘義務契約を締結した上で取り扱っているものであり、このことは被告個人を含む従業員全員が認識していたのであるから、秘密として管理されていたと主張する。確かに、原告は、ATOUN及び新生工業との間で、秘密保持契約を締結した上で電子基板設計データを作成していたものと認められる(甲5、6)。しかし、対外的に顧客に守秘義務を課していたからといって、当然に原告内部での秘密管理措置を講じたことになるものではない。
2025年9月12日金曜日
IPAの「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」について
2025年8月29日金曜日
判例紹介:古い判決での有用性判断
プライスリストは,原告の製造するロボットシステムの商品別の付加部品リストで,過去25年間に受注,製造,販売した具体的な物件ごとに作成されており,経費項目分類,品名,部品番号,メーカー,材質,型式,数量,発注先,納入日,金額が記載されている(甲7はそのひな形である。)。本件プライスリストには,本件各製品番号のロボットシステムにつきユニット別の構成部品のメーカー,品番,仕入先,価格が明示されており,特に,多数使用されている市販の汎用部品については,多種の中から実績のある最適のものが選択されて掲載されている。したがって,同業他社は,本件プライスリストの内容を知れば,上記ロボットシステムの基本的構造,部品構成,部品の仕入価格や仕入先が分かり,原告製品と同水準のロボットシステムを,原告製品よりも安い製造原価で製造できることになる上,その見積り,受注に当たっては,原告より優位に立つことにも貢献する。
(イ) 原告は,本件プライスリストにより,原告のロボットシステムの基本的構造が分かると主張するが,本件プライスリストからは外注部品がどのような部品であるかは分からないし,また,用いられた汎用部品及び外注部品が分かったとしても,その情報のみからロボットシステムの基本的構造が分かるとは認められない。(ウ) また,原告は,本件プライスリストにより,ロボットシステムの見積り,受注に当たって原告より優位に立つことができると主張する。しかし,本件プライスリストは,汎用部品及び外注品の仕入価格が記載されているにすぎないものであって,見積額は,仕入価格のみならず,市場における類似商品の価格状況,当該販売先との取引経緯及び将来の販売見込み等の具体的な諸事情を基にして算定されるものであるから,本件プライスリストに係る情報を入手したとしても,そのことから直ちに原告の見積額を一定の精度をもって推知できることにはならない。原告のSI事業部の営業課長を勤めた経験を持つT(昭和11年▲月▲日生。)は,証人尋問において,N及びMの見積書を作成する際,従前の見積書を参考にしたこと,本件訴訟のためにプライスリストを印刷してもらったほかは,自分自身であるいは他の従業員に依頼してプライスリストを印刷したことはない旨述べているのであって,原告の社内においても,見積書を作成する際にプライスリストの情報が有用なものとして用いられていなかったものと認めるのが相当である。したがって,本件プライスリストにより,ロボットシステムの見積り,受注に当たって原告より優位に立つことができるとは直ちに認められない。
(ア)・・・同業他社が本件プライスリストを見れば,本件各製品番号のロボットシステムについて,その構成ユニット別に,どのような市販部品(汎用部品)が使用されたか,その仕入先及び仕入単価が分かり,また,外注部品(特製部品,特注部品)についても,本件プライスリスト上に記録された「品名/部品番号」によってはそれがどのような部品であるかが分からないとしても,どの外注先から仕入れているものであるかが分かるから,これらの情報は,ロボットシステムを設計,製造,販売する同業他社にとって,汎用部品及びその仕入先,外注部品の外注先を選択する上において,また,当該仕入先,外注先との価格交渉をする上において,有益な情報であると認められる。・・・(エ) 以上によれば,本件プライスリストは,同業他社が,本件各製品番号のロボットシステムと同種のロボットシステムを設計,製造するに当たり,その汎用部品及びその仕入先,外注部品の外注先を選択する上において,また,当該仕入先及び外注先との価格交渉をする上において,有用性があるものと認められる。
2025年8月21日木曜日
判例紹介:転職後における元同僚を介した前職企業の営業秘密の不正取得
令和4年7月16日午後7時27分頃から同日午後9時31分頃までの間、東京都江東区〈以下省略〉被告人方において、自己の携帯電話機から、アプリケーションソフト「LINE」を使用して、当時のa株式会社従業員Aに対し、近日中にドイツ連邦共和国への出張が予定されており、同社在籍時に作成した同国出張の際の会食場所やホテルをリストアップした資料が必要である旨の内容虚偽のメッセージを送信して、同社が管理する営業秘密が保存されたサーバーコンピューターへのアクセスが可能なAが使用するアカウント情報等を教えてほしい旨依頼し、その旨誤信した同人に、同アカウント情報等を前記LINEを使用して被告人に送信させ、・・・
本件営業秘密に係る各ファイルデータが保存されたフォルダを含む数百個のフォルダを逐一選択してダウンロードしたものであり、・・・、被告人は、ダウンロードしたファイルデータの中に本件営業秘密が含まれていることを当然認識していたと認められ、犯意も強いというべきである。被告人が本件営業秘密を不正取得した目的は証拠上明確ではないが、少なくとも海外出張先の会食場所等の情報や転職先で作成する資料のひな型として利用することなどのみを目的としていたとは考えられず、・・・
2025年8月14日木曜日
東京エレクトロンによるTSMCの機密情報取得について
・<台湾>TSMC機密取得で元従業員拘束、台湾当局が東エレク捜索 現地報道(日本経済新聞)
・<台湾>台湾当局、TSMC元従業員ら3人拘束 機密情報を不正に取得疑い(毎日新聞)
・<台湾>TSMCの機密情報不正取得で元従業員ら3人拘束 国家安全法違反容疑で台湾当局(産経新聞)
・<台湾>TSMCの半導体技術を不正取得か、台湾検察が元従業員ら3人の身柄拘束…日本企業に転職(読売新聞)
・<台湾>TSMC関係者3人拘束 機密取得で国安法違反疑い―台湾(JIJI.COM)
2025年7月31日木曜日
日本の特許出願件数の推移とソフトバンクのAI特許出願
2025年7月23日水曜日
判例紹介:営業秘密が格納されているサーバーへのアクセスID
ウ 原告においては、競馬レースの結果を従業員全員で入力するため、本件情報1~3等を含むプログラムやデータベースから成る原告のシステムについては、従業員全員がアクセスすることができるようになっているが、原告の競馬新聞や競馬データサービスの根幹をなすため社外秘となっている。また、これらは、原告社内のコンピュータ及びサーバー並びにクラウドに格納され、① 社内 ID 及びパスワードを入力しないとアクセスすることができず、② 退職者がいる場合には、一斉にパスワードが変更されている。(甲83、原審証人B)
本件情報1及び3は、「社外秘」とされて原告社内のコンピュータ等に格納され、業務の必要から従業員全員がアクセスすることができるが、社内 ID 及びパスワードの入力を必要とし、退職者がいる場合には一斉にパスワードが変更されるのであるから、「秘密として管理され」かつ「公然と知られていないもの」(不競法2条6項。秘密管理性、非公然性)に該当する。よって、本件情報1及び3は、原告の営業秘密に該当するというべきである。
2025年7月14日月曜日
AIであるCopilotに、知財戦略カスケードダウンを参考にしてQRコードとCPコードの知財戦略を聞いてみた。
知財戦略カスケードダウンを参考に、2次元コードであるQRコードとCPコードの知財戦略の違いと、QRコードが成功した要因とCPコードが失敗した要因を知財戦略の視点から解説してもらいました。ちなみに、CPコードはQRコードよりも先発の二次元コードです。
参考:知財戦略カスケードダウンによるオープン・クローズ戦略の実例検討
下記のAIの解説で新たに思ったことは、QRコードは特許を活用してQRコードの普及と収益化を両立するためのエコシステムを構築できたけど、CPコードはそのエコシステムを構築できなかったことにあるということ。
📊 QRコードとCPコードの知財戦略の違いと成否の要因分析(知財戦略カスケードダウン視点)
「知財戦略カスケードダウン」は、事業目的に基づいて知財目的・戦略・戦術を階層的に整理する手法です。これを用いて、QRコードとCPコードの知財戦略を比較し、それぞれの成功・失敗要因を分析します。
🧩 知財戦略の構造比較
| 項目 | QRコード | CPコード |
|---|---|---|
| 事業目的 | 世界的な普及と市場形成 | 偽造防止・高セキュリティ提供 |
| 知財目的 | 安心して使える環境の整備 | 技術独占による競争優位性 |
| 知財戦略 | 特許取得+無償開放(オープン) | 特許取得+秘匿化(クローズ) |
| 知財戦術 | 模倣品排除、読取装置で収益化 | ライセンス契約、技術非公開 |
✅ QRコードが成功した要因(知財戦略の視点)
オープン戦略による普及促進
特許を取得しつつ、基本仕様を無償開放
他社が安心して利用できる環境を整備(クリアランス不要)
標準化による信頼性確保
ISO/JIS規格化により業界標準として定着
収益源の分離と戦略的クローズ
読取装置の差別化技術は秘匿化し、収益化
一部技術はライセンス提供で市場拡大と収益両立
模倣品排除によるブランド維持
特許権を行使して不正利用を排除
他社の利益も考慮した市場設計
他社もQRコード関連製品で収益を得られる環境を構築
❌ CPコードが失敗した要因(知財戦略の視点)
クローズ戦略による普及障壁
技術詳細を秘匿化し、導入企業に限定
標準化されておらず、汎用性が低い
導入企業の理解・信頼が必要
B2Bモデルのため、普及には時間と教育が必要
市場形成において他社の参入障壁が高すぎた
互換性の欠如による孤立化
他社製品との連携が難しく、エコシステムが構築されなかった
知財戦略が事業目的と乖離
技術独占を優先しすぎて市場形成を犠牲にした可能性
🧠 まとめ:成功と失敗の分岐点は「知財の使い方」
QRコードは「普及=価値」と捉え、知財を“守る”だけでなく“広げる”ために活用しました。一方、CPコードは「独占=価値」と捉え、知財を“囲い込む”ことで差別化を図りましたが、市場形成に必要な他社の参入を阻んでしまいました。
つまり、知財戦略は事業目的に忠実であるべき。技術の優劣ではなく、知財の使い方が成功を分けたのです。




















